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依存性パーソナリティ障害


依存性パーソナリティ障害の人は、怖がりで、落ち着きがなく、自分に自信がない人に多く、他人にしがみつく行動をとり、依存や嗜癖の問題もあり、自分の面倒を見てもらおうとする欲求が強く、何をしようとしても一人ではできなくなります。性格は寂しがり屋で、相手がいることで、安心安全感を得てきたために、一人になると自分の役割が無くなり、どうしていいか分からなくなります。誰かがいることで、自分という存在が成り立ち、何かに依存することで、自分で自分を保てるために、一人になると、その空間ではいられなくなり、寂しさや孤独に耐えられず、誰かを求めて動くか、胸や呼吸が苦しくなるか、自分が自分で無くなるような恐怖が襲います。もともと自分がないから、他人から何か役割が与えられないと、自分の軸が無くなります。

 

原因としては、発達早期のトラウマや複雑なトラウマ、母子関係のこじれ、神経発達の問題、生まれ持った資質の弱さがあると思われます。例えば、過去に恐ろしい外傷体験を被り、その時に、誰かに助けを求めても、誰も助けてくれず、必死に逃げても、捕まってしまって身動きが取れなくなり、大きなショックを受けました。その大きなショックが体に刻まれて、一人になると、誰かに助けを求めたくなり、一人にしないで待ってほしいと思うようになります。また、母子関係の愛着関係に問題があり、乳幼児の頃に、母親と育まれる心の安全基地の存在が希薄で、外の世界を自由に探索できずにいた可能性があります。そして、探索行動の間は、怖がりなせいで、警戒心が過剰になるか、あるいは母親の情緒応答性の悪さや母親の不在を経験しているために、心身のバランスを欠き、自分の中の恐れや不安の情動を自己調整できないという不全感のなかで育っています。大人になった今でも、人との関係で本当に深いところまで入れず、自分が現実と直接関われていないように感じています。依存傾向が強い人は、自分の中の恐れや不安を強烈に感じやすく、無力になればなるほど、焦りを感じて、誰かにしがみつきたくなり、周りを巻き込んで、安心や元気が得られるまで相手のことを離そうとしません。また、依存性パーソナリティ障害の人は、子どもの頃から、孤独で、人との距離があって、つかみどころのない性格をしており、母親か、家族の誰か、空想上の人物にずっとくっついてべったりだった過去を持つことが多いです。

 

赤ん坊の頃から、引っ込み思案で怖がりで不安が強くて、探索行動のときは、母親が安全基地として機能せずに、どっちにいけばいいかわからず、おろおろしていました。また、新しいことをすることに対して、恐怖があり、ふらふらしていました。周囲の目がその子に集まると、焦りが強くなり、どうしていいか分からなくなって、身体の方に何かが起きて、パニックになる、頭が真っ白になる、言葉が出てこない、お腹が痛くなるなど、いつも失敗してきたように感じています。子どもの頃から、人間関係が上手くいっていないように感じており、自分に自信が持てなくて、対人恐怖があります。現実に恐怖を感じてしまうと、誰にも守られていないように感じて、愛着対象を求めてしまいますが、自分一人しかいない場合は、自己否定が強くなり、苦しくなるために、何も感じないようにしたり、頭の中で勝手な空想を広げたりしてきました。集団場面では、恥をかきたくない気持ちから、過度に緊張しやすく、感情が高まって、顔が赤くなる、胸がドキドキする、汗をかく、手が震える、体が痺れる、頭がフリーズするなど、落ち着きがなくなって、逃げ出したくなります。

 

もともと怖がりな性格なうえに、とても辛い毎日を繰り返してきたために、身体がギュッと縮こまった状態で、ロックされています。長年に渡って、無意識下で凍りつくような状態が続くと、自己感覚が麻痺していきます。身体が麻痺していくと、自他の区別がつきにくくなり、相手との境界線が失われてしまって、恐怖と依存心が高まります。さらに、自己感覚が希薄になると、自分で自分を満たすことができないために、他者を通して自分を満たす必要があります。また、身体の過緊張や凍りつきを緩めるために、母親や家族の誰かにくっついて、頼って、すがって、世話をしてもらうことで自分を楽にしてきました。普段から、自分のことよりも、他者の反応が気になり、自分は迷惑をかけていないかとか、相手はどんな気持ちでいるだろうかと考えています。一人でいるときは、自分の不安を埋めるために、空想を膨らまして、愛着対象のことばかり考えています。大人になった今では、自分の好きな人に嫌われることが怖くて、自分のもとから離れていかないか不安で、いつも心配しすぎています。その人が他の誰かと話すことが許せなくて、見捨てられ不安が高まると、質問責めをして、イライラしたり、手を出したりして、相手とぶつかってしまうこともあります。本人は好きな人とだけ繋がっていればよく、恋人のことで頭がいっぱいで、とにかく愛されたくて、構ってほしくて、必死に相手のために頑張って、その他には何もいらないと思っています。

 

依存できる相手との恋愛関係が終わると、一人で過ごす時間が増えて、自分と向き合わなければならなくなります。ただし、自分に向き合うと、虚しさのなかに引き込まれて、過去のトラウマが再活性化されるため、ソワソワして、落ち着かなくなります。そして、焦燥感に駆られて、イライラしたり、胸が痛んだり、将来に対する不安から、次の異性の対象をすぐに見つけようとします。彼らは、自分一人では十分に生活できないと思っていて、一人になると落ち着かなくなり、寂しさを抱えられず、誰でもいいからと出会い系をして、複数の人とお付き合いをすることもあります。一人では、孤独で不安で何も手につかず、漠然とした恐怖に襲われてしまって、どうしていいか分からなくなります。自分はもうダメだという気持ちが先行してしまうと、過去の失敗体験にとらわれて、グダグダと悪いことばかりを考えて、それに振り回されてしまって、じっとしていられずにその場で自分を元気にする手段を取るか、もしくは身動きが取れずに引きこもります。

