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カウンセリング効果と内容


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 第1節.

当相談室のカウンセリング


セラピストはトラウマ自体を治すのではなく、セラピストは、共感、助言、ヒント、ガイド、アシスタント役になります。治すのは、自分自身であり、トラウマから回復できるかどうかは本人次第なところがあります。トラウマ治療では、頭で自分の状態に気づくトップダウンの部分と、体験を通して自分を変容させていくボトムアップの両面が必要になります。また、セラピストとのセッションを受ける以外にも、日常生活の中で、自己調整スキルを磨いて、自分で努力していく必要があります。そして、自分で努力してたことを振り返り、自分ならできるという自信をつけていきます。その結果、ありのままの自分を肯定できるようになれば、トラウマの嫌な記憶を思い出しても、全然気にならなくなります。また、自分に自信を持ち、自分の未来を肯定できるようになり、適度に相手のことを考えられて、堂々と人生を歩めるようになります。

 第2節.

トラウマアプローチの10項目


①良い体験をしてもらうことに比重を置き、セラピストは、この人に何が役立つのかを考え、環境機能に働きかけるサポート役や、人と話すことに幸せを感じてもらうことに重点を置いています。

 

②あなたの被害感情(耐えられないこころの痛みや不安)をセラピストが共有することにより、今までないがしろにされてきた自分の人生から自由になっていけるように支援します。

 

③東洋の瞑想と言われるマインドフルネスやソマティックエクスペリエンス、呼吸法、自律訓練法、漸進的筋弛緩法、タッピング、イメージ療法に取り組み、身体の生理的な反応の変化を見ていきます。内なる感覚の変化(あるひとつの領域)に注意を集中していくことにより、周囲に向ける意識が弱くなって変性意識状態に入りやすくなります。そして、変性意識状態に身を置いて、次に起こることを見ていきながら、西洋の瞑想と言われる自由連想法やアクティブイマジネーションへと移行します。目をつぶり、身体に注意を向けながら、こころに浮かび上がるイメージや空想に耽って、思いついたことを自由にお話することで、精神性と身体性が高まり、こころの平穏が作られます

 

④身体的アプローチでは、体のあらゆる部位を見渡して、自分の中に体がどの程度存在しているのか見ていきます。まずは、緊張させた肩がどう動きたいのかを見て、実際に動かしてみて、心と体を一致させて、緊張をほぐします。また、口をパクパクするとか、眼球を左右上下に動かして景色を見るとか、顔や顎の筋肉の緊張を見ていき、弛緩させます。さらに、手で物を掴んだり、手足をバタバタと動かしたりして、自分の手足の感覚を取り戻します。次に、体の緊張や痛み、冷え、麻痺している部分を見つけたら、その部分を両手でもんだり、触れたり、叩いたりするタッピングを用いるか、ヒーリング音楽を聴くか、頭の中で良いイメージを思い浮かべて、身体感覚の変化を見ていきます。また、体の緊張している部位をリズミカルに動かして、体の中の痛みや不快感、震え、揺れに気づき、その感覚がどのように変化していくかを見ていきます。体の中に様々な生理的変化を起こし、それを全体に波及させて、体の内側から震えや熱を使って、緊張をほぐします。

 

最終目標は、望みの捨てた絶望状態に入り、抜け出るかどうか、動くかどうかの極限に立たされますが、そのような状態をじっくりと味わい尽くすことで、人間本来の自然治癒力を引き出され、身体の中に閉じ込められたトラウマを解放し、全身が拡張していきます。その結果、トラウマによる自律神経系や内分泌系の調整不全が改善されて、全身が軽くなり、深い呼吸ができるようになって、その日は安心して眠れるようになります。このようなセッションを継続していくと、健康状態が段階的に良くなっていくので、様々な心身の症状を改善できる可能性があります。

 

⑤ナラティブアプローチの外在化技法を使い、情動的な人格部分とか、外の気配や影とか、内なる他者の声に精霊の名前を付け、あなたの問題を分かりやすくしていきます。また、その部分を切り離すのではなく、理解を深めていくことにより、内なる自分や内なる子ども、内なる他者、自然に住んでいる精霊と向き合い、その部分に守ってもらったり、助けてあげたりして、コミュニケーションをしていきます。

 

