> カウンセリングとは何か

カウンセリングについて


カウンセリングは、心理療法の基本的な技法になります。主に言葉を用いて、対話を通して、クライエントの抱える悩み事を、カウンセラーは傾聴し、受容し、一緒に問題を考えていきます。話をするだけで悩み事が解決することもありますし、気持ちがすっきりして前向きになれることがあります。

 

カウンセリングは、同じカウンセラーによって週1回以上か、2週間に1回行われます。当相談室では、1回の面接時間は90分(前半は対話、後半は瞑想)行います。カウンセリングの期間はケースバイケースですが、通常半年以上はかかるのが普通です。カウンセリングを継続することにより、初めて自分と向き合うことが可能になり、客観的に自分を知る場所として機能し、人生をより良く生きれる土台になるでしょう。

 

日本では、カウンセリングを受けることに対して、お話を聞いてもらうだけで、お金を払うのはもったいないと抵抗を感じる方が多いと思います。そのため、損得勘定だけで見てしまうと、お金を支払って、人にお話を聞いてもらうのは、合理的ではなく不合理なように感じるかもしれません。しかし、当相談室のカウンセリング料金は適度な設定ですし、自分のお金を支払って、自分のお話を聞いてもらうという不合理さこそが、人生において重要な役割を持つとも言えます。一般的に、人は不確かなことや予測できないことを避けて、物事を合理的に判断しようとしますが、それはただ機械的に生きているだけで、空っぽな身体になる可能性があります。たとえ不合理であっても、自分を追い込んで仲間のために頑張るとか、自分のために行動できるかどうかが人生において決定的に重要になってくると思います。人は不合理さや不確かさのなかでも耐え忍んで、多大な期待や多大な失望を乗り越えて、長く一つのことをやり抜くことにより、物事を多面的に見れるようになり、本当の主体が露わになります。カウンセリングでも、長い時間をかけて継続し、自分に向き合い、自分のことを話していくことで、こころや身体が育っていき、より良い人生が生きれるようになります。

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当相談室の心理療法


初回は、相談に至った経緯や主訴、成育歴、家族構成などをご自由に話して頂きます。また、こころと身体の状態をアセスメントします。2回目は、希望によりロールシャッハ・テストや描画テストなどの心理検査を行うことが出来ます。また、変わりたいとか改善したいことに焦点を当てて、その人の実情に合わせたより柔軟な方法(自由に思いついたことを話すオーダーメイド式カウンセリングやトラウマに焦点を当てたボディセラピー、精神分析的な転移療法)で行うことが出来ます。基本的に、心理療法は自分のペースで進めていくもので、自分がペースを決めて行います。

 

当相談室の心と体のアプローチ

STEP1 自分の思いついたことを正直に、誠実に、隠し事なしにお話しする。

STEP2 セラピストとの間で生じた自分の心と体のバランスを確認する。

STEP3 呼吸法や漸進的筋弛緩法、安心できるイメージを使って、心と体のリズムを整えていく。

STEP4 体を動かしたり、心に思い浮かべるイメージから自分の状態がどう変化していくかをモニタリングする。

STEP5 心と体にエネルギーを貯めて、不確かな人生や動かしがたい他者との間で起こる逆境を乗り越えられるようにする。

 

当相談室のオリジナルの折衷的心理療法では、最初に、西洋の瞑想と言われる精神分析的自由連想法に取り組みます。自分の思いついたことを正直に、誠実に、隠し事なしにお話してもらいます。自分について語り、自分のことを深く掘り下げていきます。うまくいけば、ただの現状報告から、過去の成育史を思い浮かべて話すようになります。

 

