未来への不安や過去へのとらわれは、あなたの人生を大きく阻んでしまいます。このとらわれから解放され、ありのままの自分を取り戻すことが必要です。
とらわれは、過去の出来事、家族関係、経済的な問題、社会的地位、愛する人との関係、健康状態、そして理想像など、さまざまな形で現れます。不安や心配が積み重なると、強迫観念に囚われやすくなり、その結果、頭の中に嫌悪感を伴う思考やイメージ、衝動、身体感覚がしつこく浮かび上がります。これらの観念を無理に打ち消そうとするほど、逆にそれらは強まり、日常生活に支障をきたすようになります。気分は落ち込み、体調も悪化し、生活全般が困難になってしまうのです。
「あのとき、こうしておけば良かった」と過去や現在の状況に執着することで、周りの状況が見えなくなり、人との関わりを避け、ますます不幸を感じるようになります。その結果、みじめな自分を責め続け、疲れ果ててしまいます。そして、ストレス発散のために無意味な気晴らし行動が増えたり、身体が鉛のように重く感じられ、気力が湧かずに動けなくなり、今やるべきことにも手をつけられなくなります。
さらに、こうした状況から逃げている自分に対して罪悪感が募り、安心や希望、幸福を求めてもそれらが得られず、心は切なさに包まれてしまいます。そして、あえて悪い方向に進んでしまったり、自分を責め続けてしまい、いつしか自分を「悲劇のヒロイン」として感じるようになるのです。
この悪循環から抜け出すためには、まず自分を受け入れ、現在の自分の状態を冷静に見つめることが大切です。過去の失敗や未来への不安を手放し、今この瞬間に意識を集中させることで、真の自由と安心を取り戻すことができるでしょう。
原因として考えられるのは、幼少期から何度も落ち込むことがあり、様々なトラウマや逆境体験、神経発達の問題、発達のアンバランスさが積み重なり、身体が凍りついてしまったことです。このようなトラウマ状態から抜け出せず、常に怖がりで臆病、不安が高く、落ち着きがないため、日々心配事ばかりに囚われています。たとえ楽しいことがあったとしても、それは一瞬で過ぎ去り、すぐに不安な考えが頭をよぎり、先行きへの不安が募るばかりです。結果として、安心感がまるでない状態で生活しているのです。
普段から、自分を守ろうとする防御的な姿勢が強く、常に緊張が高まり、警戒心が絶えず働いています。そのため、相手の顔色を伺い、安全かどうかが気になって仕方なく、細かいところまで注意が向きがちで、何事もきちんと把握していないと不安でたまらなくなります。また、自分に自信が持てず、過去の失敗をいつまでも引きずり、あらゆるリスクを過大に考えてしまい、何事にも決断ができず、選択を避ける人生を歩んできました。
さらに、不確かな状況や予測できない事態に耐えることができず、秩序や完全主義にとらわれ、「しなければならないこと」だけに囚われた生活を送ってきた結果、現在では、硬直したパーソナリティの構造を持つようになってしまいました。このような状態では、心と身体が常に緊張しており、自由な発想や行動が難しく、人生全体が窮屈に感じられることでしょう。
もともと強迫観念に陥りやすい性格を持っている人にとって、心身に支障をきたすタイミングとしては、大きな喪失体験や失敗体験(それが現実のものであれ、想像上のものであれ)を経験した時が多いです。これにより、自分が思い描いていた理想的な生活が一変し、欲求不満を感じることが増えます。本当の気持ちとしては、過去の幸せだった時期に戻りたいと願っていますが、現在の自分を責め続け、進むべき道が見つからず、出口の見えない現実に立ち向かうことができなくなっています。
それでも「頑張れば何とかなるかもしれない」「幸せになれる可能性があるのなら」と、どうしようもないことや変えることができない現実に悩み続けるうちに、次第に元気を失い、落ち込んだり自暴自棄になったりします。こうした状況が長期にわたる不安やストレスの原因となり、理性よりも感情に支配されやすくなります。そして、ストレスが強まるにつれて、過去の出来事に対する執着も深まり、過去の後悔に打ちひしがれ、未来に対する恐怖が増していきます。
このような状態が続くと、今この瞬間に何かをしようとする気力が失われ、次第に自分自身を見失ってしまいます。心身ともに疲れ果てた後には、ぼんやりとした不安に包まれた時間が流れ、自分が自分でなくなっていくような感覚に陥ります。このように、過去への執着と未来への不安が絡み合うことで、現実から逃避し、再び自分を見つけるための力を失ってしまうのです。
とらわれている人は、幼少期から家族に対する不安や自身の身体に対する不安、そして死に対する強い恐怖を抱えて生きてきました。これらの心配事を打ち消すために、決まった法則通りに振る舞わなければならないと感じ、無意味な強迫行動が習慣となり、やめられなくなってしまいます。彼らは、もしその行動をやめてしまうと、不幸なことが起こると信じてしまっているのです。
