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自己愛性人格障害の末路


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 第1節.

自己愛性パーソナリティ障害の傾向


自己愛性パーソナリティ障害者(自己愛性人格障害)は、どのような末路が待ち受けているのか、その流れを記述していきます。自己愛性パーソナリティ障害の感情や行動特性を持つ素因としては、生まれ持った資質の弱さや発達のアンバランスさがあり、不幸な生い立ちである自分を恥じるようになります。そして、それを表に出さないようにするため、周りの目を気にして必死に隠しています。

 

また、自己愛性パーソナリティ障害者は、子どもの頃の親子関係から生じた外傷体験により、「私は人間であるという体験」の欠如した経験を持ち、不条理な学校社会の有り様への不平、不満、恨みがあり、自分の存在の虚しさを晴らそうとします。自己愛病の彼らは、もう二度と対人場面で恥や敗北、無力感に打ちひしがれないためにも、自分は価値があるという誇大な妄想を持ち、自分だけが特別であろうとし、過剰な賞賛を求めるという幻想の中で生きます。

 

例えば、この私は人間であるという体験を身体的な快楽に耽ることでしか得られないと、性的な誘惑者となり、思わせぶりな態度をとり、人の心を意のままに操り、病的に嘘をついてまで人を騙し、舌のよく回る巧みな人物となります。また、人間以下の犬畜生にも劣る扱いを受けて育つと、無節操で、道理に無関心であり、傲慢で、人間をモノのように扱い、軽蔑し、支配することにより快楽を感じる人物となります。

 

上記のような特徴を備えた自己愛性パーソナリティ障害者は、身体にトラウマが刻まれているために、安心する感覚が育たず、周りから安心感を得ようとします。安心を得るには、周りが自分の思ったように動いてもらいたくて、周りを動かすには、容姿を磨くことが最重要だと考え、自分の外見ばかりに目が行き、性的魅力やお金に重大な関心を持っています。

 

例えば、男性の場合は、外見的魅力、金、物、見せかけの優しさ、コミュニケーション能力の高さ、作り話、秘密、嘘、整形で、第一印象は良く、人が寄ってくるのでたくさんの女性と交流を持ち、セックスの快楽に耽り、もてることに執着していきます。そして、自分の空虚感を埋めて、人間らしさを感じさせてくれる相手を探し求めて、出会った相手には、優しさと攻撃性の両面を使い分けて、矛盾した言動を取り、幼児的な万能感(征服感、支配感)に浸ることで自分を保ちます。自己愛病の彼らのこころの内的世界には、美しく若いお嬢さんを略奪し地下へと連れて行くハデスのような悪魔的な存在が棲みついているように見えます。

 第2節.

劣等生と誇大性が入り混じった自己愛性格


自己愛性パーソナリティ障害者は、もともと子どもの頃から、暗い家庭環境(死別、離婚、虐待、DV、不運な事故、事件、見捨てられ体験、頻繁な転居、貧困ゆえに学業断念、身体が虚弱、親の精神病理、兄弟葛藤)で育ってきて、恥や無力感に打ちのめされた経験があり、学校社会からも迫害されてきたような経験を持ちます。今まで脅かされながらも必死に生きてきたために、普通に暮らしている人や自分勝手にしている奴への憎しみがあります。また、自分のルーツやアイデンティティが希薄で、自分を得たいの知れない人間のように感じています。

 

その反面、子どもの頃から自分が優越的な立場に立った時の快感が忘れられず、その興奮に取り憑かれています。一般に、仲の良い家族、育ちの良い人に憧れますが、と同時に、妬みや悔しさ、羨ましさを抱えています。自己愛病の根本にあるのは、人間であることの存在の希薄さ、居場所のなさ、寂しさ、やりきれなさ、絶望、苛立ち、怒り、傷つきやすさ、自分を見捨て支配する親への猜疑心です。

 