 

一人で生きていくことが想像できなくて、自分で自分の満たし方が分からず、自分で何かを選ぶことができず、心の行き場がありません。自分が生活していくために、どうしても相手が必要な場合は、人は相手を使ってなんでもしようとします。そして、人に依存しながら、自分の好きなことをして、相手が自分の思い通りに動いてくれているときは、安心して、幸せに過ごすことができます。自分は相手のために何でも頑張りたいと思っており、一生懸命に尽くして、自分のことを可愛がってもらおうと努力します。と同時に、相手も自分のために何でもしてくれると思っているので、世話をしてもらえるという欲求が過剰になり、相手が何もしてくれないと腹を立てて、怒ってしまうことがあります。そして、自分では処理できない負の感情を相手を使って処理しようとするところがあります。依存される方は、べったりくっつかれたり、感情をぶつけられたりして、どんどん巻き込まれていくために、次第に手に負えなくなります。

 

日常場面では、他人の顔色を伺っていて、自分がどう見られているか気にして、自分の判断や考えに自信が持てません。恥をかいたり、怒られたりすることに恐怖があり、身体は緊張しやすく、怖くなると、ぼーっとしたり、固まったり、無表情になったり、現実感が無くなることがあります。特定の依存対象以外には、対人恐怖や身体症状があるので、とどまっていたら危ないから逃げようと回避行動を取りますが、逃げ場がなくなると、フリーズして息が出来なくなり、ぐったりします。

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依存性人格障害のチェック項目


①一人では寂しさを抱えられず、孤独に耐えれなくて、人に酷く依存した生き方になります。

②一人では何も出来なくなり、自己否定が強くて、苦しくなり、自分が自分でなくなる不安があります。

③何かに依存することで自分で自分を満たそうとします。

④自分がないから、何かに依存しないと自分の軸が無くなります。

⑤自分の軸は小さいですが、他人の存在がとても大きいです。

⑥他人の存在が大きすぎるために、たえず緊張し、警戒しています。

⑦心と体が分離していて、役割に従って生きています。

⑧新しいことを始めたり、新しい場所に行くことがでいません。

⑨子どもの頃から、大人のことが怖かったりします。

⑩責任を避けようとしたり、批判されることを恐れています。

⑪頭の中が恋人のことばかりで、空想・妄想癖があります。

⑫予期不安が高まると、パニックなどの様々な身体症状があります。

⑬他人の顔色を伺い、人にどう思われているか気にしています。

⑭自分の判断や考えに自信がなく、自分では何もできません。

⑮目の前の現実から逃げ出して、依存対象に注目されたいと全てが向かいます。

⑯依存対象を自分の母親のように見ており、子どもの頃は母親にべったりくっついていました。

⑰依存が酷くなると感情を抑制できず、感情をぶつけてしまいます。

⑱将来、自分が一人になってしまうことを怖がります。

⑲将来の不安が強く、ストレスで感情的になりやすいです。

⑳自分の感覚が希薄なので、自分で自分を満たすことができず、楽しさや幸せを他人で満たします。

㉑異性の対象をすぐに見つけては、注目されようと努力して恋愛体質です。

㉒引っ込み思案で怖がりで、臆病な性格なので、誰かに守ってもらいと思っています。

㉓仲良くしている人が他の誰かと話すのが耐えられず、見捨てられた気分になります。

㉔見捨てられ不安があり、愛されていない自分に価値はなく、対象がいないと無になります。

㉕子どもの頃から、孤独感があって、自分の居場所がありませんでした。

㉖集団場面は複雑になるので苦手で、人間関係は1対1が好きです。

㉗好きな人に注目されることを望んでいますが、一方、人の視線を怖がります。

㉘身だしなみを綺麗にして、好きな人の肌に触れたり、撫でられたりすると安心します。

㉙他者との境界線が弱く、相手の感情が自分に入ってきます。

㉚外に出たり、集団場面では、過緊張やフリーズ状態になります。

㉛人に依存できないときは、過食やアルコール、薬物、セックス、ギャンブル、買い物に依存して辛いことを忘れます。

㉜嫌なことを持ちこたえる力が弱く、逃げ癖があります。

㉝現実感が薄く、自分が直接現実に関わっていない感じがします。

依存性パーソナリティ障害の診断基準(DSM-5)


面倒をみてもらいたいという広範で過剰な欲求があり、そのために従属的にしがみつく行動をとり、分離に対する不安を感じる。成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる。以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示される。

(1)日常のことを決めるにも、他の人達からの有り余るほどの助言と保証がなければできない。

(2)自分の生活のほとんどの主要な領域で、他人に責任をとってもらうことを必要とする。

(3)支持または是認を失うことを恐れるために、他人の意見に反対を表明することが困難である。

(4)自分自身の考えで計画を始めたり、または物事を行うことが困難である。

(5)他人からの世話および支えを得るために、不快なことまで自分から進んでするほどやりすぎてしまう。

(6)自分自身の面倒をみることができないという誇張された恐怖のために、一人になると不安、または無力感を感じる。

(7)1つの親密な関係が終わったときに、自分を世話し支えてくれるもとになる別の関係を必死で求める。

(8)一人残されて自分で自分の面倒をみることになるという恐怖に、非現実的なまでにとらわれている。

 

参考文献

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平

 

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