空想世界への没入傾向

▶解離と空想世界への没入傾向

 

複雑なトラウマがある人や病気がちな人、神経発達に問題がある人は、現実の絶え間ない変化についていくのが大変で、苦しくなります。体に痛みがあり、苦痛の度合いが強いほど、脳は過剰に警戒し、脅威を遠ざけようとする防衛が働き、常に高いパフォーマンスを発揮しようとします。このような特性を持つ子どもが、家庭や学校のなかで、自分より強くて、自分を傷つけてくる人物がいると、その人物に合わせていこうとする部分と、その人物のことを苦痛に感じて、嫌だと思っている部分に分かれます。そして、自分を傷つけてくる人物が怖くて、身動きが取れなくなる状況下では、その行為を受け入れていくしかなくなり、トラウマの症状が複雑化します。

 

自分を苦しめてくる人物(虐待する親、モラハラ夫または妻、いじめ加害者)に対して、内心は嫌と思いながら、怒りを溜めていても、言いなりになるか、合わせていくしかなくて、自分の心や身体、思考が固まるか、捻じれていくようになります。自分を捩じりながらも、日常生活を正常にこなしますが、自分の本心を聞くと、その人物のことが嫌いで、近づいてきてほしくなくて、気配を気にするあまりに、何かに縛り付けられているように感じて、どこにも逃げる場所がないように感じます。自分の逃げる場所がなく、ただ耐えるしかない状況下では、身体がフリーズして、現実感や身体感覚が切り離されて、自分の唯一の安全な場所が、頭の中の夢や空想の世界になります。そして、嫌なことがあるたびに、身体が縮んで小さくなり、今を感じなくさせて、痛みの伴うものを切り離し、自分の頭の中で考えることに囚われるか、空想して自分を楽にします。

 

解離した空想世界とは、一般の人が早朝に見る夢の世界に似ています。そこは目に見えないものが見えてくる世界で、現実世界とは違って、大きな意味で何もない世界です。想像力豊かな子どもは、そこで想像上の人物を創り上げて、その人と喋ります。その想像上の人物は、自分の理想の投影であり、その人に守ってもらって慕います。彼らは、想像上の人物に可愛がられて、愛されて、この世に存在しない他者を慕うことで幸せを感じます。自分の空想世界に没入していくことで、自分の心でこの現実世界を感じることから離れていきます。

 

空想世界に没入する人は、痛みのトラウマを抱えながら、周りに気を使いながら生きてきましたが、小さい時から、自分の居場所がなく、いつもひとりぼっちで、寂しい想いをしていました。心が苦しい体から離れると、フワフワ浮いて、外の世界が見えにくくなり、まるで夢の中で生きているように感じたり、空想世界に入り浸り、心地良さを感じてきました。普段から、ぼーっとしていて、自分の体を切り離して、本や音楽、絵の世界、魔法のある世界、頭の中の空想世界に入り込んで、その世界に没頭します。

 

▶空想世界の暗黒面

 

複雑なトラウマがある人は、神経が張りつめて、身体が凍りついており、苦手な場面では、捻じれていくような感覚に陥り、過去と現在とが折り重なり、体ごと別の世界に移されたりします。自分の体を現実に残して現実とは異なるあちら側の世界に行きます。そして、自分は現実だと思っていたことが実は夢の世界の出来事で、夢と現実の区別が分からなくなります。

 

空想世界に没入する人は、痛みを感じなくさせて、頭の中の世界に生きるために、人間の形(ボディイメージ)が消えて、現実感が無くなり、人間らしさが消えていきます。外を歩いていても別世界にいるような感覚で、人と話しても、遠くで人の声を聞いている感覚になります。彼らは、解離傾向が高く、自分の身体はあるけど、現実に即した生き方が出来なくて、時間の感覚が分からなくなり、時間がいつの間にか経っていたという経験をしています。空想に没入する人は、ストレスへの耐性が低く、今を感じることが難しい状態にあり、頭の中で生きるだけになるので、結局、時間を無駄にしていくことになり、何十年も経った後に後悔します。

 

神経が繊細すぎると、嫌なことがあるたびに、自分の身体から離れて、空想世界に行くようになり、その空想世界に行っている間に、記憶を無くしてしまいます。そのため、嫌なことがあると、瞬時に忘れることができるので、現実場面で自分がどんなことをしているのか分かっていません。場合によっては、人に迷惑をかけているかもしれず、人間関係のトラブルをよく起こします。他者からは、表情や仕草、話し方がコロコロ変わるように見え、急に怒り出したと思ったら、すぐに機嫌良くなることもあるため、呆気に取られたり、扱いづらいかもしれません。

 

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