交感神経の怒りの人格

▶交感神経システムの乗っ取り

 

内なる世界(私そのもの)が、病的な心の産物に取って代わられる描写です。(ソロモン2001)私は落ち込んでうつの状態であったが、私の中でどんどん大きくなっていった。それは、私自身の周りにあって、包み込んでいき、私の血を吸い続けるように、私自身よりも生き生きしていた。それ自身が生きようとして、自分自身に取って代わろうとしていた。最悪の段階では、自分の感情が自分でないものとなって、その湧き出る感情に操られているようなものであった。「trauma and the soul」Donald Kalsched

 

波長を合わせてくれて、心響き合う関係のもとで育った子どもは、腹側迷走神経が正常に働いて、他者と落ち着いてリラックスした状態で過ごすことができます。その一方で、ネグレクトや虐待を受けた子どもは、気分を落ち着かせて、身体を休ませる場所がなく、感情や自己調整機能に障害が表れます。幼少時代に、母親に見捨てられたり、きちんとした養育を受けなかった子どもは、母親を求める叫びとともに、空間が崩壊して、目の前が真っ白になります。虐待や母親の不在が続くと、子どもの望みは絶たれていって、リラックスするという愛着システムが全く育ちません。また、家庭内の虐待や学校社会で不条理な目に合わされてた子どもは、原始的(野生的)な防衛する力が必要になり、子どもは自分を救うためにサバイバル技術を身につけていきます。自分の居場所が無くて、周囲から浮き始めると、怒りや許せない気持ちで自暴自棄になって、動物的で反射的な行動を取る交感神経システムが成長していきます。交感神経システムの支配が強い人は、愛着対象との皮膚の接触は危険であり、対象なき世界で、己の力とスキルを磨きます。そして、愛着対象と距離を置くことで安全感を保障しています。

 

二つの意識状態がある人の本来の部分は、幼い頃から、怖がりで、全く安心できなくて、親の顔色を伺いながらご機嫌をとってきたような良い子のタイプが多いです。家の中では、常に警戒していて、親の声や会話の内容、足音、気配などに全神経を集中させて、生き延びるための行動を取ってきました。一方、心の中では、天使や悪魔を崇拝していたり、悪魔や生霊、怨念に憑りつかれる(交感神経系に乗っ取られる)ことを心配しています。目の前に危険が迫ると、正常な状態から何かが湧き出るように別の感覚になって、興奮した状態に切り替わり、活発な思考や行動を取ります。交感神経が昂ると、不安や動揺を感じやすくなり、脅威があるかどうかを入念に調べて、細かいところまで詮索するようになります。過覚醒から、闘争反応に切り替わると、目つきの変化とともに、瞳孔が拡張し、聴覚が過敏で、鬼の形相になり、興奮していて、身体の方が勝手に動いたり、口が勝手に喋ったりして、非常に攻撃的になります。

 

本来の自分がトラウマにより、神経が昂ったり、落ち込みすぎたりして、気分の振れ幅が大きくなりますが、その間を行き来するようになります。そして、外の世界に過敏になると、今の自分が分からなくなり、自分が自分でなくなるという世界にいて、悪魔に憑りつかれる狂気を感じたり、生と死の狭間にいるように感じています。

 

▶人格の二重性

 

二重人格の人は、本来の自分も、交感神経システムの怒りの人格も別々な存在だけれども、一つの身体を共有しています。1つの肉体に2つの魂と2つの記憶があり、本来の生きていたはずの自分とトラウマを負った後に作られた自分がせめぎ合い、スイッチが切り替わると行動が変わり、たまにどちらか分からなくなります。本来の自分は、この世界を見ていますが、もう一人の自分は、大きな闇や痛みを持っています。そして、本来の自分が、ストレスが高まり、どうしようもなくなったり、脅威を感じたり、心の中で悪いことをしようしたり、人を傷つけたいと思った瞬間、もう一人の自分に乗っ取られて、怒りが爆発します。ですから、本来の自分は、もう一人の自分が出てくる心配があり、怒りが爆発しないように、自分を抑制しています。

 

