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自閉症スペクトラム障害 (ASD) の特徴と原因


自閉症スペクトラム障害(ASD)は、DSM-5において神経発達症群に分類される診断名の一つです。

ASDの中核症状には以下が含まれます:

  • 社会的コミュニケーションや相互作用における持続的な欠陥
  • 興味が限定され、行動が反復的である、または活動の様式が独特であること

ASDの子どもたちは、特定の興味に強く執着し、生活の変化に対して強い抵抗を示すことがあります。彼らは、仲間を作るよりも一人でいることを好み、人間関係から距離を置く傾向があります。

周辺症状には以下のようなものがあります:

  • 言語の発達や使用に関する障害
  • 攻撃的な行動や自傷行為
  • かんしゃくや気分の不安定さ
  • 感覚過敏
  • 多動性や不注意
  • 早熟な才能の発現
  • 睡眠障害

これらの症状は、ASDの子どもたちが日常生活を送る上でさまざまな挑戦を伴うことを示しています。

自閉症スペクトラム障害について


自閉症スペクトラム障害(ASD)は、遺伝的要因と発達初期のトラウマ(子宮内でのストレス、周産期の医療措置、誕生時のトラウマ、化学物質への曝露、乳児期の養育環境)が複雑に絡み合い、神経発達や生体機能に異常をもたらします。生まれた瞬間から、常に脅威を感じているため、身体が過緊張状態に陥りやすく、凍りつきや虚脱といった原始的な神経反応が働きやすくなります。その結果、社会的相互作用に困難を抱えることが多いのです。

 

社会交流に関わる神経の発達が遅れるため、表情筋の動きがぎこちなくなり、視線が合わない、声が出しにくい、聞き取りづらい、息がしづらいといった問題が生じます。また、手足が不器用だったり、胃腸の不調を抱えたり、病気にかかりやすいなどの身体的な症状も見られます。これらの特性は、母親との関係に影響を与え、距離が生じるか、逆に依存的な関係になりやすい傾向があります。

 

ASDの人々は、神経発達の問題から生体機能のリズムに異常をきたし、幼少期から体調不良を抱えることが少なくありません。強い感情の揺さぶりや刺激を避けるため、強迫的なこだわりを持ち、日常生活をルーティン化して自分をコントロールしようとします。これにより、安心感を得ることができるのです。

 

コミュニケーションにおける困難の背景には、対人関係での緊張や体調不良があり、自分なりのこだわりが強く表れることが多くあります。これらの特性が日常生活におけるさまざまな課題を生むことになりますが、理解と適切な支援が求められます。

 

ASD(自閉症スペクトラム障害)の子どもは、嫌なことを極力避けようとする傾向がありますが、嫌なことが強制される場面では、身体が反応して硬直し、生理的な混乱が生じます。具体的には、赤面、息苦しさ、フリーズ(動けなくなる)、めまい、どもり、発汗、震え、揺れ、不快感、声が出ない、耳が聞こえにくくなる、集中力の低下、注意散漫といった症状が現れます。特に多くの人の前では緊張が極度に高まり、パフォーマンスを発揮しようと心が冷静さを保とうとする一方で、身体は緊張したままの状態が続きます。このように心と体が切り離された状態が進むと、さまざまな心身の症状が現れ、人間関係や日常生活に悩みが生じることが多くなります。

 

ASDの子どもは、非常に繊細な神経を持っているため、身体の調子が悪くなりやすく、頭(心)と体のつながりに問題が生じやすいです。身体が麻痺したり、感覚が鈍くなったり、固まったり、手足の力が抜けてしまうこともあります。彼らは頭の中で考えることを重要視し、予測可能な状況に安心感を抱きますが、予測不可能な要素には強い不安やストレスを感じます。体の感覚(体感)が弱いため、他の人とは感性が異なり、自分の軸が弱く、主体性に乏しい状態に陥りやすいのです。

 

発達早期の段階から、体内に莫大なエネルギーが滞ることで、環境からの刺激によって生体機能のリズムが乱れやすくなります。このため、手のひらをひらひらさせたり、体を揺らしたりといった常同行動を取ることで、自分を安定させようとします。これらの常同行動は、自己安定の手段であると同時に、相手を自分の思うように動かしたいという無意識の欲求から生じることもあります。

 

幼少期から、体内にある不快な感覚や感情を切り離してきた結果、ボディイメージが曖昧で、自他の区別がつきにくい状態に陥りがちです。このため、物事を白黒はっきりさせないと体が落ち着かず、曖昧さを嫌う傾向があります。頭の中では常に世界の事象を分析し、様々なリスクを考えながら、アルゴリズム的な思考を駆使して悪い結果を避けようとしています。また、心と体を安定させるために強いこだわりを持ち、一人遊びや空想に没入することが多いです。これらの行動は、自己防衛と安定を求める反応であり、安心できる環境が欠かせないのです。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平

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