> 身体論

身体論


STORES 予約 から予約する

 第1章.

心身二元論

こころとからだの関係は相互関係は強力で、互いに影響を及ぼしています。ストレスにより、体に症状が出ると、疲労が蓄積されていき、心に余裕がなくなります。病院に行ったり、栄養を取ったり、運動したりして、体の状態が元気になれば、心は回復します。一方、カウンセリングを行って、心の持ちようが変わると体の状態も変わります。

 第2章.

現代社会と身体の問題

身体というのは、死から逃れられず、時間・空間に縛られて限界があるものです。ストレスが当たり前の社会では、身体は怠く重くなるので、効率的に物事を処理するには、自分の身体や気持ち、モチベーションを無くしたほうが目的達成の早道になるかもしれません。また、 現代社会の管理者は、空っぽな身体ほど管理しやすいために、様々な仕掛けを用いて現代人の身体を軽視するように働きかけていきます。

 第3章.

心的外傷後の身体反応

外傷体験のショックは、身体がもがき苦しみ、砂嵐のような凄い速さで起こるために、神経系が追いつかなくなります。それ以降は、心に対して、身体の神経系が分離した状態になります。そのため、些細なことでも過覚醒に陥り、闘争・逃走反応が出たり、脳がシャットダウンして、動けなくなる不動状態や解離症状が出たりします。

 第4章.

収縮と拡張のメカニズム

人間は、リラックスしている時に体が拡張して、緊張している時に体が収縮します。健康な人の日常のエネルギーの振れ幅は、正常な範囲内での体の拡張と収縮を繰り返しています。しかし、外傷体験に曝された人は、もの凄いショックにより、限界まで縮んだところでロックされて動けなくなり、トラウマ化します。トラウマ後は、慢性的に収縮する方に向かい、凍りつく症状に振り回されます。

 第5章.

自己存在の耐えられなさ

透明な存在として生きている人は、この現実世界に自分の身体を持って存在することに耐えられません。つまり、この世に縛りつけられた身体を持ち、逃避することができないという状況に耐えることができなくて、脳や身体が常に脅威を感じています。そのため、自分という存在を成り立たせようとしても、人の視線や気配、感情、大勢の存在が怖くて、恐怖で固まり、すぐに引っ込んでしまいます。

 第6章.

極限状態の身体と忘却

命の危険に曝される場面では、神経が尖り、瞳孔が開き、毛が逆立ち、意識は外に向けられ、全身に力が入り、戦うか逃げる反応や凍りつき反応が出ます。解離する人の場合は、命を失いかねない場面では、恐怖や怒りの感情を消して、邪魔なものは何も感じないようになり、その場を冷静に切り抜けようとすることがあります。

 第7章.

空虚な身体と心

自分の居場所が感じられず、子どもの頃の記憶をほとんど覚えていないような壮絶な人生を歩まされている人は、自分の身体感覚が麻痺していきます。この身体感覚の麻痺とは、体性感覚が感じられなくなることであり、皮膚、筋肉、内臓、腱、関節の感覚が分からなくなります。そして、心は空っぽになり、自分の内面に向き合うことができなくなります。

 第8章.

肩こり・首こりのケア

恐怖や怒りを感じやすく、警戒心が高い、過緊張な人は、無意識のうちに自分を防御する姿勢を取るため、歯を食いしばり、眉間にしわがより、お腹に力が入り、肩こり、首こり、片頭痛、顎関節症を患いやすくなります。 ここでは、肩を回して自由に動かすエクササイズ 。口の開け閉めエクササイズ 。 体を楽しく動かすエクササイズ など紹介しています。

 第9章.

起立性調節障害

起立性調節障害は、子どもに起こりやすい病気と言われており、朝起きれなくなります。症状は、身体がこわばって、頭痛やめまい、ふらつき、疲れやすさ、体調不良、失神などあります。この病気は、身体の機能を調節する自律神経系や覚醒度に問題があります。

 第10章.

身体に閉じ込められたトラウマ

PTSDがある人は、危険を感じると、聴覚や視覚などのセンサーが過敏に働いて、様々な刺激に敏感に反応し、交感神経系が活性化します。過覚醒になると、目が大きく開かれ、瞳孔が拡大し、筋肉が隆々として、身軽に動けるようになり、闘争・逃走反応が出て、対象に接近するか回避します。一方、好奇心に突き動かされて、周囲が見えなく、自分の限界に対する認識を欠くことがあります。

 第11章.

