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当相談室では、単に面談でお話をお聞きするだけのカウンセリングにとどまりません。トラウマ経験が引き起こす身体の症状や、その背後にある過去の出来事、そして現在の症状の原因を丁寧に探り、改善に向けてアプローチをしていきます。心と体は密接に関係しているという視点から、両方をバランスよく整えることを目指しています。この「心と体のつながり」に焦点を当てたアプローチが、当相談室の大きな特徴です。
当相談室は、心的外傷(PTSD)、解離性障害、トラウマベースの人格障害、発達障害、離人症、摂食障害、パニック障害、うつ病、強迫性障害、慢性疲労症、慢性疼痛などからの回復に特化した専門施設です。現在抱えている生きづらさを共有し、共に治療同盟を築くことで、孤立感や大切な人との分かり合えない悲しみを言葉にし、身体に現れる痛みや子ども時代の記憶に向き合います。
このプロセスを通じて、クライエントが自らの力で主体化し、自己覚醒を促します。私たちの支援は、花や木が水や光を浴びて成長するように、「私は私であり、世界とつながっている」と感じられる、生き生きとした自分自身を取り戻すことを目指しています。
セラピストとして、私はあなたの苦しみを何とかしたいという強い思いと不屈の共感をもって、これまでの怖い体験や痛みを丁寧に聞き取っていきます。ただ専門家という虚構の役割を演じるだけでなく、自分自身の無知さや限界も受け入れながら、あなたを深く理解し、関係性を大切にしたいと考えています。
一方で、カウンセリングを受ける方には、本気で自分と向き合い、変わろうとする意志を持って取り組んでいただきたいと願っています。私の話し方はゆったりと落ち着いており、決して明るく元気な性格ではありません。トラウマ治療とその理論の普及に取り組む日々の中で、悲観的で暗い面もあるかもしれませんが、でたらめな社会に少しでも変化をもたらしたいという熱意は、常に心に抱いています。
笑顔を振りまくことは少ないかもしれませんが、あなたと向き合い、誠実に対話を続けていく中で、共に歩んでいくことを目指しています。
当相談室では、ソマティックエクスペリエンスの理論、ユング派の瞑想、呼吸法、タッピング、筋弛緩法などを組み合わせ、トラウマケアに取り組んでいます。まず、呼吸に意識を向け、目を閉じてゆっくりと息を吸い、吐くことから始めます。通常、息を吸うと交感神経が活性化して体が緊張し、息を吐くと副交感神経の一部である腹側迷走神経が働いて体がリラックスしますが、複雑なトラウマを持つ方には、この自然なプロセスが阻害されることがあります。
セッションでは、まずこの内的な波動を感じながら、体内の感覚や感情、イメージ、記憶に目を向けます。そして、口、目、肩、手、足といった身体の各部分をゆっくりと動かしながら、痛みや不快感、身体反応を意識的に感じます。それらの感覚に気づき、少しずつ解放していくことで、身体の麻痺が緩和されていきます。
さらに、体内で震えや揺れ、熱などの内的変化に気づいていくと、徐々に穏やかで温かな波動を感じられるようになり、深い緊張をほぐしていくことができます。このプロセスを通して、自己回復力を引き出し、本来の自分を取り戻す道が開かれていくのです。
瞑想の最終目標は、身体が自然とトラウマ体験を呼び起こし、自分の内側に深く向き合うことです。セッションを通して、自発的に身体が凍りつき、絶望感や悲しみ、怒りなどの感情に包まれた自分を体験します。このとき、息が詰まるような苦しさや、気を失いそうになる感覚に直面するかもしれません。
しかし、この苦しい状態を乗り越えると、体の中心から熱が生じ、震えや涙が現れ、手足が自然に動き出すなど、身体に溜まっていた負のエネルギーが解放されていきます。このプロセスを繰り返すことで、徐々に人間本来のリズムが回復し、深い安定感が得られます。腹側迷走神経が活性化され、自然治癒力が働き始めるのです。
