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見捨てられる不安


見捨てられ不安とは、大切な人に拒絶されたり見捨てられたりすることを恐れており、石橋を叩いて叩いて、叩きすぎて関係を壊してしまい、人間関係がうまくいかなくなります。見捨てられたくないと思う相手は、子どもは親や友人のことであり、大人になると恋人や配偶者になります。

 

見捨てられ不安は、トラウマとの関連が深く、幼いうちから、身体の中にトラウマがある人は、脅かされることを恐れており、危機や崩壊への不安があります。彼らは、ストレスに打たれ弱く、生理的嫌悪を感じやすいので、親や周りの人の顔色ばかりを伺い、その場の雰囲気を良くするとか、自分を良く見せるとか、相手の期待に応えるとか、先回りをすることで、不快なものを振り払おうとします。身体の中のトラウマのせいで恐ろしいことはなんとしても避けたいので、気を抜くことなく、最悪な事態を想定するようになり、その分だけ自分が嫌われてしまうとか、見捨てられることを恐れるようになり、親の気持ちを先取りし、正解を探り、相手を喜ばそうと一生懸命に頑張ります。自分のありのままの気持ちや欲求を抑えて、両親のご機嫌を伺い、他者を強く意識して、気を配りすぎて、疲弊してしまう人生になります。家庭のなかでは、自分が安心する居場所がなくても、親の良い子でいようと必死に頑張り、不安や焦りで神経を張りつめて、親の期待に先回りして応えようとします。ただ、人から見捨てられたり、拒絶されたりしない良い子でいることはほんとに苦しく、思考がぐるぐるし、自分のしたいことが分からないまま、夢やモチベーションが奪われていき、ただ他人に合わせるだけの自分しかいなくなるかもしれません。

 

トラウマティックな心性を持つ子どもが、親に見捨てられてしまうと、切迫した状況に追い詰められて、トラウマが複雑化します。神経が繊細で凄く傷つきやすい子どもは、養育者との分離不安も強くなり、親が別の誰かと仲良くするだけで、自分が遠くに弾き飛ばされる恐怖や、死の追手に消されてしまう恐怖を感じているかもしれません。また、離婚や別居などで片方の親が家に帰って来ない場合は、全部が真っ暗闇の感覚に陥って、生きていくことが怖くなり、やがてこの世界が崩壊していくように感じるかもしれません。さらに、親を失った子どもは、ショックから茫然自失になり、声が出せなくなる、手足が動かなくなる、凍りつく、虚脱化する、意識を失うなどの神経発達に問題が出るかもしれません。また、親からの虐待や育児放棄された子どもは、見捨てられることが本当に苦しくて、気が狂いそうなトラウマになっており、それ以後、誰かに見捨てられると、一人取り残されたような寂しさや孤独感が襲い、どうしようもなく苦しくなって、自分が自分で無くなっていくかもしれません。この見捨てられ不安は、境界性パーソナリティ障害との関連が深く、恋人や夫(または妻)から見捨てられたと感じると、必死にしがみついて、何とかしようとします。しかし、相手の反応次第では、希望が失われていき、安心させてくれない相手が悪いとか、こんな考え方をしている相手が許せないとか、最後まで責任を取れと、ネガティブな感情でいっぱいになります。そして、自分の感情や行動の制御が利かなくなり、パニックや過呼吸、暴言、暴力、危険行動、自殺のほのめかし、自傷行為になります。

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境界性パーソナリティ障害の見捨てられ不安と空虚さ


境界性パーソナリティ障害の人は、脅かされることへの不安がとにかく強く、自分に自信がありません。パートナーには、依存的で、嫉妬深く、ネガティブな思考回路、嘘や裏切り、見捨てられることを極度に恐れています。一番安心して頼りになるのがパートナーになり、常にそばにいたいと思って、パートナーにしがみつきます。パートナーには自分だけを見るようにとか、連絡にはすぐに応じてほしいと要求し、現実的にそれが難しくても、それが絶対で、それが出来ないと、嫌がらせをしたり、嫌いと言ったり、行かないでと言ったりと緊密な人間関係のなかを生きています。

 

