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自己愛性人格障害チェックリスト


目次

 

1.自己愛の病理とは何か?

  トラウマの影響は身体に出る

  トラウマの影響が日常生活に

  病的な自己愛は自己不全感

  自己愛者が成長していく過程

2.自己愛性パーソナリティ障害のチェック50項目に飛ぶ

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自己愛の病理とは何か?


自己愛は、ナルシズムとも言います。ナルシズムという言葉は、ギリシア神話のナルキッソスの泉に映る自分の姿に恋したという話に由来するものです。ナルシズムは、鏡に映る自分を見た際に受けた衝撃の大きさにより、自意識過剰になり、ナルシズムの病理につながるとも考えられます。ナルシズムが強い人は、鏡に映った自分を見て、しっくりくれば、満足できますが、鏡に映った自分が理想と程遠ければ、落ち込んで元気がなくなります。そして、鏡を見て、理想の自分を手に入れようと、細かいところまで気にして、自分を良く見せようとします。彼らは、理想のものが手に入らなければ欲求不満に陥ります。

 

一般的に言われているのは、自己愛とは、自分で自分を愛することとか、自分を凄いと思うか、素晴らしい思う感覚であり、誰でも持っていますが、自己愛が強すぎると病気に見なされます。健康的な自己愛とは、自分のことを大切に思えたり、自分のことを価値があるように思うことです。病的な自己愛とは、ある種の欠乏状態を暗示しており、わがままで、自分が可愛くて、周りの都合より自分を優先して、相手の立場を全く考えられない人です。

◎トラウマの影響は身体に出る

 

乳児期から児童期にかけて、虐待やネグレクト、不運な外傷体験を受けて育つと、安全が脅かされて、身体の中にトラウマが刻み込まれて、生存本能を司る脳幹や大脳辺縁系は、通常の人とは違った形で成長します。脳は危機が差し迫っているとして、警報を鳴らし、身体は身構え、周りの顔色を伺います。嫌悪刺激に対しては、神経が繊細に反応し、筋肉は硬直して、血管が収縮する反応が出て、動悸がする、ザワザワする、息が浅く早くなる、焦る、落ち着きがない、胸が痛む、息が止まる、凝視する、目を逸らす、近づく、離れる、戦う、逃げる、興奮する、怒る、凍りつくなど起きます。

 

身体の中のトラウマの影響により、外側の刺激に敏感になり、自分の意思に基づかない反応に支配されます。そのため、脅威を察知すると、交感神経が過剰に働き、焦燥感に駆られます。そして、落ち着かなくなり、その場にいられなくなって、物事を解決しようと思考が回転しますが、うまくいかなくなると喉が詰まって、息苦しくなります。また、危機が差し迫ってくる場面では、目に映るものが敵か味方かを判断して、自分が不利な立場に追い込まれると、全身が縮まり、闘争・逃走反応を示します。

◎トラウマの影響は日常生活に出る

 

身体の中にトラウマを抱えている人は、日常生活のなかで、身近な存在に警戒し、同じ姿勢でじっとしていることや、拘束される状況が苦手になります。子どもの頃から、安心して過ごすことできない環境で育つと、生きるか死ぬかモードになり、脳が防衛的に働くため、心の成長がスムーズにいきません。

 

特に、人の気配や脅威となる対象が気になって、対人関係の距離の取り方が独特で、対象を求める質がおかしくなります。彼らは、価値観の違う相手とは気が合わないとか、想定外のことをされるとか、自分を必要としてくれない相手といると、それらが潜在的な脅威になり、身体がビクッと反応して、心臓がドキドキし、トラウマの再体験の引き金になるかもしれません。トラウマを持つ人は、本来危険でない場面でも、恐怖と戦慄の体験が蘇ったりすることもあり、うんざりしていきます。その一方で、トラウマのある人は、周りの気配を気にしなくてもいいように、好奇心あることにのめり込んで、自分を安定させます。病的な自己愛者は、自分を脅かしてくるものを遮断し、ナルシシズムな世界に没頭して、自己中心性は高まっていきます。自分と価値観やセンスが合致している相手とは居心地良さを感じます。

 

病的な自己愛の人は、トラウマによる自己不全感の影響から、思考や行為を強迫的に反復したり、細部にこだわり、自己の完全性を維持しようとする力が働きます。また、発達早期のトラウマの影響により、恐怖によって無力化された経験があり、その痛みが再び起きないように、脅威を遠ざけようとする防衛の世界のなかで生きるようになります。二度と同じ目にあいたくないから、常に警戒し、周りに注意深くなり、いつでも反撃できるような体勢を取ります。さらに、生きていくうえで惨めさや悔しさ、後悔、不満なことが起きないように先手を打ち、強さ、明るさ、愛情、お金、優越感を求めて、病的な部分が理想化され、自己像が誇大化します。そして、無力な自分と向き合うとしんどくなるだけなので、それらのエピソードを遠ざけて、ただただ強くなろうとして、自分の負の部分を直視することが難しくなります。人生上で失敗することがあっても、誇大化した自己像を保つために、失敗したのは自分のせいではなく、相手を罰することで自分を立て直していき、自己愛性パーソナリティ障害が形成されていきます。