自宅でも瞑想を続けていけば、トラウマの恐怖を解きほぐし、失われた自分自身を取り戻すことが可能になります。自分を取り戻すと、身体は軽やかになり、世界の見え方が変わります。目元がはっきりし、大きな瞳で新しい世界を感じ、気管支が拡張して呼吸が楽になり、頭やお腹、肌もすっきりと整います。さらに、自分を肯定できるようになると、自己価値を実感し、堂々と自信を持って日々を過ごせるようになります。
従来の心理療法では、対話を中心に認知の歪みや行動に働きかけるアプローチが主流です。当相談室でも、対話を通じた分析的なカウンセリングを行いますが、これだけではトラウマによる神経症的な症状の改善は難しいと考えています。
トラウマを抱える人に、認知の歪みや心の問題だけに焦点を当てても、頭の中で考えがぐるぐると回るだけで、なかなか変わらないことがあります。それは、認知や心の反応は、周囲の環境や脳を含めた身体的反応の後に現れるものだからです。特に、重度のトラウマを持つ人は、身体が自分を守るために凍りついたり、興奮したり、解離したりといった反応を示し、脳は常に緊急事態に対応しているかのように機能しています。
トラウマの回復には、認知や心の問題に取り組む前に、まず身体や脳に焦点を当てたアプローチが不可欠です。そのため、神経科学や進化生物学、動物行動学の知見を活用し、人間の身体の状態や本能的な反応を重視した、心と身体の両面に働きかける新しいセラピーが求められています。
従来の心理療法では、表面的な対話に終始し、心の奥深くに届かないばかりか、身体にもほとんど変化が見られないことが多かったと感じる人も多いでしょう。当相談室では、特定の動きやアクションを用いることで、心と身体に潜むトラウマを再活性化させ、強烈な反応を引き起こします。この過程では、悲しみや苦しみ、怒りが表出されるだけでなく、震え、熱感、鳥肌、不随意運動などが自然に表れ、深い癒しと回復へと導かれていきます。
自分の意識を使い、感覚や感情、イメージを見つめながら、凍りついた部分を少しずつ解きほぐしていくことが、トラウマ克服への第一歩です。過去の記憶やイメージを思い浮かべ、身体が示す闘争、凍りつき、不動、反撃といったトラウマ反応に向き合うことで、これらの反応に対する恐怖が徐々に和らぎます。そして、トラウマ反応が次第に色褪せ、代わりに自分の中に力強さと自信が芽生え、適度な緊張感の中で最大のパフォーマンスを発揮できるようになります。
トラウマを乗り越えるには、人間の防衛反応や生物学的メカニズムを深く理解し、自己調整能力を高め、健康な生理状態を維持することが重要です。やがて、深く息を吸い込むことができ、姿勢も整い、安心して仰向けで眠れるようになると、心身の調和が戻り、様々な不調が自然に改善されていきます。
心と身体がしっかりとつながると、睡眠の質が向上し、身体の自然治癒力が発揮され、心身のバランスが整います。身体が軽くなり、活動的になることで生産性も向上し、ネガティブな思考に囚われることも減少します。また、トラウマ治療を通して自己鍛錬を続ければ、その努力が自信につながり、将来に対しても前向きな姿勢を持てるようになります。薬物療法よりも、自然治癒力を引き出すことで、心身に優しいアプローチを取ることができ、コスト面でも効果的です。
たとえ深刻なトラウマを抱えていても、時間をかけて自己と向き合えば、本来の自分を少しずつ取り戻すことができます。しかし、線維筋痛症や慢性疲労症候群、最重度の解離性同一性障害など、治療が難しいケースもあります。さらに、恐怖に向き合うことができない人や、身体の感覚に気づけない場合、効果を得るのが難しいこともあります。それでも、適切なアプローチを続けることで、少しずつ改善への道が開かれていくでしょう。
