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トラウマ治療の手順


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 第1節.

トラウマ治療では


当相談室では、カウンセリングの時間を90分取っています。前半は対話を通したカウンセリングを行い、後半は瞑想を通したカウンセリングを行います。瞑想は、身体感覚に焦点を当てるため、身体感覚に向き合うことに価値が感じられない人には、瞑想にかける時間を短くして、対話を重視します。瞑想の技法としては、ピーター・ラヴィーンのソマティックエクスペリエンスの理論をベースにして、ユング派のドナルド・カルシェッドの瞑想やヴァン・デア・コークのトラウマへのマインドフルネスや、呼吸法、イメージ療法、音楽療法を使います。対話は、信頼関係を構築し、安心して話せることを重視しています。そして、自分の思いつくまま自由に話して、怒りや悲しみの感情を吐いたり、幼少期の頃を思い出したりします。また、自分のことを分析して、自己理解を深めていき、状況を適切に認識する能力を育んで、問題解決能力を高めていきます。また、精神分析的自由連想法を行いながら、精神分析やユング派の理論、トラウマ理論、神経科学、進化生物学などから見ていきます。

 

トラウマ治療の前半は、自分の本音や本当の感情を話して、気分をすっきりさせることに時間を使います。また、生活全般を困難にしている事象について、話し合っていきます。苦手な状況を避けることなく、適切に処理できるレジリエンス力を鍛えていきます。ただし、トラウマ治療というのは、話し合って、頭で理解するだけでは物足りない場合がほとんどだと思います。治療の後半は、身体の感覚や感情に焦点を当て、体験過程を重視します。まずは、脳(意識)を使って、無意識下で持続している身体の過緊張や凍りつき、麻痺症状、神経の痛み、身体の中に閉じ込めてある怒りや恐怖、逃走反応を見ていくことになります。外界の気配や人間関係に恐怖しており、身体に不快な感覚や感情が強い場合は、原始的な神経の餌食になり、身体と心が異常事態に陥ります。そのため、セラピストの力強い言葉を支えにしながら、自分の痛みや不快感に向き合い、ジワジワとほぐしていき、身体の痛みや不快感と恐怖を分離していきます。そして、脳に備わっている人間本来の自然に回復していく力を使いながら、身体を丹念に触れていきます。治療では、無意識下で持続している体の凍りつきを解きほぐしますが、当事者は全く気づけなかったりするので、トラウマへの知識や治療へのモチベーションが必要です。また、回復する過程において、凍りつかない肉体や過覚醒に乗っ取られないように自分自身を変えていくため、一筋縄ではいかなくなり、根気強さや忍耐力が必要です。自分の心身の状態に気づいて、自己調整できるようにスキルを磨き、日常生活に応用できれば、良好な治療成果が出るでしょう。

 

一方、性的虐待などの到底耐えられないようなトラウマを持っている人は、身体に焦点を当てた治療を行うと、フラッシュバックして、うまくいかない場合がよくあります。性的虐待を受けた人の場合は、自分の身体を取り戻すのはとても至難なことで、体自体は人間を嫌っているので、その身体を取り戻すと、今の人間関係が壊れる可能性があります。そのため、身体から麻痺させて、何も感じなくすることで、できるだけトラウマの影響を小さくして、焦りや不安、緊張、不快、怒り、嫌悪感などが分からなくなり、あたかも正常かのように過ごすことが可能になります。つまり、重度の解離症状を持つ人は、トラウマ由来の不快な感覚や感情を切り離すことで生活全般をこなしてきましたが、頭(心)と身体が合致すると、焦りや怒りなどの不快な情報に圧倒させて、逃げ出したくなったり、痛みや怠さから動けなくなったり、小さなことでも怒ってしまったりと日常生活に支障をきたすことがあります。そのため、身体に焦点を当てた治療が難しいようでしたら、自分の思いや感情を発散するカタルシス療法をまずは行っていきます。

 

