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肩こり・首痛を解消するための意識的エクササイズとリラクセーション法


人間の体は、常に「伸びる」か「縮む」かのどちらかの状態にあり、拡張と収縮のリズムを刻んでいます。しかし、複雑なトラウマを抱えた人は、過去の外傷体験が身体に深く刻み込まれているため、現実や想像上の脅威に対して過剰に警戒心を抱きやすくなります。恐怖や怒りに反応し、体が常に生命の危機を感じ取ることで、強い緊張状態が続き、自分を防御する姿勢を取るようになります。その結果、身体は慢性的に「縮む」方向に向かいがちで、歯の食いしばりや肩こり、首こり、片頭痛、顎関節症といった症状を引き起こしやすくなります。

 

過去のトラウマが身体に残したショックの記憶は、日常生活に戻った今でも無意識のうちに神経を張りつめた生活を強いられます。トラウマが複雑化している人ほど、生活全般の緊張やストレスが増し、体は過覚醒と凍りつき、そして虚脱の状態を繰り返すことになります。

 

「凍りつき状態」とは、身体が常に防衛態勢を保っている状態であり、体内には膨大なエネルギーが滞っています。この状態では、頭や首、肩、背中がガチガチに固まり、感情的な反応が身体に現れます。一方、虚脱状態では、四肢の筋肉が極度に弛緩し、力が入らず、血液の巡りも悪化します。そのため、身体を支えるのが困難になり、首や肩、背中、腰に過度の負担がかかり、硬直や痛みが生じます。こうした状態が続くと、体は持続的なストレスに耐えられなくなり、さらに症状が悪化する恐れがあります。

肩こり・首の痛みのケア

1.肩を回すエクササイズ


慢性的な肩こりや首筋の痛み、頭痛を改善するためには、痛みを麻痺させるのではなく、むしろその痛みに意識を向けることが重要です。まずは、自分の体の内側に意識を集中させ、首や肩のこりが慢性化している部分に注意を向けます。その痛みをしっかりと感じることで、痛みが重く感じられるかもしれませんが、その感覚を無視せず受け入れてください。

 

次に、その痛みを和らげるために、肩を動かしてみましょう。肩を動かす際には、肩や肘の関節、腕の筋肉を意識的に使い、動きをゆっくりと行います。肩の上げ下げや肩甲骨の動きに注意を払いながら、緊張している筋肉を少しずつほぐしていきます。肩を動かすことで、筋肉の緊張が緩み、血行が促進され、こりが軽減されるのを感じるでしょう。このプロセスを繰り返し行うことで、慢性的な痛みを改善し、体の状態をより良くすることができます。

2.緊張させた肩を自由に動かすエクササイズ


左右の肩を片方ずつ緊張させ、その緊張がピークに達したら、次に肩がどのように動きたがっているのかをイメージしてみましょう。そのイメージに従い、緊張している肩をまるで自然に動き出しているかのようにゆっくりと動かします。肩の動きに意識を集中させ、徐々に肩の力を抜いていき、リラックスした状態に導きます。このプロセスを通じて、肩の緊張がほぐれ、より楽な状態へと導くことができます。

3.口の開け閉めエクササイズ


顎を軽く引いて、口の開け閉めをゆっくりとリズミカルに繰り返します。その際、YouTubeでシンギングボウルなどの心地よく体に響く音を聴きながら、肩や首などの気になる部分に意識を向けていきましょう。このリズミカルな口の動きによって、顎を中心に筋肉や神経が優しくストレッチされ、その効果がじわじわと全身に広がります。結果として、体全体がリラックスし、徐々に正常な状態へと近づいていく感覚を味わえるでしょう。

4.体を楽しく動かすエクササイズ


全身に振動やリズムが伝わるようなアイテムを手に持ち、それを振り回しながら自由に手足を動かしてみましょう。また、トランポリンの上で跳びはねたり、音楽に合わせてダンスを踊ったり、スポーツを楽しむなど、体を使って楽しく動くエクササイズがおすすめです。これらのアクティビティに腹式呼吸を取り入れることで、覚醒エネルギーを高め、心身のリフレッシュがより効果的になります。

5.体を日常的に動かす重要性


首や肩が凝りやすく、手足が冷えやすい方は、じっとしていると体が次第に固まってしまうため、日常生活の中で軽い運動を取り入れることが大切です。特別な運動をする必要はなく、例えばその場で足首を回す、足の関節を動かす、肩を回す、首をゆっくり伸ばす、口を大きく開け閉めする、視線を上下左右に動かすといった、簡単な動きでも十分効果があります。こうした小さな動作をこまめに行うことで、血行を促進し、体のこわばりをほぐすことができます。

6.リラクセーション


ソファやリクライニングチェアに全身をゆったりと預け、心地よくくつろぐ習慣を身につけましょう。頭や首までしっかりと体重を預け、体が重力に引かれている感覚を味わいながら、深い呼吸を意識して行います。その際、手足が徐々に温かくなるのを感じてみてください。日常生活の中でこのようにリラックスする時間を持つことで、心身の緊張を解きほぐし、リフレッシュするモードへと自然に切り替えることができるようになります。

◎注意点


肩や口のエクササイズを行うことで、体の重さや痛みが軽減されます。ただし、最初のうちは、エクササイズによって麻痺が解ける過程で、状態が一時的に悪化することもありますが、これは自然な反応です。大切なのは、毎日欠かさずエクササイズを続けることです。それによって、徐々に肩こりが軽減していきます。

 

注意すべき点は、ただ適当に肩を回したり、口を開け閉めしたりするだけでは十分な効果を得られないことです。肩や痛みを感じる部位を意識しながら動かすことが重要です。肩を動かすときは、肘の関節や腕の筋肉にも意識を向け、それらをしっかりと動かすことで、その部分が温かくなり、血行が促進されます。

 

また、肩こりは日常生活の中で再発しやすいため、毎日マインドフルネス瞑想を取り入れながら、肩回しや肩の動かし、口の開け閉めの運動を行うと効果的です。そして、人と関わる際には、肩の力を抜き、リラックスした姿勢でフランクに話すことを心がけましょう。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平

 

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