> > 愛着障害のに親子の特徴

愛着障害


 第1節.

愛着障害とは


愛着障害とは、愛着理論に基づいて作られた概念であり、乳幼児が人と目を合わせずに抱きつくとか、養育者に対して、近づいたり逃げたり逆らったり固まったりなど、通常では見られない不安定で複雑な行動を示します。愛着は、養育者と親密な関係を結ぼうとする正常な反応です。赤ん坊は、養育者に対して、親密さや慰め、庇護を求めます。赤ん坊は、母親に優しく抱かれる体験を通して、自分の身体性を獲得していきます。それが安心感になり、自律神経系が健全に働いて、自己意識が成長していきます。

 

愛着障害の子供は、小さい時から、親子関係のストレスに曝されており、自分を本来守ってくれるはずの両親がまさに自分を脅かす存在になります。そして、脅かされることが繰り返されると、子供は石のように固まり、トラウマを植えつけられてきました。それでも、子供は、安全でない世界のなかで生き残るために、様々な工夫をしてやり過ごしてきましたが、思春期から青年期を境に、心と体が限界を超えてしまって、うつ病や解離性障害、強迫性障害、摂食障害、原因不明の身体症状、パーソナリティ障害などを患う可能性が高くなります。

 第2節.

愛着障害の原因


こうした幼少期からの行動は、発達障害の子供にも見られますが、愛着障害は、親子関係に問題があって、小児期にネグレクトされた、もしくは虐待されたことがあり、不安定で不適切な養育によって生じるものとされています。もう少し見ていくと、愛着障害は、養育者の不適切な関りでなることが多いですが、子供の側に、胎児期から幼児期にかけての早い発達の段階で、凍りつきや虚脱のトラウマを負っていることもあります。母子関係の愛着障害だけでなく、子宮内ストレスや誕生時トラウマなど、赤ん坊が出生するまでの間に、もの凄く大きなストレスを受けてトラウマ化しているため、環境の変化に繊細になりすぎて、親子関係にこじれてしまい、症状が複雑化します。

 第3節.

愛着トラウマ


小さいときから、何らかのトラウマを抱えている幼児は、動悸の高鳴りや焦燥感を感じて、落ち着きが無くなり、イライラや癇癪、ふざけた行動を取るタイプか、動悸や息苦しさなど体の中に不安があり、すぐ怖くなって、凍りつくタイプに分かれていくことになります。こうした子供の問題に対して、親も未解決なトラウマを抱えてるために、子供の安全基地になることができません。親が過去のトラウマティックな記憶にとりつかれて、非常に不安定で、養育態度が一貫せず、危険な存在になっていくと、子供は混乱して、愛着トラウマを負います。

 

子供が愛着トラウマを抱えると、体の中に痛みが刻み込まれるために、人が自分を脅かしてくる存在に映り、苦手な人と関わると、体が硬直して、イライラするか、恐怖で石のように固まります。そのため、人が自分を攻撃してくるように感じ、他者の存在が大きくなりすぎて、その分だけ自分の存在が小さくなり、人の評価や視線が怖くなります。

 

愛着トラウマがある人は、人間の存在が怖く、最悪の事態を想定していくようになり、自分を守りきれないと思っている部分と、人間に愛着を持ち、しがみつこうとする部分に分かれます。彼らは、自分の体に不安がありますが、人間関係に悩まされながらも、ネガティブになっていくと体の中のトラウマが疼き、不安や焦燥感に変わり、筋肉が硬直し、固まっていく特性があるために、おどけてテンションを高めていく部分と、身体的な脆弱性を優しく保護してくれる人を探す部分と、大人しくて無表情・無感情になっていく部分に分かれます。

 第4節.

