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摂食障害


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摂食障害の要因

 

単なる食欲や食行動の異常ではなく、1)体重に対する過度のこだわりがあること、2)自己評価への体重・体系の過剰な影響が存在する、といった心理的要因に基づく食行動の障害であります(厚生労働省の定義)。摂食障害は神経性食欲不振症と神経性過食症の二つに大きく分類されています。

 

摂食障害を引き起こす要因は様々であると考えられますが、例えば、軽い気持ちで始めたダイエットなど身近なところに潜んでいます。若い女性の場合、自分の見た目に劣等感があり、人の視線が気になって、もっと痩せて綺麗になりたいという気持ちの高まりから、適切な運動もせずに、ダイエットを始めたことが原因になることがあります。また、自分のなりたいイメージと自分の実際の姿のギャップを埋めるために、食べることを制限していくことがあります。さらに、痩せを礼賛し、肥満を蔑視する社会的文化的要因も大いに影響しています。最初は軽い気持ちで始めたダイエットのための食事制限が次第にエスカレートしていくと、痩せているにもかかわらず太ることに恐怖を持ち、体重が増えないための代償行動として、拒食症を引き起こし、その反動で過食症に陥って、食べては嘔吐するとか、下剤を飲むことを繰り返す場合があります。

 

▶親子関係の要因

 

両親の顔色を気にして、良い子で育ち、家族を理想化していることがあります。しかし、思春期から青年期にかけて親の本性や子どもに対する酷い態度などに少しずつ気づくようになり、裏切られて、心が壊れて、摂食障害や強迫性障害、パニック障害、不安障害を患うことがあります。母子関係のストレスでは、母親のために一生懸命頑張り、父親のことで精一杯な母親のことを支えてきました。しかし、その頑張りが報われずに、苦しくなっている自分の姿を見せても、母親に拒絶されてきました。家族を良くしようと一生懸命やっても、愛情をもらえず、自分は何のためにがんばっているのか、良い子としてがんばっても報われない現実を知るほど、良い立派な人間になることの意味のなさを実感していくようになります。

 

▶トラウマの要因

 

小さい頃から、トラウマがあるか、発達障害の傾向があり、神経が繊細になりすぎている人は、嫌悪刺激へのショックを強く受けるために、快と不快、美しさと醜さをスプリットさせて、美醜にこだわるようになります。また、他者の視線や表情、気持ち、世間体ばかりを気にして、人から嫌われることが怖すぎて、自分の軸がなくなり、自分が人にどう思われているかが最重要なことになります。そして、自分に自信がなく、無力な自分を克服する方法として、自己愛の病理が強くなると、見た目の形だけにこだわり続けて、自分が綺麗でないと受け入れられなくなり、摂食障害を患うリスクが高まります。トラウマの影響を強く受けることで、脳と体はこの世界を危険と感じ、身体は慢性的に収縮して、特に嫌悪刺激には体は固まってしまって、周囲の視線を気にするようになります。そして、自分の外見が良くないことは非常に危険だと感じ、一方で、周りに良く思われることは、自分の安心感に繋がるため、自分を良く見せようと、自分の外見にこだわり続けて、摂食障害を患うことがあります。

 

摂食障害の過食嘔吐は、身体の中にトラウマを閉じ込めることで、自律神経系の調整不全が起きて、身体が凍りつきや麻痺、虚脱していき、無力や絶望のメカニズムから抜け出せなくなる人に見られます。絶望のサイクルにより、背側迷走神経の働きが強くなると、胃や腸の消化活動が活発になり、すぐお腹が空くため、空腹のイライラを抑えようと過食嘔吐に至ることがあります。また、絶望な状態から抜け出せない苛立ちや焦りから、交感神経系の過覚醒、凍りつき、虚脱、パニックなどをしのぎ切るために使われることがあります。一方、静止していても、トラウマのトリガーが勝手に引かれるため、過覚醒のスイッチが入り、交感神経の働きが強くなると、その場にじっといられなくなり、覚醒水準やストレスを引き下げる手段として過食嘔吐が使われます。また、過覚醒のときは、ソワソワして落ち着かず、凍りついていくときの不快感やや恐怖、過緊張から食べずにいられず、過食嘔吐が使われます。さらに、苦痛すぎる現実を前にして、無感覚で楽しめずにイライラが強くなり、常に体が凍りついているために、体を緩まして、自分を落ち着かせる方法として、過食嘔吐する人もいます。拒食症では、ストレスがピークに達して、解離症状が重篤な場合は、感覚が麻痺して、味覚や食欲が無くなり、食べることが気持ち悪くなります。また、虚脱状態に入ることで、手足の力が失われてしまい、エネルギーを最小限に抑える生活になるため、拒食へと発展する場合があります。また、性暴力被害に遭った人が、同じような被害に遭わないためのこころの防衛として、女性性を拒否するために過食や拒食に走る人がいます。さらに、発達早期のトラウマや性暴力被害に遭ってボディイメージが歪んでしまうことで、摂食障害になることがあります。その他、母子関係や夫婦生活の空間を取り巻く生活空間の全体のストレスや深いトラウマを負うことで、摂食障害になる人がいます。

