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境界性パーソナリティ障害の接し方


境界性パーソナリティ障害の人は、身体の中にトラウマを閉じ込めており、原始的な防衛操作が延々と作動しています。そのため、一人でただじっとしているだけなのに、寂しくなったり、落ち着かなくなったり、居てもたっても居られずイライラしたりします。嫌なことや予測不可能なことに対しては、神経が繊細に反応するため、恐れおののき、胸がざわつき、体の中が凍りついて、悪いイメージや記憶が蘇り、体調が悪くなります。また、不快な状況が続くと、交感神経や背側迷走神経の働きが過剰になり、身体の感覚、感情、思考、覚醒度が変わり、常に不安定な状態に置かれます。彼らの根底には、自己感覚があまりなく、中身が空っぽで、自分が自分でなくなるような恐怖があります。そして、慢性的な虚無感に苛まれ、こころや精神までもが複雑に組織化された防衛反応のなかにすっかり染まっています。

 

彼らの対人関係は、今までことごとく失敗しており、もうこれ以上の苦痛は耐え難く、人から傷つけられることや人を傷つけてしまうことに対しての恐怖心があります。こころや身体は、怒りの感情や不快な刺激を向けられることに対して、傷つきやすい状態にあり、自分を守らないでいると、しばしば現実場面でトラウマの再被害に遭うことが本当に起きます。彼らは、他者の態度や視線、言葉、気配、足音に恐怖しており、相手の態度がいきなり豹変すると、心臓が縮みあがって、身体は見えない刃物で突き刺されているかのように感じます。そのため、人との距離感をうまく掴めず、被害者意識や人間不信が強くて、敵か味方か、白か黒かで決めつけ、敵意を見せることで、自分の安全を保障します。また、傷つけられる前に、無意識のうちに相手を傷つけようとするところがあります。心の中では、誰かに助けてほしいと思っていますが、他者の善意も信用できずに跳ねのけてしまいます。また、他者の態度や分かってもらえなさに、すぐにイライラして、手を出したくなって、爆発します。彼らは、気分の波が激しく、感情が不安定になるため、他者を理想化しては脱価値化することを繰り返します。生活全般が困難になり、居場所が無くなると、現実よりも妄想の世界に生きるようになり、過度な自己肯定や自己否定、孤独、寂しさ、被害感情などが大きくなります。

 

身体は、嫌悪刺激に対して、すぐに硬直し、痛みや怠さ、ざわつきがあり、こころの余裕を持てなくなり、落ち着かなくて、不快感や雑音、不確実な要素に耐えることが難しい状態にあります。また、自分は被害者であり、また脅かされるかもしれないことへの不安が強くあります。相手に期待して、安心させてほしいと思っていますが、相手が安心させてくれずに、自分を脅かしてくる場合には、相手のことを許せなくなり、責めて罵ります。その後、相手を責めて気分が落ち着くと、反省して罵った自分を非難します。このような関係が続くと、相手にやり返されるようになり、頭も体も限界に達していきます。今まで相手の身勝手な行為に振り回され、その溜まった不満や文句を言って相手のせいにして、手を出して、やり返されるという体験を繰り返しているので、人に傷つけられる恐怖、相手を傷つけてしまうことの自責感、自責感を人に利用される不安があります。いつも同じことを繰り返してしまうので、自分を恥じて、引きこもり気味になるか、動けない身体になり、何も出来なくなって、生活全般が苦しくなります。

 

境界性パーソナリティ障害に接する人は、善意や思いやりの気持ちを持ち、ごく普通に関わっているつもりですが、すぐに彼らの健康を害してしまい、苛立たせてしまって、拒否や拒絶、攻撃を受けます。境界性パーソナリティ障害に関わる人は、彼らの攻撃性や過敏さ、拒絶的な態度に、ついつい反応して怒りを露わにし、仕返しをすることがよく起こります。その場では、お互いに反省して仲直りが出来たとしても、無意識のうちに不気味な仕返しをして、仕返しをされるという関係に陥ります。

