> > 解離性障害の恋愛

解離性障害の彼女との接し方


解離症状は、もともと神経系の発達の問題や病気しがちな身体、家庭内の虐待やDV、発達早期のトラウマ、母子関係のこじれ、性暴力被害、いじめ、学校に無理に連れていくなど、長期に渡って脅かされることが続き、逃げ場がない環境にいると、心が麻痺して、解離が生じます。彼らは、子どもの頃から、何度も脅かされて、とてもつらい、くるしい毎日に耐えることを繰り返してきました。生活全般のストレスや緊張から、訳もなく恐怖に怯え、イライラし、体が怠い、お腹が痛い、胸が痛い、頭が痛い、気持ち悪い、疲れやすい、眠れない、下痢や便秘を繰り返す、息が苦しい、動悸がする、過呼吸、めまい、ふらつき、手足が冷える、麻痺するなど、体調が悪くなります。家庭や学校生活のなかで、身体への不安が強く、自覚症状がありながらも、悪い方向にいかないようにしているうちに、心は生々しい身体感覚から離れていき、いつの間にか自分のことがよく分からなくなりました。大人になった今では、普通のふりをしたり、明るいふりをしていますが、心の中は、どうしようもない悲しみや無力感、罪悪感、自責感、不快感、痛みに注意を向けるともの凄く眠くなり、現実と夢の狭間で半分眠ったような人生になり、その間の記憶が無かったりします。

 

この症状がある人は、波長を合わせてくれる大人や心響き合う親子関係のもとで育っておらず、腹側迷走神経の働きが鈍くて、社会交流システムが働かず、落ち着いてリラックスすることができません。脳と体は、この世界を危険だと感じており、人から傷つけられるという不安が強いです。彼らは、苦手な人を目に前にすると、足がすくんで、体が凍りついて、何もできずに、交感神経と同時に背側迷走神経が過剰に働きます。人が凍りつくときは、胸が苦しく、息がしづらくなり、手足の感覚がなくなり、体を動かせなくなり、声が出せなくなり、お腹が痛かったり、頭が痛かったり、めまいが起きたり、吐き気がしたり、痙攣したり、震えが起きたりします。その後、全ての望みが絶たれると、血の気が引いていき、足がガクガクブルブル震えて、意識が朦朧とするなか、立つことができずに、身体が崩れ落ちます。

 

身体の中にトラウマがある人は、ちょっとしたことに敏感で、驚愕反応から過覚醒や凍りつき反応が起き、古傷が疼くので、人から傷つけられることが怖くて、人間関係を深めるよりも、一人でいるほうが気楽です。新しい恋愛が苦しく、距離が近づいて、相手から感情を向けられることが苦手で、自分の中に入ってきてほしくありません。恋人の黒い部分が見えると嫌になり、恋愛関係は面倒くさいと思うかもしれません。また、人間不信で、自分のことで精一杯なので、感情が揺さぶられてしまう人間関係を回避したり、自分が嫌われて傷つく前に、相手のことを嫌いになって、関係を切り離したりしたくなります。

STORES 予約 から予約する

解離性障害の彼女の特徴と接し方15項目


解離性障害の持つ人は、一般に女性のほうが多いです。というのも、男性の方が、筋肉量が多くて、体格差がある相手でも、離人させながら、闘争本能剥き出しにして戦うことができますが、女性は怖くなると、身体が固まって、声が出せないとか、動けなくなり、解離せざるを得なくなります。ここでは、解離性障害の彼女と恋人の彼という視点で書いていきます。

①体調不良で疲れやすく、すれ違いが起きやすい

解離性障害の彼女は、身体の中にトラウマがあり、原始的神経が過剰に働くため、体調不良が頻繁に起きます。そのため、新しい人間関係を作ろうとしても、緊張や不安から、身体がしんどくなり、モチベーションが上がりません。恋人や配偶者とは、長時間一緒に過ごしたり、長期的に人間関係を築いていくことが難しい状態にあり、恋人や友人と関係していくことに疲れていきます。恋人の彼は、彼女が体調不良で疲れていることに気づかず、自分が嫌われてしまったと誤解して、すれ違いがよく起きます。また、解離性障害の彼女は、精神面や体調面の調子が悪くて、恋人の彼の期待に応えられないだけなのに、彼の方が、自分は嫌われてしまったと悪い方に解釈していく場合には、その度にイライラしてしまうことが増えるかもしれません。そして、余計に体調が悪くなり、人に会うことが億劫になっていきます。