本当の自分は臆病で、無力な弱弱しい状態のままでいますが、子ども時代に、理想化された対象を求めて、誇大化した自己像(躁的防衛)に同一化しており、無能的自己の間で分裂があります。弱い自分を責めて忌み嫌い、自分を強く見せようと誇大化された自己意識を保つために、自分にも他者にも厳しくいます。周囲の目を過剰に気にしながら、自分を守るために筋肉の鎧やヴェールを纏い、過剰な賞賛を求めて、努力をしていくので、魅力的で才能やコミュニケーション能力を有しています。また、幼児的万能感を保つために、自分と自分を取り巻く環境をコントロールします。自分自身の目的を達成するためなら、他者を不当に利用しますが、罪悪感や本当の思いやりの気持ちが持てません。

 

自己愛病の彼らは、独特の正義感を持っており、自分は正しいことをしていて、素晴らしいと思っています。また、悪い奴らが悪いとされて、悪が台頭している状況を覆して、正義が正義であろうとします。そのため、身勝手な奴らが許せず、間違いを正そうとしています。自分の思い通りにならないことは敵対視していき、敵対するグループを作っては、仲間意識や絆意識をアピールをしてリーダーになっていきます。そのため、一部の人からとても好かれていることがあります。そして、リーダーとして自分の思い通りにやることで気持ちが楽になり、やりたいようにやることで息が吸えるようになります。ただし、不安が強く、計算高いので、どこかで行き詰まりそうなことに気づくと、苛立ちの方が強くなって、仲間内でトラブルが起きます。

 第3節.

恋びとやパートナーとの関係


自己愛病の彼らは、子どもの頃から親との真の関係を生きておらず、条件付きの愛情だったので(いつまでも変わらない安心できる関係が育っていない)、自分の気持ちを分かってもらえず、悲しんできました。恋びと関係においては、繊細に反応し、相手の外面が一番重要で、愛情というよりも、金・物・威嚇・脅し・説得で相手をコントロールします。最初のうちは、誠実で明るく、恋びとのためにたくさん尽くして、恋びとの幻想を最大限に肯定し、不平不満も聞きます。

 

しかし、次第に、矛盾した言動を取るようになり、自分の思い通りにいかなくなると、冷酷な態度を取って、恋びとを奴隷やアクセサリーのよう扱います。もともと猜疑心や搾取性、見捨てられる不安が強いので、恋びとが不平不満を言えば、離れていかないように逐一連絡を取らせて、他の友達や家族関係を遮断します。病的な自己愛が強い方ほど、不快な状況に耐えられないので、マイルールを持ち出し、どんどん締め付けを厳しくして、圧力をかけていくようになります。

 

また、恋びとが自立しようとすると、中傷や罵倒などの精神的暴力を振るい、時には、肉体的暴力を振るって、支配していきます。恋びとがうつ状態でボロボロになると捨てたり、最悪の場合は、自殺まで追い込むこともあります。恋びとの方がしんどくなって離れようとすると、拒絶されたと過剰に反応し、ストーカー化するか、次に新しいターゲットを見つけて同じことを繰り返します。結婚のような真に結びつく場面では、相手の家族が反対したりすると、敵にしか見えなくなり、怒鳴ったりして関係が続きません。 また、自己愛性パーソナリティ障害の男性は、美しく若い女性が好きなので、年が離れすぎていて、恋びとの両親への挨拶が行きにくい場合もあります。

 

自己愛性パーソナリティ障害者は、若いうちは他者をコントロールして自分が有利な構造を作り出していきますが、高齢になり肉体が衰えていくとコントロールすることが難しくなります。中年期以降は、危機を向かえ、家庭内での離婚問題や、職場の上司や部下、同僚との関係で問題を起こしていきます。また、中年期の後半辺りから、ストレスによるうつや慢性疾患を患うかもしれません。そして、病的に肥大化した誇大感(自己愛ナルシズム)と現実の生活とのギャップが大きくなればなるほど、情緒不安定が増します。

 