脱抑制タイプと抑制タイプ


愛着障害には、二つのタイプがあると言われており、全員に好かれたいと思い、無秩序な関係を持ちやすくなる脱抑制タイプと、自分を孤立させて誰とも関われない抑制タイプになります。愛着障害の子供は、体の中にトラウマがあるために、人に悪意を向けられることに耐えられません。また、愛着不全から、寂しい思いをしてきて、自分の居場所が無かったために、他者に求める質が極端になります。さらに、トラウマの影響により、自己調整が苦手で、自律神経系の調整がうまく働かず、感情のコントロールが難しくて、環境側の刺激に対して、身体が過剰に反応してしまいます。

 

愛着障害の脱抑制タイプは、PTSDの過覚醒をベースにしており、皆の中心でいたいという自己中心性が強く、ヒーロータイプの役を取るか、ピエロのような役を演じて、周りの期待に応えようと頑張るだけでなく、全員に好かれようと努力し、明るい自分や強い自分を見せていきます。また、自分を安心させてくれて、頼りになる他者に必死にしがみつきます。愛着障害の抑制タイプは、凍りつきや解離をベースにしており、人見知りが強く、争いごとを避けて、無駄に緊張し、人の目につかないようにそっと生きています。また、人に期待した分だけ裏切られることが怖く、すぐに引っ込んでしまいます。

 

両者とも、小さいときから、周りを警戒しており、人に悪意を向けられないように、もしくは人に嫌われないようにしており、全員が納得して、最善を尽くせるように周りに気を使います。一方、愛着障害のある子供は、嫌悪や不快なことへの耐性が低く、常に最善を尽くそうとしているために、いい加減な人が許せなかったりします。

 

愛着障害は、年齢とともに、脱抑制タイプから抑制タイプに移行していく子供が多いと言われています。児童期の後半頃から、多弁でよく行動し、感情をそのまま出すとかえってややこしいことになる経験をした子は、自分を抑制するようになります。例えば、クラスメイトとぶつかることが多くなり、問題児でいることを辞めようとしたり、他者に期待しても傷つくことばかりで辛くなったり、他者に完璧な自分を演じきれなくなったりして、抑制傾向が強まり、じっと動かないでいる方法に変わっていきます。周りの気配を感じて、動かないでいると、体は凍りついて固まって、トラウマの世界に閉じ込められて、現実より空想の中で生きるようになります。

 第5節.

トラウマを持つ母親と子ども


親が未解決なトラウマを持っていると、子供の安全基地にはなれなくて、子供に脅威を与える張本人になります。トラウマティックな記憶にとりつかれた親は、子供のことを考えながらとかではなくて、自分の気分が害されたと感じると、周りに当たり散らします。また、子供が悪くなくても、親が他のことで機嫌が悪いと、子供の前で怒鳴りつけます。親が気に入られないことがあれば、苛立ち、不機嫌になるため、子供は、親の気分や都合に振り回されるようになります。子供は親が愛してくれると思った矢先に、拒絶される経験を繰り返して、傷ついていきます。

 

子供は、親の不安や焦燥感、イライラ、怯える姿を見て、次に何をしてくるか、耳を澄まして、目をこらして、様子を伺います。子供の全神経が親に向き、気を緩めないでいると、胸やお腹が痛み、体がビクビクし、足元がフラフラし、怖くなると動けなくなり、体や神経にダメージが加わって、心が非常に脆くなります。子供にとって、家の中は安心できる場所ではなく、寂しい思いになり、体は無意識下で、過緊張や凍りつき、死んだふり、解離傾向が強まり、自他の境界が曖昧になります。

 

母親に叩かれたり、優しくされなかった子供は、安心感がなく、自己調整スキルが育ちません。しんどい体験が続くほど、自分の身体性を獲得できないまま、自己意識が発達できず、私は人間であるという体験が欠如していきます。

 第6節.