②体調不良の起きやすさと苦手な場所の確認

解離性障害の彼女は、猫をかぶらず、自分の思う通りにしているときは、体調不良が起きづらく、疲れにくくなります。しかし、予想外の出来事が起きたり、人から視線を向けられたり、背後に立たれたりすると、身体は凍りついて、喉や胸が苦しく、息がしづらくなり、ヒヤヒヤして、手に汗をかいて、震えたりします。また、頭痛や吐き気、お腹が痛くなる人がいます。解離症状があると、さまざまな人が行き交う場面(学校の教室、職場、街中など)は、刺激が強すぎて耐えれなくなるかもしれません。また、脳の視床の部分のフィルターが弱い場合は、頭のなかに過剰な情報がどっと入ってきて、人混みのなかでは、胸が潰れるような思いがあるかもしれません。都市型の生活は、情報量が多すぎるために、あたふたして、翻弄されて、パニックや混乱を起こします。そのような自分を見せたくないので、先読みしたり、考え続けるばかりになって、前に進まないから徒労感が蓄積されます。

③集団場面に馴染めなく、孤独な傾向

解離性障害の彼女は、子どもの頃から、学校集団に馴染めなく、人がいっぱいいるところでは、落ち着かなくなるため、苦手でした。人目につかないようにするとか、人の悪意に気づかないようにして、息を潜めるように生きてきました。人といることがどちらかといえば苦痛で、誰かにしがみつくことはあまりなく、一人でいるほうが気楽ですが、と同時に、一人で孤独や疎外感を感じながら、寂しい思いもしています。そのため、恋愛や結婚などパートナーに求める質が通常の人とは異なっていることがあります。最初のうちは、パートナーの気持ちに合わせて好きになろうとか、信頼しようと努力しています。そして、いろんなことを犠牲にしながら、関係を続けていくと、後戻りできない事態に陥ります。

④相手に合わせすぎて、しんどくなっていく

解離症状がある人は、予想外の出来事(急なこと)に対して、驚愕反応が起きて、全身が縮み上がり、フリーズします。普段から、外の世界の生々しい刺激に耐えられない繊細さがあり、人から傷つけられるかもしれない恐怖があります。人から悪意を向けられることが怖いので、周りの主張に適合させ、自分の本音を出すことなく、感情を押し殺してきました。そして、本当の自分を出すことなく、相手の要求を読んで、相手に自動的に同調しているほうが安心します。一方、空気を読まずに、何もやらなかったら、その場が悪い空気になることを恐れています。また、嫌なこともはっきり断ることができず、物分かりのいい人間のふりをして、自分はどう振る舞うのがよいかを考えています。そして、敵を作らないようにとか、自分を否定されないようにしており、争いを避けて平和を願います。ただし、解離性障害の彼女は、恋人の彼の要求に応えていくと、言われるがままになり、彼がエスカレートしています。彼女のほうが自分の限界を言葉にできず、相手に合わせるばかりになると、身体がきつくなるため、関係を続けることが難しくなります。

⑤いいなりになったり、怒られるのが怖かったり

解離症状のある人は、戦うことも逃げることもできず、その場で凍りついて、危険が去るまで待つか、固まり立ち尽くすか、死んだふりをして生き残りを図ります。基本的に、人が怖くて、人に見られているのが嫌で、視線を合わせないようにしています。また、自分が人を傷つけてしまうかもしれないことを怖がっています。人間関係は、いつの間にか、相手より下になり、いいなりになるようなシチュエーションになっていくことが多くみられます。解離性障害の彼女は、自分の安全を保障する強い人や優しい人を好む傾向があります。恋人から怒鳴られたり、目の前で誰かが怒るのを見ると、動悸が激しくなり、心臓が縮み上がるなどの反応が出て、過呼吸やパニック、フラッシュバックになったりします。そのため、怒りの感情が嫌いで、そういった感情を向けてくる相手といると、常に緊張し、怯えて、焦りを感じてしまうため、そのような関係を続けることができません。また、優しい人の温もりや優しさに触れることが怖くなり、不安から相手を疑って見てしまったり、苦しくなったりして、優しくされても相手に迷惑をかけてしまうからと思って、距離を置くことがあります。