トラウマ治療の中心となる部分は、自発的に外傷体験(現実的または想像の産物でもかまわない)を身体に想起させ、その時の動きや姿勢を取って、その時の身体感覚になろうと努力します。そして、恐怖に恐れおののき、身震いが起きると、身体は動き始めて、慢性的に凍りついた状態が緩み始めます。この治療を行うまでは、日常生活の様々な刺激に圧倒されて、身体が成す術もなく反応するだけでしたが、トラウマのボディセラピーでは、安全な場所で死の恐怖と向き合って、最適な方法で抜け出し、自分の身体と仲良くなります。目標としては、凍りつきにくい身体や交感神経系に乗っ取られない状態を目指し、安心感を得て、適度な緊張とリラックスの間を行き来できるようにします。その結果、脳と身体を繋ぐ神経の働きを変えることが可能になり、交感神経と背側迷走神経の間を行き来している人の神経パターンを変えて、腹側迷走神経と交感神経の間を行き来できるようにします。(腹側迷走神経は、ほ乳類など進化した動物にみられる神経。背側迷走神経は、最も原始的な神経。)また、身体の中心の塊、肩や首、胸、背中の固まっている部分、手足の脱力している部分が解消されて、体のバランスが取れるようになり、全身に安堵感が戻ると、脳の体を繋ぐ神経パターンが変化します。

 

カウンセリングの進め方は、一人一人の心身の状態や置かれている環境により、様々だと思います。ここでは、短期間でトラウマに焦点を当てたい人のために、だいたいの目安を書いておきます。最短では、カウンセリング2回目で不動状態に入って、身体内部から変化を起こさせることも可能です。トラウマによる解離や離人、過覚醒、失感情症、パニック、身体症状などの方に効果が期待できます。ただし、複雑性PTSDや発達障害の傾向があり、慢性的に不動状態にある人は、イメージを入れても身体の反応に乏しく、音や器具を使って身体に振動を伝えていくところから始めるため、治療に時間がかかるでしょう。トラウマ治療は、ある程度環境が整っていて、モチベーションがあり、恐怖に立ち向かう精神力があれば、長くやり抜くことで確実に良くなります。

 第2節.

初回のカウンセリングは、


相談に至った経緯や主訴、家族関係等をご自由にお話ください。少し瞑想を行って、身体の内臓感覚、皮膚感覚、筋肉のはり、ボディイメージに注意を向けることを学びます。複雑なトラウマがある人ほど、身体感覚が麻痺しているので、脳を使って、自分の身体の感覚や動きを見ていく必要があります。トラウマ治療では、闘争・逃走反応を緩めたり、無意識下の身体の凍りつきや虚脱から抜け出して、レジリエンスを強めていくことが可能です。ただし、治療中は、今まで心がトリックをかけて、分からないようにしていた部分を見ていくことになります。その結果、離人感や非現実感が取れて、解離症状は弱くなりますが、無力感に満ちている場合は、慢性疲労や慢性疼痛、怠さ、重さ、鬱状態に気づきます。また、過覚醒の場合は、警戒や緊張、恐怖、不快、苛立ち、焦燥感などに気づき、身体が過敏になります。そのため、生活環境が不安定だと、抑うつ状態や、身体の痛みや怠さ、イライラ、緊張、恐怖が強まり、生活全般をこなすのがしんどくなるかもしれません。カウンセリング中は、居心地よくて、身体が温かく、軽くなり、上昇の階段をあがりますが、日常生活に戻ると下り坂になるため、カウンセリングを受けることで状態が悪くなったと勘違いされることもあります。注意点としては、安心で安全な環境が十分整っていない場合は、トラウマに焦点を当てるだけでなく、環境調整の方を重視しなければなりません。特に、自分に危害を加える人物から逃れられない状況にいる人は、いくら効果的な治療をしても、一進一退を繰り返して、治療を中断してしまうことになるでしょう。

 第3節.

2回目から10回目は、


対話の方は、ご自由にお話してください。セラピストは、あなたの成育歴や家族関係、現在の困難な状況を理解していくことに時間を使います。また、トラウマへの理解を深めながら、外傷記憶を辿り、不動状態に至った経緯やそこから抜け出す最適な方法を考えていきます。瞑想の方は、地獄に入る準備をします。まずは、身体の部位を一つ一つ観察して、自分の身体を知り、意識を向けたり、揉み解したり、動かすことで身体の状態が変わることを学びます。また、呼吸法や音楽療法、身体に振動を伝える器具を使い、身体の麻痺を解いて、首や顔、肩、胸などの凍りついている部分をケアします。そのときに、頭の中で安心でき記憶や望ましいイメージを思い浮かべて、身体の安全な場所を発掘していきます。さらに、身体の筋肉が伸び切って、筋肉に弛緩している人の場合は、手足に力を入れる、空気椅子、スクワット、腕立て伏せで筋肉を収縮させてから行います。基本的には、身体の緊張している部分に焦点を当てていき、収縮させてから拡張させる漸進的筋弛緩法を行ったり、解離せずに不動状態に入り、その状態を分析して行動したり、体験しつくすことを行います。

