解離性障害(健忘・離人感・現実感喪失)の特徴
解離性障害は、

 

解離性障害は、通常まとまっているはずの自分が自分であるという感覚がバラバラになっているような状態を指します。解離性障害の人は、さまざまな症状がありますが、これらの症状は、日常生活の耐えがたい心の痛みや不安から自分を切り離そうとする一種の防衛反応であると考えられています。しかし、この防衛が過剰になると、脳が自動的にストレスを避けたり、ストレスに対して脳が活性化しづらくなります。そして、実感が持てなくなり、身体感覚の麻痺や感情の鈍麻、思考の働きが鈍くなります。そのため、勉強しようとしても頭が働かなくなるとか、本を読んでも感情や記憶として残りません。また、日常場面では、過去の解離された情動やトラウマがフラッシュバックするため、被害妄想に取り憑かれた状態になり、興奮や動悸の激しさ、過呼吸、パニックを引き起こして、動けなくなります。現実世界の恐怖が増していくと、注意や知覚が変性意識状態に置かれてしまって、現実世界と夢の世界の境目が無くなり、前のことが思い出せなくなります。やがて、恐怖を感じなくさせるために自分を麻痺させるようになると、楽しみも感じられなくなり、ぼーっとしたり、息苦しくなったり、やる気が出なかったり、エネルギーが切れたりして、まともに日常生活が送れなくなり、家や保健室に引きこもるなどの支障をきたしていくため障害になります。

 

解離性障害の特徴は、

 

①ネガティブな情報を選択しがち

②感覚や思考、感情の動きが鈍くなる

③同時に裏では複雑な感情を抱えがち

④自分の意志が自分に届かない状態であったり

⑤自分が誰なのかという感覚の土台が崩れていたり

⑥意識がボーッとして視界がぼやけたり

⑦足がふわふわと浮いている感じがしたり

⑧視界がベールで覆われて、夢の中にいるような感じたり

⑨悪夢にうなされたり不眠に悩まされたり

⑩身体への不安からパニックが起きたり

⑪身体がこわばって凍りついたり

⑫身体の中心が空っぽだったり

⑬身体の手足がバラバラで、

⑭身体が自分のものではないように感じたり

⑮喉が詰まって、呼吸がしにくかったり、

⑯心拍数や血圧が低下して頭痛やめまいが起きたり

⑰お腹の調子が悪くて下痢したり

⑱幅、奥行きなどの距離感がつかめなかったり

⑲自分が別の空間にいるようで遠近感が無かったり

⑳過去から現在、未来の時間感覚がなかったり

㉑記憶が抜け落ちる障害が起きたり 

㉒気づいたら時間だけが何時間も過ぎていたり

㉓気づいたら別の場所に立っていたり

㉔やらなきゃいけないことに取り組めなかったり

㉕集団で生活することが苦手で

㉖人の視線や声が怖く感じたり

㉗現実よりも夢の世界にいるように感じたり

㉘現実を歪めて被害妄想に取り憑かれたり

㉙人と直接関わっている感じが無かったり

㉚強い刺激には圧倒されたり

気配や物音から被害妄想が拡大したり

楽しいとか生きている実感が持てなかったり

㉝触覚・皮膚感覚の喪失により自他の境界がなかったり

㉞幅、奥行きなどの距離感がつかめなかったり

㉟重いうつ状態で、辛くて何もできなかったり

㊱感情のコントロールが難しかったり

㊲衝動性のブレーキ―が利かなくなる心配があったり

㊳頭の中から別の自分が話かけてきたり

㊴思考がぐるぐると回り、気が遠くなったり

㊵目の前のことに集中できなかったり

観察者としてこの世界を眺めたり

本音を隠して、明るいふりをしたり

 

一般的に、否定的な状況認識や、否定的な自己・他者イメージを持っており、現実検討能力が低下しています。人から傷つけられる恐怖があるため、周囲の人や気配に対して過敏で過剰に働いています。また、危険な状況に遭遇した時の対処能力が高く、過剰な情報処理努力をされています。人への恐怖心が強いため、相手を怒らせたくないとか、嫌われたくない思いから抵抗や反撃するよりも、好かれようと猫をかぶり、ひたすら相手に合わせてしまいます。そのため、素の自分でいられないことが悩みになります。

 

外界の他者からの精神的干渉(言葉の暴力など)により、精神状態が不安定になると、注意を向ける外界の対象の範囲を狭め、視野を狭くして、現実世界から離れていきます。そして、過去のトラウマの痕跡が身体や思考に残されているので、自己意識や体内の気配についての意識が過剰に高まります。ぼーっとしていくなかで、身体は動かせず、「どうして私だけが?」とか、「あのときこうしておけば…」などと解けない疑問がぐるぐると回り始めて、思考の渦のなかに飲まれていきます。それと同時に、実感が無くなり夢の中で生きているような感じや、現実世界に膜がかかる現実感喪失症、自分が自分の身体から抜け出た状態になる離人症が起こります。さらに、外界や内部世界の情報が遮断されると、身体に力が入らず、頭も働かない不動状態に入り、解離性健忘、人格交代、幻覚などの典型的な解離症状がみられるようになります。

 

存在者としての私/眼差しとしての私
存在者としての私とは

 

解離性障害の人は、空間と時間を変容させ、現実に遠のいたり、近づいたりとすることできるので、現実の世界と夢の世界、現実の世界と空想の世界、また、その中間の世界を渡り歩くことができます。現実世界では「存在者としての私」 として生活しています。柴山雅俊先生の概念である「存在者としての私」とは、「この世界の中に身体をもって、空間・時間的な制約のもとに存在している私である。いわばこの世の中に縛りつけられたような身体を持ち、逃避することができない当事者としての私である。」と述べています。

 

眼差しとしての私とは

 

解離性障害の人は、現実の世界と夢の世界の境目がわからなくなり、全ての物事を感じている「存在者としての私」ではなくて、外から眺めている「眼差しとしての私」に変わることがあります。柴山雅俊先生の概念である「眼差しとしての私」とは、「この世界・身体から離れたところに位置し、そこから自己と世界を眺めている私である。ただ漠然と『離れている』ということもあれば、身体から離れて自らの背後や上方に浮遊していると訴えることもある。それが顕著になると空間的あるいは時間的にも異なった場所から私とこの世界を見ていると体験する。自分や世界を他人事のように冷静に見ていることが多い。」と述べています。

 

解離性障害の人は、本来は一つだったものが、見る自分と見られる自分の二つに割れてしまっています。通常の健康な人は、このような二つに分かれた私が意識されたことはありません。ただし、健康な人でも、例えば、身体が拘束されることで、「存在者としての私」を切り離し、「眼差しとしての私」の視点に偏って体験することがあります。

 

参考文献

柴山雅俊:『解離への眼差し』臨床心理学 第12巻第4号 2012年

 

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