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心と体に働きかける瞑想


日常生活の中で、瞑想やヨガ、マインドフルネス、ヒーリング音楽を取り入れることは、ストレスマネージメントとリラクゼーションに役立ち、ビジネスの効率や生産性を高める効果があります。グローバル企業では瞑想を積極的に取り入れており、リラックスすることが奨励されています。瞑想やヨガ、マインドフルネス、ヒーリング音楽は健康な人に対して、優れた効果を発揮しますが、トラウマ治療にも有効な手段の一つと言われています。

 

過酷な環境で育ち、トラウマがある人は、体の中にトラウマという時限爆弾を抱えており、脳は防衛的な働きをします。彼らは、些細なことでも交感神経が過剰に働き、焦りや不安、動揺しやすい状態にあります。このような状態から、日常生活の様々な変化に対応していくために、常に体が緊張するようになり、気づいたら体に力が入っています。脅かされるたびに、体が凍りつき、感覚が麻痺していくようになると、無感情、意欲低下、考えがまとまらない、頭痛、腹痛など心身に症状が現れるようになります。長期に渡って、体が縮こまり、酸素不足や血の流れが悪い状態が続くと、自律神経系やホルモンのバランスが崩れて、原因不明な身体症状に翻弄されます。

 

トラウマにまみれた体を正常に戻して、脳の緊急事態を解くには、瞑想やヨガ、ダンス、ストレッチ、筋トレ、演劇、楽しみが溢れるように体を動かしていき、新しい体の経験を生み出していきましょう。そして、体が感じていることを恐れずにただ感じていくと、神経の繋がりを緩やかに変えていく効果があり、落ち着きます。そして、静かに自分の体を見ていく癖がつくと、自制心が向上し、リラックスすることを学べます。その結果、人間の高次な神経を常に働かせて、他者との交流を楽しめるように自己調整するスキルを手にすることができます。

 

日常生活において、自分自身でトラウマをケアするには、ヒーリング音楽やお香を焚き、リクライニングチェアに全身の力を預けて、頭と顔、首、肩、胸、背中を楽にしましょう。そのまま楽な状態で過ごして、深呼吸をしながら、自分の内側に意識を向ける習慣をつけて、体をのんびりゆっくりさせるのが良いでしょう。

 

また、ほど良い温かさで、いつでも力を入れることができる手足を取り戻すために、肩のエクササイズを行います。肩に力を入れて緊張を強めた後に、肩や腕の筋肉、肘の関節を自由に動かしたいように動かして、柔らかくなった肩や本来の手を取り戻し、指先にまで意識を向けていきます。また、股関節のエクササイズでは、足の筋肉や膝の関節を動かして、柔らかくなった股関節や本来の足を取り戻し、指先にまで意識を向けていきます。次に、本来の手が戻れば、自分の頭や顔、胴体をマッサージして、頭の天辺から足先まで一体感のある感覚を感じ、心地よい体を作りましょう。

 

その他にも、ヒーリング音楽やお香を焚きながら、脳や顔のパーツ、表情筋に意識を向ける瞑想を行います。それらの部分に注意を向けると、今まで浮かんでこなかった体の痛みや疲労、痺れに気づくことがあります。その後、不快感に注意を向けていくと、様々な変化を見せて、最終的に温かくなります。

 

以上のことから、トラウマがある人は、慢性的にストレスを抱え、無意識のうちに筋肉が過緊張になっています。意識的に筋肉に力を入れて、そのあと緩めていくことを繰り返すことで、体をリラックスしていく方向に持っていくことが可能です。瞑想していると、体のほうが勝手に力が入ったり緊張したりするので、そのまま体を自由にさせていき、自然な状態に戻せていくことがいいです。急がないで、段階を追って少しずつ取り組んでいき、体の過緊張や脱力でない状態を作っていきましょう。

 

瞑想する時間は、1日1分でも良いので、毎日継続していきましょう。瞑想の合計時間が3時間、5時間、10時間と増えていくうちに、様々な効果が現れる可能性があります。また、瞑想するにあたって、体を見ていくべきだとか、しなければならないからするのではなく、自分の体と仲良くなって、楽にしていくためにしましょう。瞑想の注意点としては、重度のトラウマの人ほど、日常的に過覚醒や凍りつき、死んだふりをしているために、自分の体に着目すると、落ち着かなくなり、恐怖が出て、様々な生理的反応(防衛反応)が結びつきます。そのため、トラウマがある人は、今を感じることに抵抗があり、自分の体に向き合うことが怖くなるかもしれません。しかし、体に違和感を感じたときこそ、その不快感を感じないようにするのを目指すのではなく、身体の感覚を強く感じたほうがいいです。体の感覚を失わないように、身体の感覚が戻ってきたのだと思って受け入れ、痛みや違和感もありがたいものとして受け取りましょう。体への恐怖や不快感が強い場合は、専門家のもとで少しずつ行うようにしてください。