 

トラウマを負った身体を見ていく、だいたいの手順は、①呼吸法②手足の力の入り加減③筋肉や皮膚感覚④気管支や消化器、内臓感覚⑤胴体と頭の繋がり⑥脳や頭の感覚⑦音や道具を用いて振動を与える⑧身体の麻痺を解く⑨肩や顎のエクササイズ⑩プラスイメージで痛みや凝りを解す⑪全身が良い方向に⑫次に最悪なイメージから不動状態に入る⑪不動状態に意識を向けて抜け出す⑫体の安心感が持続されて脳と身体の神経ネットワークが改善される。

 第4節.

10回目からは、


対話の方は、ご自由にお話しください。セラピストは、あなたと外傷体験の共有をしていきます。過去の悲しみや怒りをの感情を表現したり、生きづらくしている人間関係のパターンや思考のパターン、強迫観念など見ていくことになります。瞑想の方は、身体や頭に意識に向けながら、身体感覚の変化を見ていって、自分が丸ごと感じられるような最高の状態を作ります。身体が固まり閉ざされていて、自分の身体の感覚が分からない人には、自分の身体に振動を伝えて、動かしていき、さらに優しくタッピングして、その部分に意識を向け、凍りついた部分をケアします。後半は、最悪な事態(現実にあるから現実にないことでも)を思い起こして体を固めるか、死のギリギリの場面を身体で再現させて、地獄に入っていきます。自らが意識的に、望みを捨てて、空間が崩壊したような絶望状態に入り、身体を動けなくさせます。そして、十分に身体感覚を伴わせながら、絶望の不動状態を味わっていくと、再生のプロセスが始まり、震えや熱、不随意運動が起きて、新しい体験になり、未解決なトラウマが変化します。身体の中にトラウマを閉じ込めている人は、闘争・逃走・凍りつきの世界にいて、身体が硬直し、収縮の働きの方が強くなっているか、慢性的な虚脱や不動状態にいて、手足が脱力し、身体が開き切っているために、怠く重く、動かすことさえ大変な人がいます。

 第5節.

凍りつくトラウマの場合


凍りつくトラウマの場合は、さらに身体を収縮させることで、固まります。そして、そこから抜け出すために最適な方法で身体を動かすか、不動状態の感覚に意識を集中させることで、全身が拡張されます。脱力トラウマの場合は、体を収縮させていくと、手足に力が入らなくなるか、鉛のように重たくなり、脱力していきます。そして、脱力した身体に意識を集中させたり、身体の筋肉に負荷をかけて動かすことで、全身に力がみなぎってきます。こうしたセッションを繰り返すことで、自分の心と身体が一致し、身体の中で生活できるようになります。そして、収縮と拡張という本来のリズムが戻ると、胸の中心の塊が取れて、全身が軽くなり、呼吸がしやすくなります。身体の緊張が取れて、深い呼吸ができるようになると、安心して眠れるようになり、健康になっていきます。そして、人とコミュニケーションをするときに緊張しなくなったり、人恋しくになったり、思考がまとまるようになったり、様々な身体症状が少なくなって、生活がしやすくなります。

 第6節.