⑥より良い日常生活を送るためのスキルの獲得や、トラウマによる脳や神経系、無意識化の過緊張や凍りつき状態、身体の生理的な反応を理解し、自分をコントロールするための心理教育を行います。

 

⑦精神分析療法のメンタライゼーション等の技法を使い、今ここで起こっている事象に気づき、物事に対する見方を広げていきます。そして、予測できない他者の行動や、不確かな人間関係に耐え忍び、円滑に歩めるように支援します。

            

⑧カウンセリングルームのなかで、クライエントの内的現実とセラピストの外的現実との間で浮かび上がる転移感情とか、思考パターン、筋肉の緊張、身体感覚、自分のこころの動きを見つめていきます。そして、自分について語り、自分に向き合い本音や本当の感情を表現して、それをセラピストが受け止めます。クライエントは、自分への理解を深めて、心の落ち着きを取り戻します。

 

⑨問題の根源となる不安や恐怖をトータルで振り返ることにより、症状や悩みを低減させ、人生の諸問題に対処しやすくすることを目指します。

 

⑩必要があれば、トラウマ記憶に焦点を当てたナラティブエクスポージャーを行い、自分の人生の物語を書き換えていきます。

 第3節.

カウンセリングの期間


早急な解決は難しく、一進一退の攻防をしながら、毎週1回を通常半年から一年以上かけて行うのが普通です。ボーダーライン(複雑性トラウマ)のような人は、数年間で治すことは難しく、個人療法と集団療法を併用し、3~7年ぐらいかかるのが一般的と言われています。時間と費用がかかることを理解する必要があります。ただし、アメリカ発の最新のトラウマ治療は、随分と進んでいるので、重い症状でも2~3年ぐらいで寛解していくかもしれません。

 第4節.

カウンセリングと日常会話の違い


人は自分にとって居心地の良い人間集団の中で、同調しあい、見たいものしか見ようとしない傾向があります。そのため、日常で意見が対立した場合、もう友人でいることを辞めてしまいたくなります。カウンセリングと日常会話の違うところは、毎週続けることによって、今まで避けてきた自分の見たくない面とか、触れたくない感覚や感情に向き合うことになり、それに対応できる心を育てていくことにあります。それには、自分のことを正直に話していく覚悟や、自分に向き合うモチベーションや忍耐力が必要です。たとえカウンセラーと意見が対立して、その場が陰性感情に支配されても、率直に意見を述べながら、その関係性の中でお互いが生き残って、継続していくことができれば、新しい人間関係のパターンが手に入ります。また、誰にも言えない自分の中に隠していた秘密事をセラピストと共有することにより、大きすぎる感情を一人で抱えなくてもよくなり、恥の感覚が影をひそめて、新しい自分に生まれ変わります。

 第5節.

自分の見たくない面とは


トラウマになる過程というのは、不意を突かれた人が、自分を圧倒するような凄いショックに襲われ、身動きが取れなくなる体験であり、その時、体は硬直し、痛みが突き刺さり、激越な感情を起こします。人はトラウマ体験後も、現実世界の出来事に怯え、身体の方は恐怖や戦慄を記憶しており、そのまま心身の症状として出現します。そのため、自分の見たくない面が大きいトラウマの場合は、見て見ぬふりをすることは正常な反応であり、人はトラウマに似た不快な感覚や感情を麻痺させながらも日常生活に適応しようとします。 しかし、自分の見たくない面を見ないでいると、無意識のうちにトラウマの影響を受けた行動をそのまま取るようになり、価値観や認知に歪みが出て、心と身体がアンバランスに成長していくかもしれません。一方、自分の見たくない面に触れると、不安や焦り、不快感、緊張感などが出てきて、その場から逃げたくなるかもしれません。また、思いがけない悲しみや怒りが蘇ってくることで、その痛みを知ることになりますが、それを自分の感覚や感情に統合して、ふさわしい行動を取れば、新しい経験になります。例えば、自分の見たくない面に直面すると、子どもの頃の自分の奥底に眠る本音に気づくことがあるかもしれません。そして、親を求めることと、その求める気持ちが溢れて、それが叶わずまた傷ついてしまうのが怖いので切り離そうとする心の動きを見ていき、未解決なこころの痛みを和らげます。

 第6節.

