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線維線維筋痛症・慢性疲労症候群


 第1節.

線維筋痛症


線維筋痛症と慢性疲労症候群という病気は、一般的な検査では異常が見つからなくて、発見や治療が遅れて重症化することがあります。この病気は、生物学的な脆弱さに加えて、トラウマから発生した症状が複雑化し、体質に問題がある人に見られます。どこかで痛ましいトラウマを負うことにより、弱い立場に置かれた人が、長期に渡って、生活全般のストレスと緊張の強い状態が続くと、身体が過剰に警戒して、とても辛い毎日のなかで、不満や怒り、苦痛に耐えていくことになります。トラウマがあり、嫌なことを目の前にしても、戦うでもなく、逃げるでもなく、身体の自然な反応と逆の行動を取り続けると、筋肉が硬直していき、戦うか逃げるかの莫大なエネルギーを滞らせたまま、凍りつきます。脅威に備えて、痛みに凍りつくトラウマを負っている人は、急なことや想定外の出来事が起きると、敏感に反応して、パニックや過呼吸、疼痛、驚愕反応が起きて、一瞬で身体が固まってまともに動けなくなります。そして、嫌悪すること、不快な状況に対して、神経が繊細に反応するため、ネガティブなことが起きる度に、過去の痛ましいトラウマを受けたときの身体に戻ります。人によっては、心臓にナイフが刺さったかのような痛みを発するため、全身で踏ん張ろうとして、首や肩、目、顎、背中、お腹、手足などに力が入ります。そのため、ナイフが身体に刺さっているような痛みがある人は、その場が最悪な方に行かないように気を張り、再び苦痛やパニック、フラッシュバックを引き起こされないように、全身の神経を研ぎ澄ませています。ここまでのことをまとめると、過酷な環境の中にいるのに、逃げ場が無く、脅かされ続けると、体が固まってまともに動けなくなります。そして、首や肩、目、顎、背中、お腹、手足は、ガチガチに凍りつき、神経が痛む線維筋痛症になる可能性があります。

 第2節.

慢性疲労症候群


人は、脅かされる状況にいると、交感神経の働きが過剰になり、過覚醒になりますが、その状況を問題解決できない場合には、筋肉は硬直したまま、神経を締めつけるために痛みの身体になります。また、脅威がそばにいる生活が続くと、その気配や表情、態度、足音、物音、匂い、光、振動を敏感に感じ、過覚醒状態が続き、人は眠れなくなります。脅かされる状況に留まり、過覚醒症状や不眠が続くことで、自律神経系が調整不全に陥り、原因不明の体調不良に悩まされます。さらに、辛い状況が続くと、内臓や筋肉がズタズタになり、脳は常に緊急事態かのように捉えて、複雑な情報処理を行いますが、危険とはいえない場面でも、慢性的に誤作動を起こして、脳や脊髄、皮膚とかに炎症を起こします。このような身体的な苦痛や睡眠不足、過剰警戒、体調不良を抱えながらも、家族や社会の要求に応えなければならず、様々な役割をこなしていくうちに、身体の感覚や感情が麻痺します。心は、苦痛や不快な感情を感じる身体から離れていき、地に足がつかない状態になります。心と身体が分離している人は、酷い状況にいても、それなりに適応することが可能になりますが、身体へのダメージが蓄積されていき、正常に回復することができなくなります。心は、ダメージを負った身体から離れていくと、自分の身体感覚を掴めなくなり、手足をうまく使いこなせず、鉛のように重たい身体を支えることが出来なくなります。そして、苦痛や体調不良、不眠などにより、うつ状態を続けながらも、毎日だましだましで生きていくと、家庭や学校、職業生活が困難になり、エネルギーが切れてしまって、筋肉が伸び切ります。生活全般に疲れてしまって、筋肉が極度に弛緩してしまうと、体を動かすことが大変になり、半分眠ったような状態に陥って、慢性疲労症候群になる可能性があります。慢性疲労症候群では、患者の約3割は寝たきりかそれに近い状態で介助が必要です。子どもの場合は、学校に登校できなくなり、学習面でのサポートが必要です。線維筋痛症では、ストレスが痛みとして表れ、寝たきりで動けなくなることがあります。どちらの病気も深刻さを理解されず苦しんでいる人がいます。

 第3節.