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境界性パーソナリティ障害の人に必要なこと


境界性パーソナリティ障害の人は、体が凍っていて、生きながらに死んだような感覚が付き纏い、体内には情動的な人格部分がいます。現実にショックなことがあると、元の私がシャットダウンして、体が勝手に動いて態度が悪くなり、暴言、暴力、怠惰、嘘、ごまかしなどの問題行動が出ます。このような状態から回復するには、彼らの問題行動の背後には複雑なトラウマを抱えていることを理解し、ケアする必要があります。パートナーからの理解が必要になり、家族や友人に支えられ、落ち着いて過ごせるようになれば変わってきます。生活全般のストレスと緊張を減らして、友人や家族との楽しい時間を過ごす、外を散歩する、読書をする、音楽を楽しむ、クリエイティブな趣味、生産的な活動、瞑想、ヨガ、カウンセリング、睡眠をしっかりとる、体に良い食事をとる、適度な運動をする、マッサージ、鍼灸、ダンス、スピリチュアル、演劇などが良いです。毎日、好奇心を持ち続けて、自分が思うようにやりたいようにやって、自己肯定感を高めていき、身体のメンテナンスも心がけ、心を元気にしていきましょう。

 

なるべく本音や本当の感情を見せれる対等の関係で、自分の思ったように過ごせる相手と過ごすようにして、苦手な相手との関係は極力避けるようにしましょう。そして、安心していられる環境のなかで、静かにゆっくり休息し、身体が弛緩されるような体験や、足先までが温まるような幸せな体験をしましょう。そうすることで、尖りきった神経の働きが少しずつ緩まり、安心して眠れるようになり、穏やかな自分に戻ります。人生が前向きになっていけば、身体は良いほうに広がり、トラウマは過去のものになって、新しい道を作っていくことが回復になります。

境界性パーソナリティ障害の方との接し方32項目


1)できることとできないことをはっきりさせる

境界性パーソナリティ障害の人は、人間不信があり、人から傷つけられるのではないかという不安が強く、不確かな要素や動かしがたい他者との関係が苦手で、感情や思考が暴走しがちです。そして、相手を自分の思うように動かしたいと思っていて、自分の心を安定させるために、周りを操作するところがあります。一方、思いやりのある人や孤独で愛情に飢えている人ほど、不幸な生い立ちの境界性パーソナリティ障害の人になんでもしてあげようと思います。そうすると、境界性の人は、なんでもしてくれると思うので、距離が近くなります。そして、距離が近くなればなるほど甘えと依存から攻撃的になり、手に負えなくなります。まずは、境界性の人と付き合う人は、できることとできないことをはっきりさせながら、同時に、彼らが安心できるように保証を与えつつ、なんでも思い通りにならないことを分かってもらって、踏ん張る力を育てることが、トラウマを乗り越えられる力に変わります。無償の愛の奉仕はとても良いことだと思いますが、相手が利他的でないと確実に燃え尽きてしまいます。

 

2)一緒に喜び、気持ちを理解しようとする

境界性パーソナリティ障害の人は、興味のない人には冷たいですが、大切な人に対しては全力で頑張ろうとします。彼らは、自分の幸せに気づきにくい分、大切な人が幸せそうだと自分を満たすことができます。また、大切な人に自分のことを分かってほしいと思っており、分かってもらえないことに悲しんでいます。その悲しみが怒りになり、揉め事は多くなりますが、できることと、できないことなど指摘し合って、お互いの気持ちを理解して、関係を長続きさせる頑張りが必要です。そうした積み重ねが二人の絆を強くします。

 

3)強すぎる見捨てられ不安

境界性パーソナリティ障害の人は、安心して過ごせる場所が無く、家の中で一人でいるときも、落ち着かなくなり、フラッシュバックやパニック発作、過呼吸、身体症状、慢性的な空虚感などを体験したりしています。恋人に幻想を抱き、過度に期待していますが、恋人の連絡が遅いと心配になり、その心配が過去のトラウマ(また居なくなる恐怖…)と折り重なり、将来の否定的な可能性にとらわれていきます。そして、恋人関係に不安を感じて、安心させてくれない相手が悪いとか、取り返しのつかない恐怖を感じるとか、駄目になってしまうという思いから、どうしていいか分からなくなり、じっとしていられなくなって、凍りつきやパニック、しがみつき、怒りの感情に変わります。また、不快な状況がしばらく続くと、凍りつきやパニックから、気が狂いそうになります。ですから、彼らのそばにいる人は、不安にさせるようなことは一切言わず、連絡はできる限りマメにしてあげてください。また、愛情を込めた手紙を事あるごとに渡してあげるのも良いと思います。

