解離性障害の治療

▶解離性症状と日常の困難さ

 

幼少期の親子関係でこじれても、適度の解離が生じることで、不安や恐怖、怒りなどの葛藤が過剰にならないようにしてくれます。つまり、適度の解離は、自分を守るものとして人間に備わっている力で、適度の解離症状は、辛いことを忘れさせるので生活全般の困難を下げます。ただし、解離性症状の力が過剰になると、自分が自分でいられる感覚が弱まり、生き生きとした世界が枯渇して動けなくなります。体の方は、常に警戒していき、過度に緊張しているので、肩や顎、腕は、自分を守る準備を始め、頭や喉、胸、胃腸は締め付けられるような苦しさがあるかもしれません。人は、不快な刺激に長年曝されるとストレスホルモンなどが体中に蓄積されていき、炎症を引き起こします。そして、体は首や肩、背中、全身に痛みが伴い、慢性疲労症候群や線維筋痛症、過敏性腸症候群になりやすいと言われています。

 

病気としての解離性症状を抱えていても、大きな不安や恐怖がなければ、普段は心が落ち着いていて日常生活を営むことができます。しかし、人格交代をせざるを得ない状況に曝されると、表に出て恐怖に震えてしまった人の心は凍りつき、固まるように閉ざされてしまって、自分では全く統制が出来ないようなひどい錯乱状態に陥ります。解離性障害または解離性同一性障害での人格交代という現象は、生活全般が困難になり、自身の意識が朦朧として保てなくなるというあいまいな自己状態によって生じます。

 

治療を受けることで解離性同一性障害の人格交代という現象が無くなる人もいれば、10年経っても無くならない人がいます。一般的には、経済面の不安とか暴力が減って、いつ死ぬか分からない状態から抜け出すことで、内なる交代人格が眠りにつき、自然に統合されていくことがあります。また、主人格に生活スキルがあって、日常生活でのストレッサーが無くなり、無理をしなくてもよい環境に変えていくことで、人格を交代する必要が無くなります。

 

 

 ▶当相談室の取り組みとしては 

 

どもの頃からトラウマを繰り返し受けてきた人は、解離性症状や離人感により現実感を喪失しているので、生活経験を一つ一つ積み重ねていくことができず、意味を持つ自分という歴史を作っていくことができません。こうした方へのカウンセリングは、言葉のみの交流ではなかなか上手くいかないものです。当カウンセリングルームでは、環境調整してストレス要因を取り除いたり、周囲のサポートする人の理解を深めたり、休養して心身を落ち着かせる方法を学んでもらいます。カウンセリングでは、身体志向アプローチや瞑想、イメージ、スピリチュアリティを取り入れながら、セラピストとの間で浮かび上がるこころや身体、感情に触れていきます。さらに、希望があれば、課外活動とか生活サポートを併用して実施し、過去のトラウマの未解決な行動に取り組んだり、人が一つ一つの実際の体験の中で、「私は私であり、私が世界につながっている。」と実感を持つことができる支援が必要であると考えています。また、解離による人格交代や意識変容、対人恐怖、気配過敏、身体症状が生じている混沌のなかで、どうやって生きていけばいいのかを話し合って解決していきます。当カウンセリングルームの独特な方法としては、自然崇拝の視点を取り入れています。気配過敏や体内過敏がある解離性障害の方には、自然の中には精霊がいて、自分は守られているという物語を作っていきます。そうすることで、気配や影に対しての恐怖がスピリチュアルな体験に変わり、ストレスは大幅に軽減されるため、社会のなかでそれなりの活動ができるようになります。また、神々のイメージを思い浮かべる瞑想をして、トラウマによって刻み付けられた身体の苦しみと闘争していきます。そして、苦しみの限界に近づいたとき、人はトラウマの中で固まりますが、神々の愛の中で目覚めて、その安堵感から涙が溢れていき、凍りつき閉ざされてしまった心と身体を柔らかくします。神のイメージがしっくり来ない人には、母親の温もりのなかで抱きしめてもらうイメージや恐ろしい動物に襲われてそこから逃げようとするイメージなど、その人にあうイメージを探して、身体の固まりをとります。まずは、カウンセリングルームのなかで、セラピストをガイド役にして、外傷体験を同定し、ゆっくりと耐えられない痛みに近づいていきます。そして、自らが意識的に望みを捨て、自発的に体が動けない状態に入り、自分を支配している存在(あいつ、親、加害者、自分か、別の言い方では、原始的な神経の働き)から抜け出ることが可能になります。

 

 ▶解離性障害、解離性同一性障害の支援の段階

 

