離人感・現実感喪失症

▶離人感・現実感喪失症とは

 

離人感・現実感喪失症は、自分の身体を切り離して、風景や状況を把握したり、自分が自分の観察者になっているような状態のことです。例えば、嫌なことがあると、身体が凍りつき、めまいとともに、身体から離れていって、自分の真上に出てきます。自分の身体から抜け出た自分は、数メートルから数十メートルの高さから、周りを見渡せることが出来ます。一方、身体が自分のもので無くなると、自分の時間軸や空間軸が分からなくなって、意識が遠のくとか、皮膚感覚が無くなるとか、現実感を喪失していくことがあります。離人症状が慢性化すると、辛くて苦しい場面では、何も感じないようになり、頭の中がぼーっとして、無になっていき、心の底から楽しむことができなくなります。また、逃れられない状況に立つと、別の自分が出てきて、勝手に行動するようなことまで起きます。別の自分は、社交的に振る舞い、明るいをふりをして、積極的に恋をして、誰かを傷つけたりします。本来の自分は、どうしていいか分からず、誰にも話せずにいたりします。離人症は、不安感や抑うつ感に次いで、ありふれた精神症状の一つでありますが、ほとんど研究が行われていません。

 

▶離人感・現実感喪失症の原因

 

生活全般のストレスが原因であることが多く、特に子どもの頃の親子間のこじれや虐待、ネグレクト、DVの目撃、性暴力被害、いじめなどがあります。離人症の人は、子どもの頃から、とても辛くて、苦しい毎日を繰り返しで、支配的な親や兄弟がいる家庭環境で育つか、学校でいじめを受けてきました。虐待やいじめなど他者の攻撃を受けて、過敏に反応する身体を抑制し、最悪な方向にいかないように、頭から身体を切り離してきました。また、支配ー服従の関係のなかで、本音や本当の感情を言えず、我慢に我慢を重ねて、やりたくないことをさせられてきました。やがて、自分のしたくない行動をさせられているうちに、身体が自動的に動くようになるとか、頭を空っぽにすることで何も感じないようにする方法を学んでいきます。ストレスを感じるたびに、頭や身体を空っぽにすることが習慣化していくと、次第に自分のことも相手のことも分からなくなります。そして、鏡や写真を見ても、自分であることが分からないことが起きます。

 

▶離人感・現実感喪失症

 

生活全般がストレスになると、離人症の人は、足元がふわふわして、宙に浮いているように感じています。自分が自分の中にいなくて、後ろから横から自分を眺めていたり、自分の周りに膜(ベール)がかかったように感じたり、自分の中の奥深いところで小さくなっています。頭の働きが鈍くなり、絶えず霧の中にいるように感じています。自分の感覚が鈍くて、自分のことがよく分からなくなり、人と心響き合う関係が作れません。

 

離人症の人は、頭と身体が合致しません。身体を切り離して、頭の中で生活していたり、身体から離れています。身体は長期に渡るストレスと緊張から、慢性的に縮まった状態にあり、首や肩、背中などはガチガチに緊張しています。一方、手足などは脱力していて、力が入りづらかったり、よく分らないものがくっついているように感じたりします。手足で自分の体を支えられないと、全身が鉛のように重くなって、怠くなります。重度の離人症は、常に身体は凍りついているか、崩れ落ちていて、自分の身体感覚が分からず、過去の世界に簡単に引きずり込まれています。頭と身体に一体感がなく、全身が筋肉で繋がっているという感覚が分からないとか、内臓や皮膚の感覚が分からないかもしれません。自分のボディイメージが無くなると、思うように身体が動かなくなります。自分の身体を繋いでいるのは、筋肉ではなく、一本の紐で繋がっているように感じているかもしれません。身体を動かす時は、頭で命令して、紐で繋がっている身体の部位を操り人形のようにして動かします。日常生活において、身体感覚を麻痺させて、酷使し続けると、自分の手足が膨れ上がって、自分のものでは無くなり、手袋やブーツを履いている感覚に陥ります。表情は、白っぽくマネキンのようで、生き生きとした肌の質感がありません。

 

離人や解離を使うメリットは、生活全般のストレスから、身体が疲れていても、何も感じないようにすることができます。また、本当は危険な状況でも、身体の生理的反応を切り離すことで、高いパフォーマンスを出せたりします。さらに、身体の方が勝手に警戒して、闘争・逃走反応に入っても、その時の動悸の激しさや不快な感覚を感じなくて済みます。一方、離人や解離のデメリットは、心と身体が離れることで、身体が空っぽになり、感情が鈍麻し、時間感覚が分からず、思考が混乱します。不快な状況では、原始的な神経が優位になるため、身体は凍りつき、心身の機能を一部停止させて、最小限のエネルギーで活動してたりします。そのため、本人は喋っているつもりなのに、頭の中で考えているだけで、声に出ていないことがあります。また、誰かと喋っているときも自分の表情や声が自分のものではないよう感じます。身体を動かそうとしてもうまく動かせなかったり、集中しようとしても集中できなかったり、気づいたら何時間もぼーっとしていたりします。酷い時は、意識が朦朧として、頭の中の整理がつかなくて、お話ができなかったり、さっきまで何をしていたのか思い出せなくなります。そして、夢の中にいるような気分で、現実感が薄れて、自分がどの軸にいるのかよく分からなくなります。さらに、本当に自分が今を生きている感じがしなくて、過去を生きているような気がします。あとは、恐怖が最高潮になると、自分の中にある感情に圧倒されるか、パニックなるか、機能停止させるか、過去に引きずりこまれます。