⑥無感情・無感覚なので、好きになれない罪悪感

解離性障害の彼女は、身体の不調が気になり、外の気配や体内に過敏で、変わった反応をしやすいです。身体の痛みや不調から、身体は凍りついて、心と身体が離れていきます。解離症状が重くなると、自分の身体が自分で無くなり、身体感覚が分からなくなって、無感情、無感覚になるため、人に対して愛情が湧かなくなります。人を好きになるとか、親密になるといったモチベーションが湧いてこなくて、自分の気持ちがよく分かりません。そして、何も感じることができなくなると、何がストレスかも分からなくなり、嬉しいや楽しいという感情も分からなくなって、生きている意味が失われます。そのため、本当に誰かを好きになったことがなく、全然好きじゃない人と結婚していることがあります。恋人の彼は、彼女と同じ空間を共有している感じがなくて、心ここにあらずな状態でいる彼女のことが心配になります。彼女が無口で心の世界にこもっている場合は、彼はその姿に不安を感じて、気持ちを取り戻すそうとすればするほど、彼女は振り回されてしんどくなり、気持ちが離れていくかもしれません。そして、彼女は、好きという気持ちを感じないまま、彼の強い愛情を向けられると、きつくなり、逃げたくなりますが、自分ではどうしていいか分からなくなり、罪悪感を持つかもしれません。

⑦距離が近いほど刺激が強いため、人間関係、肉体関係が苦手

解離性障害の彼女は、相手に自動的に合わせようとしてしまうため、男性が勘違いして、近づいてきますが、恋愛関係の展開が早すぎて、ついていけなくなります。そのまま男性に積極的に押されて、付き合うことになる人もいます。男性がどんどん距離を近づけてくると、差し迫ってくるような圧力に感じ、喉や胸がつっかえて、息がしづらくなり、相手のことを払いのけたくなる人がいます。男性が触ってくることが嫌で逃げたくなり、期待に応えられないことに申し訳ないと思いますが、縁を切りたくないとも思います。また、恋人になった異性の要求に応えたいと思っていても、人と距離を置かないと、身体が凍りついて、心が悲鳴をあげるため、そっとしておいてほしいと思っているかもしれません。

⑧本当の自分のことが分からず、相手を鏡のように使う

解離性障害の彼女は、過緊張や凍りつき、死んだふり状態で過ごしていて、身体には莫大なエネルギーを滞らせています。普段から、恐怖や怒りの感情を感じないようにしており、内臓、筋肉、皮膚感覚も弱くて、身体感覚が麻痺しています。自分の感覚が掴めないために、人から感じる感覚に浸り、相手と同一化していくので、自他の境界が曖昧になります。そのため、恋人の彼が怒ると、彼女も怒りが湧いてきたり、彼が悲しむと、彼女も同じように悲しくなり、なんとかしてあげたいと思います。ですから、周囲の人の感情に敏感になり、自分を安心させようとして、相手を喜ばせます。しかし、自分をどう喜ばすことがいいのかわからず、身体感覚に乏しいため、自分のモチベーションが湧いてきません。

⑨関係性を深めようとすればするほど、関係が続けられなくなる

解離性障害の彼女は、自分に自信がなく、相手が離れていくかもしれない不安のなかで、人にどう甘えていいかも分からず、信頼を持つことも分かりません。また、恋人の彼との関係が深まり、距離が近づけば近づくほど、感情は高まりますが、それと同時に、見捨てられ不安が高まったりして、感情が鈍磨します。そのため、関係がなかなか深まらず、一定の距離を保って接するようになります。繊細ゆえに、燃え上がるような恋愛感情も一瞬で麻痺させられてしまい、ロマンティックな夜を過ごしたあとに悪夢を見てしまいます。また、好きな相手との再会を楽しみにしていたのに、当日になると足が痙攣したり、体調不良が起きたりして、その場所に行けなくなることが起きます。

⑩低覚醒状態で、判断力や思考力が乏しい

解離性障害の彼女は、身体の凍りつきや離人の度合いにより、呼吸の回数が少なく、酸素不足になっています。身体の感覚や感情を感じにくく、ボーッとしており、半分眠ったかのような低覚醒状態で生活しています。自分の身体から離れて、夢と現実の境目を行き来し、注意力や判断力、思考力は落ちていて、衝動的な行動も見られたりします。また、主体性に乏しく、本能や直感を無視しており、周りに合わせてばかりなので、自分の人生の選択を後悔しています。普段から、自分で物事を決めて前に進むことできず、優柔不断なので、恋人の彼には手を引っ張っていってほしいと思っています。恋人の彼が自分といて楽しそうに過ごしていることが自分の幸せになり、自分で自分の幸せを感じることが苦手です。

