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愛着障害の子供と大人の特徴


 第1節.

愛着障害とは何か


愛着障害は、愛着理論に基づいて定義された概念であり、特に乳幼児期における養育者との健全な愛着形成がうまくいかない場合に発生します。愛着理論によれば、赤ん坊は本来、生まれつき養育者との間に親密な関係を築こうとする自然な反応を持っています。この反応は、赤ん坊が養育者に対して信頼と安心感を求める基本的な行動の一環です。

 

赤ん坊が養育者との間に健全な愛着を形成することで、心身の発達において重要な土台が築かれます。しかし、何らかの理由でこの愛着がうまく形成されないと、愛着障害が生じることがあります。この障害は、後々の成長過程や人間関係に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

 

愛着障害を持つ子供たちには、通常とは異なる行動パターンが見られることがあります。以下に、その代表的な例を挙げます。

  • 目を合わせずに抱きつく:通常、赤ん坊は養育者と目を合わせることで安心感を得ようとします。目を通じて養育者とのつながりを感じることで、赤ん坊は自分が安全で守られていると認識します。しかし、愛着障害がある場合、この自然な反応が欠如してしまい、赤ん坊は目を合わせずに抱きつくことがあります。これは、愛着の形成に問題があるため、親密さを感じる手段として目を避ける行動が現れるものです。

  • 近づいたり逃げたりする:愛着障害を持つ子供は、養育者に対して矛盾した行動を示すことがあります。例えば、養育者に近づいて親密さを求めようとする一方で、突然その場から逃げ出すことが繰り返されることがあります。このような行動は、子供が養育者に対して安心感を持てず、信頼関係を築くことが難しい状況を反映しています。

  • 逆らったり固まったりする:さらに、愛着障害のある子供は、養育者に対して逆らうような行動をとることがあります。これは、意識的に反抗するというよりも、内心の不安や恐れから来る反応です。また、強いストレスや不安を感じたときに、反応が固まってしまい、行動や表情が硬直してしまうことも見られます。このような固まる反応は、心の防御機制として働いていると考えられます。

 

1. 愛着とは何か、その重要性とは

 

愛着とは、赤ん坊が養育者との間に親密な関係を築こうとする、自然で正常な反応です。赤ん坊は、養育者に対して本能的に親密さや慰め、そして庇護を求めます。この親密な関係は、赤ん坊にとって非常に重要であり、彼らの心身の健全な成長に欠かせないものです。

 

特に、赤ん坊が母親に優しく抱かれる経験は、彼らにとって大きな安心感をもたらします。この安心感は、赤ん坊が自分自身の身体性を認識し、身体と心の一体感を育むための基盤となります。母親の温もりと安心感を通じて、赤ん坊の自律神経系は健全に働き始めます。このプロセスは、自己意識の形成にとっても重要な役割を果たします。

 

愛着の形成がうまく進むことで、赤ん坊は心身ともに健全に成長していきます。この初期の愛着関係は、後の人生においても大きな影響を与えます。愛着がしっかりと形成された子供は、成人してからも安定した対人関係を築く力を育んでいくことができ、社会的なつながりや自己肯定感を持ちながら、豊かな人生を歩む土台となるのです。

 

2. 愛着障害を持つ子供たちの苦悩とその影響

 

愛着障害を持つ子供たちは、幼少期から親子関係における深刻なストレスにさらされています。彼らにとって、本来ならば自分を守り、安心感を与えてくれるはずの両親が、逆に脅威となる存在に変わってしまうのです。このような環境で育つ子供は、繰り返される恐怖や不安に耐える中で、心が次第に硬直し、まるで石のように固まってしまいます。こうした経験は、子供の心に深いトラウマを植え付け、彼らの成長に大きな影響を与えることになります。

 

それにもかかわらず、子供たちは安全でない世界の中で生き残るために、さまざまな工夫を凝らして日々を乗り越えてきました。彼らは何とかして環境に適応し、無意識のうちに自己防衛のための戦略を発展させてきたのです。しかし、その代償は非常に大きく、思春期から青年期にかけて心身の限界に達してしまうことが少なくありません。

