トラウマ治療の手順

▶トラウマの治療の手順

 

当相談室では、カウンセリングの時間を大人の場合は、90分取っています。前半は対話を通したカウンセリングを行い、後半は瞑想を通したカウンセリングを行います。瞑想は、身体感覚に焦点を当てるため、身体感覚に向き合うことに価値が感じられない人には、瞑想にかける時間を短くして、対話を重視します。

 

カウンセリングの進み方は、一人一人の心身の状態や置かれている環境により、様々あります。ここでは、短期間でトラウマに焦点を当てたい人のために、だいたいの目安を書いておきます。

 

初回のカウンセリングは、

相談に至った経緯や主訴、家族関係等をご自由にお話ください。少し瞑想を行い、身体に注意を向けることを学びます。また、安全で安心な環境が十分整っていない場合は、トラウマに焦点を当てるよりも、環境調整の方を重視しなければなりません。

 

2回目から5回目は、

対話の方は、ご自由にお話しください。セラピストは、あなたの成育歴や家族関係、現在の状況を理解していくことに時間を使います。また、トラウマへの理解を深めながら、外傷記憶を辿り、不動状態に至った経緯やそこから抜け出す最適な方法を考えます。瞑想の方は、地獄に入る準備をしていきます。まずは、頭の中で安心でき記憶や望ましいイメージを思い浮かべて、身体の安全な場所を発掘していきます。また、体の緊張している部分に焦点を当てて、漸進的筋弛緩法や呼吸法を行ったりします。

 

6回目から10回目は、

対話の方は、ご自由にお話しください。セラピストは、あなたと外傷体験の共有をしていきます。また、生きづらくしている思考のパターンや認知の歪み、強迫観念など見ていくことになります。瞑想の方は、地獄に入っていきます。自らが意識的に、望みを捨てて、空間が崩壊したような絶望状態に入り、身体を動けなくさせます。そして、十分に身体感覚を伴わせながら、絶望から最適な方法で抜け出すことが出来れば、新しい体験になり、未解決なトラウマが変化します。トラウマの世界に閉じ込められている人は、身体が硬直していて、収縮の働きが強くなっています。地獄に入るときは、さらに身体を収縮させていきますが、そこから抜け出そうとして、身体を動かしていくと、全身が拡張されます。こうしたセッションを繰り返して、収縮と拡張という本来のリズムが取れるようになると、人とコミュニケーションをするときに緊張しなくなったり、様々な身体症状が少なくなって、生活がしやすくなります。

 

11回目以降は、

対話の方は、不確かな人生や動かしがたい他者と関係性を見ていきます。そして、不確かなことや予測できないなかで、自分の人生を自由に選択していけるように支援します。その結果、現実の世界で新しい経験が獲得され、新しい自分に生まれ変わります。瞑想の方は、地獄の世界に入ったり、トラウマを受ける前の自分の記憶を思い出したり、現実や空想の世界に入り込んで様々な感覚に馴染んでいきます。自分の身体感覚や感情と仲良くなることにより、自分が自分であるという感覚を強くして、痛みや恐怖、不快感が減じます。

 

▶トラウマのメカニズムから抜け出すには

 

トラウマのメカニズムから抜け出す方法を、包括的に説明してくれているのが、ヴァン・デア・コルクの「身体はトラウマを記憶する」に書かれていますが、その一部を載せます。

 

神経科学者のジョセフ・ルドゥーとその共同研究者たちは、情動脳に意識的にアクセスできる唯一の方法は、自己認識を通してであることを示しました。つまり、トラウマによって、情動脳と理性脳のバランスが崩れている人は、自分の内部で何が起こっているかに気づいて、自分が感じているものを感じることを可能にする脳領域である内側前頭前皮質を活性化する必要があります。そして、私たちの感じ方を変えられる唯一の補法は、内部の経験を自覚して、自分の内部で起こっている出来事と仲良くなれるようにすることです。トラウマ治療で有効な方法としては、マインドフルネス、ソマティックエクスペリエンス、アクセプタンス・コミットアンドセラピー、呼吸法、瞑想、ヨーガ、イメージ療法、芸術表現療法、ニューロフィードバックなどになります。

 

トラウマ治療では、まず身体の内部の感覚に立ち戻り、安全・安心感を得て、過去に引きずられることなく、過去の外傷体験に注意を向けられて、そのとき、どのように感じて、どのように振る舞ったのかを知っても平気でいられるようにすることです。トラウマを負った人は、自分の感覚に耐え、内部の経験と友達になり、新たな行動パターンを培う能力が自分にあることを学ぶ必要があります。自分が何を感じているのかに気づくだけで、情動調節がしやすくなり、自分の内で起こっていること出来事を無視しようとするのをやめる手助けになります。内側のプロセスを観察できるようになると、脳の論理的な部分と情緒的な部分を繋げる回路が活性化します。これは、人が意識的に脳の知覚システムを再構成することができる、現在知られている唯一の回路であります。

 

参考文献

ベッセル・ヴァン・デア・コーク:(柴田裕之 訳、杉山登志郎 訳)『身体はトラウマを記憶する』紀伊国屋 2016年

 

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