未解決のトラウマが長年にわたりストレスと緊張を引き起こし、全身が縮まり麻痺していくと、身体の感覚や感情が分からなくなっていきます。これにより、心と身体が切り離され、頭で考えることに集中するようになり、身体に刻まれたトラウマや痛み、不快な感覚に気づかずに済むという一見便利な状態が続くこともあります。
しかし、トラウマ治療においては、身体に根付いた「凍りつき」を少しずつ解きほぐしていくことが重要です。ただ、当事者は自分がどれほど身体的に緊張や警戒しているかに気づいていないことが多いため、身体に焦点を当てたアプローチに対するモチベーションが維持できないこともあります。
トラウマ治療では、身体の感覚に意識を向けることで、頭と体が再び一体となり、本来の自分を取り戻すことが可能です。自分の身体と再びつながることで、線維筋痛症や慢性疲労症候群、自己免疫疾患といった難病を予防する効果も期待できます。しかし、身体の凍りつきを解消し、交感神経に乗っ取られない安定した状態を手に入れることは容易ではなく、継続的で根気強い取り組みが必要です。
トラウマ治療のプロセスには、身体を取り戻し、再び楽しさや喜びを感じられるようになるという大きな利点がありますが、それと同時にいくつかの困難も伴います。過去のトラウマが生々しくフラッシュバックしたり、自分が置かれている現状に改めて直面することで、精神的にも身体的にも辛さを感じることが増えるのです。心身の痛み、不快な感情や感覚、息苦しさ、体の重さといったさまざまな苦痛にも気づくことになります。
また、トラウマ治療では瞑想などを通じて、頭と体を一致させ、高次の神経を活性化させることが目指されますが、その後、日常生活に戻ると、その一時的な上昇感からの反動で体調が悪化し、再び苦しさを感じることもあります。一瞬元気になったように感じても、体内のトラウマ防衛メカニズムが働き続けているため、他者に無防備に近づくことで、恐怖に固まり、再び絶望に落ち込むこともあるかもしれません。
トラウマの記憶と向き合うことで、身体の反応が強くなり、日常生活での辛さが増すことも少なくありませんが、これらの困難は、長い目で見れば、自分を取り戻すために必要な過程です。トラウマ治療は、身体と心を繋ぎ直し、困難な感情や感覚に向き合いながら成長を促す道であると言えるでしょう。
トラウマ治療を成功させるためには、トラウマに関する知識を身につけることと、安心・安全な環境が不可欠です。治療に積極的に取り組む姿勢が大切で、トラウマについて学び、治療者に質問できるほどのモチベーションがあると治療効果が高まります。また、治療の時間以外でも、自分自身が自然体でいられるように努力し、セルフケアを意識的に行う人は、次第に状態が改善していく傾向があります。
基本的にトラウマ治療のセッションは、週に1回または2週間に1回という短い時間で行われます。そのため、治療者に完全に依存するのではなく、自分で自分を癒す力を養い、治療の時間外でもセルフケアを実践することが、治療の効果をより引き出すために重要です。他力本願ではなく、自分自身も治療の一部として主体的に取り組むことが、トラウマの回復への鍵となるのです。
トラウマからの回復過程では、安心・安全を感じられるようになり、他者と交流しやすくなるように神経の働きが整っていきます。しかし、複雑なトラウマを抱える人にとっては、過去の被害体験に基づく警戒心から、無防備な状態を恐れるために抵抗感が生じることがあります。警戒を解くことへの恐怖は、しばしば回復への道を妨げる大きな障害です。
特に、普段から身体を縮め、感情や感覚を閉じ込めている人にとっては、リラックスしたり、何かを感じ始めたりすること自体が大きな挑戦です。身を委ねて心を開くことへの強い抵抗が現れ、治療に対して無意識のうちに反発してしまうこともあるでしょう。
