解離性症状


幼少期の頃から、とても辛い毎日を送り、様々な逆境体験により、降り積もった痛みが、心臓や胸の周辺に重くて硬い固まりを作ります。苦しいことがあると、喉がつっかえたかのようになって、息がしづらく、皮膚や胃腸などに炎症を引き起こします。彼らの身体には、大きな塊や詰まりがあり、常に凍りついている人や、苦痛に対して一瞬で凍りついてしまう人ほど、トラウマの重症度が高くなり、体の感覚が麻痺して、自己感覚が分からなくなります。

 

そして、意識(心)は、肉体的な苦痛から離れて、別の領域に飛んで、典型的な解離症状を示すようになります。解離性障害の人は、身体の中にトラウマを閉じ込めているため、身体の生理的反応に混乱し、恐怖を感じて、心ここにあらずな状態になります。そして、辛いことがあると、1点を見つめてぼーっとするか、眠くなるか、集中力が切れるか、思考に注意が向けられるか、動けなくなるか、気を失うかなど、死んだふりの毎日になります。

 

子どものうちから、潜在的な脅威に対して、体が怯えており、その場でじっと動かずにいると苦しくなります。現実世界の生々しい刺激に、敏感になったり、大げさに驚いたり、フリーズしたりして、生活全般が困難になります。次々と辛いことが起きるうちに、解離を使うようになり、痛みや不快な身体を切り離すことが可能になって、頭の中を空っぽにし、何も感じないようにすることができます。つまり、解離は、痛みやストレスを感じなくさせて、これ以上の苦痛から、生体を守る役割があります。そして、人をそれなりに仕事や家庭、学校をこなすようにさせて、あたかも正常かのように日常生活を過ごすことができます。また、子どもの頃からの愛着対象のために頑張る力を与えてくれるものです。

 

劣悪な環境にいる子どもは、解離を使うことで、危険な状況にいるはずなのに、何も感じないようにしたり、死んだふりをして、その場を乗り越えることができます。その反面、脅かされることが繰り返される場所でも、長く留まり続けることを可能にして、心と身体を蝕んでいきます。やがて、苦痛に耐えることが当たり前になると、身体の感覚や感情は麻痺し、無表情になり、疲労だけが段々と蓄積されて、半分眠ったかのように生きる人生になります。

 

ストレスと戦うためのエネルギーが切れると、交感神経がシャットダウンし、好奇心や興味・関心を失い、人生なんかどうでもよくなり、抜け殻のようになって、日常生活を自動機械のように送ります。そして、たくさん傷つけられても、なにもないふりをして生きていくようになり、本音や本当の感情が言えなくなって、自分の考えていることが分からなくなり、自分が何をしてもいいかも分からなくなります。外からは一見うまくやっているように見えても、彼らの心は傷だらけで、身体のある部分は硬く、身体の中心は空っぽで、息がしづらく、手足に力が入らず、頭がボヤッとして、生きている実感が無くなります。

解離性症状のチェックリスト15項目


①解離による二重性

複雑なトラウマはある人は、外傷体験により、人格構造の断層に亀裂が入って、理性的な部分と情動的な部分に分裂して、二重に自己があるような状態で過ごします。日常の役割をこなそうとする部分は、苦痛に耐えることが当たり前で、環境に順応して、自然な流れに慣れていきますが、一方で、環境に順応せずに、自然な流れを拒む部分が出てきます。この変化を拒む部分を、野性的な力を持っていて、スリルや力を求め、時に反社会的になり、恥やプライドがなく、その人の暗黒の部分を表します。そして、暗黒の部分は、生きながらに死んだような状態にある惨めな自分を見て楽しんだりします。

②理性的な部分と情動的な部分

理性的な部分が日常生活を送っていますが、防衛的な脳の働きから、神経は張りつめて、体は慢性的に収縮しており、心と体は一致しません。ストレスに脆くて、小さなことでも躓くために、嫌な場面では、自分の体から離れて、あちら側(妄想・空想)に飛んでいきます。一人で過ごしているときは、ぼーっとして過ごし、時間だけが過ぎているように体験しています。人と関わる場面で、言動や振る舞い、表情などがトラウマのトリガーになり、脅威を感じると情動的な部分に乗っ取られて、暴言・暴力になることがあります。本人は周りに迷惑をかけていることをもの凄く気にしており、自分のことが誤解されていくことに苦しんでいます。一方、別の自分がいることや、周りに迷惑をかけていることに気づかず、その間の記憶を無くしている人もいます。

③頭(心)と体の分離

トラウマを受けると、体に痛みが刻み込まれるため、心は体から切り離されたように感じ、頭の中の世界で思考を巡らしたり、空想に耽ったりする生活になり、頭(心)と体が離れ離れになります。体はこの物理的世界の制限の中で決まりきった毎日を繰り返すロボットのように、そつなく日常生活をこなしています。嫌なことがあれば、頭(心)は体から離れて、堀を越えてあちら側の世界に飛んだり、時間や空間の制限を超えることができます。あちら側の世界とは、空想や妄想の世界であり、現実とは違う世界になります。本人は、あちら側の世界こそが本当の現実だと思っていることもあります。