 

その結果として、以下のような精神的および身体的な障害を患うリスクが高まります。

  • うつ病:長期間にわたるストレスやトラウマが積み重なり、深い抑うつ状態に陥る可能性があります。
  • 解離性障害:強いストレスにより、自分の感情や記憶から切り離されるような解離状態が現れることがあります。
  • 強迫性障害:不安や恐怖に対処するために、繰り返しの行動や思考に囚われることが多くなります。
  • 摂食障害:精神的な苦痛が身体に現れ、食行動に異常をきたすことがあります。
  • 原因不明の身体症状:ストレスやトラウマが身体的な不調として現れる場合もあり、医学的に説明がつかない症状が出ることがあります。
  • パーソナリティ障害:長年にわたる対人関係の困難や自己認識の問題が、パーソナリティに関する障害を引き起こすことがあります。

このように、愛着障害を抱える子供たちは、幼少期の経験が後の人生に大きな影響を与え、心身の健康に深刻な影響を及ぼすリスクがあるのです。彼らにとって、早期の理解と適切な支援が極めて重要となります。

 第2節.

愛着障害の原因とは


幼少期からの行動には、発達障害の子供にも見られるものがありますが、愛着障害は特に親子関係に問題がある場合に発生するものです。具体的には、小児期にネグレクト(育児放棄)や虐待を受けた経験があり、不安定で不適切な養育環境がその主な原因とされています。

 

さらに詳しく見ていくと、愛着障害は主に養育者の不適切な関わり方が原因で発生することが多いですが、子供自身にも、胎児期から幼児期にかけての早い発達段階で凍りつきや虚脱といったトラウマを負っている場合があります。これは、赤ん坊がまだ母親の体内にいる段階で、あるいは誕生時に非常に大きなストレスを経験し、その結果としてトラウマ化してしまうケースです。

 

このような初期のトラウマは、母子関係の愛着障害だけでなく、子宮内でのストレスや出生時のトラウマなど、出生前から赤ん坊が受けた強烈なストレスが原因となることがあります。これにより、赤ん坊は環境の変化に対して非常に繊細になりすぎてしまい、親子関係がこじれてしまう可能性があります。結果として、愛着障害の症状がさらに複雑化することが多いのです。

 第3節.

幼少期のトラウマが子供に与える影響


幼少期に何らかのトラウマを抱えている子供は、体の反応が過剰になりやすい傾向があります。例えば、些細なことでも動悸が激しくなり、焦燥感を感じて落ち着きを失ってしまうことがあります。このような子供は、イライラや癇癪を起こしたり、時にはふざけた行動を取ったりすることが多いです。一方で、別のタイプの子供は、動悸や息苦しさなど身体の内部で不安を感じやすく、すぐに恐怖心に駆られて凍りつくような反応を示すことがあります。

 

こうした子供たちの問題に対して、親が安全な基盤となることが求められますが、親自身が未解決のトラウマを抱えている場合、その役割を果たすことが難しくなります。親が過去のトラウマティックな記憶にとらわれていると、非常に不安定な状態に陥りやすく、養育態度が一貫しないことがあります。このような状況では、親が一貫して子供を支える存在ではなく、時には危険な存在にさえなり得ます。

 

このようにして、子供は親の不安定さに混乱し、愛着に関するトラウマを抱えてしまうことがあります。愛着トラウマは、子供が安心して依存できる関係を築く能力に深刻な影響を与え、長期的に心身の健康に悪影響を及ぼすことが多いのです。

 

子供が愛着トラウマを抱えると、体の中に痛みが刻み込まれるために、人が自分を脅かしてくる存在に映り、苦手な人と関わると、体が硬直して、イライラするか、恐怖で石のように固まります。そのため、人が自分を攻撃してくるように感じ、他者の存在が大きくなりすぎて、その分だけ自分の存在が小さくなり、人の評価や視線が怖くなります。

 