 

4)冗談が通じない

境界性パーソナリティ障害の人は、身体のなかにトラウマという過剰なエネルギーが蓄積されているため、傷つきやすく、身体の痛み、不快感、怒り、麻痺、胸が潰れる思いを抱えています。彼らは、情緒不安定で、怒りっぽく、心が狭く、自分にも他人にも厳しい一面があります。基本的に、彼らは、心に余裕がなく、言葉の裏にある相手の意図まで読むことができません。そのため、普通の感受性なら受け流せることが受け流せないほど繊細であり、冗談が通じません。彼らのそばにいる人は、言ったことをそのまま受け取りますので、言葉を考えて使う必要が出てきます。

 

5)言葉が凶器になりかねない

境界性パーソナリティ障害の人は、相手からしたら何気ない一言でも、刃物のように冷たく突き刺さり、胸が痛み、生理的反応に混乱が生じて、フラッシュバックが起きたり、感情のコントロールが効かなくなったりします。たとえば、どんなに自分に優しくしてくれていても、一言が気に入らなければ、すべてが台無しになって最低な人間にしか見えなくなります。彼らは、相手の態度や言葉一つ一つに神経質で、いつ誰かを傷つけるかもわからないし、自分に跳ね返ってくるかもしれないと考えます。だから、相手の言葉遣いの間違いを許せず、自分が脅かされたと感じれば、胸がざわつき、不快な気持ちになります。そして、闘争スイッチが入ってしまうと、攻撃性や投げやりな態度、自暴自棄な行動になります。彼らのそばにいる人は、かなり気を使って関わる必要がありますが、気を使いすぎて、肩に力が入って、それが表情に出るようなら意味がないです。彼らが痛みを感じたら、凍りつきやフラッシュバックを引き起こしかねないので、嫌がることを言うのは辞めましょう。そして、毛布のように暖かい言葉を使って、温かい人間になって、くつろいで関わりましょう。

 

6)他人との線引きが苦手

境界性パーソナリティ障害の人は、身体内部に恐怖や怒りの情動的人格部分を閉じ込めているので、他人が自分の心に土足で踏み込んできたり、許可していないことを勝手にされたり、想定外のことが起きたりすると、自分の感情がコントロール出来なくなり、自分が自分であることを保てなくなって爆発します。そのため、他人との線引きの対処の仕方が苦手で、人間関係に悩んでおり、異性関係のトラブルが多くなります。無駄な人間関係は、体調を悪くさせるだけなので、極力省きたいと思っており、誰彼構わずにお友達になるという精神は持ち合わせていません。彼らのそばにいる人は、境界性の人が感情をコントロールできなくなり、自分が自分で無くなるという恐怖があることを十分に理解して、踏み込んでほしくない領域には入らないようにしましょう。

 

7)まずは安全や安心感

境界性パーソナリティ障害の人は、身体の中に安心感がなく、脅かされることへの不安が強く、相手の表情に一喜一憂し、不安や緊張、警戒ベースのなかで生きています。怒っている顔が苦手で、笑っている顔が好きで、外の世界に対して安全100%を求めています。頭の中は、相手を見透かし、快か不快かを見分けて、完璧な状態を作ることにより、自分の安全を保障します。彼らは、安全や安心感がある場所では、誰かに支えてもらうと、ぬくぬくと育つことができます。しかし、さまざま外傷体験に苦しんできたことから、根底には、人を疑っていて、周りの人は自分に悪いことをすると考えています。日常場面で、追い詰められたり、疲れている時に、不快なことがあると、一瞬でストレスが高まり、交感神経系に乗っ取られて、頭の方は混乱し、相手を責めて罵ることがあります。その後、感情をコントロールできない自分を責めたり、罪悪感に変わります。そのため、彼らのそばにいる人は、怖い思いをさせないように配慮して、一緒に問題を解決していきながら、ずっとそばにいるという本当の安心感を届ける必要があります。そして、彼らのことをいつまでも信じてあげて、待ってあげましょう。