慢性的な凍りつきや死んだふり


人が慢性疼痛や慢性疲労を起こすのは、潜在的な脅威を感じて、凍りつきや死んだふり、虚脱状態が続き、身体に相当の負荷がかかっているからです。慢性的な凍りつきでは、警戒心が過剰で、身体の筋肉の緊張が抜けないまま、闘争・逃走反応のエネルギーが滞ります。さまざまな外側の刺激に対して、身体や頭がすごく反応して、心身の不具合が起こりやすい状態です。生活全般が苦しくなると、身体の生理的反応(ピリピリ、痺れ、不快感、痛み、重さ、怠さ、動悸、震え、痙攣、熱、冷え、血の気が引くなど)が起こりますが、その反応が怖くて、外界の刺激からその反応がもたらされたと思い込むと、嫌悪刺激が段々と増えていき、自分を苦しめる悪循環になります。嫌悪刺激に対して、身体が繊細に反応し、より警戒心が高まり、硬直や凍りつき、死んだふり、虚脱状態が無意識下で持続されるため、慢性疾患になります。また、あまりにしんどい毎日の繰り返しで、日常生活の疲労が強くなると、免疫力が下がり、リンパ腺の腫れ、喉の腫れ、粘膜の腫れ、唇が切れる、咳き込む、頭痛、腰痛、関節痛、蕁麻疹、唾が出ない、筋肉低下が起きます。身体も頭の働きも鈍くて、生きるエネルギーが枯渇していくと、思考力・集中力が低下して、イメージすることも難しくなり、うまく言葉にできなくなります。そして、無表情、無気力、無口、物忘れが多くなります。一般的に、慢性疲労症候群と線維筋痛症の合併率が高く、そこに化学物質過敏症やシックハウス症候群、電磁波過敏症、過敏性腸症候群、顎関節症、間質性膀胱炎、片頭痛なども重なると、過敏性の高さから、生活空間の全体が極度のストレスになり、周りの人の手伝いが必要になります。まともに都市型の生活が出来なくなり、精神的にも肉体的にも限界に達して、家族の協力がない場合は、とても苦しい状況に追い込まれます。

 

日常生活では、身体が過緊張で凍りつくか、手足に力が入らずに極度に脱力しています。頭の中は、脳が危険を察知するために、大量の情報に溢れて、嫌なことを忘れられなくなり、強迫観念のような考えがグルグル回ります。身体は痛いか、重くて怠い状態で、脳は休まらずに、不眠状態が続くと、頭も働くなり、疲労、倦怠感で限界に達します。そして、心身の限界を超えているのに、自分の身体に鞭を打っていると、半分眠ったような解離状態で生きるようになり、集中力は途切れ、食べることや料理すること、お風呂に入ること、洗濯することなど家事が出来なくなります。病院に通院するのもきつく、周囲が無理解だと、心も体もボロボロになり、外に出ることがやっとの人もいます。慢性疲労症候群は、診療体制があまりないような状態です。線維筋痛症は、家族や職場など、周囲から痛みが理解されない病気です。そのため、怠けているとか演技とか言われてしまい、周囲の人の無理解により、孤立していくことが多いと言われています。

 第4節.

慢性疲労症候群と線維筋痛症に原因


虐待による幼い頃に降り積もった痛みとか、性暴力被害の痛みとか、医療処置の失敗による痛ましい痛みは、身体に埋め込まれて、線維筋痛症や慢性疲労症候群に至ることがあります。身体の中の痛みは生き延びようとしていて、他の地球上の存在のものと同じようにその人の神経に滞っています。そのままにしておくと痛みは成長していき、本来の穏やかな自分に取って代わって、痛みそのものが自分になって寄生されます。別の言い方では、身体の痛みに苦しむほど、眠れなくて、疲労していき、痛みがさらに身体の筋肉を締めつけてくるので、より痛みや疲労が増していくというネガティブな結果になり、その悪循環から抜け出せなくなります。そして、身体と仲良くなることが不可能になり、痛みで縮こまった身体を動かしたり、刺激を与えたりしても、さらに痛みが増していくという結果になり、動かさずに固まったまま生きていくことになります。また、身体に意識を向けようとしても、痛みばかりで、身体が敵のように感じます。本来は、自分の身体に意識を向けていると、自然治癒力が発揮されますが、慢性疼痛の人は、身体に意識を向けると痛みや不快感がどうしても拭い去れないため、自然治癒力が枯渇していきます。そして、身体の中のエネルギーが枯渇すると、疲労が強くなり、もの凄く眠くなって、物事に集中出来なくなります。何かをしようとしても、すぐにぼーっと1点を見つめるだけになって、様々な刺激に反応出来ずに、動けなくなります。

 