愛着トラウマがある人は、人間の存在が怖く、最悪の事態を想定していくようになり、自分を守りきれないと思っている部分と、人間に愛着を持ち、しがみつこうとする部分に分かれます。彼らは、自分の体に不安がありますが、人間関係に悩まされながらも、ネガティブになっていくと体の中のトラウマが疼き、不安や焦燥感に変わり、筋肉が硬直し、固まっていく特性があるために、おどけてテンションを高めていく部分と、身体的な脆弱性を優しく保護してくれる人を探す部分と、大人しくて無表情・無感情になっていく部分に分かれます。

 

1. 愛着トラウマの特徴と影響

 

子供が愛着トラウマを抱えると、その影響は体にも深く刻まれます。トラウマによる心の傷が身体に痛みとして残り、人が自分を脅かす存在に見えてしまうことがあります。苦手な人と関わる場面では、体が硬直し、イライラするか、恐怖で身動きが取れなくなることがしばしばあります。その結果、他者が自分を攻撃してくるように感じやすくなり、他者の存在が自分にとって過度に大きなものとなってしまいます。その分、自分自身の存在が小さく感じられ、人の評価や視線が怖くてたまらなくなるのです。

 

愛着トラウマを抱える人々は、人間関係に対して常に恐怖を感じ、最悪の事態を想定する傾向があります。一方で、心の中では自分を守りきれないという無力感と、人間に対する愛着を求めてしがみつこうとする感情が共存しています。彼らは、自分の体に対しても不安を抱えており、人間関係に悩まされる中で、ネガティブな思考に陥ると体の中のトラウマが疼き始めます。この疼きは、不安や焦燥感として表れ、筋肉が硬直し、身体がまるで石のように固まってしまうことがあります。

 

愛着トラウマを持つ人々には、いくつかの特徴的な行動パターンが見られます。彼らは、体の緊張や不安を紛らわすために、おどけてテンションを高めることでその場を乗り切ろうとすることがあります。また、身体的な脆弱性を優しく保護してくれる人を無意識に探し求めることもあります。そして、時には自分を守るために、大人しく無表情・無感情な態度を取るようになり、自分を外界から切り離そうとすることもあります。

 第4節.

愛着障害の二つのタイプとその特徴


愛着障害には大きく二つのタイプがあると言われています。一つは、すべての人に好かれたいと思い、無秩序な関係を持ちやすくなる「脱抑制タイプ」です。もう一つは、自分を孤立させ、誰とも関わりたくないと感じる「抑制タイプ」です。

 

1. 脱抑制タイプの愛着障害の特徴

 

脱抑制タイプの愛着障害を持つ子供たちは、幼少期に十分な愛着を形成できなかったことで、深刻な孤独感を抱えています。彼らの体には、過去のトラウマが深く刻まれており、そのため他人からの悪意に対して非常に敏感です。この感受性の強さは、彼らが常に自分の居場所がないと感じていることと密接に関連しています。この孤独感と不安から、他者に対する要求が過剰になりがちです。

 

トラウマの影響により、彼らは自己調整が苦手で、自律神経系の働きが不安定です。そのため、感情のコントロールが難しく、環境からのちょっとした刺激にも過剰に反応してしまいます。これが日常生活の中で、特に対人関係において大きな負担となることが多いです。

 

脱抑制タイプの愛着障害は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の過覚醒状態がベースにあります。彼らは、常に皆の注目の中心でいたいという強い自己中心的な願望を持っています。周囲の期待に応えようと、時にはヒーロー役を演じたり、ピエロ役を引き受けたりすることがあります。明るく、強い自分を見せることで、全員に好かれようと懸命に努力します。

 

さらに、彼らは安心感を求めて、頼りになる他者に必死にしがみつく傾向があります。これは、彼らの不安定な内面を安定させるための一種の自己防衛機制です。しかし、このような行動は、長期的には彼ら自身の心身に大きな負担をかけることになります。

 

2. 抑制タイプの愛着障害の特徴

 