 

8)対象に求める質が異常

境界性パーソナリティ障害の人が一番安心するのは、パートナーが自分だけを見てくれて、連絡をたくさんしてくれて、常に安心させてくれることです。現実的ではないことでも、パートナーには自分のために何とかしてほしいと思っており、過剰に期待し、努力を求めています。彼らのそばにいる人は、境界性の人の要求を呑み続けることになり、疲弊していって、関係を続けられなくなります。そうなるとお互い不幸になるので、境界性の人の依存心を生産的な活動に向けてもらって、適度な距離感を持ちつつ、関係を続けていくことが良いでしょう。

 

9)扁桃体に直接働きかける

境界性パーソナリティ障害の人は、警戒心が過剰で、人の目を気にしており、快か不快かを直感的に見極めて、この世界のことやうまくやれない自分を否定的に見ています。脳の扁桃体は、すぐに危険を察知して反応しやすく、情動脳は働き続け、ストレスホルモンを送り続けています。この扁桃体を鎮めるには、誰かの力を借りる必要があります。まずは、彼らが親密な人との関係で、穏やかに楽しく快感を追求することが出来るような場面に焦点を当てます。そして、サポートする人が相手の表情や行動から、感情を察知し、その内的状況に相応しい言葉と表情を返すことで、身体の中を流れるリズムが変わり、違う流れが生み出され、扁桃体の機能はゆるやかに変化します。このような身体の芯から楽しむボトムアップ体験を一緒に繰り返すことにより、トラウマを再体験しつづける過覚醒症状は次第に軽減されていき、穏やかに過ごせるようになって、たくさん眠れるようになります。

 

10)激しい怒りから生き残る

境界性パーソナリティ障害の人は、ちょっとでも嫌なことを言われると、自分は脅かされていると感じて、すぐに体の状態が変わり、相手が敵に見えて、認知的フラッシュバックや激しい怒り、凍りつきを起こします。認知的フラッシュバックが起きている時は、左脳があまり働いておらず、出来事を客観的に分析して、物事に対する注意や認識力に欠けるので、怒りを感じたり、恥をかいたりすることを何でも相手のせいにしがちです。そのため、我を失い、感情のコントロールできずに激しい怒りをぶつけてしまったとき、彼らのそばにいる人が仕返しをすることなしに、生き残れるかどうかにかかっています。まずは、境界性パーソナリティ障害の彼女をラプンツェルだと思い、彼らが怒りをぶつけてきたら、ラプンツェルの中の魔女が表に出てきたと思って対処しましょう。

 

11)やりたいことに取り組んでもらう

境界性パーソナリティ障害の人が自分の好奇心の赴くままにやりたいことに取り組み、自信を深めて、未来を肯定的に思い描くことにより、過去の自分とは決別し、再び生きるという感覚を取り戻せます。そして、身体に染み付いたトラウマ記憶から抜け出すことが可能になります。一方、長時間労働になり、仕事から家に帰ってくると、疲れきってしまい、体力もなく、何をするにもエネルギーが残っていません。毎日が仕事に追われてしまうと、何のための人生なのか、何のために働いているのかなど分からなくなり、趣味も面白いと思えなくなり、人生が楽しくなくなります。生きる目的や役割を失うと、解離傾向が強まり、慢性的に空虚な感覚に支配されます。地に足はつかず、自分の軸を失っていき、エネルギーが切れた状態になり、半分眠ったような状態になることがあります。そばにいる人は、彼らの体力に考慮して、仕事をどう取り組むべきか考える必要があります。そして、自分を優先していく生き方を後押しして、たくさん褒めてあげて、新しい道を作っていく手助けをしましょう。

 

