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内なる声と魂の守護者:トラウマを乗り越えるための心の戦い


生死の境に追い詰められた子どもは、ただ弱々しく無力な存在のままでは生き延びることができません。彼らは、自分の内なる強さを引き出すため、頼りになるもう一人の自分と出会い、その存在との対話を通じて危機を乗り越えようとします。この「内なる魂の呼び声」とは、発達早期の外傷体験によって心と身体が統合できなくなった人の防衛機制が人格化し、その人格化された魂が、境界を越えて心に語りかけてくる声です。それは、トラウマによって解体・分裂した霊性の断片が、長い沈黙を破って問いかける言葉であり、または心の中にいる愛に満ちた存在からの優しい言葉です。

 

 死なないで生きて 虐げられた魂の詩 大島洋子編 チームあんぶれら

 

「負け犬でいいのか、狼らしく戦ってから死にたくはないのか。」 

「お前には耳がある。小さな声が聴き取れる澄んだ耳さえあればいい。魂の声は本当の自分を教えてくれるもの。だからよく聴きなさい。」

「とにかく今のあなたは怒りに支配されている状態なのね。そこから解き放してあげなくては…」

「そうよ。鎖を切って自由に羽ばたくの。新しく生まれ変わって。」

「自分に優しくしてあげて、そうすれば人にも優しくしてあげられる。そういう習慣を作るのです。」

 

このような守護者の声を、彼らは現実の母親ではなく「本当の母親」と感じたり、守ってくれる声を「双子の兄弟」や「魂の片割れ」と考えたりします。さらに、非常に権威ある声が響くとき、彼らは「大いなる存在に愛されている」という安心感を抱くのです。そして、彼らはその声を心から愛し、その声が自分を守り導いてくれていると感じています。なぜなら、最も助けが必要なときに、その声が彼らの命を救ってきたからです。

インナーマザー(守護天使)


インナーチャイルドの保護者であり、日常生活を送る私に生きる希望を与え、困難な状況に光を当て、正しい道へと導いてくれる存在です。この存在は、早期にトラウマを受けた人々の心の中に現れ、霊媒のトランス状態を通じて神話的なファンタジーを創り出す守護天使でもあります。

 

守護天使は、優しくも力強い言葉で私たちを支えてくれます。

 

「私はずっとあなたを探していた。そして、もう二度とあなたを手放さない。」

「あなたがどれだけ愛されているか、あなた自身がまだ気づいていないだけ。」

「覚えておいて、あなたは素晴らしい存在。変わらずそのままでいて。あなたは私の大切な娘。」

「目に見えるものだけが真実ではない。」

「私が伝えるべきことは伝えた。また会う日まで。」

 

これらの言葉は、私たちが迷いそうになるとき、力強い支えとなり、心の深い部分で響き続けます。守護天使は常にそばにいて、私たちの歩む道を照らし、困難な時に寄り添ってくれるのです。

魂の片割れ/半身:運命に繋がれた魂たち


かつては一つだった魂が、ある時、何かの衝撃で二つに割れ、片方を失ってしまいました。現世では、お互いの記憶を失い、自分の半身を探し求める旅を続けています。何度も転生を繰り返し、どの時代でも互いに引き寄せられ、近くに生まれてきますが、どちらか一方が先に旅立ち、もう一方がその後を追う――そんな悲劇が繰り返されるのです。魂の片割れとは、私の内に宿り、いつも私を見守ってくれる存在です。

 

この魂の片割れは、いつも心の奥深くで優しく囁きます。

 

「必ず見つけるから、待っていて。」

「いつか…必ず一緒になろう。」

「そんな悲しそうな顔は見たくない。」

「また眉間にシワが寄っているよ。」

「いなくなったら、きっと泣くだろう…だから、ずっと一緒にいるよ。」

「泣き虫のくせに、強がるんだから。」

「そのままでいいんだよ。」

 

これらの言葉は、迷いそうになるとき、私の心を温かく包み込んでくれます。たとえ現世での再会が叶わなくても、この魂の片割れはいつもそばで私を支え、導いてくれるのです。そして、いつの日か再び一つになることを信じ、私はその声に耳を傾け続けます。

