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こころのえ相談室の特徴


面談を通じた話しを聞くことに重視したカウンセリングのみでなく、トラウマの経験から身体の症状を引き起こしている原因、過去の経験、現在の症状を明らかにして、それらを改善させるように、心と体の両方にアプローチしていきます。心と体のつながりに着目しているところに当相談室の特徴があると言えます。

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過酷な子ども時代を経験して、今も生きづらく誰にも相談できない。


心的外傷(PTSD)や解離性障害、トラウマベースの人格障害、発達障害、離人症、摂食障害、パニック障害、うつ病、強迫性障害、慢性疲労症、慢性疼痛などからの回復に特化した専門施設です。当相談室では、今の生きづらさを共有して、治療同盟を結び、大切な人と分かり合えない悲しみを言語化し、身体の痛みに向き合い、闘争を通して主体化(覚醒)していきます。そして、花や木が水や光を得て育っていくのと同様に、「私は私であり、私は世界につながっている」と生き生きと感じる自分に戻れるように支援します。

どんな姿勢で話を聞いてくれるのですか?


セラピストは、不屈の思いやりとあなたの苦しみを何とかしたいという湧き上がる意志故に生じる変性意識状態のなかで、今まで怖い思いをしてきたことなど話を聞いていきます。また、専門家としての虚構の役割だけでなく、自分自身の無知さや人間的限界があることを認めたうえで、あなたを理解して、関係性を大切にしていきたいと考えています。一方、カウンセリングを受けられる方には、本気で取り組もうとしてくれることを願っています。私の喋り方は、非常に落ち着いていてゆったりとした感じであると思います。ただし、トラウマ治療とトラウマ理論の普及に忙殺される毎日なので、明るく元気という性格ではありません。また、人生や人に対して悲観的で暗いです。カウンセリングのときも、明るく笑顔を振りまくことは、あまりないと思いますが、でたらめな社会を少しでも変えていきたいという熱意はあります。

トラウマに対処するリラクセーションセラピーとは


ソマティックエクスペリエンスの理論やユング派の瞑想、呼吸法、筋弛緩法などを使っていきます。まずは、息を吸って吐くことに注意を集中しながら、目を閉じます。一般的に、息を吸うときは、交感神経が活性化して、身体は緊張していきます。息を吐くときは、腹側迷走神経が活性化して、身体はリラックスしていきますが、複雑なトラウマをお持ちの方はそうはいきません。次に、この生得的な体内の波動のなかを漂いながら、身体内部の感覚や感情、イメージに触れていきます。口や目、肩、手、足などの身体のパーツを動かしながら、痛みや不快感を顕在化させて、本人がその痛みに気づいて、その痛みをジワジワとほぐすことで、身体の麻痺が改善していきます。そして、震えや揺れ、熱などの内的変化を見つめていくと、身体の中の穏やかな温かい波を感じるようになり、緊張をほぐすことができ、本来の自分に近づくことが可能になります。

 

目標となる瞑想状態は、身体が自然とトラウマ体験を思い起こすような動きをし、自分の肉体を見ていき、自発的に凍りついた状態を作り出します。そして、安全な場所で、悲しみや怒りなどの感情に凍りつき、絶望した自分の身体を体験していくうちに、息が止まりそうになるとか、気を失いそうになります。凄く苦しい状態を耐えていくと、体の中心から熱くなり、震え始めたり、涙が溢れたり、手足が動きだしたりして、負のエネルギーが解き放たれます。一山超えることができれば、人間本来の収縮と拡張のリズムが戻り、すっと落ち着けて、自然治癒力(哺乳類の腹側迷走神経)が発揮されます。このようなセッションを何度も繰り返して、自宅でも一人で瞑想して、最適な状態を作っていけば、トラウマの病から上昇の階段を昇ることが可能になります。トラウマの恐怖を解きほぐし、痛んだ断片を呼び寄せるようにして、本来の自分が戻ります。本来の自分が戻ると、全身が拡がり、軽やかになります。目元がクッキリすることで、大きな瞳になり、この世界の見え方が変わります。また、気管支が拡張されることで呼吸がしやすくなるとか、炎症が治まることで、頭やお腹、皮膚もスッキリします。さらに、今までの自分を肯定できるようになれば、自分に価値が思えるようになり、堂々と過ごせるようになります。

