DID(基本人格)の初期の苦悩
▶DID(基本人格)の初期の苦悩

 

解離性同一性障害の基本人格(オリジナル人格)は、この世に生まれ落ちた最初だと思われる自己の部分です。しかし、幼少期の頃に何らかの理由で、固まり凍りついて、閉じ込められるようになった存在です。彼らは、つらい現実に耐えることができなくなり、何も聞こえない世界のなかで、一人きりの真っ暗な場所に隠れてしまいます。日常生活の代わりを担った部分が、大人に成長していっても、彼らは、長い間、体の中に閉じ込めらていたり、背後からこの世界を眺めています。

 

基本人格(オリジナル人格)は、もともとは親を喜ばそうとか、心配をかけないように生きてきました。子どもは、虐待やいじめなど、たくさん傷つけられながらも、親に分かってほしいとか、助けてほしいと願ってきましたが、いつも怒鳴られるのが当たり前で、理不尽に怒られても、怒られる理由も分かりませんでした。子どもがありのままの怒りを見せれば、その怒りに相手が反応して、さらに悲惨な目に遭うので、何も考えなくなりました。親達に怒られるのは、自分が悪いからと自分を責めて、何も言えなくなりました。日常生活の中で、とても辛いとか、とても苦しいと言えず、心も体も痛みだらけで、限界に達しました。

 

段々と弱弱しくなり、大人しくなって、誰の目にもつかないように、その場にいないふりをします。人目につくと、胸が痛んで、息が止まり、その苦痛が過ぎ去るのを待つしかありませんでした。子どもは我慢している感覚も無くなり、恐怖で体が凍りつき、感情や感覚が無くなっていきました。とても辛い毎日に、すっかり絶望してしまって、もうどうしようもない気持ちになり、動けなくなりました。心を捨てたあと、全ての事柄が宙ぶらりんになり、小さい自分は凍りついたままになって、それが永遠に続くようになります。一方、全く違う人格ができて、その部分が日常生活を過ごすようになります。

 

このように幼い頃から、冷たく厳しい道を歩んできました。子どもは、自分の思うように生きたいと思っており、これ以上傷つけられないように、自分を繭の中に包んで、外の攻撃から自分を守ります。しかし、それでも、自分を侵害してくるので、泥濘の道で足を滑らせ、身動きが取れなくなります。やがて、子どもは誰にも見つからなように、自分の心の奥底で休む場所を見つけて、そこから出てくることが無くなります。心の奥底の暗闇の中を一人で体育座りをしてポツンといます。凄い孤独で真っ暗な中を死に向かっていきますが、たまにちらちらと光が見えます。

 

基本人格は、井戸の底のような暗闇の場所で隠れてしまいます。自分を身体を使って現実世界で活動する人格は、自分に取って耐え難いことが多くある状況で活動することを任せられます。そこで前向きに頑張ろうとしますが、嫌なことをたくさん押し付けられる結果になり、親や兄弟、同級生の友人などと悩ましい状況を作っていきます。より限界に達していくと、闘争モードの交感神経系に乗っ取られて、周囲の人々を平気でトラブルに巻き込んだり、その状況を嘲笑って見ていたり、人に嫌な思いをさせることになります。このように、悩ましい状況や、複雑な関係性を形成することがあります。一方で、基本人格は心の奥底(井戸の底のような暗闇)に引っ込んでいて、そこは自分が人を傷つけてしまうことも、人から傷つけられることもない世界です。自分の頭の中で作り上げた空想世界で、自分にとって理想や都合のよいところを集めて、自分だけの閉じられた妄想世界に浸っています。頭の中は、知っている人が現れて消えての繰り返しで、あんなことがあったな、こんなことがあったなと考えています。こうした現象を解離と言って、発達早期にトラウマを負った人は、白昼夢に没頭したり、辛い現実から離れて、頭の中の空想世界へ逃げ込んで生きていくことになります。このように解離とは、逃避することである一方で、その人の人格全体でみてみると、戦略的に自己を隠して現実世界の攻撃や困難な状況から身を守っている側面もあります。

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