また、過去に親や重要な他者から十分に受け止めてもらえなかったことで生じた心の痛みが、今でも未解決のまま残っています。この未解決の傷が、無意識のうちに現在の人間関係に影響を与え、ネガティブな感情として表出されていることがあります。彼らの心の中には、幼少期の自分(インナーチャイルド)が存在し、現在の大人の自分の成長や進展を阻害していることがあります。また、精神的に成熟した大人の自分(超自我)が、自分の理想に届かない現状に対して厳しく責め立て、逃げ場のない無力感に苛まれているという内的葛藤も見られます。
子どもの頃から親の期待に応えようと「良い子」であろうと努めると、次第に自分の中に理想的な自己像が形成され、その理想にとらわれるようになります。このような人は、「自分はこうあるべきだ」という理想に固執しがちです。しかし、現実の職場やパートナーがその理想通りにいかないと、強い欲求不満を感じることが多くなります。特に他人を自分の思い通りに動かせるべきだと思っていると、恋人や配偶者、子ども、職場の人間関係においてストレスを感じ、上手くいかない状況が続くことがあります。
現在のありのままの自分が理想に届かないと感じると、そのギャップに愕然とし、焦燥感に駆られてしまいます。結果として、自分を責めるようになり、自分が思い描く理想と現実との違いに絶望を感じることが増えていきます。さらに、自分の理想通りにいかないことに対する不満や、他者との関係をうまく築けないことから、逃げ出したくなったり、自暴自棄に陥ったりすることもあります。その後、感謝の気持ちを持てなかった自分を後悔し、さらに自己批判を繰り返すという悪循環に陥ってしまうのです。
また、自分の理想や満足に執着するあまり、現実がその通りにならないことがストレスを増大させます。人生のさまざまな障害にぶつかり、思い通りにいかないときには、感謝の気持ちや他者の気持ちに目を向ける余裕を失い、過去の失敗を悔やみ、未来への不安に苛まれ、今を生きることが難しくなってしまいます。このようなサイクルから抜け出すためには、自分の理想と現実とのバランスを見直し、現在の自分を受け入れることが重要です。
長期的なストレスや予期不安が続くことで、過去の失敗が頭の中で大きく膨らみ、その後悔から逃れられなくなります。現実から目を背け、未来に対する恐れに支配されることが増えていきます。
完璧でなければならないという強い信念から、ほんのわずかな不確実性でも大きな不安を感じます。不安を基盤に生きているため、少しでも安心できない要素があると、全体が不安定に感じられます。
「~すべき」「~しなければならない」という考え方が根強く、自分がその基準を達成できなかったときに自己嫌悪に陥ります。結果として、過去の失敗を引きずり続け、前に進むことができなくなります。
日々の生活において、すべてがネガティブにしか見えなくなり、前向きに努力する気力も失われます。その結果、現状に対する不満が募り、感謝の気持ちを持つことが難しくなります。
死に対する強い恐怖感があり、人間の有限性を受け入れることができません。身体への漠然とした不安感にとらわれ、心の安定を保つことが困難です。
ストレスが強まると、理性的な判断よりも感情に流されやすくなり、短期的な快楽を追い求める傾向が強まります。その結果、長期的な目標を見失いがちになります。
頭の中で悪いことばかりが支配し、物事を極端に捉えるようになります。心配が尽きず、世界が白か黒か、善か悪かという二極化した視点でしか見られなくなります。
心の中で考えたことがそのまま現実になると信じ込んでしまい、他人を自分の意のままに動かせるという幻想を抱きがちです。そのため、自分と他人との違いにイライラすることが増えます。
相手の行動や意図を予測し、自分の思い通りに事が運ばないことを恐れます。不確実な状況や人間関係に対して耐えることができず、すべてを把握し、安全を確保することに過度にこだわります。
他人に危害を加えてしまうことや、自分が被害を受けることを恐れ、その両方を避けようとします。この恐れが、行動を制限する要因となります。
「自分はこうあるべきだ」という強いこだわりがあり、現実を受け入れることや他人の意見を聞くことに抵抗があります。我慢して続けることが難しく、すぐに何か新しいことに手を出してしまいます。
現実の問題に直面することを避け、不都合が生じると決めたことを覆し、他の選択肢を探します。その結果、計画が進まなくなることが多いです。
同じことを繰り返し考え、不安になり、同じ失敗を続ける自堕落な日々を過ごしています。自分を変えたいと願いながらも、心の奥底では変化に対する強い抵抗があります。