トラウマケアと従来の心理療法の違い


従来の心理療法は、対話を中心にしており、認知の歪みや行動に働きかけるアプローチが多いです。 当相談室では、対話を通した分析的なカウンセリングも行いますが、トラウマの神経症的症状をそれだけで改善できるとは思っていません。トラウマのある人に、認知(思考)の歪みや心の問題に焦点を当てても、頭の中を考えがグルグル回るだけで、一生懸命変えようとしてもなかなか変わらないかもしれません。それは、認知や心というのは、周囲の環境と脳を含めた身体的反応の後に出てくるものだからです。重度のトラウマがある人ほど、身体は自分を守ろうとして、凍りつき、憤激し、解離し、虚脱に落ちたりして、通常の人とは神経の働き方が違い、脳は緊急事態であるかのように動いてます。

 

トラウマの回復には、認知や心の問題を改善する前に、身体や脳に焦点を当てたアプローチをする必要があります。そのため、トラウマを治療するには、神経科学や進化生物学、動物行動学などの知見を取り入れ、人間の身体の状態や本能性を重視して、心と身体の両面に働きかける新世代のセラピーが求められます。今までの従来の心理療法では、全部表面ですべってしまって、心の中までは入ってこなくて、身体にも全く反応が起きないことが多かったと思います。当相談室のアプローチは、特殊な動きをすることで、心と身体にあるトラウマを再活性化させて、ものすごい反応を起こし、悲しみや苦しみ、怒り、震え、熱、鳥肌、不随意運動がたくさん出てくるようになります。

瞑想やリラクセーションセラピーの効果のほどは


口を開けて、必死に息を吸い込むような動作をしながら、高次な脳機能である意識を使って、感覚や感情、イメージを見ていき、凍りついた部分を解きほぐしていくことになります。瞑想を通して、闘争・凍りつき・不動・反撃などのトラウマの生理的反応への恐怖を克服していきます。瞑想を熟達していくことで、次第に日常生活の様々なトラウマ反応の恐怖は色褪せていって、その代わりに力強さが手に入り、大舞台で強くなるなど、適度な緊張で最高のパフォーマンスを出せるようになります。トラウマの克服には、人間の防衛反応や生物学的メカニズムを熟知して、健康な生理状態を維持するために、自己調整能力を高めていくことが重要です。そして、深く息が吸えるようになり、姿勢が良くなって、仰向けで安心して眠れることが目標になります。

 

心と身体が繋がって、睡眠の質の向上と身体の自然治癒力が発揮されていけば、様々な心身の症状は無くなります。身体が楽になり、活動性が昇していくと、生産性も向上します。また、ネガティブなことに引きずりこまれなくなり、自分に自信が出てきます。瞑想という名の修行をしっかりやり抜くことができれば、自分の努力してきたことが自信になり、これから先もなんとかなると思えて、自分はやれるという根拠になって、様々な効果が期待できるでしょう。薬物療法よりも、瞑想で自然治癒力を引き出すほうがコストパフォーマンス的にも良いでしょう。トラウマが根深い人でも、時間をかけて、自分を見ていけば、少しずつ本来の自分に戻っていけます。ただし、治療が難しいのは、身体の痛みが激しい線維筋痛症の人やエネルギーが枯渇した状態にある慢性疲労症候群の人、最重度のトラウマのある解離性同一性障害の人たちになります。また、自分から恐怖に向き合うことができず、瞑想で不動状態を作れない人やイメージを浮かべられない人、身体の感覚が全く分からない人、身体が全く反応しない人は、効果があまり期待できません。

トラウマ治療の欠点と問題点


未解決なトラウマがあり、長年に渡ってストレスと緊張がある人は、全身が縮まり、麻痺していくことで身体の感覚や感情が分からなくなっています。頭(心)と身体が離れ離れになることで、頭の中で考えるようになり、身体に刻まれたトラウマや痛み、不快な感覚、感情に気づかなくて済むという利点があります。トラウマ治療では、身体に根を張った凍りつきを解きほぐしていきますが、トラウマの当事者は、そのことに気づいていないことが多く、身体に着目したアプローチへのモチベーションが維持できなかったりします。トラウマ治療は、身体の感覚に焦点を当てることで、頭と体が合致していき、本来の自分を取り戻すことができます。また、本来の自分の身体に気づくことにより、線維筋痛症や慢性疲労症候群、自己免疫疾患などの難病を予防する効果は期待できます。ただ、凍りつきにくい肉体を手に入れ、交感神経に乗っ取られないようにするなど、一筋縄ではいかない大変な作業になります。

 