ただし、途中のセッションで、セラピストに好意を抱き、良い世話役になったり、楽しませるような話ばかりをして、その場の空気を和ませようと努力するかもしれません。その一方で、セラピストの応答次第では、敵のように見えてしまうこともあります。そして、カウンセリングルームがネガティブなものに包まれると、体が過緊張になり、胸がザワザワして、腹立たしくなったり、その場から離れたくなります。しかし、否定的な気持ちが溢れ出しそうになったときに、セラピストにその気持ちを正直に吐き出して、受け止めてもらうことが必要です。そして、ネガティブな関係のなかで、両者が生き残り、セラピーを続けられれば、新しい経験になります。また、不快なときこそ、セラピストとの関係性で生じた自分の体の感覚や沸き上がる感情がどうなっていくのか、またどのように変化していくのかを見ていきます。

 

その結果、日常生活での対人関係のパターンが今ここで再現されていることに気づきます。不快な状況において、緊張が強まるとき、自分がどのように動かされて、どのような癖があるのかを自覚して、これから先の動かしがたい他者との関係を生きれるように支援します。精神分析的療法は、セラピストが中立的態度を取っていくことにより、クライエントは欲求不満状態に置かれ、表情筋、首、肩は硬直し、無意識のうちに行動化します。この治療法は、クライエントのセラピストに対する転移感情(陽性、陰性)を利用して、分析を行いますが、厳しい治療法になります。利点としては、今までにない新しい人間関係を形成する手助けになると思います。

心身両面の働きかけるアプローチ


次に、自分自身の陰性感情のコントロールや顔や喉、肩、胸を中心とした筋肉の緊張に耐えれない人は、セラピストに共感、傾聴してもらうカウンセリングと、トラウマのボディセラピーが有効です。トラウマのボディセラピーは、東洋の瞑想と言われるマインドフルネスやソマティックエクスペリエンス、呼吸法、自律訓練法、漸進的筋弛緩法、イメージ療法、ゲシュタルト療法、タッピング法、ユング派のアクティブイマジネーションなどを組み合わせて、内なるイメージや空想、身体感覚に働きかけて、良い生理状態を作ります。

 

ほとんどの現代人は、自分の身体の感覚を見ていくことに慣れていないので、内なる声、イメージに耳を傾ける練習をすることから始めます。まずは、目をつぶり、リラックスした状態に入ってもらって、腹式呼吸をします。呼吸に注意を向けて、集中していくことである種の制限がかかります。この制限は、通常の意識・認識過程から、変性意識状態(トランス)へと導きやすくしてくれます。また、安心できることを思い浮かべて、体内宇宙に浮かび上がるモヤモヤやザワザワを感じ取り、その生理的反応の変化を見つめながら、次に何が起こるのかを見ていきます。そして、あいまいな身体感覚と、それと同時に無意識的空想(懐かしい子どもの頃の安心できるイメージ)が浮かんでくるので、その間を振り子のように行き来します。そして、身体の無意識化の過緊張を解きほぐしていって、物思いに浸りながら思いつくまま自分の思ったことを自由に話して頂きます。セラピストは、話した内容について、相槌や解釈、共感、介入等を行い、対話していきます。そして、自分の身体感覚(内臓感覚、皮膚感覚、筋肉の緊張)、視覚イメージ(絵)、感情、思いつき、行動に対して、意味づけや思考していくことで、自分の物語を肯定的な物語に書き換えていきます。

 

このような東洋と西洋の瞑想を駆使したセラピーを行うことにより、自分の内側に意識を集中させることが得意になり、感情や精神状態が不安定にならずに済むようになります。また、呼吸法や幸せなイメージを使いながら、人間の最も洗練されたシステムの働きを強くすることに、社会交流システムが促進されます。さらに、身体内部の経験を自覚して、自分の内部で起こっている事と仲良くなることで、脳と情動脳をつなげる脳回路が活性化し、一人で安心して落ち着いていられる状態を作ります。そして、自分を外から見る目と内なる感覚に気づく耳の両面を持つことで、自己認識は深まり、本当の自分が生きられるようになります。最終的には、瞑想が深まり、望みを捨てた不動状態に入って、十分にその感覚を味わいつくすことで、トラウマによって傷ついた身体の中から、自然治癒力が溢れ出します。そして、無力や絶望、怒りの状態ですら、自己調整できるスキルを身につけます。日常生活を正常に過ごせるようになると、精神性、身体性、こころの想像力、審美性が回復します。難しい情動や覚醒状態に対処できるようになり、美しい自分に生まれ変わることが可能になります。