具体的な解決策がわかっていても、意図的にそれを選ばない傾向があります。他者からの好意的な提案も拒むことが多く、無意識に逆らってしまいます。
他人と自分を比較し、自分が優れていると感じると安心しますが、劣っていると感じると無力感に襲われ、その場にいられなくなります。
強い不安感から睡眠障害になりやすく、朝目覚めると頭の中がネガティブな思考でいっぱいになってしまいます。
大切な人との関係がうまくいかないことに悩み、自分を責める傾向があります。幸せになることに対して、自分にはふさわしくないと感じ、無意識に自分を制限しています。
一人でいることに強い恐怖を感じ、どうしていいかわからず、絶望感に打ちのめされます。何もできなくなり、無力感が増していきます。
高い理想を持ち、それを完璧に実現しようと努力しますが、達成が難しい場合はどれだけ努力しても失敗に終わり、現実と理想のギャップに囚われてしまいます。
いつも理想に届かない自分を悲劇のヒロインのように感じ、何をしても無駄だと考えてしまいます。そのため、やる気を失い、努力を放棄してしまうことが多いです。
幼少期からの不安や自分の身体への不安から、心配事に囚われがちです。それを打ち消すために、儀式的な行動を繰り返す習慣が身についています。
常に危険やリスクを考えすぎて、物事を決断するのが難しくなります。予測できない出来事に対する恐れが強く、なかなか前に進めません。
社会規範を守り、相手に合わせる「大人の部分」と、自己中心的に楽を求め、嫌なことを避ける「子供の部分」が共存しており、その間で葛藤が生じます。
不快なものが頭から離れず、過剰な不潔恐怖に囚われ、手洗いや洗浄を繰り返す強迫行動が見られます。
物を決まった位置に置かないと気が済まず、整理整頓に過度にこだわります。少しでも乱れると強いモヤモヤを感じます。
チックや抜毛症などの癖があり、身体を動かさないと落ち着かず、皮膚感覚に対する不快感が強まります。
自分の生い立ちや経歴に対して強い劣等感を抱き、それが偏見として他者に向かうことがあります。
頭の働きが鈍くなり、自分の中に自分でない思考が存在しているように感じ、思考をコントロールしようとしますが、うまくいきません。
自分の欲しいものを手に入れようとしますが、手に入りかけるとその欠点を探し出して批判し、結果的に全てを台無しにしてしまいます。
トラウマティックな脳と、内部で渦巻く情動や生理的な混乱が生じ、不快な皮膚感覚や怒り、恐怖、恥などの交感神経の昂りが強まります。その結果、不快感や嫌悪感に耐えられず、身体が過敏に反応する性質を持っています。
過去の出来事ばかり考え続け、身体が重く感じられ、頭と体の感覚が一致していないように感じます。頭の中で考え事がグルグルと回り続け、悪循環に陥って抜け出せなくなります。
常に脅威を遠ざけようとする意識が強く、自分を守ることにばかり囚われてしまい、他の視点から考える余裕がありません。その結果、視野が狭まり、冷静かつ客観的に物事を判断することが難しくなります。
身体がだるく重く感じられ、思考ばかりが活発で、身体の動きがそれに追いつかない状態に陥ります。思考に偏りすぎることで、現実とのバランスを取るのが難しくなっています。
このように、さまざまな不安や強迫観念、過去のトラウマに囚われた思考や感情が、自己認識や生活全般に大きな影響を及ぼしています。これらの症状に対処するためには、まず自己理解を深め、感情や思考を客観的に見つめ直すことが重要です。また、専門家の助けを借りて、適切な治療やサポートを受けることが、健全な心と身体のバランスを取り戻すための第一歩となるでしょう。
過去にとらわれ、後悔を抱えている人は、未来に対する不安が強くなりがちです。ネガティブな思考が頭を支配し、不安な感情に押しつぶされそうになると、自分の安全を確保するために、強迫観念や強迫行為に頼ってしまうことがあります。しかし、過去の楽しかった生活を取り戻そうとするのではなく、「楽しかった過去はもう戻らない」という事実をどう受け入れていくかが重要です。
過去の失敗を受け入れ、現実の問題に正面から向き合い、新しいことに挑戦しようとする人は、立ち直りが早く、新たな生活を楽しむことができるようになります。こうしたポジティブな変化を促すためには、ネガティブな思考に引きずられないように、自分の精神や身体の内側に意識を向け、心を落ち着けるための瞑想やマインドフルネスが非常に有効です。
また、人生が自分の思い通りにならなくても、「今、この瞬間」に焦点を当て、不確かさや痛みに耐えながら、他者を受け入れることができれば、人生をより創造的に生きる力が育まれるでしょう。自己保護の殻を破り、他者とのつながりを大切にすることで、より豊かで充実した人生を築くことができるのです。
トラウマケア専門こころのえ相談室
論考 井上陽平