⑪解離性健忘により、コミュニケーションがズレる

自分が自分で無くなることもあり、自分がどう思っていたのか、何を考えていたのか、何をしていたのかを覚えていなくて、昨日の記憶すら思い出せなくなることがあります。そのため、前回どんな話をしていたかを覚えていなくて、人とのコミュニケーションが難しくなります。また、人と約束していたこともすっかり忘れていたり、自分が自分であるという整合性を保つために作り話をしたりします。

⑫鬱や希死念慮の高まりへの対応

今を生きている感じがしなくて、生きていても楽しいことがありません。脅かされている感じや体の硬さ、痛みから睡眠不足が続くと、鬱症状が酷くなります。頭の中は、過去の後悔や罪悪感、自責感でグルグル回り、とてもつらい毎日が繰り返さているので、希死念慮も高まります。希死念慮や自殺企図を訴える場合は、とてもつらいという気持ちを分かってあげましょう。また、毎日少しずつでも眠れるように工夫していきましょう。

⑬宿命や運命を信じている

解離性障害の彼女は、自分の居場所があり、安心・安全感があって、合理的に思考する人とは、全く別の価値観を持っているかもしれません。彼女は、自分に似ている人に惹かれて、恋人は特別な存在であり、二人の関係は宿命とされ、取り換え不可能な関係であると信じています。そして、自分を交換可能な存在(没人格化)にされることをとても恐れています。

⑭自分の気持ちを分かってもらえなくて悲しい

幼少期の頃から、周りの皆と考え方や感じ方が違っていて、自分の気持ちを伝えようとしても、親や友人に理解してもらえませんでした。自分のことがうまく伝えられなくて、分かってもらえないことに対して傷つき、自分の気持ちを分かってほしいと訴えます。恋人の彼は、自分と解離性障害の彼女とでは、基本の前提が違うことを勉強しましょう。解離が重たい人ほど、背側迷走神経が主導権を握り、手足が冷たく、血液の流れ悪く、息がしづらいです。そして、体が自分のものではなくて、感情が鈍麻し、時間感覚が麻痺し、思考が混乱しています。

⑮別の自分の存在により誤解される

日常生活が困難になるとフリーズして解離するため、自分の中にいる自分ではない自分の存在(豹変した姿)が周りに認識されて、自分のことがどんどん誤解されていくことがあります。自分では絶対しないようなことを自分ではない自分がしていくので、そのことがショックで受け入れられなくなります。恋人の彼との間でもそのようなショックなことが起こり、その誤解を解きたいと思いますが、相手になかなか伝わらず、恋愛が苦しくなります。そして、自分の本音や本当の感情を見せれなくなり、安心できる居場所がありません。

解離性障害の彼女が求めていること


解離性障害の彼女は、何処へ行っても、何処に逃げても、追い立てられているような感覚のなか、自分を縛り付ける緊張感から抜け出せません。いつも恐怖に怯えながら、声を出せず、体が動かなくなります。彼女は、動けなくなっている自分の手をつないでくれて、どこまでも引っ張ってくれるような恋人を求めています。そして、あいつ(加害的人物やトラウマのブラックホール、解離という強靭な力)がまとわりついてきて、連れ去られる恐怖のなかに一人きりでいます。心の中では、あなたに早く助けてと叫んでいるかもしれません。パートナーになる人は、彼女の手を引っ張ってあげて、立ち止まらず、どこまでもどこまでも走っていきましょう。彼女が歩けなくなったら、列車に乗って遠いとこに行きましょう。悲しい気持ちになったり、泣き出したくなったりしても、大きな闇の中でさえも、二人の幸せを探して、一緒に歩いていきましょう。

 

解離性障害の彼女は、平穏な時間を過ごしたいと思っており、あなたの温かみに触れたいと思っていたり、あなたと歩きたいと思っていたり、あなたを見つめていたいと思っていたり、あなたの声を聞きたいと思っていたり、自分の話を聞いて欲しいと思っています。

 

解離性障害の彼女は、普通の幸せを手に入れて、愛されたいと思っています。愛する人が自分のそばにいて、手をつないだり、抱きしめたり、愛情を交わしたりすることで、自分の存在感がはっきりしてきます。また、木や草、山、自然、神社仏閣に触れることで、自分が生きていた感覚を取り戻せます。自然の力を感じると、生命力がみなぎり、命の温もりを感じられます。ただし、体調が悪くなりやすいので、自然のある場所に行くまでに疲れてしまうことがあります。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室 

論考 井上陽平