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脳の三層構造と情報解釈


ベッセル・ヴァン・デア・コークの「身体はトラウマを記憶する」をまとめています。

三位一体(三層構造)の脳


脳は下から発達する。爬虫類脳は子宮内で発達し、基本的な生命維持機能を構成する。私たちの一生をつうじて、爬虫類脳は脅威に対して非常に敏感に反応する。大脳辺縁系はおもに誕生後6年間で構成されるが、使用依存様式で発達を続ける。トラウマは、一生涯にわたってその機能に大きな影響を及ぼしうる。前頭前皮質は最後に発達し、やはりトラウマにさらされると影響を受け、たとえば、関係のない情報を除外できなくなる。一生の間、前頭前皮質は脅威に反応して稼働を停止しやすい。

 

・前頭前皮質

計画立案、予期、時間と前後関係の感覚、不適切な行動の抑制、共感的理解

 

・大脳辺縁系

生体と環境との間の関係の地図、情動的な重要性、分類、認識

 

・脳幹:基本的な維持管理

覚醒、睡眠/目覚め、空腹/充足、呼吸、化学的均衡

脳の情報解釈


入ってくる情報は、まず情動脳が解釈する。感覚情報は二手に分かれ、一方は下に向かって、大脳辺縁系の無意識の脳の奥深くにある、扁桃体へ伝えられ、もう一方は上へ向かって前頭葉へ伝えられ、そこで私たちの意識的自覚に達する。

 

神経科学者のジョセフ・ルドゥーは、

扁桃体への道筋を「低い道(ロー・ロード)」と呼んでいる。環境や体の状態について、視覚、聴覚、触覚、運動感覚などで受け取った感覚情報は、視床に集まり、処理され、そのあと扁桃体に送られて、情動的重要性が解釈される。これは、目にも留まらぬ速さで行われる。もし脅威が感知されると、扁桃体は視床下部にメッセージを送ってストレスホルモンを分泌させ、その脅威から身を守る。

 

前頭皮質への道筋を「高い道(ハイ・ロード)」と呼んでいる。視床から海馬と前帯状皮質を経て前頭前皮質(理性脳)に至り、そこで情報は意識的ではるかに緻密な解釈がなされる。扁桃体への道筋は非常に早く、前頭皮質のほうは、圧倒的な脅威を与える体験のなかで、数ミリ秒長くかかる。

 

PTSDでよく起こるように、扁桃体による脅威の解釈があまりに強烈な場合や、脳の上部の領域からの情報を選別するシステムがあまりに弱い場合、あるいはその両方の場合には、人は自動的な緊急反応を制御できなくなり、驚きが長引いたり、攻撃的な感情の爆発を起こしたりする。

 

また、視床での処理は破綻を来しうる。その場合は、光景や音、声、匂い、触感は、それぞれが孤立し、解離した断片としてコード化され、正常な記憶処理が崩壊する。時間は凍りつくので、現在の危険が永遠に続くように感じられる。

 

参考文献

ベッセル・ヴァン・デア・コーク:(柴田裕之 訳、杉山登志郎 訳)『身体はトラウマを記憶する』紀伊国屋 2016年

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平

 

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