> > 現実感喪失症候群

現実感喪失症候群


幼少期の頃から、複雑なトラウマを負っている子は、現実の絶え間ない変化に怯えるしかなく、苦しみが続くなかで、良いことも悪いことも感じすぎてしんどくなり、その変化についていけなくなります。トラウマの影響により、呼吸が苦しい、動悸がする、気持ち悪い、身体が痛いなどの症状に混乱して、家庭や学校で脅かされる日々が続くと、自分の居場所が無くなり、体は凍りついて、解離傾向が高まり、肉体そのものが感じられなくなります。そして、彼らは、辛い状況において、自分の居場所がないとき、自分の心の中に好きな世界を作り、その世界の中で楽しみを増やして、現実世界の苦痛をシャットアウトしていく方法を学んでいきます。

 

現実感喪失症の人は、人から酷い目に遭わされても、平気でいられるように、心の逃避先があります。この逃避先は、現実とは違う領域にあります。彼らは、外の世界に対して、恐怖や敵意があり、脅威が差し迫ってくると、息を止めて、動けなくなり、体はフリーズして、体の輪郭がはっきりしなくなります。体を置いて、魂が抜け出すと、現実から離れていき、頭の中の世界で生きるか、夢心地の世界に飛ぶか、薄い膜に覆われて内側に隠れます。心は現実感を失い、空想世界(妄想世界)に籠り、白昼夢に耽り、現実を感じないように自分だけの世界を作ります。体はそこにあるけど、現実に即した生き方ではなくなり、トラウマティックな解離状態に固着することになります。

 

あまりにも辛くて、苦しい毎日の繰り返しで、身体感覚や感情を麻痺させた人が、今ここにいるという感覚を持つと、耐え難い苦痛や希死念慮に襲われるか、体が鉛のように重くて、しんどくなります。また、外の世界では、人から傷つけられることを恐れて、恐怖に感じてしまい、それらを防げないと思います。そのため、子どもの頃から、現実に接していない、自分しかいない世界のなかで、一人で遊んでいます。その結果、現実の時間が止まってしまって、小・中学校から高校生にかけての記憶を全然覚えていない事があります。

体の捻じれや固まり


複雑なトラウマを負っている人ほど、常に体が凍りついているか、死んだふりをしており、最悪の場合は、虚脱状態にあります。トラウマの衝撃により、痛みで捻じれた体を持ちながらも、相手の意向を汲もうとするため、さらに体を捩じられるか固まらせて、辛抱するしかありません。変な癖をもったまま自分をごまかす生活が続くと、過去と現在とが折り重なり、体ごと別の世界に移されたりします。また、生活があまりに苦しいのに、じっとしているしかない場合には、体が小さく縮まって、固まってしまい、現実とは異なるあちら側の世界に行きます。

現実感がない人の世界


慢性的な長期トラウマの体験から、解離している人は、過去に大きな精神的ショックを受けていて、しばらくはそのことを忘れていましたが、それを思い出してから怖くなり、また忘れることを繰り返します。心が体から離れて、重力を失い、足元がフワフワして、現実感が無くなると、今ここにいるという感覚が無くなり、自分が現実に生きている感じが無くなって、ぼんやりとした夢を見ている感じとか、白昼夢に耽るとか、いつも遠くから自分を見ている感じに映り、周りの人と住んでいる場所や時間が違います。誰かと一緒の空間にいても、自分は離れた場所から見ているとか、別の空間から見ているように感じます。彼らは、自分が自分で無くなり、この世界に取り残されて、皆と同じ時間が流れていないように感じます。現実世界の出来事が動いていっても、ぼーっとして時間だけが過ぎていき、空想の方に行ってしまうため、現実感がありません。現実逃避して、空想世界に浸り込むと、仕事や授業中も半分その世界にいて、上の空になって気づかなくなっていきます。そして、まるで夢の中で生きているような感じで、自分が現実だと思っていたことが実は夢の世界の出来事で、夢と現実の区別が分からなくなる人もいます。

現実感喪失症のチェックリスト


とても辛くて、とても苦しい毎日の繰り返しで、トラウマのせいで現実感がない人は、自分のことが分からず、何をしても夢の中にいるようで現実感がなく、浮遊しているようで、生きている実感がありません。

 

・この世界そのものから切り離されたような疎外感がある。

・この世界に恐怖や敵意がある。

・遠くから自分を眺めている。

・現実世界に疲弊している。

・頭の中が霧がかってる。

・体を固めたり、捩じったりしている。

・現実感がなく夢の中にいるように感じる。

・頭の中の白昼夢に逃げ込む。

・自分の感情が怖い。

・楽なほうに飛んでいく。

・いつも見る風景がまるでフィルター越しに見える。

・ヴェールがかかったように膜を通して眺めている。

・辛い毎日の繰り返しで、体の感覚が麻痺している。

・仕事中に上の空になって現実に気づかない。

・日中から眠気が出てくる。

・体がふわふわしている。

・自分が自分でなくなるような感覚がある。

・自分のことがよく分かっていない。

・自分のことを誰も分かってくれない。

・自分と外の世界の境界性が曖昧。

・人の話が耳に入ってこない。

・どうしようもできない現実にクヨクヨしている。

・苦しくなると、目に見えないものが見えてくる。

・外の世界で目に見えるものが見えにくい。

・実感が乏しい。

・昨日のことを忘れてしまう。

・ネガティブに考えてしまう。

・一日中、何かを考えている。

・あまり記憶が残らない。

・時間の感覚がおかしい。

・個性がなくて、有効な自己主張ができない。

・めまい、頭痛、吐き気、立ちくらみ、震えなど身体症状がある。

・読書や作業に没頭して、今ここにいる感覚が無くなる。

・物心ついたころから、体が弱くて、病気がち。

・親子関係でこじれがち、親に囚われている。

・自分の何者かに狙われているという被害妄想をしてしまう。

・強迫観念が酷いときは、それを打ち消す行動をとる。

・慢性的な離人感や現実感喪失がある。

・幼い頃にアトピーや自家中毒、喘息などに苦しんでいる場合がある。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平

 

▶HOME ▶ネット予約 ▶電話カウンセリング ▶お問い合わせ