12)覚悟を持って接する

境界性パーソナリティ障害の人は、慢性的な空虚感や感情のコントロールの難しさ、落ち着かなさ、興奮しやすさ、身体の不調、恐怖心などを持っていて、その生きづらさを十分に理解する必要があります。彼らは、自分の感情を自分で処理できないところがあるので、その処理を家族や恋人に求めてきます。彼らのそばにいる人は、自分の思いを話すよりも、しっかり話を聞いてあげて、ポイントになる言葉に反応し、気持ちを汲み取るようにしましょう。また、気長に穏やかな態度で見守る必要があります。

 

13)傷つきやすく、空虚なので

子どもの頃から、親にしてもらいたかったことがありますが、親に求めても叶わず、傷ついてきました。境界性パーソナリティ障害の人は、普通の人よりも、5-100倍くらい傷つきやすいです。また、彼らは、とても辛く、苦しい毎日を過ごしてきたので、感情や感覚を切り離して、自分を空っぽにして、良い自分を演じてきました。今では、空っぽな自分と向き合うと虚しくなるだけなので、その空虚を埋めようとして、たくさんの時間を一緒に楽しむことを求めます。そのため、相手はしんどくなります。そばにいる人は、彼らの無理な要求には応えなくてもいいですが、出来る限り、一緒に楽しんであげて、彼らが休みたくなったら、休ましてあげましょう。

 

14)自分と似たような魂を持っている人に惹かれる

境界性パーソナリティ障害の人は、直観的に、自分の価値観に合わないと判断すると、関係は続きません。彼らは、価値観が違うことを受け入れにくく、否定的な可能性を考えてしまって、しんどくなります。その一方で、生きるか死ぬかの環境の中で育っているので、生き残りの方略として、仲間意識が強くて、熱い部分があります。彼らは魂を引き合わせてくれるような運命の人に惹かれてしまい、自分の分身のように感じたり、自分自身にとてもよく似た存在として感じられる人との一体感を求めています。自分と似ている人との一体感により、相手が自分の辛さに合わせてくれたり、相手の苦しみが分かったりして、精神性が高まり、安心感を得ることができます。もし、彼らのそばにいようと思うなら、個人的高潔さを持ち、同じような救いようのない悲しみを抱えているか、理解していく必要があります。また、常に努力を続けられるような高い精神性が求められます。

 

15)多面性の悪い面も許容する

境界性パーソナリティ障害の人は、子どもの頃から過酷な環境で育っています。その過酷さから生き残るために、原始的な神経を働かせ、自分自身を変性意識状態に置き、恐怖や怒り、痛み、恥ずかしさなどの感情の葛藤を避けて、生活全般の困難をやり過ごしてきました。また、子どもの頃の不幸を回避するために努力しており、多面性を持ち合わせています。天使の部分は、ご機嫌で優しく愛情深いので周りの人の自己愛を満たしてくれます。一方で、悪魔の部分は、些細なことに苛立ち、不機嫌で人を脅すなど恫喝し、幸せそうに笑う姿が憎くてたまらないと感じて、甘えや依存といった特性に嫌悪感を持っています。彼らのそばにいるなら悪い面も、それは過酷な環境を生き残ってきた能力の証として受け止める必要があります。

 

16)身体感覚の回復には、瞑想やヨガ、ダンス、マッサージが有効

トラウマ体験により、命の危機に瀕した体験は身体の記憶として残り続けていて、身体は耐え難いトラウマと同一化しています。人間の悪意によりトラウマになっている場合は、加害者に反撃しようとした部分や激越な感情は、自分の中にありますが、それは自分のものではないと感じたいものです。自分の中の激しい怒りや興奮、恐怖が蘇ると、生活全般に適応できなくなるので、悪い部分を分裂排除して、こころの安定を保ちます。自分の感情や感覚を切り離していくうちに、身体感覚が分からなくなり、自分が自分であるという感覚も弱くなって、自他の境界が分からなくなります。身体が空っぽになると、自分の身体に意識を向けなくなるので、身体が冷たく硬直したり、手足が脱力したり、痛みを抱えたまま生きることになります。再び身体感覚を取り戻すには、身体に焦点を当てたセラピーやスポーツ、瞑想、ヨガ、ダンス、演劇、鍼灸、マッサージがおすすめです。トラウマを受けて凍りついた身体に新しいリズムを与えて、生きるか死ぬかのモードから、新しいモードに変えていきましょう。

