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見捨てられ不安と試し行為


見捨てられ不安とは、大切な人に拒絶されたり見捨てられたりすることを極度に恐れ、その結果、過剰な警戒心や行動が原因で関係を壊してしまう心理状態を指します。見捨てられたくないと感じる相手は、子どもの頃は親や友人、大人になると恋人や配偶者が中心となります。この不安は、幼少期に形成されたトラウマと深く結びついており、特に幼い頃からトラウマを抱えている人は、常に脅威や危機に対する不安を抱えて生きています。

 

こうした人々は、ストレスに対して非常に敏感で、周囲の人々の顔色をうかがい、場の雰囲気を良くするために自分を抑え込む傾向があります。相手の期待に応え、嫌われないように先回りして行動し、常に自分を良く見せようと努力しますが、その過程で自己を消耗させてしまいます。トラウマによって形成された恐怖感から、最悪の事態を常に想定し、自分が嫌われるのではないか、見捨てられるのではないかと不安になり、親や周囲の人々の気持ちを察しながら正解を探し、相手を喜ばせようと必死になります。その結果、自分の本当の気持ちや欲求を抑え込み、他者に合わせることに疲れ果て、夢やモチベーションを失ってしまうことがあります。

 

1.トラウマと見捨てられ不安の関係

 

特にトラウマを持つ子どもが、親に見捨てられた場合、その心理的影響は非常に深刻です。神経が繊細で傷つきやすい子どもは、親との分離不安が強くなり、親が他の誰かと親しくするだけで、自分が遠ざけられる恐怖や、存在が消されるような恐怖を感じることがあります。また、離婚や別居によって片方の親が家に帰らない場合、子どもは真っ暗闇に包まれたような感覚に陥り、生きていくこと自体が怖くなり、この世界が崩壊していくように感じることさえあります。

 

さらに、親を失ったショックから茫然自失となり、声が出せなくなったり、手足が動かなくなったり、凍りついたり、虚脱状態に陥ることもあります。このような神経発達の問題は、見捨てられたという感覚が強く結びついています。虐待や育児放棄を受けた子どもにとって、見捨てられることは非常に苦痛であり、それがトラウマとして深く刻まれます。そのため、後に誰かに見捨てられると、一人取り残されたような寂しさや孤独感に襲われ、自己の存在が揺らぎ、自分が自分でなくなる感覚に苦しむことがあります。

 

2. 境界性パーソナリティ障害との関連

 

この見捨てられ不安は、境界性パーソナリティ障害との関連が深く、特に恋人や配偶者から見捨てられたと感じたときに強く現れます。彼らは必死に相手にしがみつき、何とか関係を維持しようと努力しますが、相手の反応次第では希望を失い、相手を悪者扱いし始めることがあります。「安心させてくれない相手が悪い」「こんな考え方をしている相手が許せない」といったネガティブな感情に支配され、次第に感情や行動の制御が利かなくなります。その結果、パニックや過呼吸、暴言、暴力、危険行動、さらには自殺をほのめかしたり、自傷行為に走ったりすることが見られるようになります。

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境界性パーソナリティ障害の見捨てられ不安と空虚さ


境界性パーソナリティ障害(BPD)の人々は、脅かされることへの不安が非常に強く、自分に自信を持つことが難しいと感じています。この不安感は、特にパートナーシップにおいて顕著に現れ、依存的で嫉妬深い思考パターンが形成されやすいです。パートナーに対しては、絶えず連絡を取り続け、自分だけを見ていてほしいという強い要求を持ちます。現実的にはこれが難しい状況でも、その期待が満たされないと、パートナーに対して嫌がらせをしたり、「嫌い」と言ったり、「行かないで」と懇願したりすることがよくあります。これらの行動は、境界性パーソナリティ障害の人々が緊密な人間関係の中で生きようとする一環です。

 

1. 親しい関係における葛藤と不安

 

親しい関係に入ると、相手の二面性や自己中心的な行動が気になり始めます。これが、理解できない言動や人間の負の部分に焦点を当てる原因となり、不安や恐れが増大します。恋人関係が深まるにつれて、相手の言動が裏切りとして感じられ、見捨てられ不安が高まります。この不安がピークに達すると、感情のコントロールを失い、大きな喧嘩に発展し、「ほら、あなたも私を見捨てた」という結論に至ります。喧嘩の後、冷静さを取り戻して自分の行動を反省しますが、時すでに遅く、多くの場合、人間関係を失敗に終わらせてしまいます。

 

2. ストレスと身体的反応の悪循環

 

境界性パーソナリティ障害の人々は、ストレスや不快な出来事が起こると、体がこわばり、脳に危険信号を送り続けます。この過程で誤作動が生じ、トラウマに満ちた心は混乱状態に陥ります。長年にわたって相手の顔色をうかがい、見捨てられることを恐れて相手の正解を探し続けていると、次第に自分の気持ちを後回しにするようになり、本当の自分の感情が分からなくなります。この無理が続くと、身体に悪影響が現れ、疲労感や不快感、体の痛みが増し、やがて麻痺した状態に陥り、心が空っぽになる感覚にとらわれることがあります。

 

3. 空虚感と自己否定の悪循環

 