また、過去のトラウマや子ども時代の問題と向き合うことで、身体が過敏に反応し、体調が悪化することもあります。このため、治療中に抵抗感が生じるのは自然なことであり、回復のプロセスにおいて一般的な現象です。こうした抵抗感を乗り越え、少しずつ安全な場所で自分の感覚や感情に気づいていくことが、回復の鍵となります。
トラウマを思い出すことは非常に苦痛であり、それを他人に話すのはさらに困難なものです。そのため、精神科医にうまく伝えられない場合、発達障害と診断されることも少なくありません。しかし、私たちのカウンセリングルームでは、トラウマによって傷ついた心の世界を専門的に丁寧に見立てていきます。
当カウンセリングルームの最大の特徴は、幼少期のトラウマや長年にわたって蓄積された痛み、そして外傷的な経験を引き起こした社会的背景にも焦点を当てている点です。これらの要素に対し、心、脳、身体、そしてスピリチュアリティがどのように内面的に反応しているかを、時間をかけて細かく探っていきます。
私たちは、クライエントが自身の内的世界を深く理解できるよう支援し、その過程で安心感を提供しながら、心の回復をサポートします。トラウマの記憶は決して簡単に取り扱えるものではありませんが、私たちのカウンセリングでは、その痛みに対する慎重かつ深い理解を通して、癒しへの道を一緒に歩んでいきます。
私たちの心理支援では、まず「対話」と「イメージ」、「身体」を大切にしたカウンセリングを提供していますが、より重度の精神疾患を抱える方には、希望に応じて生活サポートも行っています。たとえば、子育てのサポートや病院への付き添い、スーパーでの買い物など、日常生活の中で困難を感じやすい場面での支援を提供しています。
さらに、自律神経のバランスを整えるための呼吸法や漸進的筋弛緩法といった技術の指導に加え、心地よさを感じられるようになるためのスキルを身につけるための課外活動も用意しています。山や川、滝などの自然と触れ合う時間を通じて、身体のリズムや心の安定を取り戻すことが目指されます。
生活サポートでは、クライエントの日常生活に光を当て、同じ目線に立ちながら進めていきます。心や身体の麻痺感、過剰な警戒心、過覚醒、恐怖症状などを徐々に解きほぐし、愛着や社会交流のシステムを活性化させることで、より安心して過ごせる生活環境を整えます。一緒にプログラムを作り、実際の生活に取り入れていくことで、リラックスできる方法や安心感を得られる手段を見つけるまで、しっかりとサポートしていきます。
遠方にお住まいで通うのが難しい方、外の世界が恐ろしく、いつ何時心ない言葉に傷つけられるか不安な方、言葉一つで心が崩れてしまう可能性を感じている方。バスや電車に乗ることができない、疲れ切って身動きが取れない、カウンセリングルームに一人で行くことができない。こうした困難を抱える方々に向けて、私たちは電話カウンセリングのサービスを提供しています。どこにいても、安心してカウンセリングを受けることができる環境を整えています。▶電話カウンセリングのページ
また、セラピストがご自宅やお近くの喫茶店など、ご希望の場所に訪問してカウンセリングを行うサービスもご用意しています。安心できる場所で、リラックスした状態でお話しすることができる訪問カウンセリングは、対面のサポートが必要な方に最適です。▶訪問カウンセリングのページ
当カウンセリングルームには、さまざまな診断を受けた方々が訪れています。その中でも、多くの方が過去にトラウマを経験しており、男性の約5割、女性の約7割が、闘争・逃走反応や凍りつきといったトラウマ反応を抱えています。また、失恋や離婚、その危機をきっかけにカウンセリングに来られる方も多く見受けられます。
未解決のトラウマを抱えた方は、親しい人との関係が崩れることで、その人とのつながりを基に描いていた未来のビジョンが一気に崩壊し、「今ここ」での繋がりを失ってしまいます。その結果、人生の方向性を見失い、精神的な混乱や孤独感が深まることがあります。