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トラウマに焦点づけた瞑想


トラウマに焦点を合わせた瞑想では、ユング派の凍漬地獄の瞑想やソマティックエクスペリエンスの不動状態の出入りなどの技法を利用します。この瞑想は、修行僧が行う正座の修行に似ています。修行僧のように、和室で、正座を続けると、足の感覚が無くなり、痺れてきます。そして、自分の体重の重たさで、正座を維持するのが苦痛になりますが、頑張り続けます。もうそろそろ良いかなと思うところで、正座を崩すときに、足からピリピリとした感覚が強くなり、立って動き始めると、本来の自分の足の感覚が戻ってきます。トラウマに焦点付けた瞑想でも、自分の体から切り離された人が、自分の体に負荷をかけて、その体の状態と向き合うことで、本来の自分の体の感覚を取り戻します。

 

トラウマ治療の瞑想では、自分を静止状態にして、そのときに、体の内側から湧く感覚や衝動を見ていきます。体を動かしたくなる衝動やいつもしてしまう癖や仕草を見ていきます。なぜ静止状態からそのような姿勢を取るのか考えて、自分の感覚やイメージ、感情、行動、思考の流れを見て、自己認識していきます。自分の防衛パターンが分かったら、命の危険を感じたときの背中を丸めたポーズをとり、筋肉を収縮させて、克服したい恐怖やトラウマと向き合い、自発的に不動状態に入ります。そこで、絶望や無力感を味わい、最終的に自分を無力にした対象を打ち倒すか、安全な場所に逃げるか、無力な自分を徹底的に感じるかの瞑想を行います。自分の体の感覚レベルに働きかけることで、居心地よい状態から、凍りついた段階、絶望の段階、覚醒の段階、天国の段階と様々な状態を体験することができます。

 

このように様々な瞑想を試すことで、自分の体の感覚を取り戻し、日常でも自分の気持ちや体の反応を意識して動けるようになります。瞑想を自分で出来るようになると、落ち着いて物事を考えるようになり、常に心地よい体の状態を作れるようになります。普段から、体に意識を向けることが当たり前になると、内側から沸き起こる自然な衝動や欲求に気づいたり、食欲や意欲が湧いてくるようになります。瞑想を熟達すれば、睡眠の質は改善されて、疲れにくくなり、姿勢も良くなって、今と昔の自分が違ってきます。

身体の状態は


体の状態を見ていくなかで、全身の筋肉、皮膚感覚、内臓感覚が重要になります。目をつぶって自分の体をボディスキャンして、自分のボディイメージを作り上げます。  
 

◎全身は

硬直→リラックス

冷たい→温かい

バラバラ感→一体感

縮こまる→広がる

自分の体でない→自分の体である

 

◎手と足は

力が入らない→力が入る

冷たい、痺れ→温かい

重力がない→重力を感じる

固まってる→リラックス

感覚がない→感覚がある

すくむ→のびる

 

◎お腹、こつばんは

冷たい→温かい

固まってる→柔らかい

痛い→痛みがない

 

◎背中は、

丸まっている→伸びる

こわばる→温かい

痛い→痛みがない

 

◎胸、みぞおちは

縮まってる→広がってる

胸が痛い→胸に痛みがない

呼吸が浅い→呼吸が深い

動悸が激しい→心臓が穏やか

肺が固い→肺が動く

 

◎肩、首は

こっている→柔らかい

肩が上がる→肩が下がる

首が痛い→首に痛みがない

喉がつまる→喉の通りが良い

 

◎顔、頭は

頭が重い→頭がスッキリ

頭が浮いている→頭と体が繋がる

みけんにしわがよってる→緩んでいる

目に力が入る→目が緩んでいる

顎に力が入る→顎が緩んでいる

奥歯を噛みしめている→噛みしめていない

 

トラウマのパニックやフラッシュバック、悪夢、うつ、動けない、自責、自傷、希死念慮などの症状が出るときは、体の状態が悪く、頭と体の神経ネットワークが興奮しているか、遮断されており、胸が苦しく、手足の力が入りづらいかもしれません。トラウマという恐怖の衝撃を受けると、体は縮んで、凍りつきますが、その後に絶望や無力感があると、呼吸は止まりそうになり、肉体は萎んで虚脱します。手足はすごく冷たくなり、肩が内に入って首が前のめりの姿勢になります。

 

トラウマ治療では、絶望や無力感という負のエネルギーを溜め込んだ状態を自発的に作ります。そして、それを解放することで、すぅーと体から負のエネルギーを吐き出され、全身が広がり、リラックスした状態になります。リラックスした状態になると、過覚醒で1分間の呼吸が20回以上の人は、15回程度に落ち着いて、浅く早い呼吸が深い呼吸に変わります。低覚醒で1分間の呼吸が10回以下の人は、呼吸数が増えていきます。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室 

論考 井上陽平