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天使は朽ち果てた悪魔に…ユング派ドナルド・カルシェッド『トラウマと魂』

Donald Kalsched (2013)『In Trauma and the Soul』 

ユング派ドナルドカルシェッドの著書を日本語に訳し、少し改変させた一部を載せています。

 

間違った神は、痛みや苦しみを暴力に変える。正しい神は、暴力を苦しみに変える。

 

外的・内的世界の自己調整機能(原始的防衛システム)は、自己の中にいる無垢な個人の精神の中核を助けることに繋がります。原始的防衛システムを担う内的人物像は、しばしばトラウマの歴史を持つ個人の夢の中に現れます。サイコセラピーは夢は扱うことで、トラウマの回復に役立ちます。外的・内的世界の自己調整機能(原始的防衛システム)は、自分を守る力や生き残る力になりますが、その一方で、地獄の世界にとどめておくことがあります。

 

『In Trauma and the Soul』の第3章は、ドナルド・カルシェッドがダンテの『神曲』の地獄篇から、ダンテのトラウマティックな出来事を分析しています。地獄を管理する冥府は、1段階ずつ下がっていきますが、最下層の第九圏、裏切者の地獄は「コキュートス」という氷地獄です。同心の四円に区切られ、最も重い罪、裏切を行った者が永遠に凍漬けとなっています。

 

内なる自己は、深いところにあって、原始的なイメージを与えてきます。闇に記されるような記憶は言語化することができません。神経心理学で言うと、痛みに凍りつきます。悪魔やデーモン、恐竜、モンスター、堕天使は暗闇の世界の住人で、この世の存在の守護神や守ってくれるものとは正反対のように思いますが、単なる真逆ではありません。

 

トラウマの生存者のネガティブなものや、自分たちを守るものは、回復されなかったら、彼らの行動は攻撃的になります。原始的防衛システムが良いか悪いかに引き裂かれることにより攻撃的になります。解離性同一性障害は、人格変容する障害です。幼少期の自分を保護するものは、思春期や青年期に入ると、怒りやトラウマを経験してきているため、保護者から暴力的になります。幼少期に自分の代わりになって、守ってくれていたものが怒りになります。

 

悪魔とは、神に最も近い天使だった存在が朽ち果てて、光の正反対な存在に墜ちて、暗黒の使いになります。無垢な個人の精神の正反対のものになって、罪深いこころを象徴するようになっていきます。天使は、かつて光輝はなはだしくもっとも美しい天使でありましたが、今は醜悪な三面の顔を持った姿になります。この悪魔は、もう一つの世界の住人で解離(分離)させるような力を持ちます。

 

トラウマ経験者の原始的防衛操作をする迫害的な内的人物像は、朽ち果てた悪魔でありますが、この怪物はもともと第一級の天使(ルシファー)でありました。神様は人間の歴史になることを望んでいたため、ルシファーは、神様の計画に従うことを拒みます。彼は、神様が世界に下りてきて、人間としての身体を得る計画をしていたことに、むかむかしていました。彼にとって毛深い人間の身体は動物にしか見えません。

 

彼(悪魔、怪物)は、この歪んだ世界に産み落とされた制裁されるべき人間を憎んでいます。人間を醜くどす黒い肉片の塊としてしか見ていません。内的世界では、懲罰者として存在し、自分を罰し、自殺すらも安楽するぎる刑として、どこへの逃げさせず、生き地獄を与えていきます。

 

参考文献

Donald Kalsched.(2013):『Trauma and the Soul:A psycho-spiritual approach to human development and its interruption』