一般的に、人は幸せな未来のために頑張り、何か目標達成しようと動いています。そのため、人生とは目的や理想に向けて頑張らないといけないと言いますが、心身の状態が悪い人は、毎日自分の状態を保つことに一生懸命になって生きなくていけません。努力するのが当たり前とは、恵まれた環境にいて、心身が丈夫だからこそできることです。
恵まれた家庭、ほど良い親、健康な身体とは無縁な人生で、生きることが苦痛だった人は、自分の劣等生を隠し、努力を惜しまず頑張って、周囲の人に合わせようとします。全力で物事をやり遂げれば、いつかは胸を張って歩けるぐらい強い人間になれると思って頑張ります。しかし、無茶をしてきた分だけ、体にダメージが蓄積されていて、心と身体がおかしくなります。
人は心身の状態が悪くても、職場や学校で他人から強制的に仕事や勉強をこなさされます。そして、身も心もボロボロになりながら、家に帰ると、今度は親や兄弟、夫などから家事をしろと言われます。また、誰かから強制されていなくても、自分がしなければならないと思って、自分を縛り付け、逃げ場を無くしていきます。彼らは、日常でこなさなくてはいけないことと、人の圧力から苦れることができず、その辛さを日々抱えて生きていかなくてはなりません。
複雑なトラウマを負って、生きるか死ぬかモードの人は、どうすれば生き残れるかを考えることはできても、社会の中で努力する意欲は削がれています。彼らは、息苦しさを感じ、頭の中で警報が鳴り響き、心は悲しく、フラッシュバックやパニック発作、回避行動などに苦しみます。トラウマ症状は全身に及ぶため、毎日自分の状態に気を配り、自分を管理しなくては生活が成り立ちません。酷い時は、五感が鈍くなり、楽しいとか嬉しいとか何も感じられず、ただ寝るだけの生活になります。そして、身体は衰弱して、朝起きることもしんどくなり、ご飯食べて、トイレやお風呂、寝るだけでも精一杯な生活を送るようになるかもしれません。
世の中の人は、彼らの行動を見て、何もしていないように思うかもしれません。しかし、複雑なトラウマを持ち、精神疾患や発達障害、体を壊してしまった人は、最低限の生活を保つことがやっとで、社会生活を営むことが難しい状態にあります。彼らは。社会の中で努力することが当たり前の世の中は生きづらく、世の中の人の心ない言葉がナイフのように刺さります。
▶心身の状態を回復させるには
心身の状態が悪くなっている人は、日々の生活や圧迫や辛さから逃れるために、逃げ道を作らないといけません。嫌な人の表情や態度に曝され続けることから逃れて、自分がホッとして、解き放たれるような場所や瞬間を見つけ出すことが生き延びるうえで重要になってきます。少しでも、辛い現実から離れて休むことをしたり、もう頑張る必要もないので、今まで背負ってきたものを投げ捨てて、逃げてみるのも良いでしょう。また、半年くらいは自分のためにゆっくり生きる事だけに注力して、自分を立て直していきましょう。
トラウマケア専門こころのえ相談室
更新:2022-05-30
論考 井上陽平