解離性の身体症状

解離症状がある人は、身体が弱く、体力がなく、息がしづらく、声が出にくく、身体の中に不安があり、水の中で溺れるようなイメージがたびたび出てきます。子どもの頃から、緊張が強くて、息を止めるのが当たり前で、酸素が足りず、金魚鉢のなかで泳いでいる金魚のように生きています。これは魚類に由来する背側迷走神経の働きの方が、ほ乳類のみの腹側迷走神経の働きより優位になっています。

 第1節.

心身二元論:トラウマと心身の繋がりを理解する


トラウマによる精神疾患は、長期間にわたって気持ちが沈み込んだり、激しい怒りや無力感を感じたりすることで、日常生活を営むことが困難になる精神的、あるいは身体的な症状を引き起こします。このような病気は「心」の問題と考えられがちですが、それだけで説明するのは、現代日本社会に広がる近代的な思考に影響されているとも言えます。

 

現代の医療においては、心と身体が本来一体であるべき人間の存在を、別々に捉えて治療する傾向があります。これは、近代医療が哲学者デカルトの思想に大きく影響を受けていることを示しています。デカルトは「我思う、ゆえに我あり」という言葉で知られ、思考を人間存在の最も重要な要素と捉え、身体は二次的なものと見なしていました。この考え方から、心と身体を二元論的に捉える思考が発展し、現在に至るまで、心と身体を別々のものとして扱う医療が主流となっています。

 

現代医療では、身体に現れる病気や怪我は、主に薬や手術などの手法で治療され、身体的な症状の改善に焦点が当てられます。しかし、その過程で患者の「心」や感情がなおざりにされることが少なくありません。心と身体の繋がりを軽視するこのアプローチでは、トラウマによる精神疾患の根本的な解決が難しい場合も多いのです。

 

トラウマを経験した結果、精神疾患や身体の症状を抱えている場合、心と身体の症状を別々に治療しても、効果的な改善は難しいと考えられます。これは、心と身体が密接に繋がっているため、トラウマによって引き起こされる心身の問題を総合的に捉える必要があるからです。当相談室では、トラウマを単に「心」の問題としてのみ捉えるのではなく、身体の症状にも注目し、その両方を治療することで、心の状態を根本から改善することを目指しています。

 

トラウマを心身両面の問題として捉える理由の一つは、トラウマを経験した人はまず身体が防御反応を示し、神経が過敏になり、五感が過剰に反応するようになるからです。これらの反応は身体に深く刻まれ、トラウマを抱えた人の身体は元の状態とは異なる変化を遂げます。恐ろしい経験をすると、身体は日常のあらゆる出来事や、他者との関係に対して過敏に反応するようになり、心身が常に緊張状態に置かれます。

 

特に幼少期にトラウマを経験した子どもは、神経の働きが歪められ、身体の健康状態が損なわれます。この影響は成長過程で深く根付き、考え方や感情にも大きな影響を与えることになります。心と身体が一体であることを理解し、トラウマ治療においては両者にバランスよくアプローチすることが、根本的な回復への道となるのです。

 

トラウマを抱え、脅かされる状況が続くと、脳は常に警戒モードに入り、身体は防衛態勢を取ります。この状態では、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚といった感覚が過度に敏感になり、日常生活の中でこれらの刺激を受けるたびに、身体がビクッと反応したり、硬直したりすることが頻繁に起こります。この過敏な状態が、次第に不快感を引き起こし、人間関係においても苛立ちや焦り、落ち込み、さらには痛みが伴うようになります。その結果、周囲の環境や他者への警戒心が強まり、自分を守ろうとするあまり、さらに緊張が高まってしまいます。

 

外の世界に過敏になると、自分の身体にも不安が生じ、不快感を避けるために身体を麻痺させて生活するようになります。しかし、この麻痺によって、過去に受けたトラウマが身体の中に塊となって蓄積され、長期間にわたりその状態が続くことになります。トラウマによる複雑な症状は、心や思考の問題だけではなく、本来の自然なリズムを失った身体の問題でもあるのです。したがって、身体が健康を取り戻すことで、精神も自然と健康になっていくと考えられます。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

更新:2020-06-09

論考 井上陽平

 

▶ホーム

▶ネット予約 

▶電話カウンセリング 

▶お問い合わせ