◎病的な自己愛はトラウマによる自己不全感

 

自己の不全感とは、発達早期のトラウマにより、自律神経系や覚醒度の調整不全が起こり、不安や心配、焦燥感が強くて、自意識が過剰になります。例えば、誰かに批判されたり恥をかかされたりすると、筋肉が硬直し、過剰に覚醒していき、動悸の激しさ、浅く早い呼吸、赤面恐怖、手の震え、発汗、身体の痛み、驚愕反応、フリーズ、思考のまとまらなさ、自己愛憤怒などが起きます。そのため、自己の不全感を抱える子どもは、頭の中であらゆるリスクを瞬時に考えるようになり、学校などの集団場面においても、不安や動揺しないように、細かいところまで気にかけて、行動の順序まで考えます。普段から、嫌悪すべきものや興味があるものを入念に調べて、安全を確保し、心臓を守っていますが、予期できない事態に巻き込まれると、凄いストレスになり、頭の中で処理しきれなくなって、怒り、パニック、癇癪、感情のコントロールの難しさ、衝動的行動、恥、劣等感、体調不良などが起きます。そのため、自己の不全感やその劣等性を周りに知られないようにするため、周りの目を気にしながら、必死に隠そうとします。

◎自己愛の人が成長していく過程

 

病的な自己愛の人は、通常生きるために必要なストレス耐性が低く、自分が大切にされないことや、誰かに悪意を向けられることを恐れます。周りにどう見られているかを気にして、他者に良く思われたいとか、誰かに認められたいという気持ちが強く、無意識のうちに、本来の姿よりも大きく見せようとして話を盛ります。周りから承認されると、自分への価値が高まり、自信となって社会の中で生きていく原動力になります。

 

しかし、本当の自分は、人間が怖くて、とても傷つきやすく、些細な出来事でも落ち込みますが、しんどいと思うと余計にしんどくなるので、明るいふり、強いふりをして、集団の中心に割って入ろうとします。そして、現実がうまくいかなくなる場合は、空想の中だけが自分を守る唯一の場所になり、自分は何でもできるんだとか、凄いんだと思い込むようになります。さらに、自分の価値を高めるため、弱い部分を責めて忌み嫌い、周りから承認されるようにと努力し、完璧な姿を求めます。このように万能感を持つことで、トラウマティックな脆弱性を克服します。

 

子どもの頃から、学力が高くて、人を支配できるような身体能力や見た目、コミュニケーション能力を持ち合わせている場合は、努力が成果に結びつくために、学校では教師からの信望が厚く、自分は凄くて、平凡な周りの者を見下すようになります。一方、能力が足りない場合は、頭の中だけで凄い自己像が出来上がり、妄想と現実との区別がつかなくなることがあります。また、親や教師、友達から評価してもらえず、家庭や学校の中で抑圧された状態が続くと、それに応じた闘争や逃走反応の過覚醒になり、自己中心性、自己没頭、不寛容などの性格傾向を持つようになります。

 

その結果、虚栄心が強く、貪欲で、他者をコントロールして慢心し、思いやりのない人間に育ちます。一方で、世間体や周囲の評価を過剰に意識しているので、相手の顔色を伺いながら、規則正しく振る舞い、自分の居場所や、自分が必要とされているかを気にしています。このように大人の振る舞いをして、見栄え良くみせている裏では、子どもの頃に固着した情緒障害児の姿があります。大人になっても、どこか無力な自分がいるので、そんな自分がこの社会をどうやってを生き抜いていけばよいかを考えています。

 ▶自己愛チェック.

