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心理療法とは


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 第1節.

心身へのアプローチ


心理療法とは、心を治療の対象としており、対話することが治療の鍵になります。心理療法には、様々な種類があります。心理療法を一覧にすると、精神分析、認知行動療法、来談者中心療法、集団精神療法、家族療法、芸術療法、箱庭療法、遊戯療法、ナラティブセラピー、マインドフルネス、臨床動作法など、治療法の数だけ理論や心のモデルが存在します。しかし、それぞれの治療法や理論の多くは不完全であり、心理療法の効果も一長一短であります。当カウンセリングルームでは、精神分析の人間理解に基づいた心理支援や、精神分析が犠牲にしてきた側面(外傷的出来事を生み出している社会、解離、身体性、スピリチュアリティ等)も強調し、人間や社会全体の豊かさと過酷さを見ていくことになります。

 

子どもの頃から、トラウマを負っている人は、脳の自己知覚の領域の活性化が乏しい状況にあります。彼らは、痛みや恐怖を切り離していくうちに、身体を感じる力が弱まり、何も感じないようになっていきました。大人になった今では、何も感じず、無感情、無感覚になっていることがあります。このような方に、通常の対話を通した心理療法を行えば、全部が上滑りになってしまって、心に響かず、身体にも全く反応が起きません。しかし、慢性化したトラウマを理解し、身体に働きかけるアプローチを取ることで、心も身体もものすごく反応が起きるようになり、涙が溢れて、再び温もりが戻ってきます。

 第2節.

心について


心とは、目に見えないものです。心とは何かを問うと、実体がなく、捉えどころがありません。人間の心は、本来、形のないものですが、様々な神経ネットワークによって成立しており、身体的な周囲との関りによって、心は育まれていきます。また、心とは、本能、情動、感覚を中心とした「身体性」と、理性、思考、言語を中心とした「精神性」の間の第三領域にあると考えられます。人の心の中は、人が現実の時間・空間を知覚して生きているように、心の中にも時間・空間が存在し、現実に似た世界があります。つまり、心の中で生きるというのは、物思いにふける、何かを感じる、イメージを膨らませる、考え込む、アイデアが思いつく、夢を見る、気持ちに気づくなどの時間といえます。精神分析は、そのような心の精神内界で起きていることを構造化し、人間の性質を探究する学問であり、もちろん治療にも役立ちます。

 第3節.

精神分析的過程


精神分析的療法では、セラピストは、あなたとの関係について考え、聴き入り、気持ちに共感し、痛みを受け入れ、共同作業を行います。当然のことですが、あなたのプライバシーに十分配慮いたします。そして、あなたが良い方向に変わろうとすることを手助けします。しかし、過去のつらいことを話すことはとてもエネルギーを必要とするものです。一般的にセラピストは、クライエントが自分の悩みを考え、自分自身のことを見つめるお手伝いをしますが、早期トラウマに苦しんでいる方の場合、こころに余裕がないため、自分自身の問題として考えていくにはあまりにも酷な場合があります。当カウンセリングルームの最大の特長は、トラウマ的出来事、外傷的事態を生み出している実態(社会)を重視し、これらに対して、こころや身体がどのように分裂し、内的に応じていくのかを細かく見ていくことです。

 第4節.

こころの真実とは


精神分析には、こころの真実を探求するという一面があります。真実を見い出すことにおいて、自分の見たくないものを見ていくので痛みが伴います。また、自分を見つめて、自分のことを知ることは時として辛いことです。そして、それは永遠に終わりがないので、真実というものは始めから存在しないものかもしれません。とはいえ、人間の日常生活の多くの面は、脳が合理的に予期したことや無意識的に状況を予測したことを繰り返しているので、自分が自分に向き合うことで、無意識を意識的(自覚的)なプロセスに繋げる利点があると思います。そうすることで、無意識に反応して、失敗を繰り返してきた自分から、意識的に自分の行動を変えていくことができます。そして、自分の体の感覚や緊張をマインドフルネスしながら、自分のことをしっかり考えて、苦しみを乗り越えたさきに明るい明日がやってくると思います。精神分析には、真実ではなく、美を求めて、この姿でない姿を求めるという一面があります。鏡に映る自分の姿は、ほど遠いほどの深い闇が隠れているかもしれませんが、その深い闇に落ちることで、その深さが分かり、救いがあるかもしれません。

 第5節.

人それぞれの生き方


生き方は、人それぞれで、その人に合った生き方があると思います。人生とは、喪失、老い、不条理、不平等などの不幸は必ず起きるものなので、自分の不幸をごく普通のこととして心得れば、人生は楽しいものです。一方、苦しみの中でも光を見い出し、1%の可能性に賭けて、夢を願いながら、自分の人生を肯定的に生きる生き方もあります。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平

 

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