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トラウマ記憶がフラッシュバック


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 第1節.

フラッシュバックとは


PTSDの症状には、再体験(侵入)があり、フラッシュバックや解離性フラッシュバック、悪夢、パニックなどがあります。フラッシュバックはPTSDの特徴的な症状の一つであります。人は外傷体験(トラウマ)のショックを受けることにより、体は凍りついて動けなくなるか、虚脱状態に陥り、神経系に過剰なエネルギーが滞りますが、のちにそのとき耐えられなかった激しすぎる出来事が、突然に体験させられたり、夢に見たりする現象がフラッシュバックです。

 

フラッシュバックは、何かのきっかけにより、覚醒度が亢進し、気持ちが高ぶり、恐怖で身動きが取れなくなり、過去の感覚記憶が再生されてしまって、態度や行動、思考にあらわれたり、光景、感覚、情動、音、臭いなどが鮮明に思い出されたりします。フラッシュバックが生じているときは、左脳がほとんど働いておらず、言語化が出来ないので、時間や因果関係を論理的に説明できません。そして、現在と過去が折り重なるようになって区別できなくなります。

 

フラッシュバック中の体は、胸部の痛みで、息がしづらくなり、心拍や血圧が高まり、熱や寒気を感じて、汗をかき、動悸、震え、頭痛、体は硬直してうずくまります。それと同時、悲鳴をあげる、パニックになる、体が固まる、心が凍りつく、めまいがする、ブラックホールに吸い込まれそうになって錯乱状態に陥ります。フラッシュバック中は、白か黒か、善か悪か、生か死かの二極化されており、色もない、言葉もない、残酷な出来事が目の前で起きているかのように生々しく感じています。

 

人がフラッシュバックしてしまうのは、外傷体験の戦慄の衝撃に曝された時に、あまりの速さで、不意を突かれたために、その衝撃に体の神経がついていけなく、気持ちとの間で分裂します。また、不意打ちをされ、他者の力に圧倒されると、体が凍りつくか、虚脱化して、身動きが取れなくなり、正常な反応が妨げられることにより、脳がシャットダウンを起こし、体の中に莫大なエネルギーが滞らせてしまいます。それ以後も、筋肉が凍りつきや虚脱状態に固定化されて、筋肉や内臓と脳を結ぶ高速の神経は、危険や脅威が続いていると信号を送ります。外傷体験を想起される状況や刺激に対して、心臓がバクバクし、過覚醒になり、感情に圧倒されて、フラッシュバックします。また、フラッシュバックの時は、未処理のトラウマの感覚断片が修正されることなく、再び意識に昇ってきます。

 第1-1節.

外傷体験後の再体験症状


体の中にトラウマを閉じ込めている人が、過去の嫌な記憶や光景、感覚、感情、声、音、臭いなどを思い出すと、体に力が入って、胸が痛くなり、落ち着かず、息が苦しくなって、自分で自分を抑えられなくなります。どうしようもない状態になると、恐怖の感情や痛みに圧倒されて、過呼吸発作が出たり、過去の辛かったことばかりが思い浮かびます。

 

トラウマの再体験症状に苦しめられている人は、フラッシュバックを引き起こす対象がゾンビのように見えてきて、外の世界が生き地獄になります。そして、考えがまとまらず、心や脳、全身までも打ちのめされていき、自分自身がゾンビ化(凍りつきや離人、死んだふり、虚脱)していきます。また、別の言い方をすると、体の方が持続的な緊急事態モードに入り、脳が誤作動(フラッシュバック、悪夢)を起こしやすくなります。

 第1-2節.

解離性のフラッシュバック


フラッシュバックは、扁桃体が特定の情動に対して過剰に反応していますが、一方、離人症の解離性フラッシュバックでは、左脳も右脳もほとんど働いておらず、心拍数も変わりません。フラッシュバックを起こしているときは、ぼーっとして無反応で、解離しているように見えます。彼らは、何にも感じなくなり、泡に包まれて過去の懐かしい世界に飛ぶような人もいます。そのため、フラッシュバックが起きたとしても、本人はそのことに気づくことができない状態です。

 

本体は解離して、身体から切り離されて、夢心地のような世界に飛びますが、情動的な人格部分が身体を乗っ取り、状況に見合わせないほどの感情的な反応したりします。また、今いる人以外の誰かに反応しているような行動を取ったりします。

 第1-3節.

過呼吸とフラッシュバック


フラッシュバックが起きる直前は、危険が差し迫っているため、脳の扁桃体の活動が活発になり、体はストレス反応を示します。戦うか逃げるために、筋肉を動かそうとして、心臓の鼓動は早くなり、血圧は上がり、気管支は広がり、酸素の摂取量を増やそうとします。体は闘争モードに入っていきますが、より原始的な神経が働く人は、体が凍りつくため、胸部の圧迫感が出て、気管支は狭まり、呼吸がしたくても出来ないから、怖くなって過呼吸になります。

 第2節.