カウンセリングでは


人は生きている限り対話をしつづけているものです。カウンセリングでは、専門的な技術を持つセラピストと対話をします。自分自身が抱えている問題や過去について正直に思い出し、思い浮かんだことを自由に話していただきます。カウンセリングルームは、セラピストとの関係性により、陽性/陰性の転移感情で支配されますが、その中を生き残ることで、古い行動パターンが新しい行動パターンに変化します。また、対話を通したカウンセリングにより、自分の気持ちを言葉にして、自分のことを掘り下げて、自分の人生の物語を書き換えていきます。

 第7節.

カウンセリングを続けていくことで


自分の人生の物語を肯定的に書き換えて、ポジティブな考えや記憶を増やしていけば、体調は良くなります。また、現実に耐え難いことが起こっても、自分の体の感覚や感情、思考、行動パターンに自覚ができれば、ありきたりの不幸に変えていくことが可能になり、自分の人生を生きやすくします。また、本当にやりたいこととか、瞑想(内なる声を聴いていく)に取り組んでもらって、自分の過去の病的パターンとは決別して、再び生きるという感覚を取り戻します。ちなみに本当にやりたいことは、自分の過去を知ることで見えてくるものです。トラウマの克服には、身体とこころへの気づきと安心感を得るとか、安心できる人に思う存分話を聞いてもらうとか、今やりたいことに取り組んでもらって、外の世界の人々と繋がり、幸せを感じることが近道です。

 第8節.

マインドフルネスと身体的アプローチ


複雑なトラウマを負っている人は、身体が凍りつき、感覚が麻痺しているために、解離や離人、時間感覚に問題が出て、いつも過去に存在しているかのように生きており、過去にとらわれ、未来に不安になり、今起きている出来事に集中できません。普段から、警戒心が過剰で、いつもアンテナを張り巡らし、あらゆる外の刺激に注意が向けられています。自分の身体の中はトラウマという爆弾を抱えているために、自分に注意を向けることが難しい状態にあります。

 

当相談室では、イメージワークやマインドフルネスやタッピング、身体志向アプローチを行います。最初は、心と身体が一致しておらず、身体感覚が麻痺しているため、全身をいろいろと大きく動かして、筋肉や内臓、皮膚に振動などの刺激を与えていきながら、身体の内側からピリピリやジワジワと拡がるような感覚を引き出します。その感覚の変化を感じながら、良いイメージに切り替え、身体をほぐしていくことで感覚麻痺を解いていきます。トラウマ治療でよく使われるマインドフルネスは、意識という脳の高次機能を使うことで、今ここで生じている身体内部の感覚の変化を感じて、その部分を活性化させます。タッピングは、身体を優しく叩いたり、揉んだりして緊張を解きほぐしていって、自分の身体を取り戻します。それ以外にも、身体の緊張している部分を、段々と緊張を深めていくイメージをしてもらって、全身を縮ませます。そして、身体を追い込んでいって、そのときの肉体感覚をじっくり体験しながら、固まっている部分に意識を向けて緩ませるか、その身体の部位がどう動きたがっているのかを想像してもらって、実際に動かすことで、身体に変化を起こします。様々なやり方がありますが、日常で自分の身体の生理状態を良い方向に持っていくことができれば、無意識下の過緊張や凍りついた状態に変化が生じて、自分が自分であるという感覚を取り戻します。

 第9節.

凍りつきと崩れ落ちるトラウマへの対処と効果


トラウマの世界に閉じ込められている人は、過去に外傷体験を受けた際に、身体が思うように動かせなくなり、凍りついた経験があります。また、凍りついた後に、絶望がやってくる場合は、心と身体が離れる無力な状態に置かれてしまって、背側迷走神経が過剰に働くなかで、心拍や血圧が下がり、筋肉が崩壊し、機能停止や解離、身体が崩れ落ちます。凍りつきや崩れ落ちるトラウマがある人は、身体がネガティブな状態にあり、脳は危険信号を送り、脅威を遠ざけようする防衛が働くため、過剰に警戒していて、拡張(リラックス)できずに、収縮(緊張)するほうの力が圧倒的です。身体は過緊張や凍りつき、死んだふりの状態が続いており、不安や警戒、焦り、恐怖、痛み、絶望、無力感に支配されているかもしれません。凍りつきや崩れ落ちるトラウマがある人は、自分の意志に反して、脳や身体の神経が危険を察知するために、トラウマへの身体的アプローチが思うようにいきません。