 

17)学術、芸術、武道、スポーツで怒りを発散する

虐待や過干渉などにより、養育者に良い子を強要されていると、子どもは高いパフォーマンスを出さなければなりません。持続的な緊張とストレスから、体は闘争・逃走反応にすっかり染まっていきます。しかし、良い子で居続けなければならないので、相手に合わせようとして、正常な怒りや自己主張は妨げられています。このような抑圧された怒りは、過食行動や自分に好意を向けてくれて、なんでもしてくれる対象に向かいがちなので、仕事、学術、芸術、武道、スポーツなどの適応的な方法で発散できるようにサポートしましょう。

 

18)3つの約束事

境界性パーソナリティ障害の人は、子どもの頃から今に至るまで複合的なトラウマを抱えていると言われます。これ以上、傷つけないように、不安を強めないように、今の状態よりも悪くしないようにするために、支援者は3つの約束事を守る必要があります。①嘘をつかない。②裏切らない。③見捨てない。を守りましょう。支援者が守れないと再トラウマ化してしまって、外傷の再演が起こり、激怒や身体が凍りついて、ぞっとする思いをさせることになります。

 

19)愛情を注ぐ

境界性パーソナリティ障害の人は、子どもの頃に不幸があり、自分を家族としてもらってくれるような理想的な両親像を求めていることがあります。だから、たくさん抱きしめられたり、頭を撫でられたり、愛情表現をされたり、母や父親の代わりになってあげて子ども扱いされることを喜びます。たくさんの愛情を感じることで全身にポカポカしたエネルギーが駆け巡り、冷たく硬直していた身体が温かく解きほぐされます。一方、彼らのそばにいる人が愛情を注がなくなると、彼らは愛を感じられなくなります。

 

20)デート中は

デート中は、家の中でこもるだけでなく、気分転換のドライブに連れて行ってあげたり、自然のある場所に行ったり、好きな食べものやお菓子、ぬいぐるみを一緒に探しに行ったりして、気持ちがワクワクするような体験が必要になります。複雑なトラウマを負っている人は、自分を脅かす刺激に対して、破壊的に反応してしまうので、体調を常に気にかけてあげたり、身体を休めてあげる心配りをしてあげてください。また、辛いことを思い出す話題をしたり、元恋人の話をしたり、異性と楽しそうに会話したりするのは避けましょう。自分の思い通りに過ごせて、そばにいる安心感や、愛情や幸せな体験を身体と記憶に刻むことで、この病から解放されます。

 

21)嫌なことを避けて、快適に

境界性パーソナリティ障害の人は、警戒心が強く、周囲に過敏に反応し、自分を守ろうとして、顎、首、肩、背中の辺りを緊張させて身構えています。頭の中は、外の世界の対象が快適か不快かをアセスメントしています。嫌なことに対しては、体が縮まり、硬直して、苛立ち、体調が悪くなるので、回避しようとしますが、向こうが近づいてくる場合は、交感神経にスイッチが入り、闘争・逃走反応を示します。一方、好奇心を感じる対象に対しては、接近したいと思っているので、関係を続けていくことができます。

 

22)感覚過敏を理解する

境界性パーソナリティ障害の人は、複雑なトラウマにより、警戒態勢を敷き、神経が尖っているために、人の気配や態度、表情、音、声、話す内容、匂い、振動、光に過敏に反応します。いつ想定外のことが起きるかを心配しており、頭の中が思考し続けたり、緊張が強すぎたり、興奮したりで、睡眠に障害が出ます。不快すぎる状況では、交感神経のスイッチが入って、過覚醒になり、焦りや苛立ちが出て、どうしていいか分からなくなります。じっとしていられないのに、その状況を適切に処理できなくなると、頭痛、腹痛、吐き気、気が狂う、意識を失う、凍りつく、身体が重くて動かせなくなります。彼らのそばにいる人は、彼らの居住スペースにむやみに侵入せず、不快感を継続させないようにしましょう。また、不快な刺激に反応する自律神経系の調整不全を理解していく必要があります。

 