さらに、職場での人間関係に悩んでカウンセリングを受ける方も少なくありません。職場でのストレスや対人関係のトラブルが積み重なり、心に大きな負荷をかけることが多いのです。こうした問題に向き合い、心を軽くするために、多くの方がカウンセリングを選んでいます。
失恋や離婚の危機に直面し、いつも親しい人との関係が長続きしないと悩む方が多くいます。自力でその状況から抜け出すことが難しいと感じたら、ぜひ当カウンセリングルームで、あなたの本当の気持ちを包み隠さず話してみてください。私たちは一緒に、親密な関係が続かない原因や構造を丁寧に見ていきます。
自己嫌悪を避けるために、今まで目を背けてきた自分自身の一部を徹底的に見直すことも、変化への重要な一歩です。関係が危機的な状況に陥ってからでは遅いので、早めにご相談いただくことをお勧めします。
また、当カウンセリングルームでは、カップルや夫婦を対象にしたカウンセリングも行っています。特に片方がトラウマを抱えているケースが多く、そのトラウマに基づく「凍りつき」の反応をカウンセリング中に解きほぐしていきます。タッチや触れ合いを通して心と身体の回復を促し、二人の関係をより健康的に築けるようサポートします。
「過去のことより、ただ話を聞いてほしい」「具体的なアドバイスがほしい」――そんな方のために、当カウンセリングルームでは、技法や理論にとらわれず、まずはあなたの心の痛みや不安に丁寧に耳を傾けます。
私たちの支援方法は、クライエント一人ひとりの実情に合わせた柔軟なアプローチを大切にしています。オーダーメイド式のカウンセリングや、リラクゼーション技法を取り入れ、あなたにとって最適なサポートを提供します。ここでは、心が軽くなるように、一緒に安心できる方法を見つけていきましょう。
不条理な環境の中で、普通のことができず、周りに置いていかれたと感じる寂しさ。その深い悲しみを抱えるあなたに、セラピストが丁寧に寄り添い、共に癒しの道を歩んでいきます。当カウンセリングルームは、あなたにとって安心できる「ホームベース」として機能し、セラピストとの共同作業を通じて、心の支えとなる場所を提供します。
トラウマを抱え、闘争・逃走反応や凍りつきの状態にある方が、再び愛着を感じられるように、愛着システムを活性化させ、安定した関係を築ける支援を行います。ここでの時間を通じて、心が少しずつ解けていくのを感じていただけるでしょう。
「どうして私だけがこんな目に…」と悔しさや苦しさを感じているあなた。その思いを、興味を持って丁寧に聞いてくれるセラピストに、たくさん話してみてください。自分の話を聞いてもらうことで、徐々に心の中の苦しみややりきれなさが和らいでいきます。
人に話すことで頭の中が整理され、自分の感情や思いを理解しやすくなります。そして、話すことが楽しくなり、心が軽くなることで、精神的な回復や人間的な成長にも繋がっていきます。話すことが、あなたにとっての癒しの第一歩です。
自分のことが大嫌いで、つい自分を責めてしまう…。子どもの頃から親から否定な言動を繰り返し受けてきた人は、打ちのめされたような無力感に囚われることが多いものです。その無力感により、自分自身を否定しがちですが、実は過去に酷く打ちのめされた体験と、追い詰められながらも生き延びてきた強さは、異なるものです。
私たちは、あなたが過去の辛い経験と、そこから必死に生き延びてきた努力を区別できるようにサポートします。過去の体験にとらわれることなく、自分がどれだけ努力してきたかを振り返ることで、「自分は強い」「自分にはやれる力がある」という自信を深めていけるよう、一緒に進んでいきます。
私たちのカウンセリングは、ユング派のドナルド・カルシェッドによるセルフケア・システムや、ジャネの構造的解離理論といった精神分析学を基盤にしています。また、トラウマの理解には、ヴァン・デア・コルクやピーター・ラヴィーンらの外傷理論を取り入れ、心の深層にある問題にアプローチします。
