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過剰警戒のメカニズム


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 第1節.

過剰警戒とは


過剰警戒とはどのようなものでしょうか。過剰警戒とは、脅かされる環境に居続けたために、体がビクビクするようになり、脳が敏感に危険を感じるようになって、落ち着かなくなり、周りを警戒するようになります。また、過去のトラウマティックな出来事から、生活のありとあらゆることがトラウマのトリガーになっていき、そのトリガーを引かないよう周りに注意深くなります。さらに、トラウマのショックが強く残っている人は、想定外のストレスを受けたり、不意を突かれたりすると、体がビクッと反応して、心臓がバクバクし、息苦しくなるので、周りを警戒するようになります。そして、長期に渡って、警戒態勢を敷き、他者の顔色や発言、振る舞い、表情までじっと見て、細かく観察します。過剰警戒のタイプとしては、体が緊張し、生存を高めるために、ネガティブなことに注意が向き、物事の細部に注意が向いて部分部分に着目するか、全体に注意が向いて空気を読もうとするタイプがいます。  

 

過剰警戒に陥っている人は、体が生命の危機を覚えているため、一般に日常生活の中で、自分に及ぼす負の影響の可能性を常に意識し、工夫しながら生活しています。常に神経を張り詰めており、人が大勢いる場面では、不安が高まると、周りのものが気になって仕方がなく、視線が動いて、観察します。嫌な予感がすると、それらを全力で回避しようとします。彼らは、何か悪いことが起こるのではないかと不安があり、自分の感情に圧倒されたり、行動を制御できなくなったりして、取り返しのつかない事態に陥らないために、できる限り、強い刺激を避け、注意深く観察しています。彼らは、外側の世界が安心して広がっているのではなく、他人が自分に被害を与えてくるかのように感じ、自分を守る術がありません。

 第2節.

体の中のトラウマの影響


体の中にトラウマを抱えている人は、自分にとって脅威があるかどうかを考え、自分の身の周りの現象に気を配ります。トラウマがある人は、自律神経系や覚醒度の調整不全に陥っていて、身体内部に不安や不快感を抱え、それらを引き起こす外界の気配が気になってしょうがなくなります。普通の人なら気にならないことまで、過剰警戒モードに入り、体は緊張して、苦手な人がいないかどうかを把握するため、人の気配や足音に敏感になり、頭の中で状況を把握しようとアセスメントします。そして、危険が迫ってくると、怯えや恐怖が強まり、交感神経が過剰に働いて、体は行動を取る準備を行い、頭の中は理性よりも情動的で、接近か回避かを判断し、闘争・逃走行動、凍りつき、虚脱反応が見られます。

 第3節.

家庭内の親子関係の影響


親子関係のトラウマに悩まされている場合は、日常生活において、親の顔色を窺い、気配や足音がとても気になり、その気配を感じると、息を止めて、聞き耳を立てて様子を探るようになります。家の中で物音がするたびに、警戒心が高まり、心臓がドキッとし、動悸が高まり、呼吸は浅く早く、息を潜めて、恐怖でビクビクして落ち着きがなくなるなど反応します。家の中で苦手な人に急に出くわすと、驚愕反応が起きて、心臓が縮みあがるか、凍りつくか、フッと体から離れます。さらに、苦手な人の態度が豹変し、ヒステリックな攻撃を受けると、死ぬほどの恐怖になります。このような人は、戦ったり逃げたりすることできず、自分を守れません。苦手な人に目をつけられないように過ごし、目立たないように息を潜めます。相手の顔色や振る舞い、気持ちが気になり、近づいてくる足音が怖くて、いつ出くわすかどうかに注意が向けられます。そして、苦手な人がいないどうかを確認して、いつ帰ってくるかを恐れています。長年このような生活が続くと、次の脅威に向けた生き方になり、いつでもどこでも緊張状態が続いて、神経は張りつめて、外の世界に過敏になり、体がカチコチに凍りついて、様々な心身症状に悩まされます。

 第4節.

過剰警戒の人は


過剰警戒の人は、些細なことでも、頭の中で警告音が鳴り、意識が外に向くようになり、全方位に意識が向いています。人の気配や言動、振る舞い、態度など細かいことまで気になり、ソワソワして、落ち着かなくなります。一人でいるときは落ち着くこともありますが、周りに誰かいるとリラックスすることができなくて、今ここにいることが落ち着かなくさせます。今ここに留まっていると不安が出てきて、目をキョロキョロと動かし、情報を集めます。そして、他者の動向に反応し、自分がどう見られているか、相手の気持ちがどうなのか、自分の状態がどうなのかを気にします。このような人は、その場の空気を読もうとして全体を見渡し、頭をフル回転させ、目や耳、鼻も使い、相手の動向を探り、相手の目や表情がどう動くのかコマ送りになり、細部まで見ようとします。そして、人の動きや置いてあるものなど細かいところに気付き、目に見えないものまで見えて、自分の背後にも意識できるようになりますが、情報処理が過剰になって、慢性的に疲れていきます。特に、集団場面が苦手になり、たくさんの情報が入ってくるため、その情報を処理するだけでも大変で、安全かどうかを確認してからではないと前に進めず、気を使いすぎて疲れます。また、一般に目に見えないものが苦手で、新しい変化を怖がり、急な事や想定外の出来事に対応に困ります。

 

過剰警戒モードを解くには、人の気配とか、嫌な情報をシャットアウトしていきましょう。視覚情報から過敏になっている人は、視力を落とし、この現実世界をぼんやりさせたほうがいいでしょう。聴覚情報から過敏になっている人は、聴覚過敏用の耳栓をしたり、嫌な音を出している人と話し合って、大きな音にならないようにお願いするのがいいでしょう。人の気配に過敏になっている人は、自分の好きなことをして周りの気配を気にしないようにしていきましょう。過剰警戒の人は、次の脅威に備えた生き方になっており、体のパーツが自分を守ろうとしているので、全身の力を抜いていけば、過剰警戒モードが解かれます。また、脅威に備えなくてもいいように、日常生活の中で自分の体の反応に慣れていくセルフモニタリングしていきましょう。

 第5節.

過剰警戒の人と安心ベースの人の違い


過剰警戒の人は、脅威を遠ざけようとしており、緊張が強くて、自分の人生がなかなか上手くいきません。彼らの神経は繊細すぎて、些細なことでも、体がビクッと反応し、周りの人の気配に注意が向いてしまうため、自分の好きなことに集中できず、周りに労力をつぎ込んでしまいます。一方、人生が上手くいっている人は、ビクビクするものがなく、不安や警戒心よりも、安心しているため、周りの人に対して、過度に意識を向けない傾向があります。自分自身のことに興味や関心を持ち、集中して何かを取り組むことができます。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平

 

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