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トランスジェンダーと心の傷

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▶ジェンダーに纏わる問題

 

ここでは、発達早期にトラウマを負った人のなかで、ジェンダー的側面すなわち、男が恋愛対象として、男女両方を見たり、その逆の場合も含め、いわゆる「通常」の男女というジェンダーカテゴリーから外れるようなジェンダー間の境界を行き来する問題を持つ人々について考えていきます。

 

生まれ落ちる前後の子宮内ストレスや誕生時トラウマ、または幼少期の頃にトラウマを負った場合、身体に弱い箇所が出来てしまって、常に周囲を警戒するようになり、交感神経が高まり続けるために、人と交流するために必要な愛着システムに育ちにくくなります。他者とうまく交流できないということは、異性との関わり合いやジェンダーの問題にも影響を及ぼすことになります。爬虫類系の脳や原始的な神経が働き、もの凄く繊細で、すぐ怒ったり、身体が固まったり、物音や人の表情、視線などに過敏に反応するようになります。

 

親との関係を結ぶ愛着システムよりも、交感神経系が興奮する闘争・逃走システムが発動し、ときには、背側迷走神経系が過剰に働いて、凍りつきや死んだふりの防衛スタイルを取り、普通の人とは神経発達が異なって、変わった考えや行動する子どもに育ちます。子どもの頃から、痛みの身体を持ち、脅かされることが続くと、他者と交流するよりも、安全への欲求や生理的欲求を満たす段階に留まってしまいます。そして、子どもが成長していく過程において、ストレスと過緊張状態が続き、自分の感情や感覚が分からず麻痺していき、他人の感覚も感じられなくなって、頭の中ではネガティブに考えが浮かび、他者との関係性が結べなくなっていきます。痛みや不快感が強くて、身体から切り離されたような感覚で育つと、自己の感覚が麻痺して、時間感覚が止まり、心が子どものまま大人になってしまって、性別への意識とか、性別の部分が成長していかず、アイデンティティやジェンダーの概念がしっくりきません。そして、自分の核がないまま、自分の性別に違和感があり、自分が男か女かも判断がつかない状態になることがあります。そして、人間とはどういうものなんだろうかとか、自分のことを得たいのしれない人物のように感じていくかもしれません。

 

▶ジェンダーフリーを抱える過程

 

ジェンダーの問題を抱えるようになる過程の傾向を六つ挙げます。一つ目に、神経系の働きによって、愛着システムと闘争・逃走システム、凍りつき・死んだふり・虚脱などの防衛スタイルの間を行き来することによって、男女のカテゴリーの境界が揺れる場合が挙げられます。サバイバルな虐待的な環境や発達早期のトラウマ、性暴力被害を受けた場合は、被害を受けたもともとの人格は、痛みの身体になり、戦慄と恐怖で身動きが取れなくなることがあります。一方、日常生活の困難を乗り越えようとする人格は、もともとの人格とは正反対のような性格になり、成長していきます。

 

トラウマがある人で愛着システムが作動しているときは、人や社会と交流したいと思い、適度に相手に関心を向けて、親切にしたいと思います。受け身的で、争いごとに傷つきやすく、人の言葉が胸に刺さり、泣き虫で、恐怖心から助けてほしい、守ってもらいたいと女性性の側面が表れてきます。一方で、交感神経系が働いているときは、機動力を高めるため、心臓が活発に動き、手足の力がみなぎります。このときは、男性性が強調され、闘争・逃走システムが作動して、どうやったら自分が優位に立てるかを考えて、戦略性や論理性が強くなり、リーダーシップを取って、周りを言い負かそうとするところがあります。神経のスイッチが切り変わることで、愛着システムと闘争システムの境界(女から男、男から女)が揺れ動き、男ぽくとか女ぽくなります。そのときは、好きな食べ物や趣味、話し方、着る衣装が変化する人もいて、自分が変わってしまうことが怖くて、男らしさ、女らしさにこだわります。

 

トラウマを負っている人は、身体の中に闘争・逃走反応を抱えており、拘束される場面や逃げれない状況、じっとしていなければならないことが苦手になり、社会の枠の中に閉じ込められると苦しくなるので、戦い続けます。社会に与えられる男性的(女性的)であるとか、男性的(女性的)魅力があるなどの規範に対して、過去にトラウマに傷ついてきた人は、凄く敏感で、女性/男性はこうあるべきだという一般の常識などに反発する傾向が見られます。

 

また、虐待的な環境にいる子どもは、とても苦しい、とても辛い毎日の繰り返しになり、不安や緊張、恐怖すら感じられなくなります。家庭という逃げ場のない状況下では、凍りつきや死んだふりの状態になり、捨て身の方法で生存戦略を行います。そして、自分の肉体を切り捨てた人は、外の世界では正常に振る舞うことが出来ても、ジェンダーという概念がはっきりせず、無性愛の傾向が強まるかもしれません。また、自分の感覚が麻痺すると、異性の人と性的な関係を持っても、何も感じないために、自分の性別に違和感を持つようになります。

