解離性同一性障害の治療
▶解離性同一性障害の治療

 

解離性同一性障害の治療は、だいだい主人格がやってきますが、治療の途中で、痛みを持った子どもの人格や基本人格に移行していくことがあります。解離性同一性障害の治療を効果的にやろうと思えば、体の感覚に焦点づけた治療がベストです。体の過覚醒から凍りつき、虚脱の間を行き来しているところを見ていきます。体がガチガチに固まっていることが多く、その身体をほぐしていく方法を考えます。治療では、安心するイメージをしていくことが重要ですが、安心するイメージが難しい場合もあります。まずは、良いイメージをして体に着目したり、深呼吸をして体の中に気を巡らせます。また、カウンセリングルームの中だけではなく、自然溢れた場所で体をケアしていくことも必要かもしれません。治療期間は、年単位で見ていかないといけません。治療者とは相性があって、解離性同一性障害の治療に詳しい人が良いでしょう。

 

▶解離性同一性障害の治療の難しさ

 

主人格の状態により、治療の難しさは様々ですが、主人格が性暴力被害者だったり、発達障害の傾向が強かったり、無自覚だったり、状態がコロコロ変わったり、守護者人格が不在だったり、妨害人格が強力だったり、現実にパートナーがいなかったりすると大変になります。窮乏した子どもの人格は、最初のうちは治療者との関係も良好で、治療者は甘やかしがちになりますが、依存的になり、次第に横柄になってくるので、手に負えなくなります。治療者は振り回されて、治療の枠組みに収まりきらない様子にイライラしたり、冷たい態度を取ったり、制限をかけたりします。窮乏した子どもの人格は、抱える闇の深さから、勘違いしたり、嫌味として捉えたり、傷ついたりしていって、その代わりに攻撃的な人格が現れて、様々な妨害工作を行い、無茶苦茶になるというパターンに陥ることがあります。窮乏的/横柄な子どもの人格と攻撃的な人格の妨害工作の負のサイクルにはまると、泥沼状態になります。このように解離性同一性障害の方の治療は難しく、機関レベルで問題が起きるので、受け入れてくれる病院を見つけるのが大変です。

 

▶治療を成功させるには

 

本来の人格と思われる子どもの人格たちと信頼関係を築いて、その関係性を維持することが重要になります。解離性同一性障害の人は、人間不信が強いために、勘違いを起こしやすく、言葉をそのまま受け取り、細かいことまで気にします。治療の枠組みに収まりきらないことが多く、制限と補償の間を行き来します。治療では、子どもの人格が安心感を持って望むことができれば、身体と心にオキシトシンが溢れて、確実に良い方向に向かいます。日常生活では、子どもの人格から大人の人格に代わって、嫌なことに耐え、疲れ切った状態で、治療を受けることになりますが、治療者との間で信頼関係があると、身体は正常に回復していきます。

 

▶交代人格とのネットワーク作り

 

解離性同一性障害の身体の中や背後には、攻撃的な人格部分が存在します。一般的に、主人格は不快なことやストレスに弱いので、すぐに身体が固まって、解離してしまいます。そして、不快な場面では、攻撃的な人格部分が出てきて、感情をそのままぶつけるので、人間関係がことごとく失敗していきます。治療では、主人格が攻撃的な人格部分とコミュニケーションを通して、仲良くなっていくことを手伝います。セラピストは、主人格と攻撃的な人格部分に間に入って、3者間で話し合うのが良いでしょう。攻撃的な人格部分は、身体的暴力、精神的暴力、性的暴力などの被害者であり、主人格が耐えられなかった苦痛を全部受け持っています。仲良くなるには、攻撃的な人格部分を否定せずに、どんな目に遭ってきたのか、どんな気持ちでいるのかを聞いていきます。基本的には、生活環境を整えて、攻撃的な人格部分を眠らせておくのが良いと思います。

 

▶ボディセラピー

 