④喪失体験を期に解離症状

解離性障害の発症に度々みられるのは、愛着対象の喪失により、何時までも悲しみに暮れていたら、自分が自分でないような状態になり、自分のことがよく分からなくなり、その恐怖で様々な症状が出てきます。もともと幼い頃に様々なトラウマを負っていましたが、喪失体験を期に、頭の中から命令する声が聞こえるようになり、気分が悪くなって、記憶も思い出せず、過呼吸、麻痺、フラッシュバック、凍りつき、震えなどが生じます。また、現実感が無くなり、頭の中がぼーっとして、夢の中で生きているように感じています。

⑤解離による自動症

解離性障害の人は、凍りつきや死んだふりの状態で、体が捻じれていたりバラバラになっていたりして、身体感覚がぼやけて、手足や胴体が自分のものでなかったりします。そのため、日常生活において、自分の体を動かすことが大変になり、解離による自動症になる人がいます。自動症では、本来の自分がどこかに隠れて動けなくなっており、頭の中から命令する声のもと、体の中に別な人がうまく立ち回るようになります。そのときそのとき、今まで培われた経験からマニュアル的な対応を取りますが、人によっては、いろんな性格の自分がいるようで、一人になると本当の自分かどうかも分からなくなります。仕事モードの時は、仕事ができる自分が勝手に仕事をします。また、闘争・逃走モードの時は、手足が勝手に動いたり、口が勝手に暴言を言ったりする自動症があります。

⑥自分のことがよく分からず、周りに流される

家庭内で親から脅かされることが続くと、頭が混乱していき、何が普通なのかとか、これが正しい判断かも分からなくなり、周りに流されていく人生になります。周りの人は、自分で判断して、自分の人生を選んでいくけども、解離性障害の人の多くは、周りの人から求められたことをしていきます。そして、自分が空っぽのまま成長し、何をしていいかも分からず、自分の経験として人生が積み上がっていきません。

⑦過覚醒の不眠や疲労からの解離

幼少期の頃から、複雑なトラウマがある人は、嫌な記憶を忘れられずに、思い出されてしまうと、体は凍りついて、頭の中を考えがぐるぐる回ります。そして、潜在的な脅威に対して、脳がいつも興奮して警戒モードで、過剰に覚醒させて眠れなくなります。不眠が続くと、心は自分で檻の中に入ろうとして、日中は、ボヤボヤした夢と現実の狭間のなかで、心身が限界に達し、人格交代が頻繁に起きます。

⑧解離性健忘や時間感覚

記憶は、印象の強いものしか残らず、先ほど、食べたものや話した内容、自分が書いたレポートなど忘れてしまい、記憶が続きません。記憶が繋がらないため、時間の感覚が分からなくなり、気がついたら時間が立っています。我を忘れている間は、記憶がないですが、いろいろなことが起きているので、意識が現実に戻った後、相手の表情が印象に残ります。

⑨感情や感覚の喪失

痛みの体は凍りついて、心は体から離れていくので、感情や気分の波が無くなり、嬉しい、楽しい、悲しいなどの感情が分かりません。このような状態でも、それなりに仕事や家事をこなして、ごく普通に日常生活を過ごせています。ただ、何も感じることができず、自分が自分で無くなってしまって、生きている意味もなくなります。ストレスがかかる場面では、自分のことをどこか遠くから自分を見ていたり、自分のこころの奥に隠れていたりします。

⑩身体・精神症状

普段から、体が警戒態勢を敷き、原始的な神経の働きが過剰で、神経は張りつめていて、体は慢性的に収縮しています。ちょっと刺激にも敏感になって、筋肉は硬直し、体は固まり凍りついて、動けなくなります。また、不意を突かれると、大げさに驚き、恐怖を感じると、体は脱力してしまって、様々な体調不良が起きます。胸は息苦しく、肩を内側に寄せて、手足が痺れていたりします。また、めまいや頭痛、腹痛、吐き気、意欲低下、注意力散漫などの症状があります。

⑪対人関係

人の視線や表情、言動、振る舞いが怖くて、様々なリスクが思い浮かび、頭の中を考えがグルグル回ります。外の世界が怖くなると、緊張が高まりすぎて、視野狭窄や自分の世界に引きこもる、身体が薄い膜のフィルターで覆われるなどが生じます。人の悪意に気づいてしまうと怖くなり、人とは細い糸でつながっていて、距離をつめにくく、甘えることができません。敵を作ったら、自分のことを悪く思われたら、大変なので、相手に悪く思われないように振る舞い、相手に合わせすぎる傾向があります。

⑫感覚の分からなさと凍りつきやすさ

自分の身体の感覚が分からなくて、楽しいと感じられない自分と楽しいと感じていた過去の自分との間でイライラ、モヤモヤしています。また、体が凍りつきやすいため、その場しのぎで、嗜癖行動や自暴自棄な行動を取ってしまうことがあります。

⑬安心感のなさから

体に安心感がなく、無表情で無感情なところがあります。自分では安心感を得られないので、相手から安心感を得ようとします。また、自分で自分を満たすことができないので、他者に満たしてもらおうとするところがあります。

⑭子ども時代の遊び

子どもの頃から緊張が強すぎて、自分の居場所がなく、一人遊びをしていたり、頭の中の世界で空想を巡らして遊んでいます。解離症状が強いと、常に体は凍りついているため、子ども同士で遊ぶことや、自分の気持ちを言葉にして表現すること、作業場面などが苦手ですが、誰かと遊びたいと気持ちは身体のどこかに隠れています。

⑮味覚の変化

解離が強くなると、身体感覚が麻痺していくので、人によっては、辛いものや甘い物など刺激の強いものを無性に食べたくなり、味の好みが激変します。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室 

論考 井上陽平

 

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