トラウマ治療の欠点としては、身体を取り戻すことにより、楽しいと感じられるようになりますが、それと同時に、過去のトラウマが生々しくフラッシュバックしたり、自分の置かれた状況が分かってしんどくなったり、心身の痛みや不快な感情、感覚、息苦しさ、重たさに気づくことになります。また、トラウマ治療では、瞑想を通して、頭と体を一致させて、高次の神経が働くようになりますが、日常に戻ると、上昇した分だけ、下降していくので、体調が悪くなり、しんどくなることがあります。さらに、一瞬は元気になっても、身体の中をトラウマ防衛が作動しているので、無防備に他者に近づきすぎた結果、恐怖で固まり、絶望に落ちるかもしれません。

トラウマ治療のモチベーション


トラウマ治療を成功させるには、トラウマの知識をつけながら、安心・安全な環境が必要になります。トラウマのことを学びながら、それを治療者に向けて質問するぐらいのモチベーションの高さがあったほうがいいです。また、治療以外の時間では、自然体の自分でいられるように努力して、セルフケアしていける人はだんだん状態が良くなっていきます。基本的に治療時間は、週1回か、2週間に1回くらいの短い時間になるので、治療者に治してもらおうとする他力本願ではあまり効果が出ないかもしれません。

トラウマ治療への抵抗


トラウマから回復していく過程において、安心・安全感を獲得して、他者と交流しやすくなる神経の働きに変えていきます。しかし、複雑なトラウマがある人は、過去の被害体験から、警戒を解きたくないとか、無防備でいることが怖いと反発してくることがあります。普段から、自分の身体をギュっと縮めて、何も感じないようにしている人が、身を委ねてリラックスするとか、何かを感じていくことに対して、強い抵抗が出てくるかもしれません。

精神科の病院に行ったけども待合室で待たされて話を聞いてもらえない


カウンセリングは神戸市東灘区岡本の空きマンションでの個人開業で行っています。精神科医療では、診断、薬物療法、症状の軽減、管理と社会適応といったトップダウン方式の上から視点で治療されますが、当相談室では、カウンセリング、瞑想や生活臨床、自己調整機能の回復、そして、思う存分生きれるようにと、当事者と同じ目線に立ち、心、脳、身体をケアしていくことが特徴になります。カウンセリングルームは、痛みの伴う生身の人間同士が対話をしていく場所であり、人間的な相互の関わりを通していく日々の営みを大切にします。

発達障害と診断されたけども診断に疑問がある


自分のトラウマについて思い出すことはつらく、まして人に話すことはなかなかできないものなので、精神科医にうまく話せない場合は、発達障害として診断されることがよくありますが、ここでは、トラウマを受けたこころの世界を専門家が見立てます。当カウンセリングルームの最大の特長は、トラウマ的出来事や長年に渡って降り積もったストレスや痛み、外傷的事態を生み出している実態(社会)を重視し、これらに対して、心、脳、身体、スピリチュアリティがどのように内的に応じていくのかを長い時間をかけて細かく見ていくことです。

厳しすぎる環境にいて自分に向き合う余裕なんてない


心理支援は「対話」と「瞑想」を重視したカウンセリングを行いますが、より重度の精神疾患の対象者には、希望により生活サポート(子育て、病院への付き添い、スーパーでの買い物など)や、自律神経の働きを整える呼吸法や漸進的筋弛緩法、嬉しいと感じるスキルの獲得のために課外活動(山や川、滝など自然と関わる)を行うことも出来ます。生活サポートでは、日常の暮らしの足もとに光を当て、同じ目線に立ちながら、心や身体の麻痺、警戒心過剰、過覚醒、恐怖症状などを解いていき、愛着や社会交流システムを活性化させます。一緒にプログラムを作って日常生活で実践していくことで、リラックスして安全に感じる方法が見つかるまで支援します。

毎週、カウンセリングルームに通うことができません


遠方に住んでいてそもそも通うことができない方、外の世界はいつ何時心ない言葉を浴びせられるかわからないので怖い方、言葉一つで自己崩壊起こしてしまうかもしれない方、バスや電車に乗ることが出来ない方、あまりにしんどくて身動きがとれない方、カウンセリングルームに一人で通うことが出来ない方には、電話カウンセリングを行うサービスがあります。▶電話カウンセリングのページ。また、セラピストがご自宅や喫茶店などに訪問してカウンセリングを行うサービスがあります。▶訪問カウンセリングのページ

どんな相談が来ていますか?