 

相談される方は、トラウマという地獄を持っていることがあり、自分のことを深く話していくと、辛いことばかりが思い出されて、体調不良に繋がることがあります。ですから、当相談室では、カウンセリング時間を90分にして、後半はイメージや空想、身体を使ったリラクセーションを行うようにしています。

解離症状の方には


一般の人は、腹式呼吸を行うと、腹側迷走神経複合体が働くために、深くリラックスした状態になり、心地よい感覚と緊張した状態の間を振り子のように行き来することができます。しかし、解離症状で苦しんでいる人は、過去に外傷体験を受けた時に、身体が硬直し、痛みで固まり、息ができないなかで、機能停止し、崩れ落ちました。現在でもトラウマという過剰なエネルギーが身体の中にあり、凍りついている部分や極度に脱力している部分などアンバランスな状態になっていて、筋肉や内臓は臨戦態勢で、脳に危険信号を送り、身体は衰弱していきます。

 

心と身体が分離していて、解離状態が重くなり、背側迷走神経が優位な人が、息を吐くことに注意を向けて、深く呼吸すると、胸が苦しく、喉が詰まったようになり、恐怖から不動反応が強まり、離人感やパニックになりそうになって、初めのうちは不安定になることがあります。また、身体に注意を向けていくことにより、体の一番弱い部分(頭、喉、胸、お腹など)が詰まり、締めつけられるような痛みを発して、ムズムズするような不快感が出てきて、それを機に身体が固まり、嫌な記憶が蘇って、背筋に異様な感じの寒気が走ることがあります。そして、息がしづらくなり、血圧が低下して、めまい、ふらつき、吐き気、腹痛、発汗、震え、麻痺、凍りつき、脱力、パニックになることがあります。

 

解離症状が重たい人ほど、覚醒度の耐性領域が狭くなり、交感神経系が過剰に活性化しても、すぐに身体が凍りつき、離人や解離、虚脱、パニック、眠気が出て、急速に背側迷走神経が働き、原因不明の身体症状に陥ります。このような生物学的メカニズムが働いている場合は、マインドフルネスや呼吸、体の緊張のパターンを変えながら、今ここに注意を向けて、様々な変化をゆっくり見ていきます。また、身体感覚やイメージの安全基地を作り、そこをベースにして進めていくソマティックエクスペリエンスの技法の方が適しています。ソマティックエクスペリエンスでは、不快な感覚や感情に向き合いながら、解離を使わずに現実に対処できるように支援していきます。

 

