· 

アマゾン先住民シャーマンと白人社会を描く『彷徨える河』感想|DVD

©Ciudad Lunar Producciones

2016年に日本で上映されたコロンビアのモノクロ映画です。

監督はシーロ・ゲーラ

 

あらすじ

アマゾン流域の奥深いジャングル。

侵略者によって滅ぼされ た先住民族唯一の生き残りとして、他者と交わることなく孤独に生き ているシャーマンのカラマカテ。

ある日、彼を頼って、重篤な病に侵 されたドイツ人民族誌学者がやってくる。

白人を忌み嫌うカラマカテ は一度は治療を拒否するが、病を治す唯一の手段となる幻の聖なる植 物ヤクルナを求めて、カヌーを漕ぎ出す。

 

数十年後、孤独によって記 憶や感情を失ったカラマカテは、ヤクルナを求めるアメリカ人植物学 者との出会いによって再び旅に出る。

過去と現在、二つの時が交錯す る中で、カラマカテたちは、狂気、幻影、混沌が蔓延するアマゾンの 深部を遡上する。闇の奥にあるものとは...。

 

◎映画では、1909年と1940年の二つの時を行ったり来たりします。

 

◎1909年では、ドイツの文化人類学者がアマゾン流域のジャングルで先住民の生活を研究中に体調を崩してしまい、死にそうになっています。死を避けるために先住民の生き残りでシャーマンをしているカラマカテと出会い、治療のために聖なる植物ヤクルナを探し求めます。若かりし頃のカラマカテは、植物を調合し、薬草を飲むことにって夢に出てくる精霊の声を聞くことができます。その精霊の声をガイドにしてアマゾン川を彷徨いながらヤクルナを探します。

 

◎もう一方の1940年では、アメリカの文化人類学者がドイツの文化人類学者の書記を頼りにヤクルナを探すため、アマゾン川に来ており、カラマカテに出会います。その裏には、戦争に使う兵器の部品探しという暗い動機を持っています…。年老いたカラマカテは、記憶を失い、中身がからっぽになっていて、薬草の作り方も忘れており、精霊の声を聞くことができません。カラマカテは、自分の土地の文化が破壊され、孤独からなのか、記憶喪失の状態になっており、過去の自分の真実を探すために、アメリカの文化人類学者とアマゾン川を彷徨います。

 

◎アマゾン川の先住民の生活のなかに、ゴムなどの資源獲得のため侵略してくる白人社会の様子が想起させられます。例えば、先住民たちが暮らす村の様子、ゴム園で片腕が切り落とされ奴隷化した先住民、白人たちに殺されたため孤児となった子どもたちを保護している教会の宣教師が掟を破った子どもに暴力を振るう場面、先住民を救い出したことで救世主の神として崇めたてられる白人とカルト集団の様子が描かれています。

 

◎一回見ただけでは、全部内容を理解するのが難しいので、DVDで何回も見るのがおすすめです。

 

◎現代人のわれわれが考えるスピリチュアルは、イメージのなかの天使とか言語に根ざした物語のようなものですが、一方で、先住民たちのスピリチュアルは、ジャングルの森を神の恵みとして考えており、動物を精霊として感じて、より強靭な肉体やこころに根ざした思考をしています。

 

◎この映画では、先住民からの視点とか、白人社会の保護性/迫害性のスプリットしている矛盾点や偽善とか、宗教を通して人間が向かう方向などが見て取れます。また、自然を征服して文明を築き上げる西欧人と、自然を恵みとする先住民との間の根本的な違いを感じました。私も西欧人の価値観に飼いならされてしまっているので、自然の恵みや、動物を精霊として感じる心、豊かな身体性などに気づくことができました。われわれは、もしかしたら、ただ生かされているだけで中身がからっぽなのかもしれません。