自己愛性パーソナリティ障害者は、離婚に踏み切られる可能性が高くなります。自己愛性パーソナリティ障害の夫は、妻に嫌気がさして離婚するか、妻に嫌気をさされて、家を出て行かれます。また、家庭内別居のようになり、ほとんど口を聞くこともなく、険悪なムードのなかで生活しているかもしれません。そして、息子や娘にも嫌われていくかもしれません。一方、献身的な妻の場合は、ダメな夫に対しても最後まで愛情を持ち続けます。一般的に、自己愛性パーソナリティ障害の夫は、表面ばかりを取り繕うだけの生き方に終始していたため、体調の悪さや暴言暴力だけが残ってしまって、周りからどんどん離れていきます。最終的には、愛のない哀れな老人になり、孤独になることが多いと言われています。

 第4節.

病的な自己愛傾向の方は


自己愛性パーソナリティ障害者は、世の中のトラウマという不条理な有り様のなかで育ってきて、神経質で猜疑心が強く、社会や人に対して否定的で、自分は正しいという誇大感があります。しかし、状況が悪くなり、追い詰められていくと、神経が繊細なために、心や身体に様々な症状が表れて、怒りや無力感の間を行き来してしまいます。子どもの頃から、極度に傷つきやすく、プライドだけで生きていて、目立ちたがり屋で、突き抜けていないと自分に自信が持てません。その自分を防衛するために、他者を操作して、攻撃性や自己中心性を身につけて、自分の容姿を磨きます。

 

ストレスにより、覚醒度が高くなるときは、共感性が欠如していて、相手に合わせることが難しく、皆の輪の中心にいないと気が済みません。また、上手くいかなくなると、相手のせいにしてストレスを発散しますが、疲労が蓄積されると、感情のコントロールが難しくなります。脅威を感じて闘争モードに入ると、自制がきかなくなって、悪魔のようなものに取り憑かれた状態になり、危険があるかどうか、敵か味方かを本能的に判断し、細かいことまでを入念に調べて、行動や性格が極端になっていきます。

 

その一方で、自己愛性パーソナリティ障害者は、ストレスが低い時とか、理想化された対象が傍にいる場面では、良い人になり、落ち着いて過ごすことが出来ます。本当の自己は、未発達な状態(不安、不全感、欠乏状態、心が育っていない、愛ー憎しみ、思いやりー罪悪感など両眼を持ちにくい)にあり、物事を損得勘定でしか見れず、快楽原則に支配されています。

 

その場その場で自分を正当化する理論があり、見せかけの完全性や合理性、規則性で自分の境界性を守りつつも、エイリアンのように誰かから奪うことを欲しており、他者の境界線を侵害して、無意識のうちに自分が有利な構造を作り出しています。そして、自分の生きている感覚や存在自体が希薄で、落ち着きがなく、自制心が弱いことから、快原則(過食、セックス依存、買い物依存、恋愛依存、薬物依存、アルコール依存、ギャンブル依存など)で生きることに人間らしさを感じています。

 第5節.

生きるというのは、不確かで予測不可能


自己心理学や自己愛の研究者である富樫公一(2016)「不確かさの精神分析」の著書から、人が生きるというのは、世界の予測不可能性、生きることの不確かさ、人間存在の有限性のなかで生きていかなければなりません。と述べています。

 

①予測不可能性:単純で短期的なことは予測できるが、複雑で長期的なことの予測はできない。

②生きることの不確かさ:確実に操作できるもの、理解できるもの、定義できるものはない。

③有限性:人が死に向かっている存在で、永遠に生き続けられない。人間存在によって唯一確かなことですが、通常直視しない。

 

トラウマを負った自己愛の病理を持つ方が、その体験を成長に変えていくには、生きることの不確かさや人間の有限性に耐えて、受け入れる力が必要です。また、今この瞬間に意識を集中して、逆境場面に対しても、落ち着いてリラックスできると心身が強くなります。さらに、自分が人生の担い手であり、責任ある主体であり、切迫した状況においても選択肢を選ぶ勇気が持てる方は成功します。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

更新:2020-06-23

論考 井上陽平

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