様々な診断を受けている方が来られていますが、過去にトラウマを負っている人が多くて、男性の6割、女性の7~8割は、闘争・逃走、凍りつきなどの中~重度のトラウマを持っています。また、失恋や離婚、その危機をきっかけに来談される方も多いです。未解決なトラウマを抱えている人は、親密な人との関係が崩れたとき、その人との関係により未来を思い描けていた自我が崩壊し、今ここでの繋がりを失って、方向性を見失います。そして、深層に埋もれていた本能的な情動を抑えられず、一時的に精神病的症状に陥ることがあります。大切なものを喪失した人がカウンセリングを受けることにより、自分の想いをしっかり話すことで、徐々に本来の自分を取り戻していきます。

失恋や離婚の危機…いつも親しい人との関係が長続きしません


自力ではなかなか逃れられないので、自分のことを包み隠さず話していただき、親密な人との関係が続かない構造を一緒に見ていきます。そして、自分を嫌悪したくないからといって、今まで見て見ないふりをしてきた部分を徹底的に見直す必要があります。まずは、二人の関係が危機的状況になってからでは遅いので、早めに来談されることをお勧めします。また、当相談室では、カップルや夫婦のカウンセリングも行っていて、片方がトラウマを持っていることが多いです。カップルセラピーの場合は、カウンセリング中にトラウマの凍りつき状態に入ってもらい、タッチや触れ合いを通して、心身を回復させるようなカウンセリングを受ける事が出来ます。

子育てに自信がなく、相談できる相手もおらず、子どもの発達が心配


児童対象のプレイセラピーや親子面接も行います。また、環境要因だけではなく、脳の特性や発達の偏り(発達障害)など多角的アプローチも行います。子どものうちは、感受性が豊かで、思考も柔軟で、恐れの感情も少ないため、状態が良くなっていくケースが多いです。トラウマや解離症状がある場合は、学校で問題児になるとか、小児うつや体調不良で不登校になる前に早めに治療を受けたほうがいいと思います。

過去の話よりもおしゃべりがしたい、アドバイスがほしい


ここでの支援方法は、技法や理論よりも、あなたのこころの痛みと不安を丁寧に聞き取り、その人の実情に合わせたより柔軟な方法(オーダーメイド式のカウンセリングやリラクゼーション技法)で行います。

不条理な環境のせいで皆に置いていかれて寂しかった


深い悲しみのなかにいるあなたに対して、セラピストが寄り添い、さらに、カウンセリング空間がホームベースとして機能し、二人の共同作業を行います。トラウマを負い、闘争・逃走や凍りつき状態にある人が、再び愛着システムを活性化させ、安定した愛着関係が経験できるように支援します。

どうして私だけがこんな目に…悔しくて、苦しくて、やりきれない


自分の話を興味を持って聞いてくれるセラピストにたくさん聞いてもらうことで、苦しみ、やり切れなさは少しずつ解消されていきます。とにかくたくさんの話を人に聞いてもらうことで、頭の中は整理されて、自分のことを人に話すことが楽しくなり、精神機能の回復や人間的な成長に繋がります。

自分のことが大嫌いで自分を責めてしまう…


子どもの頃から、逆境体験を繰り返し受けてきた人は、打ちのめされたような無力感に取り憑かれていることがあります。過去の酷く打ちのめされた体験と、追い詰められても、今まで一生懸命生き延びてきたことを区別をしていき、自分で努力してきたことを振り返り、自分は強いとか、やれるという自信を深めていけるように支援します。

先生はどんな本を読んでいるのですか?


ユング派のドナルト・カルシェッドのセルフケア・システムや、ジャネ理論を駆使した構造的解離理論、人間の奥深さを学べる精神分析学理論、トラウマの理解に必要なヴァン・デア・コルクやピーター・ラヴィーンらの外傷理論などがベースになります。あとは、社会学や脳科学、神経生物学、動物行動学の知見を取り入れたり、先住民のシャーマニズムや精霊、自然崇拝を心理療法に取り入れていく予定です。

精神科医と心理士の視点の違い


精神医学は、精神現象を生物学的普遍性の視点で強調しますが、当カウンセリングルームでは、精神現象を心理学、社会学、脳科学、神経科学、進化生物学、動物行動学、文化人類学などの視点で考えます。また、社会に対しての不安や人間不信などの何らかの人間関係が悩みを作ると考えたり、今ここでの体験を重視し、当事者の体の状態や語る言葉を一つ一つ大切にします。