交感神経システムの怒りの人格は、本来の自分が幸せになることが許せなかったり、人のことを良く思おうとすることに批判的だったり、他の人と継続して関係を持てないように縁を切ったりすることがあります。また、怒りの人格は、死にたくないと思っていて、死のうとする本来の自分の守り神になることもあります。ピンチな時がきたら、怒りの人格は、表の世界に出たりしますが、このスイッチが入ると、目つきが鋭くなり、口元がにやつき、ずる賢い表情になって、周りを見渡し後は、顔を触って、自分かどうかを確かめてから、行動します。そして、急にわけもなく怒り出したり、弱い相手に攻撃したり、相手の反応次第では、暴言や罵倒が止まりません。怒りの人格は、周りは敵だらけの環境のなかで、不条理さを感じて、一人で戦ってきました。悔し涙を流し、唸り声をあげるなど、彼らの感情は、とても激しいものですが、それ以上に強い愛情でぶつかってくることを願っています。

 

怒りの人格を持つ人は、過去に引きずられそうになると、フラッシュバックが蘇り、過去の痛みと戦います。身体の中にいる怒りの人格が暴れ始めても、静かに情動の嵐が過ぎ去るを待つしかありません。本来の自分と怒りの人格は、主導権の奪い合いをすることがあり、本来の自分が怒りの人格を抑えようとしたときに、怒りの人格は抵抗して、唸り声をあげます。主導権の奪い合いのときは、手足や顔の取り合いになり、手足が乗っ取られると、身体が勝手に動き出し、口が乗っ取られると、汚い言葉を吐きます。怒りの人格が背後にいるときは、背中がゾワゾワします。また、怒りの人格を持つような人は、別に外傷体験に焦点づけられた人格部分をいくつか持っていることがあり、怯えている人格が表に出てくると、周り全てが怖くなって、全身が震えたりします。

 

二重人格の傾向がある男性は、思春期や青年期にかけて、弱いものいじめや暴力事件を起こしやすく、警察のお世話になることがあります。集団のなかでは、自分のメンツを守るために、負けるわけにはいきません。闘争場面では、本来の自分は眠くなり、意識は朦朧としますが、もう一人の自分が歯止めなくとことんまで相手を痛めつけます。

 

一方、愛着システムの本来の部分が、外傷体験のときの精神的ショックが大きすぎて、もはや散り散りに小さくなっていて、どこにも居ない場合があります。そして、交感神経システムが優位な部分があたかも正常かのように日常生活を営んでいます。こうした人は、対象なき世界で、力やスキルを高めて、人生の様々な障害を飛んで切り抜けるような曲芸師のようです。子どもの頃から、足が速くて、いじめっ子で、一匹狼で、思春期以降は、やんちゃな部分から反社会的な行動までとりがちです。ただし、人生に無茶を続けていくと、解離傾向が高まり、身体は硬直して、無感覚な部分が広がっていくことになります。

 

▶二重性のある人への対応方法

 

交感神経システムに乗っ取られた子どもの場合は、顔を真っ赤にしてひっかいたりしてきますが、優しく抱きしめてあげて、背中をさすりながら、その子どもの痛みを言葉にして返し、一緒に泣いてあげるのが良いです。そうすると、子どもの方も泣き出して、交感神経システムから愛着システムが作動します。

 

交感神経システムに乗っ取られた大人の場合は、急にわけもなく怒り出したあと、なだめたり、話を聞いたりしながら、試行錯誤することになります。すぐに抱きしめようとしても、払いのけられることになります。相手の質問責めに対して、それなりに的確に答えて、真剣に受け答えしましょう。そのようなやり取りを続けたあと、優しく抱きしめると、交感神経システムから愛着システムが作動して、子どもみたいになることがあります。基本的には、交感神経システムに乗っ取られないような環境作りや、周りの人の理解が必要です。自傷他害の恐れがある場合は、精神科にて自分の状況を説明して、交感神経系の興奮状態を鎮める薬を飲むのが良いかもしれません。薬を飲むことで、頭の働きが鈍くなるかもしれませんが、過敏傾向や神経の尖りが減って、頭の中がザワザワしなくなり、ある程度穏やかに過ごせるようになるかもしれません。と同時に、身体のほうが怠くなる場合もあるので、身体志向的アプローチと併用すると良いでしょう。

 

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