解離性障害の治療

▶解離症状と日常の困難さ

 

幼少期の親子関係でこじれても、適度の解離が生じることで、不安や恐怖、怒りなどの葛藤が過剰にならないようにしてくれます。つまり、適度の解離は、自分を守るものとして人間に備わっている力で、適度の解離症状は、辛いことを忘れさせるので生活全般の困難を下げます。ただし、解離症状の力が過剰になると、自分が自分でいられる力が弱まり、生き生きとした世界が枯渇して動けなくなります。病気としての解離症状または解離性同一性障害での人格交代という現象は、自身の意識が朦朧として保てなくなるというあいまいな自己状態によって生じます。

 

病気としての解離症状を抱えていても、大きな不安や恐怖がなければ、普段は心が落ち着いていて日常生活を営むことができます。しかし、人格交代をせざるを得ない状況では表に出て恐怖に震えてしまった人の心は凍りつき、固まるように閉ざされてしまって、自分では全く統制が出来ないようなひどい錯乱状態に陥ります。

 

治療を受けることで解離性同一性障害の人格交代という現象が無くなる人もいれば、10年経っても無くならない人がいます。一般的には、経済面の不安とか暴力が減って、いつ死ぬか分からない状態から抜け出すことで、内なる交代人格が眠りについたり、自然に統合されたりしていくことがあります。

 

▶特定不能の解離性障害、解離性同一性障害の支援の段階

 

複雑なトラウマを負っている方の場合は、過去のトラウマ体験を話し、感情を発散するカタルシス療法よりも、今ここでの身体感覚、行動、頭に浮かぶイメージ、感情に焦点を当てます。自分の身体に馴染み、仲良くなることで、ストレスへの耐性が強くなり、耐性領域も広がり、生活全般の困難に対処できるだけのメンタルを鍛えます。トラウマにより、その奪われた力を取り戻す方法としては、マインドフルネス瞑想や身体志向アプローチが有効です。まずは、ゆっくり呼吸をして、リラックスした状態の中で、内なる身体感覚の変化に注意を向けていきます。そして、気づきを深めていくことで、内なる感覚を深めることにより、地に足をつけてしっかり現実を生きること(グラウンディング)ができるようになります。さらに、理性脳と情動脳の繋がりを活性化し、本来の自分の感覚を取り戻していきます。その後、セラピストとの対話を通して、意味付け、思考していくことで、新しい自分に生まれ変わることが出来ます。

 

①自分を病気だと認識できるようになる。

②自分の中にいる人格の存在を受け入れられるようになる。

③自分が生きていても良いと思える。

④病気と向き合い、前向きな気持ちで人生に関わる。

⑤少しずつ、人間らしい感覚や感情を取り戻す。

⑥今より元気になる。

 

▶解離性障害・離人/現実感喪失症の支援方法

 

子どもの頃から何度もトラウマを受けてきた人は、解離症状や離人感により現実感を喪失しているので、生活経験を一つ一つ積み重ねていくことができず、意味を持つ自分という歴史を作っていくことができません。こうした方へのカウンセリングは、言葉のみの交流ではなかなか上手くいかないものです。当カウンセリングルームでは、身体志向を取り入れたカウンセリングとか、セラピストとの間で浮かび上がるこころや感情に触れていきます。さらに、希望があれば、課外活動とか生活サポートを併用して実施し、未完了の行動に取り組んだり、人が一つ一つの実際の体験の中で、「私は私であり、私が世界につながっている。」と実感を持つことができる支援が必要であると考えています。また、解離による人格交代や意識変容が生じている混沌のなかで、どうやって生きていけばいいのかを話し合って解決していきます。そして、苦しみと闘争することで真に覚醒し、凍りつき閉ざされてしまった心を柔らかくしていきます。

 

カウンセリングの時間は、マインドフルネス瞑想や呼吸法、身体志向アプローチを用いて、人間の最も洗練されたシステムに働きかけることで、頭をスッキリさせ、いろんなことが思い浮かんでくるようになります。その思い浮かんだことを、あんなことやこんなこともあったとセラピストの話していくことになります。と同時に、引き戻そうとする原始的なシステムも作動するので、身体の生理的反応の変化を感じながら、気づきを深めていきます。そうすることで、今までの苦しい感覚が耐えられる痛みに変わったり、私は今ここで生きている、私はこの世界と繋がっているという現実感を取り戻していきます。目標は、心身の症状が必要なくなるくらいに自分を取り戻し、日常生活が自由に送れるようになることです。そして、外の世界の人々と繋がり、喜びを分かち合えるぐらいの状態に持っていくことです。目標が達成されると症状により自分を覆っていた防衛が取り去られ、表情がやわらかくなり、自分に優しくといった変化が起こります。