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解離とは何か?正常と病理


解離というのは、心理的な問題というよりも、生物学的な凍りつき/死んだふりの不動状態のメカニズムで起きます。病的な解離がある人は、神経が繊細で、人前でのんびりゆっくりすることができなくて、環境の次の変化に備えて、頭の中でシュミレーションしてしまい、身体は絶えず緊張しています。そして、危険が差し迫ったとき、次々と起こる展開に凍りつき/死んだふりの防衛行動のパターンが染み付いています。この防衛行動のパターンを取る人は、嫌なことや腑に落ちない状況で、疲労やストレスが重なり、絶え間ない苦しみが続くと、身体の筋肉が固まり凍りついて、じっとするようになります。辛いことが重なり、動かないでいるときは、息が止まり、皮膚や内臓感覚など何も感じなくなる、空想に耽る、1点を見つめてぼーっとする、集中力が下がる、凄い眠気に襲われる、身体から離れる、声が出ない、話の内容が聞こえない、身体を動かせない、人格交代、その間の記憶を忘れるなど解離反応が起きます。

 

外傷体験で起きる解離は、危険な状況に追い詰められた人が、過覚醒の闘争・逃走反応に失敗して、凍りつき/死んだふり(不動状態)の防衛行動のときに見られます。また、虐待など家の中から逃れられない環境にいる人は、どうしようもない過緊張や疲労感が続くために、不動状態が慢性化していって、常に身体が凍りついた状態になり、何も感じないようになります。長年に渡って、苦痛を切り離して、身体の感覚を麻痺させる生活になりますが、実際は瀕死状態かのようなギリギリで生活しているために、現実世界のちょっとしたことでも解離するようになります。解離するときは、意識のレベルが低下しているために、いつの間にかあちら側の世界に飛んでいき、現実感喪失や解離性健忘の症状が現れます。そして、瞬間的に今起きていることを忘れるため、自分の知らないうちに人に迷惑をかけたり、昨日起きたことを覚えていなかったり、知らない人に親しく話かけられたり、足元がフワフワしたり、現実がまるで夢の中にいるように感じます。

解離の利点と欠点


解離は、発達早期(胎児期~乳児期、幼児期)のトラウマにより、身体の弱さや神経発達の問題との関連で見ていくことがポイントになります。人が外傷体験を受けるとき、恐怖で筋肉が硬直していきますが、胸や喉が締めつけられていく苦痛に喘ぎ、頭は圧迫され、息が止められてしまう苦しさのなかで、恐怖や痛みに耐え切れなくなります。そして、過呼吸やパニック、思考フリーズ、声が出ない、動けない、離人感、意識が朦朧、意識が飛ぶ、目に見えないものが見えてくるなどが起きて、自分が自分で無くなります。このような外傷体験を受けた人は、その時のトラウマを身体が記憶しているため、似たような場面に遭遇すると、瞬間的に身体が固まり、恐怖や痛みを感じて、パニックや解離するかもしれません。

 

解離という現象は、生体を保護する役割があります。例えば、恐怖に凍りつくことで、息が止まってしまい、脳が酸欠状態になることから守る役割や、交感神経がシャットダウンすることで、心臓に強いショックを与え、死が迫ってくることから守る役割があります。また、恐怖や怒り、痛みなど自分を圧倒する感情、感覚を切り離すことにより、危険な状況でも冷静に対処して乗り越えることに役立ちます。さらに、PTSDの感覚過敏や身体の中の不快感を切り離して、低覚醒状態に留まり、夢心地の気分で過ごせるという利点があります。しかし、生活全般の困難が続いているのに、不快感や痛みを切り離したせいで、危険な場所に留まり続けることが可能になりますが、その影響が長引くと、身体が固まり凍りついて、眠たくなり、半分眠ったように過ごす、解離症状が病的になっていきます。

 

解離がある人が、日常生活のなかでトラウマのトリガーが引かれると、首や肩がガチガチに固まるか、足がウズウズ、ムズムズなどの不快感が出てきます。このとき、身体の硬直や不快感をストレスに感じて、動いてしまう人もいますが、解離がある人は、集中力が低下して、眠くなる、離人する、ぼーっとする、意識が朦朧とする、意識が飛ぶなどが起きます。そのため、解離性障害の人は、身体が不動状態に近づく前後に、心と身体が分離してしまうため、震えや揺れ、熱などエネルギーを放出をすることができなくて、正常な状態に回復する機会を失います。