 

▶病理の中核は食べ物への異常な執着

 

長期的な不安やストレスにより、睡眠不足などに陥っても、人は食べることでエネルギーを補給して自分のバランスを保ちます。しかし、現代女性は、痩せることへの願望が強いため、食べても太りたくないからと吐いて対処したり、全く食べずにいたりします。人は過度に食事制限や過食嘔吐を行うと、全身は飢餓状態になっていて、お腹が空くようになり、脳は自然に食べ物に関心が向いて、大量の食料品を確保しておきたい衝動を制御できなくなります。そして、心は太りたくない気持ちと、常に食べ物のことで頭がいっぱいというアンビバレンスな状態に支配されていきます。ボクシングの選手が減量のため、過度の食事制限を行うと、食べ物への興味が著しく増していくのと同じであります。アフリカなどで食糧が枯渇したために生じる飢餓とは異なり、豊富な食料に取り巻かれた環境下で生じる飢餓であり、様々な要因が考えられます。

 

▶摂食障害の症状

 

人は、過度なダイエットで飢餓状態になると、異常に食べ物に関心が向けられます。そして、食べたいという欲求から、一口食べるとそれでは我慢できなくなり、反動で過食行動に出てしまいます。しかし、痩せているにもかかわらず太ることに恐怖が強いと、体重が増えないように代償行為としての嘔吐や下剤の使用を繰り返すようになります。過食により飢餓状態が一時的に満たされるものの、吐き出す行為を繰り返すことで栄養状態が悪くなります。脳機能と全身の飢餓状態が慢性化してくると、抑うつ、不安、過敏性、易怒性などの様々な症状を呈し、精神状態が不安定になるので、過食することで精神状態を落ち着かせ、嘔吐や下剤を使用することに快楽に浸り、認知機能にも大きな歪みが生じてきます。例えば、摂食障害者は、見た目はガリガリなのに自分は太っていると言い張るようになることがあり、彼らの頭の中では、現実がそのまま投影されるのではなく、自分だけが太っているかのように認識しています。また、摂食障害者が自分のご飯をよそう時、ほんのわずかしかよそわないにもかかわらず、本人にとっては丼一杯のご飯をよそっていると感じています。

 

摂食障害者は、ついついたくさん食べ、食べ過ぎた後は嘔吐するようになると、普通に食事をした後、さらに2食分くらいの食べ物を詰め込むようになることがあります。そうなると食費がかさむために食品を買うお金もつき、最悪、食品を手に入れたいがために軽い気持ちで万引きしては過食と嘔吐を繰り返す日常となる場合があります。摂食障害者を対象に行った聞き取り調査によると患者の44%が万引きを告白しているという報告もあります。摂食障害者は、食べ物に執着する一方、低栄養状態から脳が委縮し、認知機能の低下に伴い善悪の判別力や抑制機能が低下するため、万引きに走ってしまうことがあります。また、摂食障害が引き金となって、心の余裕が無くなり、他者の内面を想像したり、共感したりする力が失われます。そして、自己中心的な性格になり、友達ができず、内向的になって閉じこもるようになります。さらに、自傷行為、自殺企図、アルコールや薬物依存など自己破壊的行為を伴うことがあり、大切な人生を台無しにするばかりでなく、生命すら危うくなることがあります。周囲が痩せていることを心配して食べさせようとすると、本人は食べ物に恐怖して、食べることすら出来なくなる拒食症(制限型)に陥ることもあります。

 

摂食障害による身体への影響は
摂食障害になると、徐々に栄養状態も悪くなり、やがて脳そのものが飢餓状態になり、心身ともに大きなダメージを受けることになり、体調を崩したり、精神状態が不安定になったりします。ホルモンのバランスが崩れることによる月経不順、ミネラルバランスの乱れによる低カリウム血症、低血糖症、糖尿病、骨粗しょう症などの様々な症状が発症し、特に成長期に摂食障害にかかると命の危険にさらされることがあります。体内ではどのような現象が起こっているのかと言うと。

