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小児期トラウマ


小児期トラウマがもたらす病

ここでは、ACE(逆境的小児期体験)研究の実態について、ドナ・ジャクソン・ナカザワの「小児期トラウマがもたらす病」を引用して述べています。最近の研究によると、子供時代に何度も予測不能なストレスに直面すると、大人になってからの健康状態に影響を受けます。具体的には、自己免疫疾患、線維筋痛症、うつ病などの重篤な病気の一因になります。

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小児期トラウマの実態


神経科学、心理学、医学における新たな発見によって、小児期の逆境が人間を生物学的に変えるプロセスが解明された。この画期的な研究は、幼いころに受けた精神的なトラウマは想像以上に広範囲に及ぶ結果を招くことを物語っている。逆境的小児期体験は人間の脳の構造や免疫システムのバランスを変え、身体と脳の両方に炎症を起こし、成人後もずっと身体の健康全般や寿命に影響を与える。こうした身体の変化によって、生涯にわたる私たちの行動、仕事、子育て、交友関係、恋愛のパターンが決まるのだ。

 

デューク大学、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、ブラウン大学における研究では、小児期の逆境は人間を細胞レベルで傷つけ、細胞を老化させて寿命を縮めることが明らかになった。子どものころにストレスに直面した大人は「テロメア」と呼ばれる部分(DNAストランドの末端にあり、染色体を保護する役目を持つ)がより短くなる。すると病気にかかりやすくなり、老化のスピードが速まる。テロメアが老化して尽きると細胞の寿命が尽き、その結果、私たちの寿命も尽きるのだ。

逆境的小児期体験調査


逆境的小児期体験調査(ACEサイト)は、10項目ありますが、ここではその一部を引用します。

 

1.親か同居している大人から頻繁に、または日常的に罵倒、侮辱、悪口、屈辱を受けていたか?もしくは危害が及ぶかもしれないという恐怖を与えられていたか?

はい   いいえ     はいの場合は「1」を記入

 

 2.頻繁に、または日常的に、家族の誰からも愛されていない、あるいは自分が大事で特別な存在だと思われていないと感じていたか?もしくは家族が互いに関心がない、親しみを感じていない、助けあっていないと感じていたか?

はい   いいえ     はいの場合は「1」を記入

 

3.頻繁に、または日常的に、食事が十分ではない、汚れた服を着なければならない、自分を守ってくれる人がいないと感じていたか?もしくは親のアルコールか薬物依存により、面倒を見てもらえなかったり、必要なときに病院へ連れて行ってもらえなかったりしたと感じていたか?

はい   いいえ     はいの場合は「1」を記入

 

『小児期トラウマがもたらず病』(ドナ・ジャクソン・ナカザワ著、パンローリング、2018年刊)より引用

 

 「はい」の数を合計して記入(これがあなたのACEスコアとなる

 

このACEスコアが最大で10になります。

ACEスコアが「0」の人は3分の1程度。

ACEスコアが「2」以上の人は40パーセント。

ACEスコアが「4」以上の人は12.5パーセント。

 

ACEスコアが「4」の人は「0」の人にくらべてがんと診断される確率は2倍。スコア1点増えるごとに、成人後に自己免疫疾患で入院するケースは20パーセント上昇する。「4」の人がうつ病となる可能性は「0」の人の4.6倍だった。ACEスコアが「6」以上の人の寿命がおよそ20年短かった。

 

この研究から、成長期に経験した精神的・身体的逆境による慢性的なストレスが、何十年もたってから病気を引き起こしていたのだ。たとえば、子どものころに両親を失くしたり、精神的または身体的虐待を受けたり、ネグレクトを経験したり、両親の喧嘩を目撃したりした人は、大人になってから心疾患、肺疾患、糖尿病、頭痛、多発性硬化症を発症する確率が高い。同様に、がんや脳卒中の危険も高くなる。子ども時代に困難な環境に身を置くだけで、成人期に慢性疲労症候群を患う確率が6倍に増える。親を失った子どもはうつ病のリスクが3倍、両親が離婚した子どもは一生のうちに脳卒中を起こす確率が2倍になる。

 

当初はこの10項目であったが、その後の研究によって、他の小児期のトラウマ(親との死別、きょうだいが虐待される場面を目撃、居住する地域における暴力、貧困家庭、父親が母親に虐待される場面を目撃、クラスメートや教師によるいじめなど)も長期間にわたる影響を及ぼすことが明らかになった。以上から、子どもの頃の逆境体験(トラウマ)によって、生活先般が困難になり、脳の働きや体の状態に変化が出ることが明らかになっている。子どもの頃のトラウマが複数あると、寿命を5年から20年縮めてしまう。