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ヤングケアラー問題の実態と支援の必要性


ヤングケアラーとは、親が病気や障害を抱えているために、日常生活に支障をきたしている家族を持つ子どもが、大人が担うべき家事や家族の世話を日常的に行う状況を指します。親が身体的に動けなかったり、精神的に未熟であったりするため、子どもが家族のケアを担わざるを得ないのです。このような環境で育つ子どもたちは、本来の子どもらしい時間を奪われたまま大人になってしまうため、アダルトチルドレンに近い状態に陥ることがよくあります。ヤングケアラーや毒親育ちのケースでは、子どもは早い段階で家族の世話や介護を担うことになり、その結果、子どもらしい遊びや成長の機会が犠牲にされてしまいます。

 

ヤングケアラーになる子どもには、いくつかの要因が関与していることが多いです。例えば、過去にトラウマを抱えていたり、人一倍敏感な特性を持っていることが多く、自分が家族のために頑張らなければ、家族が崩壊してしまうのではないかと強い不安を感じます。その結果、子どもは自ら進んで家事を手伝い、幼い兄弟の世話をし、自覚のないままに家族全体を支える役割を果たすことになります。

 

このような環境で育つ子どもたちは、過剰な責任感とプレッシャーの中で生活するため、心身に深い影響を受けることが多いです。彼らが感じる負担や孤独感は、成長後の人間関係や自己認識にまで影響を及ぼし、将来的にさまざまな心理的問題を引き起こす可能性があります。ヤングケアラーの問題に対しては、社会全体で理解を深め、適切なサポートを提供することが必要です。

 

1. ヤングケアラーが抱える現実:精神疾患を持つ親の元で育つ子

 

ヤングケアラーになる子どもたちは、しばしば精神疾患を患う親のもとで育ちます。このような親は、まともに働くことができず、経済的に厳しい状況に直面していることが多いです。特に、母子家庭(シングルマザー)の場合、母親が精神疾患を抱えていると、子どもはその影響を直接受けることになります。情緒不安定な母親の機嫌を損ねないよう、子どもは常に気を遣い、慎重に行動する生活を強いられます。しかし、母親は些細なことにも過敏に反応し、ひどく不快な気持ちになって子どもに怒鳴りつけたり、逆に落ち込んで元気を失ったりします。さらに、状態が悪化すると、母親は何もできなくなり、寝たきりになることさえあります。

 

幼少期からこのような環境で育った子どもたちは、母親の期待に応えようと「良い子」でいようと努めますが、その努力が報われることは少なく、やがて学校や社会での生活において綻びが出てくることが多いです。母子家庭での生活が経済的に困窮しているため、子どもは大学進学を諦めざるを得ない状況に追い込まれることもあります。あるいは、大学の学費や生活費を稼ぐために、低賃金のアルバイトを朝から晩まで掛け持ちし、生活費に追われる日々を送ることになります。このような過酷な状況では、精神的にも肉体的にも余裕がなくなり、子どもは深い絶望感に苛まれることがあります。

 

ヤングケアラーとして育つ子どもたちは、自分の夢や希望を諦め、家族のために自分を犠牲にしがちです。しかし、その結果として心身の健康を損なうリスクも高まり、将来的にはさらに厳しい状況に直面することになります。彼らの現実に対する理解と支援が、社会全体で求められています。

 

2. 親を優先する子どもたち:ヤングケアラーの犠牲と苦悩

 

ヤングケアラーになる子どもたちは、親から十分な愛情を受けられなかったために、自分よりも親を優先するようになります。周囲からは「偉いね」「いい子だね」と褒められることが多い優等生タイプが多いですが、その裏には深い葛藤が隠されています。これらの子どもたちは、異常な育てられ方をされることが少なくなく、親から無理強いされて嫌なことをさせられたり、馬鹿にされたり、からかわれたりといった嫌な感情を向けられることが多いのです。

 