自己愛性パーソナリティ障害チェック50項目


自己愛性パーソナリティ障害の人は、人間関係の取り方に問題があります。本当の自分は、トラウマにより無力で麻痺させられた経験があるのですが、無力な自己と誇大な自己が両極にいます。そして、仕事や学校の社会生活の中では、自分を奮い立たせ、覚醒度が高くし、活発に行動して、論理で正当化した誇大な自己の方が日常生活の大部分を担います。また、他者の影響を受けやすく、対象を求める質が病的になり、行動が極端になるため、不適応に陥りやすく、家族や恋人、友達、同僚、クラスメイトたちが被害を受けることになります。

1)誇大化した自己と無力化された自己

自己愛性パーソナリティ障害の人は、子どもの頃のトラウマの影響から、自己愛が損傷した怒りのパーツの部分と、無力化された無垢な子どもの部分がいて両極端なところがあります。一方、日常を過ごす部分は、恥をかいて自己愛憤怒を起こさないように、人の目を過剰に気にするところがあり、論理で武装し、自分を正当化しています。普段から、表面を取り繕いながら、尊大な態度に振る舞って、優越感に浸る反面、実は劣等感があります。このように自己像が分裂しており、自己調整機能や覚醒度のコントロールの仕方に不全感があります。

2)自己主張して強さを誇張

自己愛性パーソナリティ障害の人は、親や兄弟、社会の権力により、脅かされた経験があり、闘争・逃走反応か、凍りつくか、感覚が麻痺するか、無力に打ちのめされるか、閉じ込められるようなトラウマを体験していることがあります。日常では、脅威を遠ざける防衛が働くため、自分の主張を振りかざし、強圧的な態度で周囲を圧倒し、他者を利用してなんでもしようとします。また、自分の勢力の拡大に努めたり、仕事ができる存在として価値を高めたり、自分の強さを誇張させて見せるようになり、人を見下します。

3)一人を犠牲にして価値を高める

自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分が周りにどう思われているか関心があって、社会的地位や名声、お金、外見、頭の良さなど、もっと素晴らしい自分を目指してきました。子どもの頃は、学力を高めて、学校の教師から信頼を得ようとします。社会に出ると、仕事で社会的地位を得て、責任ある立場に就きます。さらに、他者から評価されることが、自分の価値になるため、困っている人を救うための使命感に燃えたり、社会活動で成果を出そうとして、他者には親切にします。外ではいい顔を見せますが、家庭内でのみ内弁慶になり、パートナーや子どもに対して尊大に振る舞い、家族の誰か一人を犠牲にした生き方をします。

4)お金に執着して安心を得たい

自己愛性パーソナリティ障害の人は、人間関係が複雑な社会の中で、緊張とストレスを抱えており、日常生活が心地良くないから、お金があれば自分の思い通りにできるという考えになります。お金に価値を置いて執着していくのは、生きるうえでお金があれば、だいたいのことは解決できるので、お金を持つことが安心感になり、シンプルな生活を送りたいという欲求があります。

5)理想化された対象と同一化する

自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分は凄いから賞賛されるべきとか、周りによく見られたいと思っていて、過剰に自分の見栄えを気にして、規則正しく振る舞います。また、見せかけの誠実さや謙虚さを示し、媚びを売ってでも、理想化された対象と同一化を求めています。賞賛を得る機会があるときは、しっかり準備して、高いパフォーマンスを発揮します。周りに良く思われたり、褒められたりすると、自分の価値が高まり、目を輝かせて喜びます。一方、本来の自分は、無力なところがあるため、鬱屈としています。

6)空っぽの体を埋めるためのセックス

自己愛性パーソナリティ障害は、トラウマの影響の人から、痛みが刻まれた身体には注意が向かず、頭を中心にした(目を使って、耳を澄まして、鼻で匂いを嗅ぎ、頭の中で考え続ける)の生活していて、自己感覚、内臓感覚、皮膚感覚(私は人間であるという体験)に安心感が無く、心が空っぽだったり、自己存在が希薄だったりします。些細なことでも、身体が過剰に反応して、不快感が強くなるために、他者や物質、行為から満足を得ようとします。自分を元気にするには、不快感を吐き出す必要があり、多弁で、セックスが好きで、人によってはセックス依存症になることもあります。視覚優位の場合は、相手の外見・服装にこだわり、性的満足を得ます。

7)他者と比較し自分が優位に立つ

自己愛性パーソナリティ障害の人は、他者からの評価が自分の評価になります。他者と比較して、自分が優位に立つことで幸せを噛み締めて、気持ちを楽にします。逆に、自分が優位に立てなくなると、嫌な気持ちになり、イライラして、落ち込んで、いたたまれなくなり、その場にいられなくなります。

8)思った通りに進めたい

自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分のやりたいようにやっているときは、気分が落ち着いて、一番人間らしい感覚や呼吸が吸えます。そのため、他者に必要とされて、自分の思い通りに動いてくれることを望みます。一方で、何かに縛られるような状況や予測できない事態に巻き込まれると、落ち着かなくなり、トラウマのスイッチが入ります。そして、思った通りに物事が進まなくなると、嫌な気持ちになり、ネガティブな思考が浮かび、呼吸が浅く早く、動悸がします。