 

飢餓状態になると、体内ではグリコーゲンの分解が始まり、体内に蓄えられていた糖分が無くなっていきます。絶食が続くと、筋肉に蓄えられている糖原性アミノ酸が持ち出され、筋肉の減少が始まります。さらに、絶食が続くと、ケト原性アミノ酸の消費が進み、これによって生成するケトン体が過剰になると、ケトン血症、ケトン尿症になり、脱水や嘔吐、頭痛、頻脈、低血糖をはじめ、昏睡や意識障害なども引き起こし、脳機能へのダメージにより重篤な状態になることがあります。したがって、ダイエットのエネルギーの使用はある程度までに留めておくべきでしょう。

 

摂食障害の要因は
摂食障害を引き起こす原因はさまざまあります。次にその原因を列挙しましたが、摂食障害に依存するほどに重篤な状態に陥る人の背景には様々な問題が存在することが考えられます。

・発症が圧倒的に思春期であることから、主にストレスや家庭環境、成長期への不安

・体重や体系に対する過度のこだわり

・過去のトラウマ(過覚醒や凍りつきを和らげるための過食、嘔吐への快感、親に自分の苦しみに気づいてほしい拒食など)

・発達障害の傾向(神経発達に問題があり、神経が繊細すぎる)

・家庭環境(両親の不和、長期の分離や片親家庭、愛情不足、過度の期待)

・体重管理が厳しいスポーツ選手やモデル。

・自尊心・自己評価の不足

・軽い気持ちで始めたダイエットがエスカレート

・ボディイメージの障害

・社会的文化的要因(痩せを礼賛し、肥満を蔑視)

・低血糖症や胃腸の弱さなどの身体の問題

・脳の満腹中枢に情報を伝える神経伝達物質の不足(どれだけ食べても満腹感を感じられなくなり過食がエスカレート)

・生得的な発達のアンバランスさ

 

どのような人が摂食障害になりやすいのか
摂食障害は、生真面目な一方、融通が利かず、ストレスをうまく解消することが下手な人が多いようです。拒食や過食が、ストレスから逃れる唯一の方法になり、深みにはまる危険性をはらんでいます。

①完璧主義な人

②自分のことをコントロールしたい人

③いつでも良い子でいる人

④優柔不断な人、自分に自信がない人

⑤ストレス解消がうまくない人

⑥自己評価が低い人、自分にコンプレックスがある人

 

当カウンセリングルームの取り組みは
摂食障害の治療は時間がかかります。摂食障害が重篤になると心理療法による回復は非常に困難になり、病院に数カ月入院することから始める必要があります。人が低栄養状態になると脳の機能が低下し、考える力が失われ、感情のコントロールが難しくなり、動くことが出来なくなり、身体にあらゆる異常が出てきて自己調整機能が壊れていきます。そのため、摂食障害の治療には早期発見、早期治療が大切です。

 

当相談室ではカウンセリングや身体志向アプローチとともにジョギング、ジムトレーニングなどの運動療法、食事の管理など行い、適正な食事をとりながら適度の運動により余分なエネルギーを消費することができる健全な生活習慣を身に付けることによって摂食障害の予防やケアに取り組んでいます。また、摂食障害は様々なトラウマ体験による自己愛の傷つき、ボディイメージの障害、自己イメージの喪失、何も感じられない苦しみ、交感神経優位の過緊張と過覚醒、原始的神経優位の凍りつき、何重もの絶望や苦しみを和らげるための過食や拒食、食べたものを吸収されないように嘔吐することで快感を得るなどが影響していることがあり、心と身体の痛みをケアすることにより摂食障害を克服できるような取り組みが必要です。そして、食べ物への凄まじい執着心と向き合いながら、本来の美しさを取り戻せるように共同で作業していきます。さらに、本人だけでなく、家族を含めたサポートが必要であり、特に失敗しても諦めずに忍耐強く伴走してくれる人の存在が治療にとって重要です。最終的には、瞑想を行うことで、自然治癒力を引き出し、過緊張や凍りつき状態を解していきます。また、カウンセリングを続けていくことにより、今まで避けてきた自分の問題と向き合い、それに対応できる心を育てていきます。

 

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