さらに、社会学や脳科学、神経生物学、動物行動学といった幅広い知見も活用し、心身両面からの支援を行っています。加えて、先住民のシャーマニズムや精霊、自然崇拝の伝統的な知恵を取り入れることで、より多角的なアプローチで心の癒しを目指していきます。
精神医学では、精神現象を主に脳を中心に生物学的な視点から捉え、普遍的な要素に焦点を当てます。しかし、当カウンセリングルームでは、精神現象をより広い視点で理解することを大切にしています。私たちは、心理学、社会学、脳科学、神経科学、進化生物学、動物行動学、文化人類学など、多角的なアプローチを取り入れ、人間の心の奥深さを探っていきます。
また、社会不安や人間不信といった問題を、人間関係が生み出す悩みとして捉え、「今ここ」での体験を重視しています。カウンセリングでは、クライエントの身体の状態や語られる言葉の一つひとつを丁寧に扱い、心と体に寄り添いながらサポートすることを心がけています。
薬物療法は、脳の神経伝達物質や身体に直接働きかけ、睡眠、食欲、意欲、衝動、不安、緊張など、生活全般の困難を和らげる効果があります。特にトラウマを抱えた人は、脳や身体の免疫系、神経系、内分泌系に問題を抱えていることが多く、脳や内臓、皮膚に炎症が起きている場合もあります。そのため、身体に作用する薬、例えば胃腸の働きを整える薬などは、回復に役立つことが多いのです。
一方で、心理療法は、クライエントの家族関係や社会文化的背景を見つめ、カウンセラーとの対話を通じて人とのつながりを感じながら、心や精神、身体を内側から丁寧に分析していきます。自己理解を深め、自分との向き合い方を学ぶ過程で、内面的な成長が促されます。
薬物療法と心理療法はどちらも有効な治療法であり、どちらかを選ぶのではなく、併用することでより効果的な回復が期待できます。さらに、課外活動や集団活動など、さまざまなアプローチを組み合わせることが、より深い癒しに繋がります。長期的なストレスで生活に困難を感じている方には、精神科や心療内科での薬物療法と、当カウンセリングルームでの心理療法を併用することを強くお勧めしています。
子どもの頃に複数のトラウマを経験すると、脳内で理性を司る「理性脳」と、感情をコントロールする「情動脳」のバランスが崩れ、自分自身の感覚を失ったり、自傷や他害の危険が伴うことがあります。精神科医療では、こうした状況に対して入院治療を行い、患者を守ることが一般的です。しかし、入院による拘束は、患者の体と記憶にさらなるトラウマを刻み込むリスクがあり、家族や社会の安全を優先する側面もあります。
薬物療法においては、患者が興奮状態に陥って交感神経系が過剰に働かないようコントロールしますが、薬によって感覚を麻痺させ、情動脳を抑え込むことで、トラウマの根本原因が曖昧になってしまうこともあります。結果的に、子どもの頃に経験したトラウマの真実が不明瞭なままになってしまうことがあります。
私は、トラウマを抱えた方が自身を守るために、さまざまな専門家の力を借りることに賛成です。そして、トラウマの専門家の助けを借りながら、自分の身体や心と丁寧に向き合い、コミュニケーションをとっていくことが、トラウマ治癒にとって非常に効果的な方法だと考えています。
トラウマ治療には、どうしても限界があります。特に幼少期のトラウマは、情動を司る神経系に深刻なダメージを与え、脳の電気回路や心的回路、さらには身体の内側にも悪影響を及ぼします。これらは、単にトークセラピー(話し合い)だけで完全に治癒することは難しく、ボディセラピーなどの多様な技法を取り入れる必要があります。
幼少期に受けた虐待などのトラウマは、身体に想像以上のダメージを与えるため、状態が一度良くなっても、それが治ったわけではありません。良い状態と悪い状態を何度も繰り返しながら、少しずつ全体のレベルを上げていくしかないのです。