 

最初のうちは、自分の身を守るポーズを取り、危険から逃れることができた安全なイメージを思い出したり、赤ん坊を抱くようなイメージで人形を抱きしめたりして、身体の緊張をほぐしていきます。身体に安心感が戻ってきたら、自分の周囲の様子を伺うために、顔を上げて、目を使って、周りを見渡します。そして、今どんな気持ちなのかを探っていき、全身を思いっきり動かして、身体の動きや感覚に注意を向け、覚醒のエネルギーを引き出していきます。トラウマの渦にはまり込んで、その地獄から抜け出すには、自らが意識的に、望みを捨てたときの絶望状態に入る必要があります。自分の極限の不動状態に入ることができれば、自分を支配する強靭な力の作用を目の前にすることができます。その状態に意識を集中させて、十分に向き合うことで、震えや痙攣、鳥肌が立ち、身体の中に閉じ込められたトラウマが放出されて、自然に終息していきます。無事にトラウマから解放されると、筋肉が適度に緩んで、神経の痛みが消えて、内臓感覚に安心感が戻って、人間本来の収縮と拡張のリズムを刻むようになります。身体内部から変化を起こすことで、神経システムが平衡状態になり、その良い状態を維持していくことができれば、自然治癒力が高まって、トラウマティックな脳まで変えていくことが可能です。効果としては、全身に一体感や広がりを感じて、体が温かく軽くなり、動きが良くなります。呼吸はしやすく、姿勢は良くなり、不眠は解消されて、フラッシュバックが起きにくくなって、過去に引きずりこまれることが減ります。また、対人緊張が緩和し、思考がシンプルになり、様々な身体症状が軽減していきます。

 第10節.

過覚醒に対するワーク


全身を動かしたり、不動状態を出入りしたり、あえて身体を縮ませてから拡げたり、身体の脱力している部分に負荷をかけて力をみなぎらせたりして、その動きや感覚に注意を向けていくことにより、心と身体は一致するようになります。その結果、離人症や解離症状は無くなっていきますが、心が今まで見て見ぬふりをしていた今の置かれた現状や、身体の生理的反応に気づくようになります。緊張しやすく、過敏に反応する身体に気づくことで、物事を適切に処理することが難しくなります。また、自分の身体を取り戻すことで、ソワソワ、モヤモヤ、ムズムズ、痛み、痒みなどに気づいて、不安や焦りが強くなり、嫌な気持ちにはまり込んで、日常生活がスムーズにいかなくなるかもしれません。さらに、無力感に打ちのめされた身体を持つ人は、恐怖や不安なときに我慢して耐えていると、交感神経系に乗っ取らてしまって、口や手足が勝手に動いて、暴言暴力が出たりします。その他にも、誰かを好きになるとか、性欲を感じられるようになることで、欲求不満な日々が続くかもしれません。

 

過覚醒をとるワークでは、自分が鳥になったり好きな海で休んだりするイメージ療法、ヴーと声を出していく呼吸法や鼻で息を吸ってゆっくり吐く呼吸法、シンギングボウルの音を聞く瞑想、自分の身体に触れるタッピング、足上げのポーズをして心拍を下げる方法、イライラした時に身体に注意を向けるマインドフルネスを利用します。特に楽しく身体を動かして、その動きや感覚に注意を払い、居心地良さを作ります。運動した後は、全身の力を椅子に預けて力を抜いていく方法が有効です。また、外出時は、周囲を見渡してここは安全だということを自分に言い聞かせるワークをしましょう。

 

日常生活の中で、緊張が強く、額に力が入り、呼吸が浅く早く、瞳孔が開いて、顎にも力が入って、肩が上がって、口が渇き、手足がムズムズ、ウズウズしてきたら、自分を落ち着かせることができる心地良いイメージをしていくことが有効です。また、足を思いっきり上げて走る運動をして、心拍数を高めたり、手足をブラブラさせることで、身体の血液の循環が戻り、過覚醒や凍りつき、離人の症状を未然に防げます。

 