 

▶離人症の治し方・カウンセリング

 

離人症の人は、現実感が薄く、今を感じられなくなっているので、身体に働きかけるカウンセリングが有効と言われています。身体に働きかける訓練には、向き不向きがあるとは思いますが、半年から数年に渡り、継続していくことで、様々な症状に対して効果が現れます。不向きな人は、トラウマのメカニズムを理解していないために、身体に焦点を当てることにモチベーションを感じられない人です。また、恐怖に立ち向かうことができない人、イメージを思い浮かべることが苦手な人、身体の感覚を感じられない人、身体が全く反応しない人はなかなか思うようにすすみません。離人症が解消された後は、今まで着ていた鉄の鎧や着ぐるみ、張りぼてが取れるので、実体は戻りますが、不安や緊張が強くなったり、感情に揺さぶられやすくなります。頭(心)と身体を繋げることのデメリットは、怒りや悲しみ、恥ずかしさなどの感情に葛藤したり、体の痛みを感じるようになったりして、生きづらくなることもあります。

 

当相談室では、1分間の呼吸数や心拍数を測り、正常な状態に変えていって、生き生きとした表情や姿勢を作っていきます。子どもの頃から、親に支配されながら、服従を強いられてきた人は、敵に見つからないように息を潜めて生活しています。長年に渡るストレスと緊張が続くと、手足に力が入らなくなり、首や肩、背中、胸辺りが固くなって、気管支の働きは弱く、呼吸の回数は少なくなります。一方、体を切り離して、頭の中で心地よい空想に耽る生活することにより、正常な呼吸数を保つ人もいます。

 

頭と身体が不一致な人は、身体や頭に焦点を当てたアプローチが有効です。まずは、自分の手足に力が入るかとか、温かいかどうかとか、自分の手足のように感じられるかどうかを見ていきます。手足に力が入りにくい場合は、手で物を握って、その手の感覚を見たり、足を地面につけて、足の指の感覚を見たりしていきます。次に、頭の中で、安心できる記憶や望ましいイメージを思い浮かべます。全身に血液が巡り、活動性が上昇するので、その身体の変化を観察します。この身体内部の感覚や感情の変化を認識していって、全身をリラクセーションしていくと、頭と身体が一致していきます。例えば、良いイメージを頭の中に浮かべると、胸やお腹が苦しかったのが、温かい感じに変わります。また、自分の身体の緊張している部分に気づきを深めて、全身の力を抜いていくことを習慣化していきます。さらに、頭の中を幸せにして、身体の声を聞きながら、自由に体を動かすようなことをします。このようなことに時間をかけていくことで、手足の感覚や空っぽだった頭や体、胸やお腹の詰まった感じに変化が出て、内臓の感覚や筋肉の緊張、皮膚のはり、身体の重たさを感じられるようになります。

 

長期に渡るストレスから、全身が硬直して、縮こまっている人の場合は、トラウマ記憶を蘇らせると、身体をさらに収縮します。トラウマという苦しみのなかで身体は固まりますが、そこから固まった部分に意識を集中させます。固まった部分に一瞬でも触れていくことで、人間に備わっている自然治癒力が引き出され、身体が拡張されます。そして、身体全体がリラックスした平衡状態になります。次に、長年に渡り、他者に虐げられることにより、全身が衰弱の方向に向かい、機能を停止しながら、人生を歩んできた人の場合は、トラウマ記憶を蘇らせると、手足が脱力していて、力が入らなくなります。トラウマという苦しみのなかで身体は脱力しますが、そこから脱力した部分に意識を集中させます。脱力した部分に一瞬でも触れていくことで、人間に備わっている自然治癒力が引き出され、身体が収縮します。そして、筋肉を感じられるようになり、血液が巡り始めて、全身に力がみなぎります。このように、身体が本来の姿を取り戻すことにより、心が住むことのできる身体を手にします。最初のうちは、身体に住むということが、この世界に縛りつけられたように感じて、恐怖でオドオドしたり、不安や焦りから、逃げ出したくなるかもしれません。しかし、トラウマに焦点づけたボディセラピーを引き続き行うことで、身体と仲良くなることが可能になり、頭と身体が一致する時間を増やしていきます。身体に安心感が感じられるようになると、呼吸がしやすくなり、本来の表情が戻ってきて、姿勢も良くなります。睡眠の質も良くなり、頭のほうもはっきりして、数日前の記憶の健忘なども思い出されていきます。

 

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