9)不条理な環境からの依存

自己愛性パーソナリティ障害の病理に至る過程において、親子間や学校社会のなかで、不条理なトラウマに曝され、恐怖と戦慄が走った経験をしています。被害にあったことで、鬱屈していて、変えようのない悲しみとか、どうしようもない怒りとか、自分なんて何をやってもダメとか、満たされない気持ちを抱えています。病的な自己愛が強い人は、ネガティブな感情になった際、自分の気持ちを自分で処理することが難しく、何かに依存しなければなりません。自分の気持ちを立て直すのに、お酒に逃げる人もいれば、遊ぶ相手を探す人もいたり、相手を罰することで自分を立て直す人もいます。

10)サバイバルの闘争・逃走

慢性化したトラウマの影響から、サバイバルな脳領域が発達し、いかに生き延びるかが重要であり、他者と比較して勝ち負けにこだわります。現代の競争社会では適応しやすい面もありますが、他方で、ストレスが溜まり、自分の思った通りにいかないと、表情が変わり(目が大きく見開く、瞳孔が拡張する)、聴覚が過敏になり、攻撃性が高まって、闘争・逃走モードに入ります。闘争モードでは、すぐ怒りの感情になり、怒りが鎮まるまでに時間がかかります。そのため、感情を抑えきれないまま、長時間の説教や暴言、無視、威圧的な態度をとり、相手を罵倒し、暴力を振るうこともあるので、人間関係に支障をきたします。

11)自己不全感と強迫傾向

自己愛性パーソナリティ障害の人は、トラウマの影響から、自分を脅かす可能性のあるものを恐れており、苦手な人やウィルス、菌、ほこり、鋭利なものなど、人により違いますが、恐怖心が強いです。そして、恐怖を感じたり、恥をかいたりしたときに、自律神経の調整不全が起き、感情のコントロールできず、身体化してしまうため、思考や行為を強迫的に反復し、細部にこだわり、自己の完全性を維持しようとしています。一般に、外の気配や身近な人への警戒心が強くて、頭の中で瞬時に統計を取り、嫌悪するものと、心地よいものを見分けて、人の表情や反応を細かいところまで見ています。一方、警戒していないときは、好奇心が旺盛になり、相手の都合なんてお構いなしに尊大に振る舞うことがあります。

12)恥をかくと自己愛憤怒

自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分が大切にされていないとか、自分の思った通りにいかないと腹を立て、怒りのスイッチが入ります。また、他者の批判や拒絶に過剰に反応しやすく、集団場面で恥をかかされると自己愛憤怒を起こしたり、フリーズしたりして、うまく情報処理することができなくなります。そのため、周囲の評価に敏感になり、完璧な姿になろうと演じますが、完璧さを求めれば求めるほど、気を張って、ハードな生き方になり、ストレスや苛立ちが溜まるので悪循環になります。

13)問題解決とポジション争い

自己愛性パーソナリティ障害の人は、常日頃から、脅威を遠ざけようとする防衛が働いており、幼い頃からの不幸を回避しようとして、境界線を引き、対抗する術を身につけます。問題が生じると、先手先手を打って、言葉巧みに、問題を解決することで、心の安全感を確保しています。しかし、問題が解決できない場合には、途端に弱くなります。競争社会のなか(ポジション争い)では、自分を脅かすような相手を敵だと思い、ターゲットになります。競争に勝つために、自分のイメージが良くしていき、ターゲットに対して悪い噂を流したり、こき下ろしたり、大勢の前で細かいミスを注意したり、しつこく付きまといます。

14)多弁で独占欲が強い

自己愛性パーソナリティ障害の人は、他者に支配されることが怖く、相手の意識で押さえつけられる前に、自分が喋ってしまう多弁な傾向があります。舌のよく回る巧みな人物になり、議論好きで、嘘をついてまで人を騙し、恫喝、説得、早口、威嚇、脅して相手を支配下におきます。独占欲が強く、自分のものにしたいと思ったら、最初のうちは紳士的で思いやりある態度をとり、とことんまで相手を追いかけていき、最終的には力で押さえつけにいきます。その一方、で自分の所有物になってしまうと、急に態度が変わって相手のあら探ししたりします。また、追いかけられることが苦手で、逃げれない状況に追いつめられると発狂します。

15)憤激して悪質クレーマーになることも

自動車を運転中、他の自動車の割り込みに対して激怒したり、仕返したりします。また、自己中心的で常識外れの行動を取り、悪質クレーマーで、ウェイターのサービスが悪かったり、待たされたりするような些細な問題であってもすぐに腹を立て、他者を攻撃してしまいます。一方、クレーマーになることを恥じている場合には、スマートで紳士的に振る舞うことを心掛けており、誰かに激怒したり、悪質クレーマーになることはありません。