23)無理して相手に合わせてしまうので

境界性パーソナリティ障害の人は、子どもの頃から、親の機嫌を損なわせないように先回りしてきました。また、いつも人と比べて自分がずれているように感じていて、人間関係で失敗することが多く、相手に合わせようと努力してきました。しかし、人に合わせて無理していると疲れてしまって、いずれ爆発してしまいます。彼らのそばにいる人は、無理をさせないとか、一人の時間を増やしてゆっくり過ごせるような配慮が必要です。

 

24)大事な関係ほど自分から壊してしまう

境界性パーソナリティ障害の人は、ひとりぼっちや寂しさに耐えられず、好きになれる対象を見つけては、「好き」、「嫌いにならないで」、「見捨てないで」と言って、恋愛関係に発展します。しかし、彼らの根底には、人間不信があり、身体は痛みや不快感があります。恋人との信頼関係が強くなり、相手との距離が近づくほど、傷つきやすくなって、人間という脅威を遠ざけたいという防衛が働くため、その関係を壊したくなります。彼らのそばにいる人は、自分が脅威の対象にならないようにしましょう。また、境界性パーソナリティ障害の人は、追いかけられることが苦手なので、自分のことを追いかけてきてもらえる関係性にしましょう。

 

25)自分も相手も喜ぶことが好き

境界性パーソナリティ障害の人は、落ち込んだり、悲しかったり、孤独だったり、怒りがあったり、寂しかったり、焦っていたりします。そのため、こころに元気がないと、エネルギー切れを起こして、体調不良に繋がります。人に対しては喜ぶことを求めていて、人を楽しませることが好きで、サービス精神が旺盛です。相手の喜んだ顔を見ると、自分も楽しくなって元気になることができます。ですから、彼らのそばにいる人は、一緒に楽しむことを心掛けてください。 

 

26)解離状態

ストレス下では、すごく辛くなって、固まって動けなくなり、1点を見つめたり、ぼーっとしたりして、解離状態になります。彼らは、現実と夢の境目にいるようになり、自分のことがよく分からなくなります。彼らが、解離していて、凍りついているときは、彼らのそばにいる人が思いやりをもって関わる必要があります。例えば、手を握るとか、背中をさするとか、いい匂いをかいでもらうとか、好きな音楽を流すとか、ぎゅっと抱きしめてあげることをしてください。また、切迫した状況に追いつめてしまって、解離状態にならないように気を配り、環境調整してあげましょう。

 

27)妄想状態

トラウマがある人は、些細なことでも、過剰に反応してしまうため、不安や動揺を感じやすく、過覚醒になりやすいです。過覚醒になると、全身の力が入り、この世界が危険であるかどうかを入念に調べ、どう行動するべきかを思考し、細かいところまで気にするようになります。そして、最悪の事態を想定していくなかで、情緒不安定になり、過去に引きずりこまれていきます。不安や恐怖に強く影響を受けることにより、自分が特殊な人間であると信じたり、根強い猜疑心を持っていたり、自分は特別で何者かに監視されていると思ったり、隣人に攻撃を受けていると思ったりなど特殊な妄想にとらわれてしまって、現実検討能力が低下します。しかし、境界性パーソナリティ障害の人の妄想は一過性で、割と短期間で治まるので、過去から現在に戻ってくる間は、見捨てることなく、寄り添うことが求められます。

 

28)恐怖状態

大きな衝撃を受けると、身体が凍りついて震え、強い恐怖を感じ、その感情に圧倒されると、自分が自分で無くなり混乱します。恐れに捕らわれている状況では、全身が怖がっていて、周りのものが敵に見えます。一つのトラウマが蘇ると、連鎖的に過去のトラウマに引きずり込まれることもあります。そして、喉が詰まって息苦しく、胸が苦しく、頭痛や腹痛、めまい、吐き気などでしんどくなって、生活全般の役割をこなせなくなります。そのため、トラウマによる凍りつきや荒廃した状態を避けるために、分裂排除したパーソナリティの構造を持つようになります。境界性パーソナリティ障害の人は、過去のトラウマに対して、離人感を持って関われますが、そこに身体感覚を伴わせることに強い抵抗があります。彼らのそばにいる人は、トラウマを回避させていく生き方や、正常な生活を送ろうと努力している姿を尊重していく必要があります。

