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複雑なトラウマ・セルフネグレクト


複雑なトラウマを負っている人は、脅かされることが繰り返されて、恐怖に怯えてきました。トラウマの影響は、脳や体に生物学的な変化をもたらし、精神的、肉体的な苦痛に変わり、現在では全身に及ぶ疾患と言われています。ここでは、複雑なトラウマを負い、うつが重症化している人の悲惨な末路について載せています。

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①親子関係

もともとの身体の弱さと、育ってきた環境に問題があることが多く、親が中心の家庭で、親に脅かされながら育ってきました。親の顔色を気にしてきた子どもは、怒られること、喜ばすことばかりを考えるようになり、親の言うことを聞くようになります。 次第に自分の感覚や気持ち、やりたいこと、夢やモチベーションが奪われて、自分が無くなるような感覚に襲われます。

②嫌悪刺激に弱い

複雑なトラウマを抱える人は、現実世界の生々しい刺激に敏感になり、環境の変化に弱く、警戒心が過剰です。自分にとって良い刺激は、自分を守るバリアになります。しかし、悪い刺激は、心臓がバクバク鳴り、筋肉が硬直し、息苦しくて、不安、焦り、驚愕反応、凍りつき反応、苦痛、恐怖になります。不快な状況に留まらなければならない場合は、落ち着かず、居ても立っても居られないイライラ、投げやりな態度、無気力に支配されていきます。

③過敏さと様々な症状

トラウマを負い、生きるか死ぬかモードで生活し、過覚醒や凍りつく人は、外の世界に対して、過剰に警戒して、注意深くなり、全方位に意識が向いたりします。自分を脅かすような、人の気配や物音、匂いなどに過敏になり、情報量が多すぎる都市型の生活が大変になります。例えば、聴覚過敏が強い人は、ご近所との関係がうまくいかなくて、隣人の出す音やノイズに耐えられず、周りが敵だらけのように感じるかもしれません。不快な状況にいて、目の前の問題を解決できないと、交感神経のスイッチが入って、落ち着かず、焦りやイライラ、居ても立っても居られない状態が続きます。と同時に、背側迷走神経も過剰に働き、拮抗し合う状態が続くと、神経は張り詰めて、体は凍りついて、原因不明の身体症状や精神疾患になります。

④慢性疾患

複雑なトラウマを抱える人は、環境や人間関係によって、自分の状態が変わり、過剰に覚醒したり、覚醒度が著しく下がったりなど、覚醒度や自律神経系に問題が出ます。脅威の対象がそばにいて、自分の身を守り続けないといけない場合、肩こり、頭痛、腹痛、喘息、発熱など身体的な不調が現れます。また、長年に渡り、脅かされ続けると、原因不明の身体疾患に罹り、慢性疼痛、線維筋痛症、慢性疲労症候群、過敏性腸症候群、顎関節症を患いやすいです。例えば、慢性的なトラウマ状態から、危機を感じて、交感神経が活性化した状態が続くと、防衛的な姿勢を取り続け、神経系が過剰に稼働し、痛みになります。また、エネルギーが尽きて、交感神経系が働かなくなると、シャットダウン状態になり、慢性疲労になっていきます。さらに、体も心も毎日しんどい状態が続くと、心疾患、肺疾患、糖尿病、頭痛、多発性硬化症、がん、脳卒中などに罹るリスクが上がります。

⑤引きこもる

複雑なトラウマがを抱える人は、特に何も問題がないような場面でも、体は過覚醒で落ち着かなくなったり、凍りついたり、崩れ落ちたりします。そして、いつ自分が脅威に曝されて、無力な状態になるかも分からないので、次の脅威に備えた人生になり、過剰に警戒して、外に出ることが大変です。そして、外に出るともの凄く疲れてしまうため、家に帰ると、エネルギーが切れて、動けなくなり、何も出来なくなります。だんだん体の調子が悪くなっていき、家の中に引きこもるようになり、親に寄生して、安心を求めます。さらに、家に引きこもって、ほぼ誰とも口を利かない日々が続き、何もしなくなり、何もしなくていい生活を望むようになります。しかし、何もしない生活が続くと、周りの皆に置いていかれて、将来への漠然とした不安や、現状への絶望感で、できない自分を責めるか、誰かのせいにします。。