過覚醒の対処


離人感が解消されたあとの過覚醒への対処の場合について述べます。子どもの頃から、慢性的にトラウマを負っている人は、心と身体が分離して、身体感覚の麻痺が進んでいることが多いです。トラウマの中核部分は、身体は記憶していますが、心はしらないふりをしています。トラウマがある人は、身体の中に過剰なエネルギーを閉じ込めているため、ちょっとしたことでソワソワ、モヤモヤ、ムズムズ、ウズウズ、痒みが生じて、じっとしていることが難しくなります。普段から落ち着きがなく、何者かに追われているように感じたり、注意力や集中力が無かったり、苛立ちが強かったりして、日常生活や人間関係がスムーズにいきません。また、外の刺激に弱く、すぐに不安が焦りを感じて、体の緊張が強まると、物事を適切に処理することが難しくなります。そのため、解離や離人を使いながら、強い刺激と身体の不快感を切り離して、日常生活をあたかも正常かのように見せて過ごしています。治療していくと、解離や離人は解消されていくため、身体の感覚は戻りますが、自分の感覚が分かるようになると、恐怖や怒り、焦燥感に向き合うのがしんどくなり、治療が停滞するかもしれません。また、身体の感覚が戻っても、闘争・逃走のトラウマが残っているので、怒りや恐怖、悲しみ、恥辱、焦りを感じてしんどくなるかもしれません。そして、他者を警戒し、小さなことでも過敏に反応するようになると、無力な身体は交感神経系に乗っ取られて、過覚醒からの怒りや反撃したいという力が湧いて、日常生活に支障をきたす場合があります。

 

過覚醒への対処法としては、嫌な刺激を受け取ると、呼吸は浅く早くなり、身体が凍りつくまでの間に、闘争・逃走反応に支配され、動悸や焦燥感で、じっとしていられなくなります。その後も、同じ姿勢を保ち、身体の不快な部位に注目していくと、その部分から固まります。凍りついた後(固まった後)は、その固まった部分に意識を向けていくと、居心地が悪くなり、嫌なイメージや考えが浮かんできて、心と身体を一致させるのが難しくなって、注意力や集中力が途切れるかもしれません。しかし、それでも凍りついた身体の感覚を体験しつくしていくと、震えや揺れ、痙攣、熱、寒気、鳥肌が起きて、身体の中の過剰なエネルギーが放出されて、今までにない状態が作れます。全身に安堵感が戻ると、身体の自然な重たさや笑い、喜び、悲しみ、眠気が出てきます。また、日常生活でも、イライラ、モヤモヤ、ムズムズなどの身体の硬直反応が出てきて、身体を動かしたくなった時は、あえて身体を動かさずに、凍りつく過程を追体験する瞑想を行っても良いですが、セラピストのサポートが無いなかでやり遂げるのは難しいかもしれません。身体にムズムズやウズウズが出てきたときは、おもいっきり足を動かしたり、肩を回したりして、手をブラブラさせたりして、全身の血液の循環を良くしましょう。また、身体の中に不快な感覚が出たときは、その感覚の変化を少し見ていきながら、良いイメージをして体に集中するか、全身の椅子に預けて力を抜くか、ゆっくり息を吐いて呼吸を安定させるか、楽しく全身を動かしていきましょう。さらに、不快なときこそ、自分の最も苦手な人のことを思い起こして、頭の中のイメージや心の声で打ち倒し、完全な勝利を得て、身体に安堵感をもたらす方法が良いかもしれません。トラウマのある人は、イライラ、モヤモヤ、ムズムズ、興奮などの難しい身体の感覚に対して、逃げているばかりでは、ネガティブなループにはまり込みます。トラウマを扱うセラピストをサポートにつけて、運動、瞑想、ヨガ、ストレッチを行い、自分の身体の探求していく姿勢を持てれば良くなります。特に、筋肉の伸び縮みを自分で調整できるようにしたり、不快な感覚とも仲良くなれることが目標になります。

 第7節.

回復していくにつれて


トラウマの症状が無くなっていくことにより、セラピストとの間に愛着関係が深まります。外の世界では、社会交流システムが働き、活動性も上がっていきます。対話の方は、神経システムが変わることで、こころのスペースが広がっていくので、思考や問題解決、対人関係などに焦点を当てるような精神分析的な自由連想法を行い、不確かな人生や動かしがたい他者との関係性を見ていきます。そして、不確かなことや予測できないことだらけの人生のなかで、適切にその状況を把握し、自分の人生をそれなりに対処できるように支援していきます。その結果、現実の世界で新しい経験が獲得され、新しい自分に生まれ変わります。瞑想の方は、脳を使って身体の動きや感覚に注意を向けたり、不動状態という地獄の世界に入ったり、健全な攻撃性を使って勝利を体感するイメージワークをしたり、現実や空想の世界に入り込んで様々な感覚に馴染んでいきます。自分の身体感覚や感情と仲良くなることにより、リラックス効果が高まり、自分が自分であるという感覚を確かなものにします。

