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体の拡張と収縮のメカニズム


人間というのは、リラックスしている時に、体が伸びていく「拡張」と、緊張している時に、体が縮んでいく「収縮」があり、そのどちらかの状態にあります。健康な人の日常のエネルギーの振れ幅は、正常な範囲内での体の拡張と収縮を繰り返します。しかし、トラウマの衝撃に曝された人は、極限の状況下で、心臓がバクバクし、全身に血液を送り、闘争か逃走のために筋肉を動かそうとして、エネルギーの振れ幅がおもいっきりバネを伸ばされたように引き伸ばされて、一瞬で限界まで縮む動きを繰り返します。そして、その縮んだところで、ロックされて動けなくなる状態がトラウマの凍りつき状態です。また、凍りついた後に、致命的なダメージを負って、体が極度に伸び切り、筋肉が機能しなくなるのがトラウマの虚脱状態と言えます。

 

トラウマを経験することで、脳と体の神経が危険を察知するようになり、慢性的に体が収縮する方向に向いて、体の中にトラウマのエネルギーを閉じ込めることになります。嫌なものを知覚して、体の内側がギュッと縮まる人は、嫌悪や不快刺激に打たれ弱くなり、すぐに首や肩が硬直し、体が凍りつきます。このような状態が続くと、交感神経や背側迷走神経が拮抗しあって、過剰に働くために、凍りつきの迷走神経反射により、様々な病状に悩まされます。特に、心臓や気管支、胸腺が縮むと、神経系、免疫系、内分泌系に悪い影響が出ます。

健康な人は


トラウマがない人は、自然に適度な範囲内で体が伸びたり縮んだりを繰り返すために、健康に過ごすことができます。健康な人は、無意識のうちに、体の伸び縮みを繰り返して、息がしやすく、血液が巡り、気持ちに余裕があり、のんびりゆっくり生きています。そのため、たとえ大きなストレスに曝されても、体が一瞬縮んだあとに、伸びていくので、跳ね返す力が自然に備わっています。また、自分がやりたいことをフルにやっている人は、どんどん体の神経や筋肉がフワッと広がり、体が楽になり、イマジネーションが膨らみます。

不健康な人は


不健康な人(トラウマ持ちや神経発達症の人)は、恐れに支配されて、交感神経と背側迷走神経の働きが強く、慢性的に体が縮んでおり、息がしづらく、血流が滞りがちで、痛みを感じやすく、ストレスを跳ね返す力が弱いです。トラウマを抱えることで、じっとしている(静止)ときに、体が縮んで凍りついていくために、このときの不快な感覚に動かされて、多動や注意集中困難、解離、衝動行為、過食、依存、嗜癖、自傷、不動化などの問題が出ます。最も酷い虚脱状態の人は、これ以上、収縮しきれなくて、体が伸び切ってしまい、体が環境の刺激に反応しなくなり、心の成長が止まります。慢性的にトラウマの状態が続くと、頭の中は、将来への不安が支配して、何々をしなければならないとか、すべき思考になり、すぐに物事を否定的に捉えて、周囲の人をいつも気にしています。生きがいがなく、生きることが辛い人ほど、体がギュッと縮まってロックがかかるか、体が伸び切ってしまっており、その態勢から延々と抜け出せなくなります。

トラウマへの身体アプローチ


トラウマがある人は、脳と体の神経が危険を察知して、条件反射的に体の筋肉が縮んでいきます。生まれ落ちた時から、ストレスに対する緊張が弱い人は、人が近寄ってきただけで、自分がどうこなしていけば良いのか分からなくなる人もいます。トラウマがある人は、無意識下で体が縮んでいて、過緊張や凍りつき状態にあることを自覚していきましょう。そして、ヨガや瞑想を行い、日常的にもマインドフルネス状態を作り、自分の体の伸びたり縮んだりの一瞬を見ていきましょう。例えば、瞑想をして、体を静止状態することで、その人の癖や行動パターン、体の感覚の変化を見て、修正していくことが可能になります。トラウマに動かされるのではなく、自分の体の感覚と仲良くなっていけば、トラウマの恐怖は段々と小さくなっていきます。

まとめ


トラウマというのは体に染みついていたり、体の動きが癖付けられているために、蓄積されたものとして身体に残っているので、すぐ治るものでありません。それを改善していくには、焦らずに、じっくり取り組んでいくことが重要です。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

更新:2019-10-29

論考 井上陽平

 

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