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グルグル・反芻思考


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 第1節.

トラウマと解離症状


体の中にトラウマを抱えながら、脅威の対象がそばにいて、生命の危機を感じるような環境にいる人は、安心感が無く、息を潜めて、恐怖や怒り、焦り、怯え、悲しみを感じて、疲労や痛み、麻痺になります。生きるか死ぬかのモードで生活し、タイトな世界を生きている人は、生き残るために周囲の人をよく観察するようになり、過剰に警戒しています。人の気配を生々しく感じると、焦燥感が出て、頭の中がせわしなく動き、ちょっとした変化に気づき、しんどくなるとか、驚愕反応が起きます。痛みに体が凍りつくか、捻じれた状態が続くと、身体感覚が麻痺して、頭の中だけで思考して生活するようになります。そのさきには、現実の人間関係や社会的接触を避けて、一人で考え事をするか、妄想や空想の世界に陶酔します。

 

体が固まり凍りついて、苦痛から解離させた頭の中の生活は最初は良いですが、長年酷い環境にいることで、肉体へのダメージは蓄積されて、体の節々が痛み始めます。そして、性質がネガティブな色合いに変わり、過去の人間関係に囚われて、被害妄想や酷い強迫観念になります。体から離れて頭の中で生活している人は、周りを警戒して、頭の中で過剰な情報処理を行うタイプか、一日中、妄想(空想)に耽るタイプがいて、その両方を行き来する人もいます。解離症状が重篤になれば、心(頭)と体が離れて、体が自分のものでは無くなります。そして、体の感覚が分からなくなり、時間の流れもゆっくりになり、感情が鈍麻して、思考がグルグル(反芻思考)回って、混乱します。

 第2節.

解離症状の思考混乱


解離症状が悪化すると、体の感覚が麻痺して、自分が自分でない状態になり、周りの環境に合わせようとして、ああしなければいけない、こうしなけれないけないと、頭の中がごちゃごちゃと混乱して、自分の考えがまとまらない、脳内での会話が止まらない、頭の中で声が聞こえる、考えや言葉が流れてくるようになります。頭が混乱していくと、何が普通なのか分からない、これが正しい判断かも分からなくなり、自分の人生を自分で判断できなくなって、周りに流されていく人生になります。

 

解離症状がある人は、頭の中に考えが勝手に浮かんできて言葉が流れたり、頭の中で自分の対話をします。また、意識的に架空の自分を作り上げて、話かける人もいます。さらに、解離した人格部分がいる人は、物心ついたときから脳内会話が当たり前になる人もいます。頭の中から自分とは別の人の声が聞こえて、もう一人の自分と話して、人によっては、分身同士の会話が聞ける人もいます。この声の主は、自分を肯定してくれたり、自分に厳しく教育してきたり、自分を否定する声だったりします。このような解離症の人は、周りの皆も脳内会話していると最初は思っています。また、解離がある人たちは、グルグル思考(反芻思考)から、自分の世界に深く入り込む傾向があります。

 第3節.

凍りつき(不動状態)と思考


体が凍りついている人は、人の気配や音、匂い、光、振動などに過敏になり、神経が外の世界に向き、危険を察知しようとして、過剰な情報処理努力を行います。緊張が強まると、頭の中の思考は高速に回転するため、思考に支配されていき、今の状況を感じることが難しくなります。また、危険を察知しながらも、逃げ場が無い人は、慢性的な不動状態に陥って、思考が分かれていくようになり、自分に何かを問いかけてくる声が聞こえるような人もいます。自動的に浮かんでくる思考は、例えば、どうやったら楽になるかという考えが浮かび、ああすればこうなるとか、これをどうにかしないととか、こうすればどうなっていくかと仮定の想像がグルグルします。また、自分が他者に与える影響が気になり、先の不安が浮かんだり、過去の嫌な場面が思い出されたりして、酷くなると、一日中妄想や思考が止まらなくなります。さらに、臨戦態勢の非常事態にあるときは、頭で考えて、分析して、言葉を使って問題解決を試みますが、その問題が解決ができないと、自動思考がグルグル回って、考えがまとまらなくなり、堂々巡りをします。

 

逃げ場がなく、問題解決できないと、自分の体が冷たく固まっていきます。人間本来のリズムが失われて、体の中のエネルギーが滞ると、ボロボロになり、動くことも大変で、フラフラしてきます。慢性的に体が動かなくなり、頭の中で嫌な記憶がフラッシュバックして、恐怖や無力感に苛まれていくと、慢性的なトラウマの世界に閉じ込められます。動くことさえフラフラで大変になると、まとも日常生活を送れなくなります。

 第4節.

トラウマ的思考の利点


トラウマを負っている人は、苦しい経験をしているからこそ、自分の経験に根差して、物事を深く考えていくことができます。例えば、辛いを思いをして、苦しみが分かっていて、そこからひょっとしたら、悲しみや生きること、死ぬこと、ジェンダー、社会、宗教的なことを考えやすい立場にあります。幸せに生きている人を批判するわけではないですが、普通の人は、お金があって、お化粧して、食事があればそれでいいと思っているので、どうやったらお金を稼げるか、どうやったら良いものが手に入るかなどに注意が向き、普通は生きる意味を考えません。

 

トラウマを負った人のなかには、その社会の中で違うように物事を見ていくようになり、社会の歪みやひづみを見ていくようになります。人により、良いふうになるか、悪いふうになるかは分かりませんが、考えるようになります。ただし、考えることはいいことですが、それが生産的じゃなく、自分を高めるためでもなく、自分がダメになって引きずり込まれるような考えをしがちです。そして、考えすぎてしまって、ノイローゼになります。

 

トラウマがある人は、思考が堂々巡りになりやすいですが、自分の存在意義や生きることの辛さ、何で人間は生きているかなど突き詰めて考えていくので、自分を深く掘り下げていくことが得意です。思考が自責や罪悪感でグルグルすると鬱になり、悲観主義で破局的だと新興宗教ぽくなりますが、世間一般の人は、資本主義経済に乗っ取って、何も考えずに、私利私欲を満たすだけ満たして、心地良さや消費するだけなので、それよりかはしっかり物事を考えている人が多いです。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平

 

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解離という病理

解離というのは心理的な問題というより、危険が差し迫った時に、生物学的な凍りつき/死んだふりのメカニズムで起きます。不快な状況で、逃走失敗に終わると、体が固まり凍りついて、感覚が麻痺していきます。

自己感覚の喪失

解離症状が重くなると、心が体から離れ、自己感覚が喪失して、身体や情緒、時間の捉え方や思考に影響が出ます。そして、自分が自分で無くなり、感情が鈍麻し、時間感覚が分からなく、心の時間が停止します。

内なる魂の呼び声

内なる魂の呼び声とは、発達早期の外傷体験によって、心と身体が統合できなくなっている人の心の防衛が人格化し、無数に解体・分裂した霊性のひとかけらが、永く厚い沈黙の中から問うた言葉のことです。