> > 加害者と被害者の特徴

加害者と被害者の特徴

犯罪加害者の傾向


犯罪を犯す人の多くは、もともと社会の不条理の犠牲者であり、何か恐ろしい被害体験に巻き込まれていて、死に瀕したときに、自分を攻撃してきた人物と同一化した部分を持ちます。そして、日常生活をあたかも正常かのように過ごしていますが、自分の体に安心感がなく、体の中に攻撃者と同一化した部分を閉じ込めています。環境側の嫌悪刺激を受けると、攻撃者と同一化した部分が動いて、内部を侵食しはじめますが、嵐が過ぎ去るまで待つしかありません。犯罪を犯す人は、もともとの気質的要因が大きいと言われますが、かなりの早い段階での不条理なトラウマ(逆境体験)のせいで、正常な感覚が麻痺させられ、情動脳と原始的な神経の働きが強くなり、リスクを考えない無計画さから、軽率な行動を取り、快楽主義的で、追いつめられると自暴自棄な行動を取ります。

 

幼少期の頃から、問題行動を起こす子どもは、トラウマの影響により、環境のストレスに弱く、すぐ足がすくみ、頭がフリーズして、交感神経系に乗っ取られ、感情や行動をコントロールが難しい状態にあります。そして、自分の意識が飛んでいるときに解離して問題行動を起こすか、居ても立っても居られないなかで、衝動的な行動を取ります。彼らは、気質やトラウマの影響でそうなっているのですが、周りの人は理解できないため、彼らの主張は考慮されません。親や先生、クラスメイトから問題児扱いされて、いつも不公平に歪められ、強者により裁かれてきました。

 

家庭や学校社会の中で精神的に追い詰められるたびに、反抗するしかありませんでした。この世界が悪意で満たされているように感じて、身動きが取れなくなると、交感神経に乗っ取られて、自暴自棄になるしかなく、複雑なトラウマが身体に刻み込まれます。そして、周りが邪魔をしてくるから、やり返そうとする部分が段々と大きくなり、問題児扱いされます。やがて人間関係をうまくこなせなくなり、不当に罰せられ、人間の尊厳を剥奪され、誰からも愛されず、周りから見放されることで、闇の中で生きるようになります。自分自身や生命を粗末にして、被害感情や怨念、復讐心の塊になります。

 

普通の人は、合理的に生きており、法を犯さないようにとか、自分が加害者にならないようにしています。しかし、法を犯す人は、自分の行動を止めることができず、破壊的なことをして、周りを混乱させます。また、楽しくなると、社会の倫理や規範を平然と乗り越えていき、他人を蔑ろにします。彼らは、なぜか自滅的な行動を再現してしまい、普通の人ならちょっとしない犯罪領域まで平気でしてしまいます。レイプなどの性犯罪者は常習犯の人が多くて、同じことを繰り返します。彼らは犯罪を犯すときは、合理性みたいなのが吹っ飛んでいて、自分の欲を満たしたいという感覚になり、動物的な直観で、人を嗅ぎ分けてターゲットを見極めます。犯罪者は、孤独やストレスを溜め込んで、精神的に追い込まれていくと、過去のトラウマを負った時の身体的状態になり、衝動性を抑えられずに、自分より弱い相手を狙います。

被害者になりやすい人


きつい言い方になりますが、被害者は、声が弱弱しく、嫌なことを嫌と言えない性格で、自分は無力という雰囲気を出しているのが原因で加害者を引きつけて不幸の連鎖を起こします。トラウマに遭った人がそれ以降も頻繁に被害に遭って、不幸なスパイラルに陥る理由の一つは、トラウマを負うほどの被害に遭った人は、その経験に飲み込まれて、克服に向かって前進するのではなく、被害の事ばかりを考えて堂々巡りになります。体は恐怖にロックされて、グルグルと同じことを考えて、姿勢、目線、声、表情に恐怖心が現れるようになります。過去の被害体験にとらわれて、ズタボロになり、恐怖で動けなくなって、フラッシュバックが起きます。被害体験が体に沁みつき、無感覚になり、無気力な状態から抜け出せず、実際に脅威に曝されたときでも適切な反応ができないため、何度も被害を受けやすくなります。

 

また、被害者は、自分を脅かしてくる対象から、断りづらい状況を作り出されて、強制的に同調したり、自分の方から加害者を探そうと思って近づくことがあります。被害者の多くは、自分を脅かしてくる対象を見つけると、肩がワナワナ震えて、その恐怖から回避行動を取るか、接近する行動の二択になります。脅威の対象がいつ自分を攻撃してくるか分からない場合には、常に警戒しながら、自分がどう動くべきかを頭の中で考えます。脅威の対象にあえて近づく場合は、このまま生き残れるかどうかという切迫した状況が、生きた心地になり、アドレナリンに溢れて、気分が高揚し、身軽になります。そして、頭が回転し、機動力が高まり、心身の機能が高まっていきますが、自分を脅かしてくる対象から攻撃を受けると、恐怖で体がこわばり、外傷を再演させるかもしれません。

 

また、自分を脅かしてくる人物を客観的に分析しようとして、近づいてしまい、再び嫌なことをされて、被害に遭いやすくなります。複雑にトラウマを負っている人の場合は、危機的な場面で、戦うか逃げるかよりも、恐怖で体が凍りついてしまい、手足の感覚が麻痺し、動けなくなるとか、声が出ないとかで、自分の身を守るための行動(払いのける、逃げる、叫ぶなど)が取れなくなります。そして、その場で恐怖に凍りついて、麻痺し、加害者の操り人形になって、ただ被害を受けるだけになります。世間一般の人は、攻撃を受けると抵抗しますが、複雑にトラウマを負っている人は、攻撃に曝されても、反応が鈍かったり、動けなかったりして、やり返すことが困難なため、いいなりになるしかなくて、酷い体験の被害者になりやすいです。そして、被害者は、自分で自分を守れないことを責めたり、加害者への恐怖心が消えなかったり、自分の人生を台無しにされたことを悔やみます。

 

加害者が犯罪を犯すときは、神経が尖り、普段の何倍以上も敏感になり、匂いを嗅ぎ分けますが、被害者のそのとらわれが加害者をおびき寄せることになります。加害者はその人の恐怖を嗅ぎ分けて、脅威に曝されたときでも反応できない個体(すぐフリーズし、言い返したり、反撃したりする力が弱く、動かないでいるほうが楽だと思っている個体)を見抜いてターゲットを選びます。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平

 

▶ネット予約 ▶電話カウンセリング ▶お問い合わせ