特に母親のヒステリーに振り回される生活の中で、子どもたちは母親の感情をどうすれば抑えられるかを常に考え、細心の注意を払って行動するようになります。母親が怒り出さないように、子どもは周囲の状況に目をこらし、耳を澄ませて、常に緊張状態で過ごしています。このような生活が続くと、子どもたちは自分の感情を押し殺し、親の要求に応えようと必死に努力するようになります。

 

しかし、親を優先することが常態化すると、子どもは自分自身の感情や欲望を抑圧し、自己を見失うことになります。長い間、親のために尽くし続けるうちに、自分の本当の気持ちや願いがわからなくなり、心に深い傷を抱えることになります。ヤングケアラーとして育つ子どもたちの現実は、決して「偉い」や「いい子」だけでは語り尽くせない複雑なものです。彼らの内なる苦しみや葛藤に寄り添い、適切な支援を提供することが求められています。

 

3. 家族の期待に応える子どもの葛藤:燃え尽きるまでの道のり

 

子どもは、親からの過干渉を受けながら、家庭の中で安心感を得ることができず、親の期待に応えるために自分を演じてきました。彼らは家族に対して理想的な幻想を抱きながら、自分を無理やり納得させて、親に愛されるために自分の楽しみを犠牲にしてきました。勉強や家事に没頭し、愚痴を聞く役割を引き受けるなど、親の要求に応じて努力を重ねる中で、次第に自分の生活や将来を犠牲にするしかない状況に追い込まれていきます。こうして、家族のために自己犠牲が当たり前となり、自分の感情を抑え込むことが日常化してしまうのです。

 

家族を支えるために奔走する中で、次第に心身に不調をきたし、学校生活や人間関係にも悪影響が現れるようになります。そして、ついには心も身体も限界を迎え、燃え尽きてしまう日が訪れます。

 

身体を壊し、自分が親からどれほど酷い扱いを受けてきたかを自覚したとき、その現実を受け入れることで、心が崩れていき、心身ともに深刻なダメージを受けることになります。親から逃れるために結婚を選んだとしても、結婚生活がうまくいかない場合、再び問題が浮上することがあります。子どもの頃から過度な負荷を抱え続けた結果、身体中が痛んだり、怠さで動けなくなったりすることもあり、様々なことを諦めざるを得ない人生が待っているかもしれません。

 

さらに、精神疾患(うつ病、双極性障害、パニック障害、強迫性障害、摂食障害、解離性障害)、パーソナリティ障害、副腎疲労や胃腸の不調などの原因不明の身体症状を抱えることになり、社会での適応がますます難しくなります。こうした状態に陥る前に、子どもが適切なサポートを受け、自分自身の感情や健康を大切にする方法を学ぶことが重要です。

 

4. 親と子どもの負担を軽減するために:ヤングケアラー支援の重要性

 

ヤングケアラーの問題は、単に家庭内の問題にとどまらず、社会全体が抱える深刻な課題と言えるかもしれません。母親が子どもを虐待したり、ネグレクトしてしまう背景には、母親自身が育児と家事をこなしながら、パートやフルタイムで働くという過酷な状況に置かれていることが大きく影響しています。母親自身が社会の負担を一身に背負っているため、子どもに適切なケアを提供する余裕を持てないという現実があるのです。

 

また、障害や依存症を抱えた母親や家族への支援が十分に行き届いていないことも、ヤングケアラー問題を深刻化させる一因となっています。国や地域社会が、こうした家族に対する適切な支援を怠った結果、子どもたちが家族のケアを担わざるを得ない状況が生まれているのです。

 

ヤングケアラーを支援するためには、まず子どもの気持ちに寄り添い、心が休まる時間や希望を持てるようなサポートが必要です。彼らが抱える責任感や負担を少しでも軽減し、安心して成長できる環境を提供することが求められます。また、社会全体で母親や家族への支援を強化し、家庭内で子どもが過剰な負担を抱え込まないようにすることが、根本的な解決への道となるでしょう。ヤングケアラーの問題を解決するためには、社会全体が協力して取り組む必要があります。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

公開:2022-06-15

論考 井上陽平

 

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