薬物療法と心理療法について


薬物療法は、脳の神経伝達物質や身体内部に直接働きかけて、睡眠、食欲、性欲、意欲、衝動、不安、緊張など生活全般の困難を和らげてくれます。トラウマのある人は、脳や身体の免疫系、神経・内分泌系などに問題があり、脳や内臓、皮膚は炎症を起こしているかもしれません。そのため、身体に効く薬は役立つことが多く、胃腸の働きを整えるお薬などを飲むことで回復していくこともあります。一方、心理療法は、本人の取り巻く家族関係、社会文化を見ていき、カウンセラーとの対話を通して、人と繋がる喜びを感じたり、心や精神、身体を内部から緻密に分析していき、自分と向き合いながら、自己理解を深めていきます。どちらも有効な手段であり、二者択一を迫るのは不毛で、薬物療法、心理療法、課外活動、集団活動等の複数の治療法を併用することが回復に役立ちます。長期的なストレスで生活全般が困難な方には、精神科や心療内科の薬物療法と当相談室のカウンセリングを併用することを勧めています。

トラウマに対する精神科医療の欠点と心理支援の可能性


子どもの頃に複数のトラウマを負うことで、理性脳(最も進化し、洗練された部分)と情動脳(最も原始的な部分)のバランスが崩れて、自分が自分で無くなったり、自傷や他害の恐れが伴うようなことが起こります。精神科医療では、入院させることで患者を守りますが、他方、患者を拘束することでさらなるトラウマを体と記憶に刻み、家族や社会の治安を守ってきました。また、薬物療法では、興奮による交感神経系に乗っ取られないように患者を守りますが、他方、薬で感覚を麻痺させ、情動脳を黙らせてきました。その結果、子どもの頃の真実は原因不明になっています。私は、トラウマの患者さんが自分のお守りとして、様々な専門家を利用することには賛成です。また、トラウマの専門家の力を借りて、自分の身体やこころとコミュニケーションしていくことがトラウマ治癒の有効な手段であると考えます。

心理療法・トラウマケアの限界について


トラウマ治療は、自ずと限界があります。幼少期のトラウマは情動を司る神経系に大きなダメージを与え、脳の電気回路、心的回路、身体内部に弊害を及ぼします。これはトークセラピー(お話)だけでは、完全に治癒されることはありません。また、トラウマのボディセラピーなど良いと思われる様々な技法を駆使しなければなりません。しかし、幼少期の虐待などのトラウマは、想像以上に身体にダメージを与えているため、1回状態が良くなったからといって治ってるわけではなく、良い状態と悪い状態を何度も繰り返して、全体のレベルを上げていくしかありません。

 

例えば、性的虐待や出生時や医療トラウマなど、痛みの激しいトラウマがある人は、寛解していくことが大変で、何かのショックを受けるたびに、心臓付近が硬直して強い痛みがあるかもしれません。また、離人感や解離症状が取れても、音や匂い、光、人の気配などに過敏に反応するために、都市型の生活を続けている限りは、症状やストレスは消えないかもしれません。さらに、トラウマが慢性化して、エネルギーが枯渇している場合は、イメージが湧かなくなるとか、身体が反応が鈍くなるなど、手の施しようがない状態かもしれません。

 

本当は、社会の中で仲間を作って、体でいろんなことを経験し、行動して、記憶に刻むことが重要です。セラピストが行う治療に限界はありますが、と同時に希望を持ちながら、目指すところは、自分の状態を理解すること、恐怖や痛み、緊張を和らげること、自分の主体性を取り戻すこと、他者との関係で肯定的未来を描けるように自分の物語を書き換えていくことなどが挙げられます。

心理療法・トラウマケアの危険性について


最終的にトラウマに向き合うには、過去に拒絶した痛みや恐怖、絶望、無力感に向き合うことになるため、その恐怖に近づいては離れて、離れては近づいてを延々と繰り返すことになるかもしれません。この恐怖を克服するには、自分のこころの内に安心できるイメージを持っていることが鍵になると思います。また、トラウマ治療は、自分のことをたくさん人に話すことで客観的に自分のことが見れるようになる利点はありますが、一方で、自分のことを深く話すことで当時の感情が蘇り、過覚醒が頻繁に生じて、問題行動が生じやすくなる欠点があります。さらに、心と身体が繋がりはじめると、本来の自分を取り戻すことになりますが、今まで気づかなかったストレスや緊張、感情が高まり、不安、イライラ、怒り、痛み、恐怖、不快感などで生活全般が困難になり、しんどくなることがあります。当相談室では、過去の心理療法家の失敗やトラウマを扱う心理療法の危険性を十分に考慮し、吟味しています。また、身体とリラクセーション、ヨガ、瞑想、ヒーリング音楽、対話の良い部分を組み合わせて、安全性に十分配慮しながら行います。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平