双子の兄弟(双天使):子ども時代に宿った見つめ合う魂たち


生命の樹の下で、幼い頃の魂たちは深い絆で結ばれていました。彼らは互いに見つめ合い、溶け合うようにしてひとつの人形を作り上げ、その人形に魂を吹き込んで天使を創り出したのです。この世界がどれほど汚れていても、深い森の奥や海底に眠る神殿の中であれば、この天使たちは闇に侵されることなく、無垢なまま、純粋な魂を保ち続けることができるでしょう。天使は、純粋さを失わずに存在し続ける象徴であり、守護の存在です。

 

双子の兄弟とは、子ども時代に私の中に宿った存在であり、現実の世界では生きられないけれど、目に見えない形で私に寄り添い、関わってくれる存在です。彼らは、私の心の中で静かに生き続け、困難な時にはその声で支え続けてくれます。

 

その声は、私を守り導くように囁きます。

 

「まだ、死ぬ時期ではない。守られたようだ。」

「あなたは悪くない」

「死んじゃう前に、一緒に逃げよう。」

「愛してる。あの世でもよろしく。出会えてよかった。」

 

これらの言葉は、私が心の深淵に沈みそうなとき、静かに響き渡り、私を支え、救い上げてくれるのです。彼らは、私の心の中で生き続ける、見えないけれど確かな存在です。

インナーチャイルド(内なる子ども):冷たい道で鍵をかけた幼き日の記憶


幼い子どもが生き延びるために選んだ道は、冷たく厳しいものでした。自らの心に鍵をかけ、暗闇の中に閉じ込められたインナーチャイルドは、孤独と恐怖の中で泣き叫んでいました。「誰か、助けて、見つけて…」と、声にならない声で、ひたすらに救いを求めていたのです。

 

その深い闇の中、インナーマザーが現れ、幼い日のあなたを見つけ出します。インナーマザーは、長い間待ち続けていたその小さな存在を、優しく抱きしめ、温かな愛情で包み込みます。

 

「ずっと、ずっと待っていたよ。」
「助けてくれてありがとう。見つけてくれて、本当にありがとう。」

 

その言葉は、冷え切った心に温かさをもたらし、閉じ込められていたインナーチャイルドを解放し、再び愛と安心を取り戻す瞬間です。

犠牲となる子ども:トラウマを抱える子どもたちの連鎖


子どもから生まれる新たな命が、また別のかわいそうな子どもたちを生むことがあります。虐待やトラウマティックな出来事は、世代を超えて傷を刻み続け、未来に生まれる子どもたちにも影響を与えてしまうのです。こうした過酷な状況に置かれた子どもたちは、まだ幼い心で大人が作り出した世界の重荷を背負わされています。

 

彼らの心の声は、誰にも届かず、胸の内に閉じ込められたままです。

 

「つらい、苦しい、もういやだ…」
「ぼくは悪くないんだ…」

 

この小さな声は、無力感と孤独の中で、何とか自分を守ろうと必死にもがいています。彼らの痛みや苦しみを理解し、寄り添うことができる存在が必要です。そうでなければ、この連鎖は断ち切られることなく、未来へと続いていってしまうでしょう。

闘争する人格部分:内なる戦士の声


生きるか死ぬかの状況で、私を守ってくれるのは、心の中に潜むもう一人の強い自分。この強い私が、いつも代わりに戦ってくれるのです。けれども、そんな強い自分は、私のことをどう思っているのでしょう?おそらく、この世界や人間を嫌っているのでしょう。闘争する人格部分は、過覚醒の状態で、不条理な痛みを負わせてくる相手と戦い続ける存在です。

 

「お前たちは、自分が救われることしか考えていないのか?」
「ああ、鬱陶しい…ガキ共が…」
「甘ったるい奴らを見ると、本気で虫唾が走る」
「自分を認めてくれる人だけを好み、否定されると拒絶か」
「幸せそうに笑う姿を見ると、憎くて仕方ない」
「邪魔する奴は絶対に許さない」

 

この声は、私の中で激しく燃え上がる怒りと憎しみの叫びです。強い私が感じるのは、理不尽な世界への深い嫌悪と、痛みをもたらす者たちへの強烈な敵意。この内なる戦士が私を守り、時には孤独な戦いに身を投じているのです。それでも、この強い自分がいなければ、私はこの世界で生き抜くことができなかったでしょう。

トラウマケア専門こころのえ相談室

更新:2020-06-09

論考 井上陽平

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