一般的な原因として、遺伝要因で見ると、神経の発達上の障害があるかもしれません。環境要因で見ると、虐待、ネグレクト、DV、性被害、自然災害、医療トラウマ、母胎内トラウマ、事件、事故、感染以外にも、生活全般のストレス要因が多いと思われます。本当の原因は不明ですが、いくつかの難しい要因が複雑に絡み合っていると考えられます。生まれ持って神経が脆弱なところに、生命の危機に直面して、脅かされるような出来事を体験をしてしまうと、痛みや恐怖で基本となる神経の発達が阻害されます。そして、小さな出来事に対しても、脳と身体の神経が過敏に反応して、常に警戒した状態をとり、過剰な覚醒や凍りつき、離人、死んだふり、虚脱状態で生きるようになります。また、長期に渡って、過酷すぎる逆境のなかで留まり続けると、全身が硬直して、固まってしまって、それでもなお動こうとすると、慢性疲労や慢性疼痛などの原因不明の身体症状を引き起こします。

 

彼らは、教育熱心な厳しい親に育てられており、学校の勉強や部活に忙しく、家では家事を手伝い、とてつもない苦労や緊張を強いられてきました。性格は完璧主義で頑張り屋さんで自責感の強い人に多いです。子どもの頃から、両親の仲が悪かったり、家の中で気遣いをしてきたり、家族が嫌な思いをしないように頑張ってきましたが、自分にとって安全な場所はどこにもありませんでした。長期に渡って、安心して落ち着けるような心の拠り所がないところで育ち、自分を否定し、何か悪い事が起こるだろうとネガティブな見方をしてきました。いつも最悪なことを考えていたほうが、予期せぬ出来事や急な出来事に対応できて、致命傷を負わないで済むと考えていました。警戒心が強く、人の顔色や気配、足音、物音、匂い、光を敏感に受け取り、頭や顎、首、肩、胸、背中を緊張させてきました。また、小さいうちから、虚弱体質で、神経系や内分泌系、免疫系の調整不全があり、アレルギー、喘息、アトピー、蕁麻疹、乗り物酔い、胃腸の不調、よく病気や怪我をする子だったかもしれません。さらに、呼吸や心拍数が少なく、血圧も低いために、めまいやふらつきが起きたり、重たいものが持てなかったり、よく体調を崩しています。あとは、通常の人よりも、頭と身体の協応動作が取りづらく、処理速度が遅くなって、作業に時間がかかりました。今でも、身体のあちこちの部位が痛みや痺れ、硬直、震えがあり、酷くなると、不安から苛立ちますが、それを抑えるしかありません。ベッセル・ヴァン・デア・コークの「身体はトラウマを記憶する」から、長期にわたって怒ったりおびえたりしていると、筋肉が常に緊張状態になるために、いずれ痙攣や背中の痛み、偏頭痛、線維筋痛症といった、何らかの慢性疼痛の症状がでると述べています。

 第5節.

トラウマの要因としては


線維筋痛症と慢性疲労症候群は、女性に多い病気と言われており、虐待や性暴力など脅かされる状況が続いて、常に身体を凍りつかせて、警戒した状態で過ごしてきました。人は、繰り返し脅かされると、脳のフィルターが全開になり、心のバリアが失われて、不快な刺激に圧倒されやすくなります。最初のうちは、ストレスと戦うためにコルチゾールを過剰に放出し、身体内部は大量のストレスホルモンが分泌されて、神経は過敏に反応し、光や音、匂い、化学物質などの刺激に痛みます。しかし、家や学校において逃げ場が無く、八方塞がりな状況に追い詰められていくと、激しい怒りなどの過覚醒(闘争・逃走反応)の反応が失敗に終わり、行き詰まりを感じたまま動けなくなります。脅威に対して、戦うか逃げるかという有効な手段が奪われていくため、自律神経系の調整不全に陥り、原因不明の身体症状に苦しみます。そして、生活全般のストレスや緊張が長引くと、心身の限界を超えてしまって、凍りつきや離人、虚脱状態になり、慢性的に死んだように生きるようになります。慢性的なストレスに耐えられなくなると、コルチゾールは低下して、ストレスに弱くなり、神経系、免疫系、内分泌系に異常がおきます。コルチゾールが切れると、ストレスと戦うためのエネルギーが枯渇するようになり、脳や内臓、皮膚など炎症を起こして、副腎疲労になります。そして、朝を迎えてもベッドから起き上がれないとか、外を歩くだけで疲労が凄いとか、半分眠ったように生きるようになって、日常生活が困難になるほどの疲労感を抱えるようになります。さらに、HPA系の機能調節異常により、自分の身体の弱い部分から爆発していき、症状化していくリスクが非常に高まります。このようにトラウマというストレスがかかると、その人の身体を侵犯します。何もかもが収縮していくと、免疫力は下がり、粘膜は腫れて、炎症を起こし、表情や神経、筋肉、内臓、皮膚、骨、血液、水分、ホルモンなどの性質が変わって、冷たく硬くなります。