正常な解離と病的な解離


正常な人は、身体が収縮と拡張を繰り返しているので、平穏を保てますが、病的な解離の人は、身体が慢性的に収縮する方向にあるので、その限界に達すると、身体が凍りついて、離人化するなど様々な症状が現れます。正常な解離は、脳のフィルター機能がしっかりしている健康な人で、あらゆる情報が頭の中に入ってきても、自動的に選択的注意がなされ、興味のない情報が遮断されます。一方、病的な解離は、PTSD症状により、危険を察知しやすい過覚醒状態が過ごしているために、脳のフィルター機能がうまく働かず、大量の情報が頭の中に入ってきます。嫌悪感の強い情報に対しては、神経が高ぶるか、気が狂いそうになります。病的な解離というのは、脳のフィルター機能が壊れながらも、日常生活を適応するために、身体の感覚や現実感を麻痺させ、頭の中の世界に没頭して、思考でごちゃごちゃとなるか、普通の人が寝るときに見る夢のような世界に飛ぶことができます。

解離性障害の人は


解離性障害の人は、気配過敏で、過剰に警戒していて、頭の中で大量の情報を処理していますが、嫌なことがあると、身体が固まり凍りついて、解離します。解離すると、虚ろな表情になり、抜け殻のようになるか、ぼーっと天井の1点を見つめるか、人格交代する人もいます。解離している時は、頭の中の別の世界に行き、深い森の中や海底など安心できる場所にいます。日常的に、嫌悪することや、苦痛を切り離すことができるために、日常生活のとても辛い体験が無かったかのように過ごすことができます。そのため、辛いことに無自覚になり、あたかも正常なように見せて日常生活を送ります。ただ、実際は、心も身体も苦痛だらけなので、高熱や頭痛、腹痛、アトピー、喘息、慢性疲労、疼痛など体調不良に悩まされます。

 

解離性障害の人が、家や学校、会社などの狭い空間で苦手な人物と一緒にいると、頭の中がボヤッとする解離症状が表れて、相手のことがさほど気にならなくなります。一方、苦手な人物と離れて、解離症状が消えると、頭の中がはっきりするために、苦手な人物に対して、イライラや不快な感情を遅れながら思い出します。

 

過酷な環境にいて、心と身体の苦痛が限界を超えていくと、麻痺していきます。その状態が長く続くと、生きている実感が無くなり、感情が消えて、時間感覚が消えて、現実感が喪失します。外の人からはあたかも正常なように見えますが、実際は、身体が凍りつきや死んだふりの状態のため、莫大なエネルギーが滞っていて、自分が自分で無くなります。

人格解離


外傷体験を受けた被害者は、されるがままに固まり、動けなくなり、生きている感覚が麻痺し、現実とは違うところにいるような感覚になります。このとき、意識が朦朧としたり、意識が飛んだりして、自分の代わりに犠牲となる人格部分が作られます。このような痛ましい過程で人格が解離していきます。

 

解離症状が重くなると、感情が無くなり、何も考えられなくなり、自分がロボットのようにガチガチになって、日常生活のルーティンをこなしますが、身体は疲れ切っています。怒りや苦しみ、楽しみが分からなくなり、身体に力が無く、内側から湧き上がってくるものがありません。時間感覚も分からなくなり、こないだのことも覚えていないような異常事態になります。日常生活を送るなかで、突然眠ったり、記憶も飛んだり、昨日のこと、先週のことも分からなくなります

 

人格が増えていくと、どれが本当の自分なのか分からずに、様々な自分が入り混じっているように感じ、自分がただ生かされているだけで、自分のことがよく分かりません。自分のことがよく分からなくなっている人は、一人になると役割が無くなり、どうしていいか分からなくて、記憶に残りません。一人でいると、自分のことが分からなくなり、相手がいないと自分が成り立ちません。

 

日常生活のなかでトラウマが繰り返される場合には、解離が起きて、非常に混乱した状態になり、気持ちや思考、行動をコントロールできなくなります。そして、自分を守ろうとして、自分の怒りを身近に人にぶつけたり、自分自身を傷つけるような行動を取ったり、衝動的で危険な行動を取ることがあります。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

更新:2019-11-14

論考 井上陽平

 

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解離性症状の子ども

発達早期にトラウマを負った子どもは、人の視線が怖く、人に注目されるのが嫌で、息を潜めて低覚醒で過ごすタイプがいます。彼らは、学校では問題行動を起こさず、誰にも迷惑をかけない存在として放置されます。

凍りつく美と心の傷

凍りつきの美を維持するのは、無理をせず、周りを完璧に固めて、静かな状態で、凍りついて眠ります。顔の表情や目、鼻、口、喉の筋肉が引き締まり、美しさが氷のなかで凝縮された結晶となり保存されています。

自己感覚の喪失

自己感覚が喪失すると、身体や情緒、時間の捉え方や思考に影響が出ます。自分が自分で無くなるという感覚に襲われる病で、解離性障害や離人症・現実感喪失症、複雑性PTSD、解離性同一性障害の方に見られます。