16)家族に幻想を抱く

自己愛性パーソナリティ障害の人は、夫婦というのは特別な関係であると思っていて、パートナー(配偶者)に対して、理想や幻想を抱き、子供のように甘えたいとか、無条件の愛情を求めています。パートナーには穏やかにいてもらうことを求めており、自分の平穏を保つために、ただ笑っていてくれたらいいと思っています。パートナーが自分の思い通りに動いてくれないと、ストレスが増していくので、従ってもらうことで心の安全を保ちます。

17)見た目重視で遊び人

自己愛性パーソナリティ障害の人は、感情をぶつけられる依存先を求めており、見た目重視で美しく若い女性が大好きです。いい女性を連れて歩くことで自尊心は満たされるため、パートナーには完璧さを求めて、相手の気持ちを考えずに進みます。そして、ダイエットを強要し、浮気が多く、誇大的で搾取性があって、言葉巧みにたくさんの女性と交流し、孤独になるリスクヘッジをしながら、ロマンティックな気分に浸ります。一方、特定の女性だけに執着し、束縛、嫉妬するタイプもいて、その場合は、不倫や浮気など複数の女性と遊んだりはしません。

18)武勇伝を語る

自己愛性パーソナリティ障害の人は、有名人が好きで、著名人と関わりを持つことを自慢します。また、過去の恋人の写真をいつまでも残していて、周りに自慢げに見せたり、自分が強いことを武勇伝のように話します。彼らは、凄い自分を周りに見せつけて、虚勢を張ることで仲間を作り、自分に酔っている自分が好きです。

19)周りをコントロールする捕食者

捕食する側にいる自己愛性パーソナリティ障害の人は、若いうちは周りをコントロールすることに長けているため、社会的な成功者になる可能性があります。また、自分には才能があると思っており、子育てや家事は配偶者に押し付けます。その一方、夫婦や職業生活は、中年期特有の危機に陥ることがあります。

20)損得勘定して自分の欲求に忠実

自己愛性パーソナリティ障害の人は、日常生活のなかで不快に感じることが多いため、その不快感を発散する人生になります。彼らは、理性や自制心を働かすよりも、自我と無意識の欲求との境界が開放されていて、不快を避けて快を求める快原則(性的エネルギー)が過剰に働いています。頭の中は損得勘定しており、効率重視で、他者を性や権力で支配し、自分の勢力を広げようとするばかりで、相手の気持ちを無視してしまい、自分のことしか考えられません。

21)発達障害(神経発達)の傾向

自己愛性パーソナリティ障害の人のなかには、生まれ持った資質の弱さや軽度の発達障害の傾向があるかもしれません。一般に、神経が繊細に反応し、自己に対する不全感から、あらゆるリスクを考えた生活になり、予想外の出来事に直面すると混乱しやすく、複雑で長期的なことを続けていくことが難しくなります。

22)注意や集中の向け方が独特

自己愛の病理の奥には、バラバラになって、その人の力を奪い取るような痛ましいトラウマを負っている場合があります。成長した後も、身体はその記憶を覚えているので、今でも意識や認識過程が狭くなっていて、こころは成長しきれず、まとまりのない状態にあります。また、視野が狭くて、警戒心が過剰で、注意や集中の向け方に問題があり、同時に複数の視点を抱えることが難しい状態にあります。

23)安心できる家庭がない

自己愛性パーソナリティ障害の人のなかには、親子関係がこじれており、ドメスティックバイオレンスを目撃するか、過干渉されるか、躾が厳しいか、虐待を受けています。そして、ぐれて家を出るか、非行に走るか、親に見捨てられるか、頻繁な転居などを経験していて、子どもの頃から親と結ぶ愛着基地が機能していませんでした。子ども時代の家庭環境で感じていた居心地悪さを大人になっても再体験しており、自己存在が希薄で、愛情に飢えていて、帰るべき家がありません。通常の人と比べて、長い期間に渡って、同じ場所に落ち着いて過ごすことが難しく、所有の概念が希薄です。どこでも生活できる代わりに、自他の境界があいまいです。

24)不幸な生い立ちを隠すように

自己愛性パーソナリティ障害の人は、子どもの頃から、家庭が貧しかったり、母親が家出していたり、父親から母親への暴力を見ていたり、自分の身体が弱かったりして、不幸な生い立ちの方が多く、基本的信頼感が獲得できていません。そして、不幸な生い立ちを恥じていて、周囲の目を気にしながら、それが表に出ないように隠しています。人によっては、仮面を被り、明るいふりや強いふりをする演技が上手で、平気で嘘をつき、作り話をすらすら言えます。不幸な生い立ちゆえに、アイデンティティが希薄なため、それを埋めるように優越感に浸り、美しいものを手に入れようとします。

