人生論

▶人生論

 

人が困難に直面したときに、ネガティブな考えを引きずり、不安から動けなくなってしまう人がいますが、そこから立ち直って人生を前向きに進めていくためには、そのような辛い経験に向き合って乗り越えていくことが大切です。

 

そのような強さは、レジリエンスと呼ばれています。精神科医で精神分析家の西園昌久(2017)は、それを風雪に耐える竹の強さに例えています。頑強ではないのに、外力にさらされても、容易に壊れたり、倒れたりすることなく、むしろ、外力にかかわりながら復元していく竹に着目しています。辛いことに直面しても、折れてしまうのではなく、しなやかに、柔軟にやりくりする力とでもいえると思います。

 

竹は、外側と節が硬く、内側はやわらかい組織の二つの構造でできています。西園は、母親との関係でできる安心・信頼・自他の区別などの働きをするのを「皮膚性自我」と呼んでいます。乳児の頃は、主に母親を相手にしてこれらを育んでいきますが、次第に筋肉が発達していくと、母親に変わって父親が遊び相手に求められるようになると言います。より筋肉を使う遊びであるボール遊びやかけっこなどを通じて、勇気や因果関係の判断力、自己規制する力などが育っていくと言われています。西園は、それを「筋肉性自我」と呼びます。 トラウマ的な経験から回復して前向きに生きていく力を、竹の「やわらかさ」と「強さ」の二重構造に例えられていましたが、「皮膚性自我」は「親子のしなやかさ」の「やわらかさ」と、「筋肉性自我」はその「強さ」と関連しているために、それらの両方を鍛えていく必要があります。

 

このためには、皮膚感覚と筋肉のあり方を鍛えて、しなやかや強さを身に着ける必要があります。皮膚感覚は、母親との関りから生まれるような安心安全感、筋肉の感覚は、父親との関係性から作られる強さと関連します。

 

人は身体的存在であるため、身体に不快感があると、頭と身体が離れていって、神経の働きが異常になり、筋肉がその強さを失っていきます。そして、身体がしなやかでなくなり、衰弱していくと、ストレスがかかる度に、身体の中心は固まり、末端の部分は、筋肉が伸び切ったような状態になり、自分の体重を支えるのが大変になります。身体が怠くて重くなっていくと、身体の反応も鈍くなり、神経や脳、内臓に左右して、心が働かなくなっていきます。

 

▶身体を維持することで人生を生きていく

 

人が生きていくうえで、物事をよく考えて行動することが大事と言われています。しかし、身体が弱くて、自分を過剰に守ろうとする人は、頭の中があらゆるパターンを想定し、損得勘定のマシーンになってしまっていることが多くあります。損得勘定のみで物事を考えてしまうと、頭の中が思考ばかりになり、身体の感覚(皮膚や筋肉、内臓)で物事を感じることが難しくなり、あらゆる事象をより繊細に捉えて、感じることができることができなくなります。周囲の環境や人との関りを、自分の腹や胸で感じて、感覚を研ぎ澄まして、直観のようなものを大切にして感じることが大事です。

 

頭で思考して、文字で物事を考えるのではなく、身体で感じることがとても重要です。身体を使って活動することで、新たな経験が開かれて、自分を落ち着かせることもできるようになります。しかし、身体が弱い人やトラウマを負った人は、不快な感覚で埋め尽くされる前に、感覚麻痺に陥り、身体の感覚が分からなくなります。

 

自分が自分であるという自己認識を成立させるには、身体内部(皮膚、筋肉、内臓など)の感覚が必要になります。身体の感覚が麻痺すると、自分が自分であるという感覚が分からなくなります。身体内部の感覚で日常の事象を感じることで、自己の経験が深まり、感受性を高めて、視野を広げることになります。自分を取り巻く環境や、人間関係を、自分の身体感覚を通じて経験することで、自分の感覚というものが育まれていきます。しかし、トラウマや身体の病気、神経発達の問題が原因となって、身体感覚を柔軟性をもって広げることができなくなると、喜びや悲しみや怒りなども感じることができないカチコチの心になっていくことがあります。

 

▶より良い人生を歩むには

 

トラウマがある人は、外の世界を脅威に感じ、神経を張りつめて、身体を凍りつかせているので、あらゆる働きかけにも心を開くことができずに、相手に心を閉ざしがちになります。重要なのは、外に対して心を開き、リラックスして、大胆になっていけるどうかです。

 

人間の主体や心は、身体の生理状態のあとにくるものと言えます。自分の主体や心の回復には、生理状態を良くしていく必要があります。生理状態は脳と体を繋ぐ神経に左右されるので、神経の働きを変えていくための方法としては、ヨガや動く瞑想などをして、体の筋肉の伸び縮みを見ていきながら、呼吸を整えていくのが良いと言われています。良い現実を作るには、健康が重要になり、筋肉の状態を整え、安心できる神経を働かせます。

 

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解離研究

障害となる解離症状では、生活上の不安や恐怖、痛みで神経が張りつめており、身体は収縮して、凍りつきや死んだふり、虚脱化して、背側迷走神経が過剰に働き、脳や身体の機能に制限がかかります。

トラウマ研究

外傷体験を負うと、生命が脅かされ、尊厳を踏みにじられ、強い衝撃を受けて、心に恐ろしいことが起こり、体や神経が滅茶苦茶になります。トラウマを負った後は、心と体に爆弾を抱えて生きるようになります。

綱渡りのような人生

小さい時から、トラウマティックな状態に固着している人は、綱渡りのような人生になり、空中に張った1本の綱を恐る恐る渡り、慎重に生きないと恐ろしい目に遭うと感じており、ギリギリの中を生き抜いてきました。