 

トラウマというのは、十字架に磔にされて、処刑されるような状態のことです。人は恐怖に動けなくなると、頭の中は大変だと慌てますが、取り返しのつかない恐怖が襲ってくると、息が吸えなくなり、目の前が真っ白になって、意識を失い、身体が崩れ落ちていって、絶望や無力な状態になります。この崩壊体験を防ぐために、人は機能停止させますが、皮膚や内臓感覚が無くなり、意識は遠のいて、全身が溶けていきます。トラウマ治療では、段階を追って恐怖に向き合い、不動状態に意識的に入り、自分の肉体感覚を体験しつくします。人は不動状態に意識を集中させて、その感覚に触れていくことで、トラウマの世界に閉じ込められていた身体が震えたり、熱くなります。そして、熱いピリピリとした波の中で、身体が拡がっていき、トラウマ状態から解放されます。解放されると、体内が安心感を得て、神経システムが平衡状態になり、収縮と拡張の本来のリズムを取り戻します。身体を内部から変えることにより、胸の固さが取れて、深い呼吸ができるようになります。そして、背筋が伸びていき、姿勢も良くなって、手足に力がみなぎってきます。不動状態に入る瞑想を繰り返し、正常な身体で日常生活が過ごせるようになると、トラウマティックな脳にも変化が見られるようになり、生活全般の困難が解消されていきます。例えば、対人緊張が緩和されて、孤立や疎外された状態から社会交流システムが働き始めます。また、体調不良や身体症状、不眠症が軽減され、フラッシュバックしそうになっても、過去に引きずりこまれなくなり、嫌なことは考えたくても考え続けられなくなります。以上のように、身体や神経の状態を把握し、自分で自己調整していくことが日常的に行えるようにしていきます。そして、自分の肉体や精神を高めて、トラウマを反復していた人生から抜け出ることが可能になります。最終的には、追い詰められても、今まで生き延びてきた自分を褒めてあげて、努力してきた自分を振り返って、自分は大丈夫とか、これから先はなんとかなるという自信になります。根拠のない自信が自己肯定になり、自分に価値があるように思えるようになって、この世界を堂々と生きれるようになります。

 第8節.

トラウマのメカニズムから抜け出すには


トラウマのメカニズムから抜け出す方法を、包括的に説明してくれているのが、ヴァン・デア・コルクの「身体はトラウマを記憶する」に書かれていますが、その一部を載せます。

 

神経科学者のジョセフ・ルドゥーとその共同研究者たちは、情動脳に意識的にアクセスできる唯一の方法は、自己認識を通してであることを示しました。つまり、トラウマによって、情動脳と理性脳のバランスが崩れている人は、自分の内部で何が起こっているかに気づいて、自分が感じているものを感じることを可能にする脳領域である内側前頭前皮質を活性化する必要があります。そして、私たちの感じ方を変えられる唯一の補法は、内部の経験を自覚して、自分の内部で起こっている出来事と仲良くなれるようにすることです。トラウマ治療で有効な方法としては、マインドフルネス、ソマティックエクスペリエンス、アクセプタンス・コミットアンドセラピー、呼吸法、瞑想、ヨーガ、イメージ療法、芸術表現療法、ニューロフィードバックなどになります。

 

トラウマ治療では、まず身体の内部の感覚に立ち戻り、安全・安心感を得て、過去に引きずられることなく、過去の外傷体験に注意を向けられて、そのとき、どのように感じて、どのように振る舞ったのかを知っても平気でいられるようにすることです。トラウマを負った人は、自分の感覚に耐え、内部の経験と友達になり、新たな行動パターンを培う能力が自分にあることを学ぶ必要があります。自分が何を感じているのかに気づくだけで、情動調節がしやすくなり、自分の内で起こっていること出来事を無視しようとするのをやめる手助けになります。内側のプロセスを観察できるようになると、脳の論理的な部分と情緒的な部分を繋げる回路が活性化します。これは、人が意識的に脳の知覚システムを再構成することができる、現在知られている唯一の回路であります。

 

参考文献

ベッセル・ヴァン・デア・コーク:(柴田裕之 訳、杉山登志郎 訳)『身体はトラウマを記憶する』紀伊国屋 2016年

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平

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