25)良いものを理想化して悪いものを価値下げ

自己愛性パーソナリティ障害の人は、良いものと悪いものに対して、心と体が凄く反応し、良いものは自分を生き生きとさせますが、悪いものは身体をこわばらせます。良いか悪いかどちらに転ぶか分からない不確かな状況が苦手で、物事を白黒はっきり分けるようになります。対象に対して良いか悪いかのイメージが一旦出来上がると、そのイメージが染みついて、頭の中から離れなくなります。良いものは心のなかで理想化されていき、悪いものは価値下げされていきます。

26)その場その場に反応しているだけ

自己愛の病理が酷くなると、本当は何をしたいのかも分からなくて、ぼんやりとしたなかで生きており、こころは空虚で、その場その場の状況に反応して生きています。そして、自分の言動に対する自覚が乏しく、自分のとった行動があとでどんな結果を招こうがおかまいなしです。

27)感覚の希薄さと完全性やスリルを求める

自己愛性パーソナリティ障害の人は、もともと愛着対象との関係が危険だと察知されて、とてもつらく、くるしい毎日が続くなかで、自己感覚が弱くなります。自己愛の病理が酷くなると、脱身体化して、心理的に麻痺し、痛みを感じる能力が欠如して、傷つかなさと偽りの姿で社会に適応しようとします。人間らしい感覚が育たないので、思いやりや罪悪感がなく、喜びも感じられず、自身の加害性には無自覚です。その一方で、完全無欠を求めたり、スリルを味わうことで自分の生きている感覚を取り戻したり、自分の技能を高めることで、安全感を保障します。

28)自分の正論に固執する

過去に、酷い目にあわされながらも、抵抗できなかった屈辱感があり、それ以後は、世の中の不条理な在り様のなかで抵抗する術を身につけて戦ってきました。自己愛性パーソナリティ障害の人は、人から傷つけられてきたという被害者意識が強く、自分の言い分は正しくて、その他大勢の言動は矛盾があるように感じています。自分の正論に固執し、自分の正しさに反する相手を蔑み、批判して、見下します。

29)独特な正義感や誇大妄想

自己愛性パーソナリティ障害の人は、独特な正義感や誇大妄想に耽っていて、自分の都合でしか物事を考えられず、自分は正しいことをしていると思っています。その一方で、自分は正しいことをしているからと、自分の状態を直視することができなくて、理性のかけらもないような行動に出ることを許可しています。

30)プライドが高くて傷つきやすい

自己愛性パーソナリティ障害の人は、子どもの頃から、プライドが高くて、目立ちたがり屋で、誇大な自己イメージを持つことが自身の防衛になります。極度に傷つきやすいメンタルを持つため、上手くいかなくなると、なんでも相手のせいにして、自分は悪くないと考えます。また、他者から否定的な評価を受けると、その他者を許せなくなり、全力で攻撃してしまって、言い争いがよく起きます。

31)爬虫類的な顔つきと防衛パターン

自己愛性パーソナリティ障害の人は、爬虫類には有効であった太古的防衛操作の中に全身すっかり汚染されています。病的な自己愛者は、覚醒度が高く、理性よりも本能や快楽を満たす方の働きが活発であり、自分や他者の精神状態を十分に読み取ったり受け取ったりすることが苦手で、不寛容、自己中心的思考、自己没頭的、操作的です。自己愛性パーソナリティ障害は、境界性パーソナリティ障害と人格構造の水準は似ていますが、自己の構造は比較的安定しています。

32)自他の境界が曖昧で積極的

自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分の身体の生理的反応に混乱し、人間らしい感覚が麻痺していくため、自他の境界があいまいになり、積極的な行動を取ります。興味を持った相手には、付き合いたいという気持ちが強く、急接近します。相手の気持ちを考えるよりも、積極的にLINEやメールアドレスを交換して、思わせぶりなメッセージを送ります。一方で、不意を突かれたり、不快な状況では、胸が苦しくなり、じっとしていられなくなって、逃げ出すか問題解決を図ります。問題解決のためなら、妻や夫の家族にも直接悪口を言ったりすることが平気で出来ます。

33)規則正しく合理的に生きる

自己愛性パーソナリティ障害の人は、こころやイメージの中で生きるというよりも、規則正しく、合理的で予測可能な範囲のなかで生きていて、想像力よりも固定化された枠組みのなかで物事を見ています。また、自分に反した予測不能なことをされることが嫌で、注意深く観察し、細かいことまで気にします。