例えば、性的虐待や出生時のトラウマ、医療トラウマなどを抱える人は、寛解までの道のりが非常に困難です。ショックを受けるたびに、心臓付近が硬直して強い痛みを感じることもあります。さらに、離人感や解離症状が改善しても、音や匂い、光、人の気配などに過敏に反応し続ける場合、都市生活を送る限り、ストレスや症状が消えることはないかもしれません。
トラウマが慢性化し、エネルギーが枯渇している場合、イメージが湧かなくなったり、身体が鈍く反応するなど、治療が難しくなるケースもあります。このような状況では、長期的な視点でトラウマと向き合い、時間をかけて少しずつ回復を目指すことが重要です。
トラウマからの回復には、社会の中で仲間を作り、さまざまな経験を体で感じ、行動し、それを記憶に刻むことが本当に重要です。週に1回1時間のセラピーだけでは限界があるかもしれませんが、それでも希望を持ちながら取り組むことが大切です。
治療の目指すべきところは、まず自分の状態を理解し、恐怖や痛み、緊張を少しずつ和らげていくこと。そして、自分の主体性を取り戻し、他者との関係の中で肯定的な未来を描けるように、自分自身の物語を書き換えていくことです。
トラウマは深い傷ですが、社会とのつながりや新しい体験を通して、少しずつ前に進むことができます。治療はそのプロセスの一部であり、日常生活での経験や仲間との関係が、さらなる回復を支えてくれるのです。
トラウマに向き合う過程では、過去に拒絶した痛みや恐怖、絶望、無力感と対峙する必要があります。このため、恐怖に近づいては離れ、また近づいては離れるという過程を繰り返すことになるかもしれません。この恐怖を克服するための鍵は、自分の心の内に安心できるイメージを持つことです。
トラウマ治療には、自分のことを他者に話すことで、客観的に自分を見つめ直すという利点があります。しかし、自分のことを深く語ることで、当時の感情が蘇り、過覚醒が頻発し、体調不良や問題行動が起こりやすくなるという課題もあります。
さらに、心と身体の繋がりが回復し始めると、本来の自分を取り戻す一方で、これまで気づかなかったストレスや緊張、感情が高まり、不安やイライラ、怒り、痛み、恐怖、不快感が生活に影響を及ぼすことがあります。そのため、トラウマ治療の過程で生活全般が困難になることも考えられます。
当カウンセリングルームでは、過去の心理療法家の失敗や、トラウマ治療に伴うリスクを十分に考慮し、身体と心の安全を最優先にしています。リラクゼーション、ヨガ、瞑想、ヒーリング音楽、対話などの技法を組み合わせ、クライエントが安心して治療を受けられる環境を整えています。
このように、トラウマ治療は一歩ずつ丁寧に進める必要があります。トラウマは心と体に深く刻まれており、過去の痛みや恐怖に向き合うことは、簡単なことではありません。恐怖や不安が再び蘇る中で、時にしんどさや混乱を感じるかもしれません。しかし、その過程を通じて、自分自身の内側で起きていることを少しずつ理解し、心と体が統合されていくことが、真の回復への道です。
当カウンセリングルームでは、身体の感覚や心の動きを大切にしながら、無理なく進めていく治療法を提供しています。リラクゼーションや呼吸法、瞑想を通じて心身を整え、徐々にトラウマを解放し、あなた自身の力を引き出していくサポートをしています。これにより、今まで感じられなかった安心感や、自分自身と世界とのつながりを再発見できるようになります。
私たちの目指すのは、クライエントが自分の人生を主体的に歩み、安心して他者と関わりながら、豊かで意味のある日々を過ごせるようになることです。一緒に歩みながら、あなたのペースで進んでいきましょう。トラウマの回復は、決して一人で抱え込む必要はありません。私たちは、あなたのそばで支え、寄り添いながら、共に新しい未来を築いていくお手伝いをいたします。
トラウマケア専門こころのえ相談室
論考 井上陽平