 

二つ目は、トラウマを負って、性転換が起こる場合のケースは、女として生まれ育ってきて、性的虐待や性暴力被害、性風俗で働くことで、自分が女として生きることが肯定的に捉えられなくなり、嫌で仕方なくなって、拒否したくなる経験をすると、女という性を捨てて、男になって性転換したいと思うようなことが起きます。また、小さい時から、自分と同じ性別の人に痛ましいトラウマを負わされると、男だと男性的、女だと女性的なことがトラウマになっていくから、大人になっていく自分の身体が気持ち悪く思えて、自分がその性別になっていくことが嫌になり、混乱することになるかもしれません。

 

三つ目は、性暴力やいじめ被害者は、加害者と同じ性別や似た年代の人間が恐怖や嫌悪の対象になります。一般的に見られるのは、人は恐怖の対象を回避するようになるため、加害者が異性の場合は、異性と情緒的な交流が難しくなり、異性との恋愛関係が発展しなくなります。そして、人によっては、同性愛の傾向を強めていくことがあります。

 

また、度々起こるのが、加害者と同じ性別の人を見ると、恐怖心から警戒が強まり、自動的に注意が向いてしまうため、嫌悪感になりますが、場合によっては、危険を感じるほど、相手の要求を過剰に受け入れるようになるとか、胸のドキドキから好奇心の対象になることがあります。他方、恐怖心のない性別の人に興味や関心が薄れていくようなことが起きます。加害者と同じ性別の人にとらわれていくようになると、頭の中では、危険があるかどうかを探り、興味が持てるかどうかをアセスメントして、好意を感じる対象には近づき、恐怖を感じる対象ほどその要求に同調するか回避し、嫌悪する対象には視線を逸らすか凝視してしまいます。そして、加害者と同じ性別だからこそ、積極的に見てしまって、危険に違いないと思い込んでいる部分と、そのような人を今後のために分析しようと興味を持ってしまい、場合によっては、好意に変わることがあります。そのため、加害者が自分と同じ性別になる場合は、自分を脅かしてくる対象ほど興味を持ち、時には同調行動を取ってしまって、自分が同性愛ではないのかと思い込むことがあります。一方、異性には好きという感覚が持てず、自分の心と身体が違和感だらけになり、性的倒錯に陥る人もいます。

 

四つ目は、人から男であることや女であることというふうに、ジェンダー的存在として見られたり、近づかれたりすることに恐怖を覚えます。なぜなら、複雑にトラウマを負っている人は、人々が悪意を持って見てくることや、自分に近づいてくることに、身体が凍りついていくため、怖くなります。彼らは、自分に関心が向かないように、自分の胸が大きくなることとか、性的な部分が成長していくことを否定します。ジェンダー的な存在というのは成熟した男女が性的な眼差しの対象となるわけであって、まだ成熟しきっていない少年/少女は性的に見られることは減ります。そのために、ジェンダーの問題を抱えている人のなかには、現実世界の中で、性的な対象として見られることを恐れて、永遠の少年/少女の軸で、妄想の中で生きます。

 

五つ目は、性暴力被害者は、事件の際に、凄いショックに曝されて、驚愕反応からフリーズ(凍りつき)し、離人化、気を失うことがあります。そのような緊急事態では、自分の中にいるもう一人の自分が、加害者の要求に従い、同調した行動を取ることで、極限の状況下を乗り切ります。そして、本来の自分が我に返って現実の生活に戻っときに、もう一人の自分が加害者に同調して取った行動の感覚や欲求が戻ってきて、普段の生活においても自分の心身に影響を及ぼします。

 

例えば、性被害の加害者が、自分と同性(男ー男)であった場合には、被害者はその性被害の経験をきっかけに、男性と性的な関係を持った感覚が残り、自分は同性愛ではないのかという感覚を抱くようなことがあります。一方で、被害者が女性で、加害者が男性の性被害の場合には、異性への嫌悪感と、自分が女性である感覚が耐えられなくなり、自分の性を否定するようにして生きていくことがあります。

 

六つ目は、親や周囲の影響により、ジェンダーの問題が出てくる場合です。女性の場合は、小学生の頃から、同性と遊ぶよりも、異性と遊ぶのが好きで、男の子とよく遊び、スカートではなくズボンを履いて生活しているうちに、自分は女じゃなくて男なんだと思うようなことがあります。また、家族が男の子を生むことを期待していたのに、女の子だった場合は、その子供は家族の期待に応えるために男性的になったり、女の子として生まれてきたのに、親から男の子のように育てられると、ジェンダーの問題を抱えるようなことがあります。

 

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論考 井上陽平

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