34)身体に弱い箇所がある

自己愛性パーソナリティ障害の人のなかには、小さいうちから、ストレスフルな状況にあり、喘息やアトピー、アレルギー体質、鼻炎、蕁麻疹、頭痛、腹痛、吐き気など不快な感覚に耐え、身体的な不安にとらわれてきました。彼らは死ぬことに対して漠然とした不安を抱え、人間存在の有限性を否定し、健康や食事に気を使い、潔癖で完全性を求めています。しかし、ストレスや緊張が強い状況では、胸が痛んだり、胃腸や皮膚が過敏だったり、糖尿病、がん、心臓病、脳卒中などの成人病に掛りやすいと言われています。

35)皆の輪の中心に入って盛り上げ役に

自己愛性パーソナリティ障害の人は、身体の中にトラウマを閉じ込めているため、何かに拘束されているとか、不快な状況でじっとしていると、落ち着かなくなって動きたくなります。しかし、動かないでいると体が怠く重くなるか、イライラするため、多動の傾向が現れて、疲れやすくなります。集団場面では、脇役でいると、いたたまれない気持ちになるので、目立って突き抜けた存在になりたいと思い、なるべく皆の輪の中心に入って、盛り上げ役を演じ、周りを思い通りに動かすことが快感になって、自分に自信をつけます。

36)価値観やマイルールを押し付ける

自己愛性パーソナリティ障害の人は、心は未熟で、身体の中にはトラウマがあり、嫌なことや不快な状況に対して、打たれ弱い状態にあり、頭で考え、論理で武装し、問題を解決しようとします。相手に自分の価値観やマイルールを押し付けて、心地良く過ごしますが、自分とは違う価値観が入ってくると、相手が間違っているように感じます。また、自分の価値観に合わせられる相手としか一緒に過ごすことができず、相手の批判に耐えることができません。

37)解離が重篤な自己愛者は

解離傾向の強い自己愛パーソナリティ障害の人は、私が私でなくなるという根源的な死の不安とか、身体への違和感から、鏡に映っている自分の姿を何度も見てしまうことがあります。また、身体感覚が麻痺して、自己感覚が分からなくなっていくと、自他の区別がつきにくくなり、他者や物質からしか、快感や満足を得られなくなって、対象を求める質が病的になります。

38)気分の浮き沈みが激しい

自己愛性パーソナリティ障害の人は、気分が調子よいときと落ち込んでいるときの落差が激しく、その間を行き来しています。非日常空間に浸ることや、楽しいことを探すことが大好きで、気分が乗っているときは、優しく相手に振る舞うことができます。しかし、日常の雑務による疲れのせいで、気分がイラついているときは、尊大で相手をこき下ろします。

39)親からの影響が色濃い場合は

自己愛性パーソナリティ障害の人は、親の影響を受けている場合が多く、損得勘定で繋がっている夫婦のもとで育ち、親からプライドを持てとか、強く生きろとか、一番になれと言われて育っています。親の期待に過剰に応える部分と、身勝手な親に抵抗していく部分の二面性を併せ持ちます。

40)ストレスフルで自律神経系の調整不全

自己愛性パーソナリティ障害の人は、自律神経系の調整不全があり、神経にはストレスホルモンやコルチゾールで溢れ返っていて、ストレスフルな状態で生活しています。心と体が限界に達すると、抑うつやイライラ、焦燥感、感情のコントロールの効かなさ、原因不明の身体症状として現れます。普段から疲れているために、身近な相手にやり場のない鬱屈した感情を晴らして、誰かを犠牲にした生き方になります。

41)周りの反応が気になり、自分の思う通りにしたい

自己愛性パーソナリティ障害の人は、身近な相手から必要とされているとか、大切に思ってもらえているかが重要になり、周りの反応を気にして、自分のことで精一杯です。そのため、相手の内面を理解したり、相手を思いやる心の余裕はありません。彼らは、理想の家族像を語りますが、実際には、心は未成熟で育っておらず、自分の思う通りに動いて欲しいだけです。誰かを無条件に愛するという利他性の視点が無く、見返りを求めて、自分のために相手を愛しているふりをします。

42)神経質で場の空気が敏感

自己愛性パーソナリティ障害の人は、人の反応やその場の空気が悪くなることに対して、敏感に感じてしまうため、その場の空気を良くしようと周りを見渡し、過剰に気を配り、サービス精神が高く、皆の輪の中心でいたいと思います。一方、場の空気を乱す奴らに苛立ち、情緒不安定になります。性格は神経質で、心の中は猜疑心が強くて、何事も細部まで気にしてしまうため、人の粗探しをしてしまい、いつも何か満たされない感覚があります。

