イメージ療法


イメージ療法では、心、身体、感情、思考、視覚、聴覚などを使いながら、頭の中でイメージを思い浮かべて、そのイメージを体験していくことが治療になります。イメージ療法は、指定イメージ法と自由イメージ法があります。当相談室では、指定イメージと自由イメージを両方使い分けながら行います。

 

トラウマがあって、その症状に苦しんでいる人は、心に余裕が無くて、ネガティブなイメージやマイナスの記憶ばかりで頭のなかを占めています。逆に、ポジティブなイメージやプラスの記憶が多くある人は、心に遊びがあって、トラウマになりにくいです。頭(心)の中のイメージや空想、思考は、そのまま体に直接影響を与えます。体の状態が悪い時は、頭(心)のイメージや空想、思考も否定的になっています。

 

気持ちが落ち込んでいるときとか、体調が悪いときは、望ましい記憶や安心できる記憶を思い出して、頭の中でイメージや空想していくと、体の状態が随分と変わります。良い記憶がない場合でも、何か良い空想をしていると身体感覚が変化して元気になります。良い記憶や良いイメージすることで、お腹や胸の苦しみ、手足の冷えが取れて、温かい感じに変わります。体調不良が起こりやすい方には、この方法は有効だと思います。ただ、ずっと温かい感じが続くわけではなく、時間が経つと体が緊張していったり、落ち着かなくなったり、麻痺していくことを繰り返すことになります。

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望ましい自分のイメージ


人は望ましい自分のイメージをすると、そっちの方向の身体の状態になり、動きや声のトーン、表情が柔らかくなり、いい雰囲気が出て、人間関係が円滑になります。一方、マイナスな方に考えていたら、身体もこわばり、話し方もギスギスして、相手に与える印象が悪くなります。ただ、トラウマが根深い人や発達障害の傾向のある人は、自分の身体の状態が悪く、良いイメージすらできない状況にあることがあります。

懐かしいイメージ


懐かしいイメージを思い浮かべながら、身体感覚に注目をしていくと、子どもの頃の真実の記憶が思い出されてきます。辛い記憶だけでなく、ポジティブな記憶が思い出されることにより、愛情をもらっていた自分を取り戻し、人生が生きやすくなります。

◎実際のイメージ技法

地下へ降りていく長い階段をイメージしてください。階段は石で出来ており、それはしっかりしたものではなく、階段の幅も狭いですが、真っ暗な階段を下りていきます。階段を下りたところは、深く生い茂る暗い森のなかで、不気味でじめじめとしています。そこには平らな道があり、その道を歩いていきましょう。やがて暗闇が終わりに近づいたとき、前方に空間が見えてきました。この暗闇を抜け出した先にはどんな風景が広がりますか?ここからは自由にイメージをしてください。

神秘的なイメージ


神秘的なイメージをしていくことで、トラウマにより、凍りついた部分をケアしていきます。首や肩、背中の痛み、手足の脱力、脳の痺れ、胸の痛み、お腹の気持ち悪さなど、神秘的なイメージをすることで、体の状態を上向きにすることができます。美しいイメージをすると、恐怖に麻痺していた体に、痛みや凝り固まった部分が表面化しますが、それに気づいて、その痛みをほぐしていくと、最終的には軽く暖かくなります。

◎実際のイメージ技法

①自分の四方に4本の光輝く柱が立っていて、その真ん中にいて、光り輝くイメージをする。光の部屋にいる自分の体の感覚を見ていく。

②でかい太陽が体と心の中にあって、巨大なエネルギーを感じる。太陽のエネルギーを感じ、自分の体の感覚を見ていく。

③銀河(太陽系や地球)の外側にいて、両腕を広げてかなりのスピードで飛んでいくイメージをする。無数の銀色に光る輝きや明るく金色の輝きを感じ、自分の体の感覚を見ていく。

④心地よい波を体と心の中で感じる。打ち寄せる波の中にいて、自分の体の感覚を見ていく。

⑤海の上をぷかぷか浮いているイメージをする。海の冷たさと太陽の光を浴びながら、自分の体の感覚を見ていく。

凍漬地獄のイメージ


最も最悪なことを思い起していきます。それは、現実的にあることでも、想像上のことでもかまいません。複雑なトラウマを抱える人は、恐怖や戦慄、絶望、無力な状態に自分を置くイメージをしていくと、地面を掻きむしりたくなる攻撃性や屈辱、怒りを感じます。さらに、その先に、自分の自由が奪われると、体の方が痛みで凍りつきます。その後も、何もできないでいると、呼吸が出来なくなり、体が崩れ落ちて、地面に横たわります。恐怖に向き合って、心身を極限状態に置き、そこから再生するプロセスを踏むことにより、精神と肉体を強靭なものにします。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室 

論考 井上陽平