子どもの頃から複雑なトラウマを負っている方の場合は、過去のトラウマ体験を話して、感情を発散するカタルシス療法よりも、宇宙飛行士がするような訓練を行い、今ここでの身体感覚、行動、頭に浮かぶイメージ、感情に焦点を当てた方が良いです。また、対話のみの心理療法ではなく、トラウマや解離症状には、安心できる環境作りと心身両面に直接作用するアプローチが求められます。トラウマにより、その奪われた力を取り戻す方法としては、マインドフルネス瞑想や身体志向アプローチ(ソマティックエクスペリエンス)が有効です。人間の最も洗練されたシステムに働きかけることで、頭と身体をスッキリさせ、過去のいろんなことが思い浮かんでくるようになります。その思い浮かんだことを、あんなことやこんなこともあったと正直にセラピストの話していくことになります。ただし、解離性症状がある人は、不安や恐怖が強まると、身体が緊張から硬直して、原始的な防衛システム(背側迷走神経系)が作動するため、喉や胸が詰まったようになり、筋肉が収縮して身体が痛み、呼吸のしづらさ、動悸の激しさ、頭痛、めまい、吐き気、麻痺、凍りつき、脱力が起こることがあります。まずは、安心できる記憶や望ましい記憶、または幸せなイメージを思い浮かべながら、緊張した状態から、リラックスした状態を作っていて、内なる身体感覚の変化に注意を向けていきます。そして、安心という言葉の意味を心の中でしっかり持って、安全な感覚を身体の中で見つけます。次に、身体の安全基地が見つかったら、そこをホームベースにして、身体の緊張や不快感、防衛的態度に気づきを深めていき、凍りついたトラウマとの間を振り子のように行き来します。特に、緊張した部分に意識を集中させて、どんどん緊張が強まることを想像してもらって、実感を伴わせたうえで、表現したいように身体を動かすと、今まで閉じ込められた過剰なエネルギーが解放されていきます。そして、自らが痛みや望みの捨てた場所に入っていき、凍りつきや不動状態に馴染み、そこからの覚醒(怒り)を恐れずに、身体の生理的反応の変化を実感しながら、耐え忍んでいくことで、自分の身体と仲良くなっていくことが可能になります。そして、自分の身体を許容できれば、自分の内なる感覚に対しての恐れが無くなり、地に足をつけてしっかり現実を生きること(グラウンディング)ができるようになります。

 

このようなセッションを行い、凍りついたトラウマを解放していく必要があります。トラウマから解放されると、身体の中の凄まじい緊張がほどけ、身体的な症状が改善していきます。また、観察者の私や身体の内部で小さくなっている私から、誰かに見られている私やこの現実世界に存在している私に変容することが可能になります。そして、息がしやすくなり、自分が自分であるという状態になっていって、ストレスへの耐性も強まり、覚醒度の耐性領域も広がり、生活全般の困難に対処できるだけのメンタルが鍛えられます。さらに、内なる感覚とイメージ、感情、思考の間を行き来することで、理性脳と情動脳の繋がりが活性化し、本来の自分の感覚を取り戻していきます。また、随分と落ち着いて、爽やかな表情に変わっていきます。その後、セラピストとの対話を通して、意味付けや思考していくことで、自分の否定的な物語を肯定的な物語に書き換えて、新しい自分に生まれ変わることが出来ます。望ましい自分のイメージが出来上がり、自分のペースで生きれるようになると、体質が改善されていきます。※解離や離人感がある状態から、現実感が戻ると、気配過敏や恐怖などが高まるので、しんどくなることも多いですが、少しずつ慣らしていく必要があります。また、過剰に覚醒されるようになると、本能的な攻撃性と向き合う必要が出てきます。身体に焦点を当てることで、行動化しやすくなりますが、社会に許容される範囲で表出していきます。

 

▶解離性障害、解離性同一性障害の支援のまとめ

 

まとめると①環境調整してストレス要因を取り除くことが最重要です。生活全般のストレスや不安、恐怖が強いと解離性症状は良くならず、悪化します。②カウンセリングでは、人と話すことに幸せを感じてもらうとか、良い体験をしてもらうことに比重を置き、望ましい自分のイメージ作りや自分の人生の物語を書き換えていきます。③解離性症状の身体への不安をソマティックエクスペリエンス(身体志向アプローチ)で対応します。これはNASAの宇宙飛行士がやっている訓練です。緊張と麻痺の間を行き来している低覚醒の人が、神経系の過剰なエネルギーを解放し、防衛的態度が取れていくことにより、緊張とリラックスの間を行き来できるようにしていきます。④解離性症状の気配過敏や体内過敏には、自然崇拝の考え方を取り入れます。これは自然の中に精霊が宿っているという世界観です。以上により、今までは、恐怖や痛みに凍りついてきましたが、その蓄積された身体のエネルギーを解放させることで、強い体とスピリチュアリティに変容することが可能です。そして、身体と心は、緊張とリラックスの間を行き来きできるようになり、今までの苦しい感覚から、耐えられる痛みに変わって、私は今ここで生きている、私はこの世界と繋がっているという現実感を取り戻していきます。その結果、心と身体が再び出会って動き始めます。目標は、心身の症状が必要なくなるくらいに自分を取り戻し、力強さを得て、日常生活が自由に送れるようになることです。そして、外の世界の人々と繋がり、喜びを分かち合えるぐらいの状態に持っていくことです。目標が達成されると症状により自分を覆っていた防衛が取り去られ、表情がやわらかくなり、自分に優しくといった変化が起こります。

 

①自分を病気だと認識できるようになる。

②自分の中にいる人格の存在を受け入れられるようになる。

③自分が生きていても良いと思える。

④病気と向き合い、前向きな気持ちで人生に関わる。

⑤少しずつ、人間らしい感覚や感情を取り戻す。

⑥今より元気になる。

 

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