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苦悩や被害経験を語ることの難しさ


トラウマを語ることは難しいことです。今まで辛かったことを話しても、それは現実に起こったことなの?と懐疑的に捉えられることがあります。また、被害体験を語っても、あなたに落ち度があったのでは?と被害者なのに責められることがあります。真剣に話しているのに、話半分で聞かれたり、分かってもらえないことが多くあります。次第に、相手の反応を見るようになり、理解してもらうことをあきらめていきます。

 

また、家庭における親子関係で悩んでいる人は、友人や同僚などと話を楽しむ場において、自身の親の話や家庭での話をすることを不快に思って、それらの話をすることを避けるようになるかもしれません。レイプ被害に遭った女性が、友人などとの会話の中で、これまで自身が経験した異性との恋愛話を楽しむことができなくなって、そのような場にいることすらも苦痛になってくるということもあるかもしれません。

 

ここでは、なぜトラウマを語るのが難しいのかを見ていきたいと思います。トラウマを語るということは、その経験を言葉に置き換えることと言えます。トラウマの経験は、予期しないとっさに起きた出来事である場合も多く、実際は自分の中で処理できておらず、複雑な感情を抱えたまま、その経験がどのようなものだったのかということを自分自身で理解しきれていない場合が多いです。

 

トラウマの経験について、色々なことを処理できていないのに、トラウマを語るという行為は、自分自身がそれを理解できていないのに、それを他者に言語を通じて語って、伝えなくてはいけないということを意味しています。従って、トラウマという現実のありのままを直接伝えていない可能性もあって、言語化する過程において、それを物語化して話している可能性があります。そこには、トラウマの経験そのものや、トラウマの痛みなどの経験を言語では伝えきれないものを無理やり言語に置き換えて、語るという難しさを孕んでいます。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室 

論考 井上陽平

  

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