⑥自己感覚の喪失

体も心もしんどくて、逃れられない苦痛が大きくなるほど、痛みは切り離されて、感覚麻痺が進みます。自分の感覚や気持ちが分からなくなると、体というものを所有できなくなり、この世界との接点が消えます。心(頭)と体の分離が進むほど、解離傾向が高まり、感情の鈍磨、思考の混乱、時間感覚の障害などが出て、自己感覚が喪失していきます。その結果、この世界の彩が失われて、自分のやりたいこと、夢やモチベーションが奪われていき、自分の方向性が見い出せなくなり、自分が自分で無くなります。

⑦動けなくなる

複雑なトラウマがあっても、好奇心に突き動かされて、一日中、熱中できる生産的な活動をしているときは、調子が良くなり、体も軽くて、見違えるほど元気になります。しかし、不快な状況を問題解決できず、八方塞りに陥ると、精神的に参って、体調が悪化します。体も心も毎日しんどくて、悪い状態が続くと、顔を洗うのも、歯を磨くのも面倒になり、一週間風呂に入らず、着替えもせず、寝たきりのような状態になります。トラウマは時間が経てば、良くなるものではなく、徐々に体力を奪い、筋力が衰え、様々な機能が低下し、社会的に孤立していきます。

⑧慢性的な不動状態

人生上の苦痛が大きくなるほど、生きている実感が無くなり、この世界に積極的に関われなくなり、ただ型通りにしか生きれなくなります。 心も身体もおかしくなり、胃のあたりや背中が痛くて、夜は眠れず、不安やうつ、慢性疼痛、慢性疲労になっていきます。 年齢を重ねていくごとに、慢性的な不動状態に陥り、体に力が入らなくて、怠くて重くて動けなくなります。生きることが苦痛で、消えたい気持ちに襲われて、人生にうんざりします。何を食べても、何を見ても何も感じなくなり、毎日が息苦しくてどんよりしています。食事を作ることがしんどくて、食べることもしなくなります。身だしなみも気にしなくなり、着替えや風呂にも入りません。歯磨きもしなくなり、虫歯が出来ても歯医者に行きません。外出が出来なくなり、ベッドから起き上がることが大変で、布団のなかで寝たきりになります。最悪の状態では、トイレに行けなくなり、その場に用を足します。家族がいる場合は、周りに迷惑をかけている自分を責めて、死にたいと無気力に泣き叫ぶかもしれません。

対応とまとめ

まとめると、子どもの頃からの複雑なトラウマの影響により、家に引きこもるようになり、生活環境や栄養状態が悪化します。体調が良くなく、手足の筋肉は崩壊し、血の気が引いて、自分の身体を動かすことも大変になります。自分の身体は、紐で吊られて、首から下の胴体がだらんとぶら下がっているような感じで、喉は絞められて、息苦しく、重度のうつになります。生きる気力を奪われてしまった人は、何をするにしてもめんどくさくなり、自分をセルフネグレクトします。

 

セルフネグレクト状態にならないように、若いうちから、トラウマケアの身体的アプローチが有効です。重度のうつやセルフネグレクトに陥っている人は、現実世界の生々しい刺激に脅かされてきて、緊張性不動(警戒・疼痛)や虚脱性不動(うつ・疲労・罪悪感、希死念慮)の状態にあります。今住んでいる環境を整えながら、不動状態の身体を可動化させて動的状態(軽い、快適)にします。 複雑なトラウマがある人ほど、身体が敵になっているので、身体の反応や変化を利用して、身体の持つポテンシャルを引き出していきます。

トラウマケア専門こころのえ相談室

公開:2021-1-23

論考 井上陽平