抑制タイプの愛着障害は、主に凍りつきや解離状態がベースにあります。このタイプの人々は、他者との関わりに対して極度に不安を感じるため、人見知りが非常に強く、対人関係においては常に緊張を抱えています。彼らは争いごとを避ける傾向があり、その結果として、無駄に緊張してしまうことが多いのです。

 

このタイプの人々は、他人に目立たないように、静かに、そっと生きようとします。彼らの目標は、できるだけ周囲から注目されないようにすることであり、これによって自身の安全を確保しようとします。しかし、他人に対して何かを期待すると、その期待が裏切られることを極度に恐れるため、期待を抱いた瞬間にすぐに引っ込んでしまうことがよくあります。このような行動は、彼らが他人からの失望や傷つきを避けるための自己防衛反応といえます。

 

抑制タイプの愛着障害を持つ人々は、常に周囲の人々からの評価や反応を過剰に意識し、それが自分にとっての脅威になると感じています。そのため、彼らの対人関係は非常に制限されたものとなり、社会的な孤立感を深める原因となります。結果として、内面の孤独や不安がさらに強化されてしまうのです。

 

3. 愛着障害を持つ子供の警戒心と耐性 

 

愛着障害を持つ子供たちは、小さい頃から周囲を警戒し、人から悪意を向けられないよう、または嫌われないように細心の注意を払って生きています。彼らは、すべての人が納得し、最善を尽くせるように周りに気を使い続けるのです。しかし、このような努力にもかかわらず、愛着障害を持つ子供たちは、嫌悪感や不快な状況に対する耐性が非常に低いのが特徴です。常に最善を尽くそうとするため、他人が適当に物事を済ませる姿を見ると、許せない気持ちになることも少なくありません。

 

愛着障害は、年齢とともにその表れ方が変化していくことがあります。特に、脱抑制タイプから抑制タイプへと移行する子供が多いとされています。児童期の後半に差し掛かる頃、子供たちは多弁で行動的であった自分が、感情をそのまま表に出すことでかえって状況が複雑になることを学び始めます。このような経験を通じて、次第に自分を抑制するようになります。

 

例えば、クラスメイトとの衝突が増えることで「問題児」と見なされることを避けようとしたり、他者に対して期待することが多くなった結果、傷つく経験が増え、他者に完璧な自分を演じ続けることが難しくなると、抑制傾向が強まります。これにより、子供は次第に動かないでじっとしている方法を選ぶようになります。

 

抑制傾向が強まると、周りの気配を感じ取って動かないでいることが、子供にとっての防御策になります。しかし、その結果、体は凍りついて固まり、トラウマの世界に閉じ込められてしまいます。現実世界での対処が難しくなると、彼らは次第に空想の中で生きるようになり、現実からの逃避がますます強まります。

 第5節.

トラウマを持つ母親と子ども


親が自分の未解決なトラウマを抱えていると、その親は子供にとっての安全基地にはなれません。むしろ、親自身が子供にとっての脅威となり得るのです。トラウマティックな記憶にとらわれた親は、子供のニーズや感情を理解しようとする余裕がなく、自分の気分が少しでも害されると、その不満を周りに向けて当たり散らすことが多くなります。

 

その結果、たとえ子供が何も悪くなくても、親が他のことで機嫌を損ねていると、子供は怒鳴られる対象になってしまいます。親が何か気に入らないことがあると、苛立ちや不機嫌が表面化し、その都度、子供は親の気分や都合に振り回されることになります。このような状況では、子供は安心して親に依存することができず、親の愛情を信じることが難しくなります。

 

子供が「親が自分を愛してくれている」と感じた瞬間に、その期待が裏切られる経験を何度も繰り返すことで、子供は深く傷ついていきます。これにより、親子関係は次第に不安定になり、子供は親に対して恐怖や不信感を抱くようになることが少なくありません。親の不安定な態度と予測不可能な反応は、子供の心に深い影響を与え、将来的に愛着の問題を引き起こす原因となります。

 

1. 親の不安が子供に与える影響 

 