トラウマのボディセラピーでは、は、ソマティックエクスぺリンスの理論をベースにするのが良いと思います。まずは、自分の手を使って生きる、足を使って生きるというところから始めます。自分の手で物を掴んでいるという実感や自分の足で地面を踏みしめている実感を噛みしめて、生活します。さらに、手や足の指を動かしながら、そこに意識を向けて、体を活性化させます。また、カウンセリングルームの中だけでなく、安全ななかでの山登りやボルダリングが、体の筋肉や皮膚、内臓感覚を鍛えていきます。次に、解離性同一性障害の人は、頭、顔、首、肩、胸、背中のラインがガチガチに固くなっているので、肩の力を抜く練習したり、脳や顔、首、胸、背中のほうを緩めていきます。例えば、息が吸えない人には、動かない肺や喉の固まりに注意を向けていって、そこを完全に緩めることで、息がいっぱい吸えるようになります。その一方で、自分の身体に注意を向けると、感情や感覚の麻痺が解けていくので、フラッシュバックしやすくなる欠点があります。特に、性暴力被害者の場合は、身体の注意を向けると、フラッシュバックや身体に凄まじい反応が起きて、体調を崩すかもしれません。そのため、治療を続けていくことが困難になることも多く、トラウマの回復には、不快な感情や感覚と向き合う覚悟が必要です。

 

解離性同一性障害の人は、最重度のトラウマを持っており、セラピールームでのカウンセリングを行う際、悪いイメージを浮かべていくと、一瞬で凍りついて、機能停止になることがあります。機能停止の場合は、しばらく静止した状態が続いて、人格交代が起きるかもしれません。主人格は、あちら側の世界に飛んでいって、その間に起きた出来事を覚えていないかもしれません。そのため、悪いイメージを浮かべるにしても、段階的にやっていく必要があります。また、身体を凍りつかせるのも、筋肉の筋弛緩から始めて、段々と緊張が強まっていたらどうですか?というやり方から始めます。解離性同一性障害の方は、体が凍りついて固まったあと、自然終息させるのに時間がかかります。

 

解離性同一性障害でも、体を凍りつかせて、自分が自分でいられる人の場合は、体を不動状態にします。そして、恐怖に向き合い、全身が熱くなり、呼吸が苦しくなって、汗が出てきます。集中力が切れないように、解離しないようにして、不動状態を体験していくと、体が震えて、全身か莫大なトラウマのエネルギーが抜け出ます。カウンセリング受けた後や次の日は、とても落ち着いて過ごせるかもしれません。治療では、日常生活のなかで、リラックスや休息する時間を増やしていって、少しずつ人間らしい生活できるようにしていきます。

 

▶生活場面でのボディセラピー

 

毎日、胸が痛くて、息が吸えなくて、凍りついて、過去に引きずり込まれていく人の場合は、生活場面のなかで、いつも凍りついてしまうときに焦点を当てたほうが、より自然に出来るかもしれません。毎晩、同じ場面で体が凍りつく人は、その体が凍りつく時間に焦点を合わせて、電話やスカイプなどのオンラインカウンセリングを有効かもしれません。

 

生活場面のなかで、いつも凍りついてしまうときに焦点を当てた場合は、体が凍りつくまえは、胸のざわざわして、胸の固まりが大きくなります。そして、体が凍りつくので、その凍りついた部分に意識を向けます。凍りついているときは、自分に危害を加えた人物と戦うか、逃げるかのイメージをします。戦うのが難しい場合は、セラピストを頼りにして逃げるイメージをします。無事に逃げられたら、また体の感覚を注意を向けていきます。

 

セラピーのセッションが進んでも、何度も加害者に捕まって、身体が固まることを繰り返しますが、逃げるイメージをしていきます。特に、体が固まる前後に、体に注意を向け続けることが重要で、解離しないようにします。加害者に捕まる記憶が蘇っているなら、セラピストを頼りにして、その場から逃げるか、打ち倒すかのイメージをして、体の感覚を見ていきます。また、不動状態のときは、手足が勝手に動き出したりしますが、セラピストを支えにしてやり過ごします。不動状態から抜け出るときは、全身が相当震えますが、震えを止めずに自然終息するまで待ちます。治療を無事にやり終えると、涙声やかすれた声から、綺麗な声になり、息がしやすく、瞳が綺麗に輝き、この世界の見え方が変わります。

 

▶薬物療法

 

解離性同一性障害の人は、幼少時代から自分を救うために、サバイバル技術を身につけて、過緊張や警戒でストレスが高い状態にあります。そのため、胃腸や皮膚などに炎症が起きて、下痢や便秘、痒みで心身の状態が最悪かもしれません。まずは、検査で全身の炎症を調べてもらって、それを抑える薬を飲むと、状態が改善されます。また、リウマチや線維筋痛症、慢性疼痛・疲労などで日常生活が困難な場合は、ボディセラピーと薬物療法、環境調整の併用が必要です。

 

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