親しい関係になると、相手の二面性や身勝手さに目が向き、理解できない言動や人間本来の負の部分が見えてきてしまって、すぐ不安になり、怖くなるか、怒りの感情や投げやりな態度を取りやすくなります。恋人関係が深くなるほど、相手の言動がもの凄い裏切りに見えて、見捨てられ不安が増大すると、感情のコントロールを失うため、大喧嘩になり、ほらあなたも私を見捨てたという展開になります。喧嘩した後に、正常な状態に戻り、自分のとった行動を反省しますが、時すでに遅い場合は、人間関係をことごとく失敗していきます。

 

境界性パーソナリティ障害の人は、ストレスや嫌なことがあると、体がこわばり、脳に危険信号を送ってしまうため、誤作動を起こして、トラウマにまみれた心は混乱します。長年に渡って、相手の顔色を伺い、見捨てられることを恐れて、相手の正解ばかり探していると、自分の気持ちは後回して、本当の自分の気持ちが分からず、苦しむことになります。無理してきたせいで体調を崩して、段々としんどくなり、疲労感や不快感、節々の痛み、気持ち悪さなど、覆い隠すように麻痺した状態になり、空っぽな自分になっていきます。空っぽな自分になると、自分というものがないので、幸せな感じを相手との関係で満たします。

 

空っぽな自分に向き合うと、自分に何もないことが分かり、どう人生を生きていいか分からず、何をしていいかも分からなくなります。自分に向き合うことが怖くて、虚しくなり、仕事を辞めたい、消えていなくなりたい、死にたいなど考えます。空っぽな自分は、自分というものがないので、相手の存在が大きくなりすぎて、自分は小さくなります。常に他者に影響されてばかりで、他者がいることで、自分が成り立ちます。他者の愛情のエネルギーを受け取ることで、自分が元気になります。

 

ちょっとしたことでも、傷ついて、苦しくなり、感情的になりやすく、自分だけが浮いていて、だから周りに合わせようとして、自分の中身は空っぽになります。自分のことが分かっていなくて、人生で何を選んでいいか分からなくて、人の決めたことに従って、周りに流されていきます。人に否定されるとイライラし、機嫌が悪くなる自分が面倒で、自己否定し、周りに迷惑をかけていないか心配です。自分が本音を言って嫌われたらどうしようとか、人が自分から離れていくのが不安で、自分なんていらないんじゃないと思います。誰かに見てくれないと、自分を保てなくなり、自分が自分でなくなる不安があります。

パートナー(恋人)との関係性


見捨てられ不安の人は、とくにパートナー(恋人)との関係に悩み、自分を受け止めてもらえると考えていないので、表面上の関係になりやすく、深く関わりたい気持ちはあるけど、親密な関係になるのが怖いです。例えば、感受性が鋭いために、相手の一言一言や態度が、いちいち胸に突き刺さり、真剣に受け止めすぎて、自分に余裕がないから、イライラし、相手に振り回されます。相手の出方に合わせて自分の状態が変わり、相手から必要とされたり、自分が役に立っていると感じられると、すごくテンションが高くなります。

 

一方、自分の欲しい言葉をくれないと苦しくなり、自分に価値がないとか、相手から大切にされていないと感じると、寂しくて、悲しくて、落ち込んでしまって、見捨てられ恐怖から混乱します。相手に見捨てられることを恐れ、必要のない人間だとみなされることが怖くて、冷たくされる痛みに耐えれなくて、失うことが怖いから、感情的になったり、関係を切り離したりします。ただし、そのあとは、お互いに自分の心を軽くするため、暴言・暴力が出て、心身とも疲れ果てて、絶望の時間になってしまうかもしれません。

 

パートナー(恋人)と幸せな生活をして、自分の居場所がある生活を過ごしてしまうと、もう元の生活に戻りたくありません。好きな人と一緒にいることが幸せなため、相手に見捨てられることを恐れます。見捨てられ不安が高まると、相手をとことん試して、縛り付けます。相手が本当に自分を愛しているかを確かめたくて、相手の気持ちを確かめる行動をしたり、相手を傷つけてそれでもまだ自分を愛してくれるかを試してしまいます。彼らは、相手の愛情をうまく受け取ることができず、不安や恐怖が強くて、感情的になり、自分への気持ちが本物なのか、崩れることがないものか、偽物なのか、分からないことに耐えられません。