心が空っぽになると、自分の存在意義が見失われ、人生の方向性がわからなくなります。自分に向き合うことが怖くなり、虚無感が増大し、仕事を辞めたい、消えていなくなりたい、さらには死にたいといった思考が頭をよぎることがあります。空っぽな自分を抱えることで、他者の存在がますます大きくなり、自分自身が小さく、取るに足らない存在に感じられます。他者の愛情や承認を求め、それが自分の存在意義の全てになってしまうのです。他者の愛情のエネルギーが唯一の生きる糧となり、自分を支える力を得ています。

 

4. 感情の不安定さと孤立感

 

境界性パーソナリティ障害の人々は、ちょっとしたことでも傷つきやすく、感情が不安定であり、自分だけが浮いていると感じることが多いです。周囲に合わせようと努力するあまり、自分の内面は空っぽになってしまいます。また、自分のことがよく分からないため、人生で何を選んでいいのかがわからず、他者に決定を任せることが多くなります。人に否定されるとイライラし、機嫌が悪くなり、自分を面倒だと感じ、自己否定に陥ります。周囲に迷惑をかけていないか心配し、自分が本音を言ったら嫌われるのではないか、誰も自分を必要としないのではないかという不安に苛まれます。

 

5. 他者依存と自己喪失の恐れ

 

誰かに見てもらえないと、自分が保てなくなり、自分が自分でなくなる不安が常に付きまといます。境界性パーソナリティ障害の人々は、他者からの評価や愛情に依存しており、それが失われると、自分の存在意義が揺らぎ、自己喪失の恐れが生じます。この恐れが行動の裏に潜んでおり、他者との関係を維持するために過度な努力を重ねる一方で、その関係が壊れることへの不安が増大します。結果として、自己喪失と孤立感が強まり、心の空虚感がさらに深まっていきます。

パートナー(恋人)との関係性


見捨てられ不安を抱える人々にとって、特にパートナー(恋人)との関係は深刻な問題となります。彼らは、自分を受け止めてもらえるという確信を持てず、表面的な関係に終始しがちです。内心では深い関わりを望んでいるものの、親密になることへの恐れが強く、感情を抑えたままの関係を維持しようとします。その一方で、感受性が非常に鋭いため、相手の言動が心に強く響き、しばしば胸に突き刺さるような感覚に襲われます。こうした感情に余裕がなくなり、相手の出方に振り回され、自分の感情が大きく揺れ動くことが多々あります。

 

1. 感情の波に飲まれる日々

 

欲しい言葉が得られないと、見捨てられたという感覚に苛まれ、自分の価値を見失いがちです。このような状況では、相手から大切にされていないと感じ、寂しさや悲しみが一気に押し寄せ、見捨てられることへの恐怖が増幅します。これにより、感情的な反応が過剰になり、最悪の場合、暴言や暴力に発展することも少なくありません。こうした行動は、結果として関係をさらに悪化させ、心身の疲労を招き、絶望感に陥ることがあります。

 

パートナーとの幸せな生活が一度でも得られると、それを失うことへの恐れが一層強まります。そのため、見捨てられ不安が高まり、相手を試し、縛り付ける行動に出ることがあります。相手が本当に自分を愛しているかどうかを確認するため、相手の気持ちを試す行動を繰り返し、その結果、相手を傷つけてしまうこともあります。しかし、彼らは相手の愛情をうまく受け取ることができず、常に不安や恐怖に支配されているため、感情的な揺れが続きます。

 

2. 自己否定と人間不信の連鎖

 

見捨てられ不安を抱える人々は、冗談や軽い言葉さえも深刻に受け止めてしまいがちです。過去のトラウマが思い起こされ、相手の言葉を否定的に捉えることが多いです。根底には、人間不信や自己否定があり、良いことがあった後には必ず悪いことが起こると信じ込んでいます。このような考え方が、見捨てられるかもしれないという恐怖を強め、結果として人間関係を築くことが困難になります。

 

一方で、彼らは恋人や大切な人に嫌われることを強く恐れます。そのため、良い子であろうとし、周囲に合わせることで自分を保とうとしますが、その裏には自由奔放な自分やネガティブな感情を抑え込む葛藤があります。この抑圧が限界に達すると、怒りが爆発し、関係を壊してしまうことが繰り返されます。こうした状況が続くと、浮気の疑いや相手の行動に対する過剰な不安が生じ、感情のコントロールが効かなくなることがあります。

 

3. 親との関係がもたらす影響

 

見捨てられ不安の根源には、幼少期の親との関係が大きく影響しています。親に見捨てられることへの不安が強く、育ててもらうために最も頼りにしていた存在に裏切られる経験がある場合、その影響は特に大きいです。幼少期に良い子でいることが求められ、思春期以降は恋人に対して同じ恐れを抱くようになります。そして、結婚後もパートナーが他の人のところへ行ってしまうことを極端に恐れるようになります。

 

また、親に甘えることができなかった人々は、愛情を求めることが難しくなります。甘えることができないため、愛情を素直に表現することができず、相手が離れていこうとすると「行かないで」としがみつくようになります。このような感情が爆発しそうになると、リストカットや過食といった自傷行為に走ることもあります。

 

4. 結論と治療のアプローチ

 

見捨てられ不安を抱える人々や境界性パーソナリティ障害を持つ人々は、同じ失敗を繰り返しやすく、結果として人間関係がうまくいかないことが多いです。治療では、無意識の働きに気づき、自分自身をより深く理解することが重要です。新しい行動パターンや考え方を見つけるアプローチに加え、身体の感覚に注目し、感情のモードを変えていく方法も有効です。これにより、彼らはより健全で安定した人間関係を築く力を養うことができます。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平

 

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