子供は、親の不安や焦燥感、イライラ、そして怯える姿を常に敏感に感じ取ります。親が次に何をしてくるのかを予測するために、子供は耳を澄まし、目を凝らして親の様子を伺い続けます。子供の全神経が親に向けられ、常に気を緩めることができない状態が続くと、胸やお腹に痛みを感じ、体がビクビクと震え、足元がふらつくことがあります。恐怖が頂点に達すると、動けなくなり、身体や神経に深刻なダメージが加わります。これにより、子供の心は非常に脆くなり、精神的な強さを失っていきます。

 

子供にとって、家庭は本来安心できる場所であるべきですが、このような状況では家の中がむしろ恐怖と不安の源となり、孤独感が深まります。その結果、子供の体は無意識のうちに過緊張状態に陥り、凍りつき、あるいは「死んだふり」をするような反応を示すことがあります。さらに、解離傾向が強まり、自分と他人との境界が曖昧になってしまいます。

 

母親に叩かれたり、優しくされなかった子供は、安心感を得ることができず、自己調整スキルが十分に育ちません。辛い体験が続くほど、子供は自分自身の身体性をしっかりと感じ取ることができなくなり、自己意識の発達が阻害されます。その結果、「私は人間である」という基本的な自己認識が欠如してしまい、自己の存在感やアイデンティティの形成に深刻な影響を与えることになります。

 第6節.

愛着障害を持つ子供の苦悩


愛着障害を持つ子供は、アダルトチルドレンの症状が強く、幼い頃から無意識のうちに母親の顔色を伺い続けます。母親の関心や愛情を得るために、常に一生懸命で、母親の態度が急変することに対して恐怖を抱いています。怒鳴られた時の記憶は、まるで心に焼き付くように深く刻まれています。

 

そのため、子供は母親の機嫌を取るために、学校の成績を上げたり、家事を手伝ったり、自分の意見を押し殺して「良い子」でいようと頑張ります。しかし、どれだけ努力しても、母親から十分な愛情を受け取ることができないと、成長する過程で次第に心が渇いていき、元気を失ってしまいます。自分は母親を大切に思っているのに、母親が自分を大切にしてくれない現実に苦しみ、自分には価値がないのではないかという感覚に苛まれます。このように張り詰めた緊張が続くと、心身が限界を超える瞬間が訪れ、手遅れになることさえあります。

 

さらに、母親がいい加減で身勝手な行動を取る場合、子供はその母親を「可哀そう」と感じながら育つことが多いです。その結果、親が頼りにならないと感じると、子供は重要な場面で親に相談することを避けるようになり、本音や本当の感情を伝えなくなります。また、親から適切なリアクションを得られず、逆に災いしかもたらさないと感じると、良いことさえも共有しなくなり、心を閉ざして孤独感を深めていきます。

 

1. 母親との関係とその影響

 

愛着障害を抱える人にとって、母親の存在は非常に大きなものです。しかし、その母親が怖い存在である場合、彼らは母親が自分を嫌っているのではないかと感じたり、母親の機嫌を取るために常に努力を重ねたりします。母親の気分が急に変わることが恐ろしく、常に緊張した状態で過ごすことになります。このような環境では、彼らは自分にとって安心できる居心地の良い場所を探し求めます。そこで初めて、人間らしい息が吸えるように感じられるのです。しかし、母親との関係があまりにも苦痛になると、その関係を諦めてしまい、一日中空想に耽ることで現実から逃避するようになることもあります。

 

愛着障害を持つ人々は、家族から傷つけられてきた経験から、他者を恐怖の対象と見なすことが多くなります。人間関係は信頼できないものであり、他人がいつ自分を傷つけるか分からないという不安に苛まれます。このため、他者との関係を築くことが困難になり、孤立感が深まります。

 

さらに、他人に嫌われることを恐れ、周囲に良く思われようと懸命に努力しますが、その努力が過剰になると、印象操作をしたり、手段を選ばずに行動するようになります。結果として、周囲との摩擦が増え、人間関係が悪化することが少なくありません。