愛着障害の人の特徴


愛着障害の子供は、アダルトチルドレンの症状が強く、物心ついた頃から、無意識のうちに、いつも母親の顔色が気になり、母親に関心をもらおうとか、愛情をもらおうと一生懸命です。母親の態度の豹変に恐れており、怒鳴られたときには、それが目に焼きつきました。母親の機嫌を伺い、学校の成績を良くして、家事をやり、自己主張せず、良い子で頑張っていることが多いです。愛着障害の子供が大人になっていく過程において、母親から愛情が貰えないと、心が渇き、元気を失くしていきます。自分は母親を大切に思っているのに、母親は自分を大切にしてくれなかったことに悩み、自分は価値が無いように思います。そして、張りつめていた緊張の糸が切れて、心身の限界が超えると、手遅れになります。その他にも、いい加減で身勝手な行動しかとれない母親のことを可哀そうと思いながら育ったり、親が頼りない場合は、大事なときに、相談しなくなり、本音や本当の感情を伝えなくなります。また、親からまともなリアクションがもらえず災いしかもたらさない場合は、良い事も共有しなくなり、心を閉ざして、寂しい思いをします。

 

愛着障害の人にとって、母親の存在が大きすぎて、その母親が怖い場合は、母親が自分のことを嫌っていると思ったり、親のご機嫌を取るために、いつも頑張っていたり、親の機嫌が変わることが怖くて、いつも緊張しています。彼らは、居心地よい場所では、人間らしい息が吸えるために、自分の居場所を探していますが、母親との関係が苦痛になると、その関係を諦めて、一日中空想に耽ったりする人もいます。

 

愛着障害の人は、家族に傷つけられてきたから、人のことが恐怖の対象になり、自分を脅かす存在に見えてくることが多いです。人は、危険な存在であり、自分をいつ傷つけてくるか分かず、人間関係が信頼できません。また、人に嫌われるのが怖くて、周りに良く思われようと努力しますが、印象操作したり、手段を選ばなくなっていくと、周りとの間に揉め事が増えて、関係が悪化します。さらに、誰かに愛されたくて、相手が喜んでくれると嬉しくて、一生懸命になりますが、相手が自分と同じように返してくれないと嫌いになります。

 

愛着障害の人は、親の前では、良い子でいて、気を緩められずに、辛抱を続けていくと、普通の人とは感性が違ってきて、言葉をそのまま受け取り、見たことや聞いたことをそのままインプットします。周りの幸せそうにしている人達とは、価値観が違って、コミュニケーションが取りづらくなり、思い込みの強さや認知の歪みが出てくることもあります。大人になるにつれ、たった一人の親に対して、複雑な感情を抱えており、変えようのない親を持つ絶望感や、この世に生まれ落ちたことを暴力のように捉えて、親を憎むようになります。その一方で、生まれたときから、今まで育ててきてくれた感謝の気持ちもあり、その間で揺れ動きます。

 

▶愛着障害から回復するには

 

本来子どもは、欲求不満に陥った時に、母親を有効に利用して、自分の欲求を満たします。しかし、愛着障害の人は、赤ん坊の頃から、母親を有効に利用できませんでした。母親の存在は、自分を脅かしてくるように映り、恐怖や怒り、欲求不満を感じながらも、自分の感情を出すとかえって辛くなるので、母親の気持ちに沿ってきました。

 

愛着障害から回復するには、子どもの頃に出来なかったことをしていく必要があります。まずは、現実世界の対象を有効に利用して、身体を快適にしていくことを学びます。次に、自分の安心できる居場所を見つけて、そこで安全感を得て、自分を落ち着かせていくことを学びます。普段から、自分が寄りかかれるような他者や動物、自然のある場所、落ち着く場所を探していき、そこで生活して、心身を整えていく必要があります。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平

 

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HSPの特徴

HSPは、生得的な特性として、高度な感覚処理を持つ、人一倍敏感な人という意味です。共通してみられる特徴は、音、光、匂い、人混み等の刺激に対して敏感で、普通の人より強く反応する人のことを言います。

解離と愛着

親が過去のトラウマティックな記憶に取りつかれ、自らおびえ、混乱していると、子どもは、親に近づくことも退くこともできず、唖然とその場をやり過ごし、うつろな表情で固まって動かなかったりします。

解離研究

障害となる解離症状では、生活上の不安や恐怖、痛みで神経が張りつめており、身体は収縮して、凍りつきや死んだふり、虚脱化して、背側迷走神経が過剰に働き、脳や身体の機能に制限がかかります。