一人でやることは難しいかもしれませんが、自分の体が不快感や緊張を感じるときに、特定の位置に動かす眼球の動きや首、肩の癖を見抜き、硬直していく過程に注意を向けて、その時の身体の感覚を見ていきます。そして、身体を動かさずに、静止した状態を維持しつづけて、不快感の変化や全身が凍りついていく様子を見ます。最終的に、自然に身体が動くのを待つか、もう耐えれそうにないなら、心地良いイメージに切り替えて身体を見ていくか、全力で身体を動かしたいように動かして弛緩させます。また、自分にトラウマを刻み込んだ最も嫌な人を思い起こしてもらって、怒りのなかで相手を打ち倒して、勝利を得るという動作を伴ったイメージワークをしても良いでしょう。

 

トラウマを解決していく方法としては、身体の中に閉じ込めたトラウマを解放するエクササイズになります。まずは、トラウマを思い起こして、固まり凍りつく状態を作ります。その後、最悪な状態にある身体に意識を向けることで、トラウマという過剰なエネルギーで膨れ上がりますが、すぐに放出されて、身体の状態が反転します。うまくいくと、オキシトシンが出てくるので、急に気分がスッキリして、目が大きく開き、身体の硬直とイライラが取れていきます。

 第11節.

瞑想していくことにより


東洋と西洋の瞑想により、自分の本音や本当の気持ち、生き生きとした感覚を取り戻すことができます。また、落ち着いて意識を集中した状態を学べるため、感情や精神状態が不安定にならずに済むようになります。トラウマにより、不動状態(凍りつき、死んだふり)にある人が、安心できるイメージや望ましいイメージに切り替えることができるようになると、身体が休息やリラックスモードに変わっていくので、全身の緊張が取れて、体質は強化されます。また、瞑想が熟達すれば、心拍や呼吸が少なく済み、身体のエネルギーを使い過ぎずに生きることが出来るようになるため、細胞の新陳代謝や老化を遅らすことができます。さらに、極限の不動状態に入るような瞑想を続けることにより、精神性、身体性、こころの創造性、審美性、自己管理能力、ストレス耐性が高まります。そして、日常生活において、対人恐怖症や集団場面が苦手な人が、身体の凍りつきや過覚醒、難しい情動、生理的反応にも対処できるようにします。

 第12節.

自己理解、内なる感覚の気づきを深める


セラピストとの対話を通して、こころや精神、身体を内部から緻密に分析していくことで、未知の領域への気づきを得て、自己理解と内なる感覚を深めていきます。自己理解を深めることにより、問題の解決能力が高まり、社会への適応力があがります。また、内なる感覚を深めることにより、地に足をつけてしっかり現実を生きること(グラウンディング)ができるようになります。そして、自分を外から見る目と、内なる感覚やこころの声に気づく耳の両面を持ち、本来の自分が生きれるようにします。その結果、憂鬱さや不安定な感情が消えていき、目的達成力、集中力が高まり、強い自分になって、やるべき仕事や勉強に取り組むことができるようになります。

 第13節.

トラウマの変容には


トラウマの中核は、生々しい自己保存エネルギー(恐怖や激しい怒りのような情動)に溢れています。トラウマの変容には、情動的な部分と理性的な部分のバランスが必要になります。情動脳に意識的にアクセスできる唯一の方法は、自己認識を通すことと言われています。トラウマの変容には、内部の経験を知覚して、自分の内部で起こっている事と仲良くなり、感じ方を変えていくことにあります。

 

まずは、うずくまる姿勢を取って、安心できる記憶や安全なイメージを思い出して、身体感覚の不快な感じから、心地よい感覚への変化に気づき、こころの中にイメージが生まれます。そのイメージから物思いに耽り、セラピストに心のうちを明かしていきます。こころや身体の中に安全な感覚を発掘できれば、トラウマという地獄の世界の門が開きます。そして、最下層の凍漬地獄を体験をしつくすと、凍りつきが解けて、両腕や両太もも、身体の中に温かい感じが入ってきます。再び身体の中に魂が戻って、身体性と精神性が統合されると、生きた心地がするようになります。また、トラウマ支援では、低覚醒状態から少しずつ回復していって、心と身体の一致を目指していきますが、同時に、交感神経過剰な過覚醒に乗っ取られないように対処しなければならなくなります。この二つの覚醒度合いをコントロールできるようにして、穏やかさの中で日常の暮らしが送れるように支援します。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平