 

発達早期にトラウマを負い、危険や脅威がいつ襲ってくるかを心配して、原始的な背側迷走神経の作用にはまり込んでいる人は、予期せぬ出来事が起きて、致命的なダメージを負わないようにするため、顔や首、肩、背中、お腹に力が入っている状態で生活しています。脳と身体を繋ぐ首の部分や肩、胸、背中は硬くなり、手足の筋肉は伸び切り、身体が鉛のように重かったり、怠かったりします。肩や腕は、いつも首や頭の周りを無意識のうちに守ろうとして緊張しています。また、背側迷走神経が働く首から背中の部分は、ガチガチに縮まり、強い痛みを発し、猫背になるか、ストレートネックになります。日常場面では、危険なことに巻き込まれて、動けなくなり、そのまま虚脱状態に陥らないようにするため、強い刺激や苦手な刺激を避けて、気配や人の言動に怯えています。また、危険を回避すればするほど、恐怖心は増大していって、常に身体が過緊張や凍りついた状態になり、呼吸がしづらく、心拍数や血圧も下がります。身体の痛みは、人の悪意やストレスに強く反応するので、常に相手の顔色を伺いながら、先読みして、頭の中で熟考しています。しかし、さらに委縮させられそうになると、怒りなどの強い感情で反応するしかなく、相手のことを柔軟に受け止めることができません。頭の中は混乱しやすく、身体の中にモヤモヤ、ソワソワ、ムズムズが出ると、その場にいられなくなって、動きたくなります。そのまま動けずにいると、何をしているのか、どうしてここにいるのかなど分からなくなります。日常生活では、嫌なことが起こると、胸や背中が痛み、全身で踏ん張ろうとして、奥歯を噛みしめています。一年中、身体が凍りつき、手足は冷え切った状態で、痛みの身体を麻痺させ、無理やり動いているうちに、慢性疼痛になります。別の言い方では、身体をリラックスさせる方法を知らずに生きており、人間本来の拡張と収縮のメカニズムが機能していないので、痛みの身体になるか、痛みに麻痺して半分眠ったような状態になります。

 

身体の痛みや疲労感、不快な感情が強くなると、生活全般の困難を乗り越えることが出来なくなるために、痛みを切り離すか、麻痺させるか、凍りつかせて、頭の中で生活している人が多くいます。それらの人々は、解離症状や離人症、失感情症などの経過を辿ることになります。解離症状や離人症があると、身体のしんどさ、痛み、不快感、辛すぎる気持ちに気づかなくて済む利点があります。身体から心を切り離すと、本当はしんどくて、痛みがあるのに、その感覚に気づかなくて済むので、過去の失敗や後悔、辛かったことを延々と考え続けられます。また、身体のしんどさに気づかないでいるメリットは、仕事で無理することが出来たり、家族のために尽くしたり、身勝手な相手の要求に応えたりが可能になります。このように劣悪な環境のなかでは、自分が何を感じているか分からないほうが楽だし、自分の気持ちを分からなくすることでやり過ごします。しかし、身体のパーツを見ていくと、本当は辛かったり、しんどかったりします。長期に渡って、無意識下で身体を麻痺させて、凍りついた首や肩、胸、背中の部分と、脱力した手足で生活していると、疲労しきった身体か、痛みだらけの身体になるという危険があります。そして、自分の人生のことや自分の身体のことを無視して、本能的行動(快を求めての行動や闘争・逃走反応)の逆の行動を取り続けると、身体の方が悲鳴をあげます。人間は年老いていくことで、次第に解離や麻痺させることができなくなり、中年期以降に痛みや炎症と戦う慢性疾患に罹るかもしれません。

 第6節.