43)会社で頑張り、家では悪態をつく

自己愛性パーソナリティ障害の人は、外ではいい顔を見せていることが多く、会社の中では、上昇志向が強く、ポジション争いにあくせくして、仕事ではある程度の地位に就いていることが多いです。そして、他者と比較して、自分の方が上で、自分より下の部下がたくさんいると、気持ちが良くて、ばりばり仕事をこなします。しかし、仕事でエネルギーが尽きて、家に帰った後は、家族に対する甘えから、悪態をついてストレスを発散します。家庭内では、パートナーに自分の思うように動いてもらいたくて、話がかみ合わないと苛立ち、いいつけやルールが段々と増えていき、モラルハラスメントになることが多いです。

44)自分を凄いと思う部分と自信のなさ

自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分を凄いと思っていますが、根底には自分に自信がなく、自分の中の嫌悪するエピソードに耐えれません。普段から、他者の顔色や気持ちに敏感に反応し、自分がどう思われているか気にして、警戒した状態で過ごしています。身体は、身構えていて、情報処理が過剰ですが、その場を良くしようとか、自分のことを良く思われようと、頭をフルに使って、一生懸命努力しているため、自分は必要とされるべき人間であり、特別扱いしてほしいと思います。

45)世間一般の人への敵意

子どもの頃から、親の身勝手な態度や侵害してくる行為に対して、言いたいことが言えず、怯えや恐れ、混乱のなかにいました。親が傷つけてくる存在だから、親からの愛情を諦めて、自立して生きていけるくらい強くなりたいと思ってきました。自己愛性パーソナリティ障害を患う人のなかには、苦労してきた分だけ、親がいて普通に暮らしている奴や身勝手に生きている奴らに憎しみを持っています。

46)見た目を気にするナルシスト

自己愛性パーソナリティ障害の人は、老いや衰えることが気になり、若さや格好良さ、美しさをいつまでも維持したくて、鏡ばかりをチェックして、自分の顔の細部を気にしたり、姿勢を正したり、いい車、スーツ、靴、時計にこだわります。また、スポーツジムに通い、男性は体を鍛えて屈強な肉体にして、女性は美しいスリムボディにします。しかし、心の方は、気が弱くて、大変小心者で、自信がありません。子どもの頃から、気管支や皮膚、お腹が弱いなど、体に弱い箇所があり、虚弱体質に悩んでいることがあります。

47)良い方向に向けて努力したい

自己愛性パーソナリティ障害の人は、合理的な考えのもと、すっきりしたコミュニケーションをしたくて、周りの期待に応えようと努力し、協力しあって、良い方向に向かっていきたいと思っています。しかし、人とのコミュニケーションがうまくとれず、周りの人に大切にされていないとか、分かってもらえないこととかにイライラします。彼らは、周りの人に足を引っ張られていると感じると、攻撃的になるために、悪い面ばかりが目立ちます。

48)取り巻きと行動し、無能なイエスマンを置く

自己愛性パーソナリティ障害の人は、孤独な時間に弱く、人から必要とされなくなると、気持ちが落ち込みます。彼らは、自分の価値を感じたくて、誰かに必要とされたいと思っており、取り巻きと行動します。周りには、無能なイエスマンを置き、足がわりに使って、敵対する勢力に対抗するため、仲間を集めます。また、自分の価値観に合わせてくれたり、情報を共有してくれる仲間と一緒にいます。

49)対象を求める質が独特

自己愛性パーソナリティ障害を患う人のなかには、他者は自分と同じようなものの見方をするのが普通と思っています。彼らは、自分と同じように、先回りをして、先手を打ち、正しい答えや正しい選択肢を探すことが当たり前だと思っていて、対象を求める質が独特なので、世間一般の感覚とはズレがあります。彼らは、自分のものの見方と違うことをされると、気分を損ねていきます。我慢することが増えると、根暗になり、イライラして、悪態をついたり、投げやりな態度を取ったりします。

50)高い理想を持ち、完璧主義

自己愛性パーソナリティ障害の人は、等身大の自分が無力に陥るリスクがありますが、一方で、高い理想を持ち、細かいところまで目がいき、何事も完璧にしようとして、達成不可能な目標を持っています。仕事に対しては、自己の有能感から、向上心を持って取り組みます。調子に乗って、自分の思い通りにやっていくうちに、職場の上司・部下との関係において軋轢を生んだり、会社組織に縛られることが嫌だったりして、段々としんどくなって、職場を転々としがちです。また、仕事ができるタイプの人もいますが、仕事ができない人は、どれだけ努力しても不完全な結果という失敗だけが積み重ねられて、ひたすら努力するけどもうまくいかない、現実と理想がかけ離れたハードな生活を送っているかもしれません。

 

トラウマケアこころのえ相談室

更新:2020-06-24

論考 井上陽平

 

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