複雑に外傷体験を負うと、ちょっとしたことでも脳や身体の神経は危険を察知するようになり、長期に渡ってストレスや緊張に曝された身体は、慢性的に収縮した状態が続きます。無意識下では、常に身体が凍りついており、トラウマという莫大なエネルギーが滞っています。そして、常に不安定で、凍りつきの迷走神経反射のせいであらゆる症状が表れ、神経の働きがトラウマモードになり、恐怖、怒り、焦り、痛み、無感覚、無感情、孤立感、無力、絶望の世界に閉じ込められます。日常では、人から傷つけられるかもしれないという恐怖を感じると、より原始的な神経が働き、痛みや恐怖、怒りに支配されます。このような生物学的メカニズムを改善するには、身体内部の凍りついた状態を震わして、筋肉の緊張をほぐしていき、神経システムを平衡状態にする必要があります。そして、人間本来の収縮と拡張のリズムを取り戻し、自然治癒力を発揮できる状態にします。   治療では、子どもの頃からのトラウマの部分は、念入りに段階を追ってケアします。まずは、心地よい記憶や良いイメージを思い出していって、身体の中に安心できる場所を探します。そして、安心という言葉の意味を心の中で持てて、安心できる感覚を身体の中に見つけます。身体の安全基地を発見できたら、次は頭の天辺から足の指先まで、体内の感覚を見て回ります。特に、脳に意識を向けると、温かくなって、脳の機能が回復していくことで、全身も温かくなり、自分の身体が丸ごと帰ってきたような感覚になります。
  その一方、全身が固まり閉ざされていて、身体の感覚が分からない場合は、身体に振動を伝える器具を使うとか、手足をブラブラさせて、身体の動きや感覚に注意を向け、心と身体を一致させていきます。その他にも、自分の頭をなでる、眉間に触れる、首をさわる、鎖骨を叩く、お腹をなでる、背中をさする、股関節をもむなどしながら、そこに意識を向けることで、凍りついた部分を手当てしていきます。また、身体の部位を一つ一つ見ていくと、緊張や硬直、脱力している部分があるので、そこに注意を集中させます。段々と緊張が強まっていくことを想像していくと、どのようにして自分を守ろうとしているのかが分かり、過去のトラウマが露わになることがあります。そして、身体の内臓感覚や皮膚感覚、筋肉の張りをじっくり味わい、実感を伴わせたうえで、緊張した部位がどう動きたがっているかを想像してもらって、実際に動かしたいように動かすことで、身体が震え始めて、全身が解放に向かうことがあります。

 

目標は、最悪の事態(現実にあることから、現実になかったことまで)を思い起こし、防衛的な姿勢を取って、不動状態に入ることです。別の言い方では、自らが意識的に、望みを捨てたときの絶望状態に入っていき、身動きがとれなくさせます。この方法を取ることで、自分を支配する強靭の力の作用と相対することができます。身動きがとれない状態では、息が止まり、気を失いそうになり、そこから抜け出すかどうかの分かれ道に立たされます。そのときに、身体を動かすか、頭のイメージの中で戦うか逃げるか、固まった身体の感覚に意識を集中させて、体験しつくすことがポイントになります。トラウマの不動状態に一瞬でも触れると、収縮とは逆の拡張の力が強くなり、身体が震え、恐れおののき、熱くなります。そして、凍りつきや脱力した状態から、自然治癒力が発揮されて、全身が広がります。その結果、筋肉が正常に戻り、内臓感覚が安全になり、全身が収縮と拡張の本来のリズムを取り戻し、神経システムも平衡状態になって、心身の健康が回復します。

 

身体の感覚が戻ってくると、離人症や解離症状は取れていきますが、過覚醒(闘争や逃走)や抑うつ症状が残る人もいます。心と身体が一致することで、心が今まで気づこうとしていなかった痛みや疲労、無力な身体を知ることになります。そして、本来の過敏さや緊張しやすさ、疲労感、怒りが戻ってきて、物事がうまくいかず、イライラしやすくなり、無力な身体が交感神経系に乗っ取られるかもしれません。心と身体が一致した後も、イライラしている自分の身体の変化に気づいて過覚醒に乗っ取られないワークや、疲労や痛みをほぐすワーク、滞ったエネルギーを解放するワーク、身体を凍りつかせなくするワークを繰り返すことで、全身が軽くなり、呼吸はしやすくなります。
  身体の中に安心感が持てるようになると、脳の働きが変わります。神経の働きとしては、交感神経(緊張、硬直)と背側迷走神経(凍りつき、脱力、不動)の状態から、交感神経(緊張)と腹側迷走神経(リラックス)の間を生きれるようにしていくことが目標になります。このような身体志向アプローチは、トラウマ性の身体症状や対人緊張を取り除き、フラッシュバックを起こりづらくして、パニック発作や不眠症などの体質を改善させる効果があります。また、自分の本音をたくさん話して、大きすぎる感情や葛藤を頭の中で整理していく方法の両方を行いながら、全体のバランスが取れるようにしていきます。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室 

論考 井上陽平