空虚な身体と心

▶空虚な身体と心

 

かなり早い段階から痛ましいトラウマを受けたり、母親の肌の中で包んでもらえる温もりがなく育った子どもは、自分の内面を覗きこむと、子どもの頃の記憶をほとんど覚えていないことがあります。そして、自分の居場所がなく、ひとりぼっちで、壮絶な人生を歩まされていくうちに、嫌な記憶や感情を切り離して、自分の体内の感覚が麻痺します。この体内の感覚の麻痺とは、体性感覚が感じられないことであり、皮膚、筋肉、内臓、腱、関節の感覚が分からなくなります。このような人は、身体や心が空っぽで、自分の内面に向き合うことができなくて、たとえ向き合おうとしても、考えられない、イメージできない、感じられない、もの凄い眠気に襲われるなどが起きます。

 

人間の心というのは、身体の生理状態を土台にしているために、身体の感覚が空っぽの人は、心がない状態になります。体内の感覚が麻痺している人は、自分の軸が失われており、同じことをグルグル考えるか、他者の基準(外側の基準)を軸にして、周りを固めて生活しています。目で見ることや耳で聞くことはできますが、物事を深く考えることできず、批判することもなく、表面的なことばかりに終始します。何も感じないまま、生きている感覚がなく、うつろな表情で日常生活を過ごし、人生はただの暇つぶしになります。

 

体性感覚が無い人は、小さいときから、恐ろしい体験をしており、ガチガチに固まり、凍りつきや虚脱のトラウマを負ってきました。長年に渡り、親や兄弟などに虐げられてきたために、胸の痛みや喉の違和感、首と肩の張り、心臓のバクバク、内臓感覚(はらわたが煮えくり返る)などの恐ろしさに耐えられなくて、感覚を麻痺させてきました。そして、これ以上ダメージをまともに受け止められないので、自分の内臓や筋肉、皮膚の感覚や感情が出てくる隙間を与えないようにして、心を空っぽにするか、思考で埋め尽くすようになります。

 

ただし、頭の中で生活しても、身体はガチガチに凍りついたままになっており、自律神経のバランスは悪くなる一方で、体調が悪く、戦うエネルギーは枯渇していきます。危機的状態ながらも、息を潜め、身体を凍りつかせたり死んだふりをして、生き延びていきます。しかし、自分を身を守るために、石のように固まるような受動的な防衛スタイルを取っても、さらに酷い攻撃を受け続けると、最終的に防衛のための殻が壊れてしまいます。そのとき、人は虚脱状態に陥り、息が吸えない酸欠状態か、血の気が引いて倒れてしまうか、心臓が落ちるような死の恐怖を体験します。

 

虚脱するようなトラウマが繰り返されると、人は本当に死んでしまうかもしれないので、生き残る手段として、一瞬で離人や解離、機能停止させて対応しようとします。日常では、とても辛い毎日のなかで、身体を凍りつかせて対応し、危険を感じると、離人や解離で切り抜けるパターンで生きるようになり、自分が本来感じていただろう感覚や感情の置き場が無くなります。その結果、体内の感覚を感じることが無くなり、心と身体が永遠に離れてしまって、ただ動く身体になります。

 

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