病理的組織化
病理的組織化は、ジョン・シュタイナーが境界性パーソナリティや精神病的パーソナリティなどの治療困難例における病理的問題を理解するために提唱した臨床概念である。これらの人は極度に弾力性に乏しく複雑に組織化された防衛を有している。そのため変化に対して強力な抵抗を示し、変化がないか、あるいは変化が起こりそうなになると自傷行為や反社会的行為などの破壊的行動化を呈する。シュタイナーは、これらの人の心の中には複数の無意識的自己が併存し、その一部は病理的な防衛組織の群れからなっていて、個人の成長に大きな障害となる。

 

病理的組織化はしばしば安全で保護的な逃避場所として現れる。一見、暖かそうなその場所は、実は他者との交流が絶たれていて水分も栄養も補給することが出来ない不毛な場所であり、じりじり照りつける太陽に焼かれて、死を待つしかない場所である。

 

病理的自己愛
ハーバート・ロゼンフェルドは、精神分析家でクライン学派の代表的人物である。重度の病理的パーソナリティ障害の臨床研究に没頭したナルシズムの研究者として知られている。ロゼンフェルドは、病理的自己愛を二つに分類した。リビドー的自己愛と破壊的自己愛である。リビドー的自己愛は、対象の望ましい性質を万能的な取り入れ同一化や獲得性投影性同一視によって占有し、自分のものにしてしまうものである。これは、自分の望ましくない性質や感情を対象の中へと投影すること(帰属性投影性同一視)も伴う。この場合、分析家はしばしば「便器としての母親」として体験される。一方で破壊的自己愛は、破壊的な自己の部分を理想化し、対象の良い部分や対象を求めようとする依存的な自己の部分を弱くて価値のないものとして見下し、攻撃して破壊しようとする。すなわち死の本能や羨望の現れである。無意識的幻想の中では、自己の破壊的な部分は理想化されたギャングやマフィアとして現れるが、それは援助者や同盟者として偽装されており、リビドー的な自己の部分を制圧して支配する。ここでは、支配する側と支配される側がそれぞれ独立したパーソナリティのように振舞っている。

 

病理的組織化におけるパーソナリティ構造について、併存するパーソナリティ各部の相互の関連には、ある種の連携がみられるものから完全に隔絶しているように見えるものまで、様々なタイプがある。これに関してHinshelwoodは、次の3つに大別した。

1)パーソナリティの諸部分は、固い殻を形成していて相互に関連がない。

2)諸部分は悪い部分の支配下にあり、全ての情緒を避けることに従事している。

3)良い部分は悪い部分に意図的に望んで悪い部分と共謀する。