 

また、彼らには冗談が通じず、相手の言葉や文章をそのまま受け止めて、過去を思い出し、嫌味を言われているように思い込みます。相手の思いを否定的に受け取って、傷つきます。根本には、人間不信や自己否定があり、良いことがあった後は、必ず悪いことが起きると思い込んでいて、いつも最悪な事態を想定しています。その結果、見捨てられるかもしれないという恐怖心から、警戒心が強く、バリアを張って自分を守るために、恋人や友人関係を構築するのが苦手で、大切な人との関係が長続きしないことを繰り返します。

 

その一方で、恋人や大切な人に嫌われたらどうしようとか、見捨てられたらどうしようと考え、良い子で居ようします。大切な人に見捨てられることを強く恐れて、しがみつき、常に不安を抱いています。良い子でいようとするので、周りには良くできる子として映りますが、本来の私(自由奔放な部分)や悪い子(ネガティブな感情)との間がずれていきます。このずれが大きくなるほど、しんどくなります。周りに気をつかう良い子の部分が受け入れられますが、その分、人に合わせていくのにも限界があります。良い子を演じるために、本音を出せなくて、内心は嫌でも言いなりになっていき、怒りが溜まって、爆発して関係を壊すことを繰り返します。

 

裏切られたり、見捨てられたりすることを恐れて、パートナーが浮気をしていないかどうか、相手の行動を把握しないと気が済みません。浮気していないと分かっていながらも、それを疑って、感情をコントロールできなくなり、相手と喧嘩や言い合いや殴り合いなどを広げます。パートナーの異性関係に敏感になり、被害妄想が目立っていき、他の誰かと仲良くなるするのが許せず、危険を感じて、やきもちをやき、他者を巻き込みます。

 

相手が突然どこかに行ってしまったり、部屋を移動した場合には、ヒヨコのように後を追ってついていきます。相手が自分に背中を向けて去っていくことが、まるで自分が見放されたかのように感じて、不安や苛立ちとなって、その人の後を追いかけます。見捨てられ不安が強い場面では、自分を理解してくれないことに極度に興奮して、怒り狂った行動を取ります。この病気のせいで、皆と同じことができずに、いつもひとりぼっちで、人間関係が作れても、慣れない温かさが怖くて、自分から壊してしまいます。人間関係に失敗してきた分だけ、自分の劣等感になり、また見捨てられるかもしれない不安があります。

 

根源的な問題としては、小さい頃から、親に見捨てられる不安が強く、育ててもらうのに一番頼りにしている存在に裏切られるという経験があるかどうかです。悪いことをすると怒られるから、良い子でいるという幼少期を送ってきました。思春期以降になると、恋人として付き合う経験が始まって、そうすると信頼していた恋人に見捨てられることが一番怖くなっていきます。結婚した後は、自分の好きなパートナーが別の人のところに行くのをものすごく怖がります。美しく自分を保ち、非の打ち所がない人間じゃないと安心して生きれないと思い込むこともあります。

 

また、親に上手に依存できなかった人は、甘えることができません。好きという感情があっても、甘えることが出来ずに、甘えることが虫唾の走るような経験なので、嫌いとしか言えません。そして、相手が離れていこうとすると、行かないでとしがみつきます。会えないと寂しくなって、その感情の持っていき場がなくなります。感情が爆発してしまいそうになるので、リストカットや過食で自分の感情を落ち着かせます。

 

まとめると、境界性パーソナリティ障害の人や、見捨てられ不安が強い人は、相手に悪意が無くても、人といると同じことの繰り返しになり、同じ失敗を何度もして、人間関係がうまくいきません。治療では、無意識の働きに気づいて、自分の理解を深め、新しい行動パターンや新しい考え方を見つけていきます。また、無意識そのものの働きを変えるために、身体に着目して、自分のモードを変えていくようなアプローチも有効です。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平

 

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