 

また、愛着障害を持つ人々は、誰かに愛されたいという強い欲求を抱いています。相手が自分に喜びを示すと、その期待に応えようと一生懸命になります。しかし、相手が同じように愛情を返してくれないと、途端にその相手を嫌いになってしまうこともあります。これにより、人間関係が不安定になり、深い孤独感や失望を感じることが多くなります。

 

2. 成長過程での複雑な感情

 

愛着障害を持つ人々は、親の前では常に「良い子」でいようと努め、気を緩めることができません。このような状態が続くと、次第に普通の人とは異なる感性を持つようになりがちです。彼らは、言葉をそのまま受け取り、見たことや聞いたことを文字通りにインプットする傾向が強くなります。その結果、周囲の幸せそうな人々とは価値観が異なり、コミュニケーションがうまく取れなくなることがあります。こうした状況が続くと、思い込みが強くなり、認知の歪みが生じることも少なくありません。

 

大人になるにつれて、彼らはたった一人の親に対して複雑な感情を抱えるようになります。変えることのできない親の存在に対する絶望感や、自分がこの世に生まれ落ちたことを一種の暴力のように感じ、親への憎しみが芽生えることもあります。しかし、その一方で、生まれてからこれまで育ててくれたことへの感謝の気持ちも同時に抱いており、この二つの感情の間で心が揺れ動くことが多いのです。

 

このような葛藤は、彼らの内面に深い影響を及ぼし、自分自身のアイデンティティや対人関係において複雑な問題を引き起こすことがあります。愛着障害を持つ人々は、自分と他者との関係性において常に葛藤を抱え、内面の混乱と戦い続けることが少なくありません。

 

3. 愛着障害からの回復への道

 

本来、子どもは欲求不満に陥ったときに、母親を通じてその欲求を満たすことができます。母親の存在は、安心感を与え、子どもが心地よく過ごせるためのサポート役となるはずです。しかし、愛着障害を抱える人々は、幼い頃からそのような母親をうまく利用することができませんでした。母親の存在がむしろ自分を脅かすものとして映り、恐怖や怒り、欲求不満を感じる中で、自分の感情を表に出すとさらに辛い状況に陥るため、母親の気持ちに合わせて自分を抑えることを強いられてきました。

 

愛着障害から回復するためには、子どもの頃にできなかったことを今から実践していくことが重要です。まずは、現実世界での対象をうまく利用して、自分の身体を快適に保つ方法を学びます。これは、自分の身体的なニーズや欲求に気づき、それを満たすための手段を見つけることです。

 

次に、自分にとって安心できる居場所を見つけ、そこで安全感を得て、自分を落ち着かせることが必要です。これは、自分が心からリラックスできる環境や、信頼できる他者との関係性を構築することを意味します。普段から、自分が寄りかかれるような他者や、動物、自然のある場所など、自分にとって安らぎを感じる場所を探し、そのような環境で生活することで、心身のバランスを整えていくことが大切です。

 

愛着障害の回復には時間がかかるかもしれませんが、自分の安心できる居場所を見つけることで、徐々に内面的な安定感を取り戻していくことが可能です。これにより、子どもの頃にできなかった自己表現や感情の調整を、今から少しずつ学んでいくことができるでしょう。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平

 

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HSPの特徴

HSPは、生得的な特性として、高度な感覚処理を持つ、人一倍敏感な人という意味です。共通してみられる特徴は、音、光、匂い、人混み等の刺激に対して敏感で、普通の人より強く反応する人のことを言います。

解離と愛着

親が過去のトラウマティックな記憶に取りつかれ、自らおびえ、混乱していると、子どもは、親に近づくことも退くこともできず、唖然とその場をやり過ごし、うつろな表情で固まって動かなかったりします。

解離研究

障害となる解離症状では、生活上の不安や恐怖、痛みで神経が張りつめており、身体は収縮して、凍りつきや死んだふり、虚脱化して、背側迷走神経が過剰に働き、脳や身体の機能に制限がかかります。