フラッシュバックの対処法について

親しい人がいるときは


フラッシュバックが起きた時の対処法として、親しい人が傍にいるときは、手を握ってもらうか、抱きしめてもらうかして、恐怖で動けなくなるよりも、体温の温もりと香水の匂いで、人間的な思いやりに抱かれる体験に変えましょう。恐怖の場面で、話せる相手がいて、心地良さを感じることができれば、全身をブルブルと震わせながら、トラウマを解きほぐすことができます。サポートする側は、フラッシュバック状態に動揺してしまうのではなく、力強い言葉をかけ続けて、なんとか今ここに踏みとどまれるようにすることが重要です。

一人でいるときは


一人でいるときにフラッシュバックを起こす場合は、過去に乗っ取られないようにするため、自分の体に意識を向けて、突然襲う不安や恐怖を受け入れていかないといけません。今ここに留まりながら、怖がることなく、自分の置かれている状況を観察しましょう。不安があっても、胸のざわつきや筋肉の硬直、凍りつく反応に意識を向けていくことが大切です。そのときに、自分は大丈夫と何度も言ったり、再び、状況を観察したりを繰り返しましょう。と同時に、自分の体に着目して、無理のない呼吸を心掛けたり、指の爪を触ったり、手足をバタバタと動かしたり、何かを振り払おうとする動作をしたり、口の開け閉めをリズミカルにしたりして、体の中に生じる生理的反応を怖がらずに見ていきましょう。また、目をしっかり開けて周りを見渡し、眼球も左右上下に動かし、周りの景色を眺めながら、身体感覚を見ていきましょう。

 

体の反応が怖くて、気持ちに余裕がない場合は、自分に向かって一生懸命に話かけて、今ここは安全な場所だからとか、私は今ここにいて大丈夫だよと言い聞かせて、自分を納得させましょう。また、左右の鎖骨辺りを交互にタッピングしてみたり、足の裏をピッタリと床につけたりして、全身をうまく使いこなしましょう。その他にも、体が凍りついて、ぼーっとしてきた時には、怖がらずに危険な動物から逃げるイメージ、大魔王のいる地獄の世界を走り抜けて天国まで行くイメージ、籠から抜け出して大空を羽ばたく鳥のイメージ、実際に少しの距離を走って安全な場所に避難するのも良いです。また、胸部を圧迫する痛みが強い場合は、水をごくりと飲むとか、氷を口に含むとか、飴を舐めるとか。自分のお気に入りの音楽を流すとか、香水の匂いを嗅ぐとか、綺麗な景色を眺めるなど、人によって対応の仕方は様々あります。

時間が経過したあとは


体の中の感情や感覚が怖くなり、フラッシュバックを引き起こすと、過去の記憶が蘇り、胸が苦しくなります。フラッシュバックしてから数時間経った後の対処法としては、腹式呼吸をしながら身体感覚を見ていきましょう。次いで、頭の中で幸せなことか、安心できることを思い浮かべて、体の中の感覚や感情を見ていって、次に何が起こったかを見ていきましょう。頭と体は神経で繋がっているので、頭の中を幸せなイメージにすると、手のひらやお腹、胸も温かくなり、涙が出てくるようになります。

再体験のトリガーに気づくこと


 フラッシュバックの症状が出てきたときは、これが症状だと分かっていれば、その状態にならないように対処できるし、あらかじめ備えることが出来ます。フラッシュバックを引き起こすトリガーは、自分で気づいたり、トラウマの専門家と話すことで、気づくことができるようになると思います。一人でフラッシュバックに立ち向かうと、戦慄や無力感に打ちのめされてしまうため、セラピストの支援が必要でしょう。また、遠回りになりますが、それに対処できるだけの心と体を育てていくことが良いと思います。全身が凍りつきをときに、自分の感覚を掴めていくとフラッシュバックしにくくなります。

 第3節.

フラッシュバックの治療

体を動かすエクササイズ


当相談室では、体を動かすエクササイズやイメージを使うエクササイズに取り組んでもらって、自分の感覚や感情を見ていきます。体を動かすエクササイズでは、手足に振動を伝えながら体を動かすとか、バランスボールの上でリズムを取るなどして、トラウマの麻痺症状を取り除きます。また、目や耳、鼻、口など五感を使って、体の内側をストレッチします。さらに、今ここでの体の状態に焦点を当て、ネガティブに自分を追い込んで、本来持っている自然治癒力を引き出します。うまく自然治癒力を引き出せると、体は軽く温かくなり、昔の健康だったときの状態に近づくことができます。また、長年に渡るストレスと緊張により、体が縮みあがり、息がしづらく、冷え切った手足から、全身が伸びてゆったりとした状態になることで、フラッシュバックの症状が減ります。日常生活の中でも、体に意識を向けて動きながらのマインドフルネスや、人間に備わっている自然治癒力を引き出して、心身の状態を調整できるようにします。

イメージを使うエクササイズ


イメージを使うエクササイズでは、安心できる記憶や望ましいイメージを思い出してもらって、体の安全な感覚を探し出すことに取り組みます。自分の体の感覚や感情の変化に気づくことにより、自分が自分であるということを確かにします。そして、体のなかでいつでも安心して過ごせるようになれば、フラッシュバックが起きても過去に戻されることなく、今ここに留まって思い出すことが可能になります。

治療の目標としては


その結果、外傷記憶が蘇っても、あまり動じずにやり過ごしたり、理性脳の働きを強くすることで、フラッシュバックを起こす情動とのバランスを取れるようにしていきます。また、日常生活の中でも、体に意識を向けて動きながらのマインドフルネスを行うことで、気づきや実感を伴わせたり、体の震えを利用したりして、過去のトラウマを小さくしていきます。

カップルセラピー


当相談室では、トラウマを癒すために、カップルや夫婦でセラピーを受けることができます。一方がトラウマのフラッシュバックや凍りつきで苦しんでいる場合には、カップルで瞑想をしていきます。ある程度、コツを掴んだら、地獄に入っていく瞑想をして、体に閉じ込められたトラウマを解放していきます。さらに、カップルで手を繋いでもらって、お互いがお互いの幸せなイメージを頭の中で思い浮かべるセッションを行います。頭の中を幸せなイメージでいっぱいにすることで、体の感覚や感情がどう変化していくのかを見ていきます。足の方までポカポカしていくようでしたら、血液の巡りが良くなり、愛情や幸福の状態にあると言えるでしょう。カップルでカウンセリングを受ける場合は、通常の料金と変わりません。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室 

更新:2020-05-24

論考 井上陽平

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