 

29)独占欲が強く、他の人と仲良くされるのが嫌

境界性パーソナリティ障害の人は、自分だけを見てほしい、常にそばにいてほしい、必要とされたい、いつでも自分の味方になってほしいと思っています。パートナーまたは、親が他の人と話すと、ひとりぼっちの気分になって落ち込んだり、発汗して身体がこわばったり、傷ついて自分なんて必要のない存在と思ったり、みるみる自分が小さくなってどこか遠くにはじかれるように感じたりなど恐ろしい体験をしているかもしれません。パートナーになる人は、一緒の時間をできるだけ過ごして、あなたのことが必要だよとか、一番大切だよと言ってあげて、連絡はすぐに返したほうがいいです。

 

30)気分や身体感覚の浮き沈み

境界性パーソナリティ障害の人は、恋人や配偶者が居なくなり、一人きりになると、寂しくなり、気分が落ち込みます。そして、心身が不安定な状態に置かれて、その場にいられなくなることがあります。身体の方は重くなり、手足は冷たく、寒さを感じます。その一方で、恋人や配偶者にハグしてもらうと、全身が軽くなって、温かくなります。彼らは、恋人や夫婦間の関係が悪くなると、体調不良を起こしたり、気分の浮き沈みが激しかったりして、一時的に相手のことを自分勝手だとか、大嫌いと言ってしまうことがあります。と同時に、どこにも行かないでとか、私を必要としてという気持ちも併せ持っています。彼らは、自分のなかの不安定さを相手のせいにすることが多く、パートナーの方は、自分が振り回されているように感じているので、膠着した関係になりやすいです。

 

31)依存してしまう

自分に安心感がなく、身体の中にトラウマを閉じ込めているために、家の中で一人で過ごすことが難しい人もいます。何もなくじっとしていることや嫌悪刺激がトラウマのトリガーになっており、すぐ交感神経のスイッチが入り、落ち着かなくて、動きたくなります。このような不安や不快感に苛まれることが多く、何度も繰り返されるため、自分の世話してくれる恋人に寄生し、問題を解決してもらおうとします。恋人がおらず、自分でも問題解決が難しいために、SNSで出会いを探し、外に出て気分を紛らわす対象を求めます。そして、恋人や酒、薬物、ギャンブル、セックス、買い物など一瞬でも自分の感覚を忘れさせてくれるものにしがみつきます。彼らは、自分を元気にするためなら、なんでもしようとするところがあり、普通の人では踏み越えない領域まで平気で行うことがあります。パートナーの方は、彼らの行動を理解できないかもしれませんが、トラウマの過覚醒、凍りつき、死んだふりなどの身体感覚や感情に耐えられないから、そのような依存・嗜癖行動に至っていると理解していきましょう。

 

32)パートナーとの関係により

境界性パーソナリティ障害の人は、身体が恐怖に麻痺して、凍りついていくために、気の流れが悪くなります。身体の調子が悪くなると、人間関係がしんどくなり、上手くいかなくなる辛さで、何か埋まらないものがあります。パートナーとの関係が上手くいっているときは、気分やテンションが高くなり、自分はなんでもできそうな気分になります。一方、パートナーとの関係がうまくいかなくなると、気分が落ち込みます。その落ち込んだ状態を立て直そうとして、不安からごねたり、支配したいという欲求が湧いたり、投げやりな行動を取ったり、浮気しているかどうかを気にして、相手のSNSや携帯を見たりします。また、パートナーの関係で100%の安心を求めようとすればするほど、不安は高まり、相手のあら探しをしてしまって、パートナーにめんどくさいと思われたり、不安を発見して被害妄想が膨らんだり、パートナーに怒鳴ったり、別れを切り出したりします。彼らは、パートナーとの関係において、過剰に反応してしまい、些細なことでも不快に感じます。パートナーの言葉や態度が冷たく感じると、全てを否定されているように感じて、自分は疎外される存在なんだという信念が強化され、必要以上に落ち込みます。

 

参考文献

小此木啓吾、深津千賀子、大野裕「精神医学ハンドブック」創元社 2004年

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平

 

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