病的解離とその悪魔性

▶病的解離とその悪魔性

 

ここでは、小さい時から解離(自己の感覚が麻痺して分離して自分が自分でなくなっていく病理)という防衛を使うことにより、その人に宿る複数の人格間同士の関係に問題が生じて、ある人格が悪魔に成り果て、トラウマを再演させる現象について書いています。レイプなど犯罪被害者や虐待を受けた子どもは、何度も似たような被害に遭い、犯罪にまで巻き込まれてしまうことは知られていますが、高い度合いの解離によって、本人が自覚できないか、もしくは自分の行動を制御できない間に、そのような特定の行動パターン起こします。被虐待児や性暴力被害者は、重いトラウマを引きずっていて、すぐに固まって動けなくなったり、意識が朦朧としたり、頭の中の世界に逃避したりして、日常生活をどうにかやり過ごしてきました。物心ついた頃から、不穏な場面では、違う自分を作って、自分の中の都合の悪いものを捨ててきました。その痛みを押し付ける生活パターンが、1年、2年と経つ毎に、別の自分が段々と成長していって、別人格として表立ってきます。

 

このように日常生活を過ごす主人格は、自分の人生を生きてきたつもりでいましたが、実際は、痛みや不都合なことを押し付けていく人生になります。最初のうちは、死に瀕するような被害に遭っても、身代わりになる部分が、強い痛みや感情を代わりに引き受けてくれることで、主人格の命を生き延びさせてきました。主人格には、被害の記憶や感情が抜け落ちており、痛みや怒りは自分のもので無くなります。これは、自分の痛みに目を向けていると、身体がきつくなって、生活が回らなくなるので、日常生活をあたかも正常かのように過ごすには、必要なことになります。このように自分の痛みや感情を切り離すという行為は、逃避のように見えますが、生存を高める戦略となり、そうすることで生活全般の困難をやり過ごしてきました。しかし、死に瀕するような被害に遭い、身代わりになる犠牲者の部分は、おぞましい状況でしか生活できないために、おぞましいことしか考えなくなり、痛みや怒りが溜まっていきます。

 

主人格が被害に遭って苦しんでいるときは、身代わりになる犠牲者との部分との間で、特に問題はおきません。しかし、主人格が痛みの経験が遠のいていき、何もなかったかのように生活を始めていくと、痛みや不都合なことを押し付けられた犠牲者の部分との間に亀裂が大きくなります。そして、犠牲者の部分は、不都合なことから逃げて、痛みを忘れて、幸せを望む主人格のことが嫌いになり、自分と同じ目に遭わせてやりたいと思うようになります。そして、いつしか悪魔に成り果てた存在になり、自分が被害を受けたときの痛みと同じような痛みを与えたいと願うようになります。

 

日常を過ごす主人格は、性暴力などの被害者ですが、悪魔に幾十もの罪を背負わされていて、自分の中の自分に憎まれます。 悪魔に成り果てた存在は、自分の中に棲みついて、暴れまくります。主人格は、生きようとすることに希望を見い出せずに、疲れ切って、もう死にたくなりますが、悪魔は、「簡単には死なせはしない、死にたいというほどの生き地獄のなかでもがき苦しめ」と呪います。

 

また、悪魔は、主人格が無防備になっているときや、幸せになりそうなときに現れます。この悪魔は、生きようとする希望を挫く存在で、「幸せを望むことは愚かなこと」と罵ります。そして、今まで受けた痛みを倍返しにする計画を立て、トラウマを再演します。心の中に悪魔がいる人は、その存在のせいで、その場の空気を悪くし、信用を失います。希望はすぐ絶望に変わり、どん底に突き落とされます。人間関係を築くことが難しく、いつもひとりぼっちで、生きることに限界を感じて、死ぬことを計画して、慢性自殺志向になります。

 

そのような症状を抱える患者は、解離性同一性障害や境界性人格障害などの複雑なトラウマを抱えている人や、解離症状を示す統合失調症の人であることが多いです。悪魔は、主人格に「死ね、殺す」などの悪口を吐き、周りの人の声や今喋っている人の声を真似て、主人格を惑わします。また、主人格の正気を失わせるために、声を真似て妨害工作したり、人間関係を勝手にブロックしたり、インターネットでなりすましをして、大事な人を傷つけます。さらに、性暴力被害者の場合は、援助交際やレイプのお膳立て、性風俗で働く、暴力的な人間に近づくなど様々な混乱を引き起こします。

 

▶閉鎖病棟内の患者に取り憑く悪魔

 

心の中に悪魔がいる人は、自殺や他害の恐れから、社会に出ることが難しくなります。外の世界の人々と生活していくことが困難で、家族からも見捨てられた人は、閉鎖病棟で生活するようになります。閉鎖病棟というのは、医療の専門家によって徹底的に管理されており、逃げ出すことができない場所であり、複雑なトラウマがある人の場合は、慢性的な不動状態に陥る可能性があります。身体の中のトラウマのメカニズムは自分の意志に反して発動するので、病棟内に閉じ込められた人は、逃走失敗を繰り返して、身体が凍りつき、動けなくなります。そして、慢性的な不動状態から、受動的に取らされた姿勢を保ち続け、自分の意志では変えれなくなります。彼らは、病棟という地獄の世界にいて、自分の中の悪魔たちに裏切者扱いされて、冷たい世界で凍りつきます。例えば、食事を取るのに手を動かそうとしても、別の大きな悪魔的な存在が抵抗して、食事を口に運ぼうとすることを拒みます。

 

解離性同一性障害や境界性人格障害の人、もしくは解離症を持つ統合失調症の人にとって、閉鎖病棟というのは大きな洞穴の中に下りて行くようなものです。そして、洞穴の中に閉じ込められて、徹底的に管理されます。地獄の最下層は、凍りついた世界で、周りには鎖に繋がれた怪物がいます。そこは、凍りついて真っ暗な世界で、失われた心が永遠に閉じ込められます。そして、罪人は、怪物みたいなものに囲まれ、終わりのない拷問を受けます。自分の中の悪魔が、幻聴として現れるようになり、「目をくり抜くぞ、燃やしてやる、指を切り落とすぞ」と脅します。心の中に悪魔がいる人は、悲鳴をあげて、絶叫して、すすり泣きます。悪魔は、自分自身を監禁して、引き裂きの刑、八つ裂きの刑、火炙りの刑などさらなる生き地獄を課していきます。

 

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