治療方針


身体の痛みから、地獄のような苦しみのなかで生きていて、不眠や過眠、重い鬱状態にあります。まずは、薬物療法で胃腸の炎症を抑えたり、身体の節々の痛みをケアする方法が有効です。また、身の回りの人たちの理解を深めて、安心・安全な環境作りが欠かせません。カウンセリングでは、ヒーリングミュージックや天国のようなイメージを思い浮かべて身体の感覚の変化を見ていきます。天国のように美しく、安心できて、自分にとって心地良い気持ちでいながら、身体の安全な場所を発掘します。自分の頭や身体に意識(脳の機能)を向けると、その部分が活性化するので、少しずつ痛みはケアされていきます。このようなセッションを繰り返し行って、自分の身体の内臓、筋肉、皮膚などの感覚を取り戻して、自分の身体と仲良くなることを目指します。また、無理のない生活環境を一緒に考えて、家の中ではリクライニングチェアで全身を休ませる練習など、安心できる体験を獲得しくことを目指します。神経の働きとしては、危険を感じて背側迷走神経が過剰に働かないように、体質の改善をはかり、物事を見方を変えていきます。頭や身体のほうは、無意識化の凍りついた部分に気づいてもらい、目や口、肩をゆっくり動かしてもらって、身体に揺れや震えを作っていきながら、全身を緩ましていきます。特に、口の開け閉めをしながら、顎を動かして、身体の痛みや詰まりの部分に注意を向けて、身体を変化させていきます。また、身体を動かしたり、触れたり、揉んだりして、その身体の部位に意識を向けながら、脳や顔のパーツ、喉、肺、みぞおち、背中にある大きな塊のようなものを小さくします。また、手足などの脱力した部分に気づき、物を掴み、足踏みして、再び力を取り戻していきます。そして、身体と心のバランスを計れるようにして、リラックスした状態で過ごせるように身体ワークに取り組んでもらいます。

 

痛みの身体を持っている人は、一年中、身体が冷たく固くなっているので、自分の身体の感覚が分からなくなっていることがあります。また、頭のほうも固まっている場合には、イメージや情景を思い浮かべることが難しかったりします。このように頭のイメージと身体の感覚を繋ぐ神経の働きを鈍くさせることで、なんとか正常な自分を保とうとしていることがあります。そのため、イメージしても全く身体が反応しない人やすぐに集中力が途切れてしまう人、怖いイメージを思い起こしたくない人には、身体志向アプローチが向いていないか、どうしても時間がかかってしまいます。

 

慢性疲労症候群の人は、頭に意識を向けると、頭の中が固まり、真っ白になっていきます。身体のほうは、ムズムズ、ウズウズしてくるかもしれません。不快な感覚を追体験して、ズキズキするような頭の痛みを感じた後は、熱くなり、ピリピリとした波を感じるようになります。熱い波を感じていると、次第にフワッと軽くなり、頭の霧(ブレイン・フォグ)がはれていきます。 脳に意識を向けると、中枢神経の束は、身体と繋がっているので、身体に様々な変化が出てきます。

 

脳に意識を向けると、そのまま身体が温かくなり、神経システムが平衡状態になる人もいます。一方で、身体の痛みが疼いて、その中心から固まり凍りつきます。凍りついた部分とは別に手足が脱力していくこともあります。見えない敵や自分がどうなるか分からない不安のせいで、身体の方は混乱していきます。一人では、瞑想を続けていくことが難しくなりますが、セラピーでは、セラピストを支えにすることができるので、自分の身体の変化を追跡していきます。最終的には、身体に温かさが戻り、軽さや居心地よさに変わります。

 

治療の目標となるセッションでは、嫌なイメージを思い浮かべて、トラウマ体験時の不動状態を作ります。その不動状態に意識を向けると、人間本来に備わっている自然治癒力を利用して、莫大なエネルギーを解放し、浄化していきます。収縮した身体に対しては、拡張させる方向に持っていき、脱力した身体に対しては、収縮させる方向に持っていきます。自然治癒力を引き出されるときは、身体の震えや揺れ、熱が出てくるので、身体の部位を動かしながら、不快な感覚を追体験して、そのような状態を作り出します。

 

恐怖に向き合うことが治療上、一番難しいことですが、恐怖を思い起こして、身体を固まり凍りつかせて、不動状態に入ってもらうか、絶望を思い起こして、身体を脱力させることで、不動状態に入ってもらいます。不動状態を意識的に探索していくと、がちがちに固まっていたものが広がり、凍結していたエネルギーが満ち満ちと溢れて、身体の中を流れるようになります。しかし、慢性化したトラウマの影響により、極限に縮こまりすぎた身体を持つ人は、恐怖に立ち向かって、不動状態に入っていくことを怖がります。不動状態から脅威を感じ取ると、全身が痛みを感じるか、バラバラになるか、捻じれるか、機能停止させられて、恐ろしい思いをするかもしれません。また、不動状態から、自然治癒力を引き出されると、ガチガチに固まっていたものが緩んでいき、力が抜けていくので、その急激な変化を恐れます。全身がブルブルと震え、熱くなり、拡張していく、この過程で自分の身体がどうなっていくのか分からない恐怖があります。ですから、時間をかけながら、自分の身体を観察したり、固い部分に注意を向けたり、意識的に探索したり、頭の中で心地良いイメージを深めたりを、交互に行いながら、少しずつ進めていくほうが良いでしょう。

 

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